出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

版権交渉4 翻訳チェック2

2014年05月26日 | 翻訳出版
著者は、まず気にしていた訳文の品質についてクリアになると、契約書を見たいと言ってきた。が、こっちも交渉をどんどん進めて契約を交わしたいんだが、なぜかうちで使ってる出版契約書を見たいという。

私の経験では、外国人との交渉では数字を先に言ったほうがちょっと有利なので、「日本で翻訳して出版したいんですが…」という最初のメールの時点で、交渉可というコメントと一緒に数字も提示してあった。翻訳出版の参考書を読んでとりあえず決めた、日本での通常の出版契約より少々低いパーセンテージである。原著の版元から「普通はもっと高い、でも版元次第」と言われたようで、うちの出版契約書を見れば判断がつくから見たいのだという。

著者サイドに立って考えると、翻訳出版だろうと何だろうと作業代という観念ではないし、コピー商売である以上、どこでどう出されても同じ印税率で…という気持ちは分かる。が、なぜ、出版契約書? 翻訳出版用のじゃないのか?

まあ、実際問題として高印税率は無理だ。それに、原著版元(ISBN出版者記号7桁=プロの出版社じゃないかも)がとんちんかんなアドバイスをしている可能性もある。ここは、あんまり細かく説明リクエストに応えず、親近感を演出するのもやめて、こっちのペースで交渉を進めたほうがいいと判断した。

翻訳出版の参考書に雛形があったのでそれをタイプして送ろうと思っていたら、上手い具合に、初の翻訳書発刊にこぎつけた知り合いが遊びにくるというので、契約書も見せてもらうことにした。見ると、彼はエージェントを通して契約していて、かつ原著版元がそのブランドにうるさいタイプのようで、結構違う条項が入っている。条項の数自体がとても多い。どんな雛形を叩き台にするかは雛形を出すほうの勝手なので、彼のも参考にさせてもらったが、結局参考書のシンプルなやつを著者に送った。

するとやはり、原著版元との契約書より短いが…と言ってきたので、契約のタイプが違うと答えたら、その後2週間ほどなしのつぶてになってしまった。催促したら、そのまた2週間後にようやく返事が来たが、翻訳チェックの話を蒸し返されただけであった。

何度かやり取りしたがどうしても気になるようで、結局こちらで訳文サンプルを作って送り、向こうでチェックすることになった。それ自体は構わないんだが、そのチェックをする人間というのがあちら在住の日本人フリーライターだという。フリーライターの品質はピンからキリまでなので少々不安だったが(点数稼ぎに余計なことを言い出すとか)、この件をクリアしないことには先に進まないともう諦めて、1週間後くらいに訳文サンプルを送った。

結局、いつの間にやら決まっていたスペインでの翻訳出版で著者が忙しかったり、そのライターが休暇に出掛けてしまったり、その後もアレコレ忙しいと言われ、なんと訳文チェックのOKが来たのは、送ってから5ヵ月後だった。

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