昔に出会う旅

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日吉大社東本宮摂社「樹下神社」の建物配置の謎

2009年02月24日 | 近畿地方の旅

日吉大社東本宮の楼門をくぐり、内側から見た様子です。

塀と、楼門が、調和して品のある美しさを感じます。

■門の脇に説明文があり、転記します。
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重要文化財 建物部
日吉大社東本宮楼門 一棟 (大津市坂本五丁目)

この楼門は、三間一戸楼門の形式で、入母屋造、檜皮葺、縁付きの建物で、斗栱[ときょう]は上下層とも三手先となっています。三間一戸とは、柱間三つのうち中央の一つが出入り口となっているものをいい、楼門とは、二階造りの門で、屋根が二階部分だけにしかなく、一階の上に縁がある形式をいいます。
西本宮楼門とは、やや違った比例を持っていて、どちらかといえば一階部分が高く、二階部分が低いのですらりとした均斉のとれた建物で、天正~文禄二(1573~1593)年頃に建てられたものです。
 大正一二年(1923)年三月に国の重要文化財に指定されました。
 大津市教育委員会 平成四(1992)年三月
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楼門をくぐり、正面に見える境内の景色です。

正面突き当りに見える建物は、「日吉大社東本宮拝殿」で、その背後に日吉大社東本宮本殿があります。

向って左に見える建物は日吉大社摂社「樹下神社本殿」で、向って右の建物は「樹下神社拝殿」です。

摂社の本殿と、拝殿が参道を挟んで配置されているのは初めて見ます。

正面の東本宮拝殿と、その裏にある本殿は、ほぼ北を向いて参拝しますが、「樹下神社本殿」はほぼ西を向いて参拝します。

一見、自然に思える本殿と、摂社の建物の方角に少し疑問を感じました。



日吉大社と、神山「八王子山」の地図で位置関係を見てみました。

古事記の記載★では主祭神の大山咋[おおやまくい]神は、「日枝山(八王子山)に鎮座し」とあります。

神社の建物ができる以前の時代は、大山咋神が鎮座する八王子山の磐座へ向かって祈っていたものと思われます。

しかし、八王子山に向った参拝は摂社「樹下神社」で、東本宮本殿では北に向かった参拝です。

本殿を無視するかのように参道を挟んで建つ「樹下神社」の本殿と、拝殿が古来からの「日吉大社」だったのではないかと思われます。

「樹下神社」の祭神は、大山咋神の妃神「鴨玉依姫神」で、やはり神様でも奥さんが実権を握っている姿かもしれません。

勝手な想像で、「大山咋神」に親しみを感じてしまいました。

★古事記(現代訳)の「大山咋神」一説です。
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大山咋神 またの名を山末之大主[やますえのおおぬし]神 この神は近淡海国[ちかつおうみのくに]の日枝山[ひえのやま]に鎮座し また葛野[かづの]の松尾に鎮座し 鳴鏑[なりかぶら]を持つ神
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「近淡海国」[ちかつおうみのくに]は、都から見て近い淡水湖「琵琶湖」の国という意味で、古代に淡水湖だった静岡県浜名湖「遠淡海」[とおつおうみ]」を意識した言葉だったと思われます。



東本宮の脇にある「樹下神社」の本殿です。

美しい社殿でした。

■説明板があり、転記します。
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重要文化財 建物部
日吉大社摂社樹下神社本殿 一棟 (大津市坂本五丁目)

この本殿は、三間流造、檜皮葺の建物で、後方三間・二間が身舎[もや]、その前方一間通しの廂[ひさし]が前室となっています。
数ある流造のなかでも比較的大型のもので、床下が日吉造りと共通した方式であることや、向拝階段前に吹寄格子の障壁をたてているのは本殿の特色となっています。
文禄四(1595)年に建てられたことが墨書銘によってわかりますが、細部の様式も同時代の特色をよく示し、格子や破風、懸魚などに打った飾り金具は豪華なものです。
 明治三九年(1906)年四月に国の重要文化財に指定されました。
 大津市教育委員会 平成四(1992)年三月 
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「樹下神社」の本殿正面です。

建物の各所に品の良い金色の飾り金具が付き、少し色のはげた木彫りの狛犬にも歴史を感じます。



「樹下神社」本殿の破風[はふ]に素敵な金具が付けられていました。

社殿の美しい切妻に見とれてしまいます。



参道を入り右手にある「樹下神社」の拝殿です。

この角度からの屋根が一番美しく見えました。

本殿と対照的に地味な入母屋の拝殿ですが、大きな鳥が羽ばたくような美しさを感じます。

■説明板があり、転記します。
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重要文化財 建物部
日吉大社摂社樹下神社拝殿  一棟 (大津市坂本五丁目)

 この拝殿は、桁行三間[けたゆきさんげん]、梁間[はりま]三間、一重[いちじゅう]、入母屋造、妻入り、檜皮葺[ひわだぶき]の建物です。
方三間[ほうさんげん]といわれる拝殿ですが、他とは、柱間が四方とも格子や格子戸となっている点が異なっています。屋根の妻飾[つまかざり]りは木連[きつれ]格子、天井は小組格[こぐみこう]天井、回り縁は高欄[こうらん]付きとなっていて、本殿と同じく文禄四(1595)年に建てられたものです。
なお、樹下神社の拝殿と本殿を結ぶ線と、東本宮の拝殿と本殿を結ぶ線が交わるのは、珍しいものです。
 昭和三九(1964)年五月に国の重要文化財に指定されました。
 大津市教育委員会 平成四(1992)年三月
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拝殿にはあでやかな神輿が置かれていました。

平安時代、比叡山の僧兵達が、日吉大社の神輿を担ぎ、都に繰り出して朝廷に強訴したそうです。

当時の神輿を見てみたいものです。


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