ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

188. アスファルト工事

2022-06-01 | 風物

アスファルトを敷いた後すぐにローラーで固める。

 

 道路工事はいよいよ最終段階に入ったようだ。

 去年の10月、第一グループがまずきれいに敷き詰めてあった歩道の石畳をすべて取り去って、カラーブロックに取り換えた。予定では一ヶ月ほどで終る筈だったが、えんえんと3か月もかかってしまった。

 次に別のグループが古くなった アスファルトを剥がした。

 今やっているのが三番目の会社。第二のグループが剥がした後にアスファルトを敷く工事。作業員全員がポルトガル人のように見える。でもウクライナ人も混じっているかも知れない。ポルトガル人もウクライナ人も一見、区別がつかない。ウクライナ人は言葉を覚えるのが早く、しかも流ちょうに喋る。今回のウクライナ戦争で難民が各国にやってきた。ポルトガルにもたくさん来たのだが、若い世代が多く、彼らの殆どが英語を喋る。

大型ダンプからアスファルト。

 

 我が家の窓の下で工事をやっている。10人の労働者が働いているが、その中にはセトゥーバルの職員も一人いて、背中にCMS(セトゥーバル市役所)と書いたベストを着ているからすぐにわかる。たぶん監督としてきているのだろうが、ふつう監督としてきている役人は傍らに立っているだけで、何もしない。無駄話をしながら作業をみているだけだ。だが今回の役人は率先して働いている。周りの作業員よりも熱心に身体を動かしている。こういう人も珍しい。

空色のティシャツが隊長、門の正面で黄色いベストを着て棒を持っているのが市役所職員。

 

 この第3班の隊長はしわしわの老人だが、あちこち走り回って、作業員に指示を出している。言葉じゃなくてほとんど手話に近い合図で伝える。重機が轟音を轟かせているから、余程大声を出さないと伝わらないからだろう。ポルトガル人はよくしゃべるが、身体を使った身振り手振りもおどろくほど発達している。

 

 アスファルト工事は道路を平らに削り取り、その後、コールタールを道路全体に吹き付ける。10トントラックで運んできたアスファルトを舗装工事専用重機に移す。アスファルトは熱々の湯気を出しているから、危険だ。重機で賄いきれない隅などは手作業だ。作業員たちは用心深くシャベルですくい取り、道路に撒いていく。みんなで協力しながら隙間なく敷き詰める。そしてローラー重機を走らせ固める。それぞれの役割分担がうまく機能している様だ。

隅などは手作業。

 

 その間もホテルの泊り客たちが次々とやってきて、昨日敷いた片側のアスファルトの上を歩いて通る。彼らのクルマは工事現場のずっと先に駐車してあるらしいから、そこまで荷物を担いで歩かなければならない。小さな子供を二人連れた一家は夫が大きいリュックを担ぎ、妻がおおきなトランクを引きずり、子供二人もそれぞれちいさなリュックをかついで、さらに両手には自分の人形などを下げてよろけながら歩いて行く。みんな緊張した顔で。この工事がなかったら、ホテルの駐車場で荷物の出し入れができただろうに。

 工事は朝8時から夕方5時まで。昼食は13時からだが、工事の進み具合によってもっと遅くなったりする。最初のカラーブロックを敷く会社は親方以外はパキスタン人だったので、親方と主任はどこかに食事に行き、他の3人は弁当持参で陽当たりの良い場所で食事をしていた。彼らは大きめのベニヤ板をまず箒ではわいて、そこに靴を脱いでから上がり、弁当を食べ始めた。靴を脱ぐとはなんとアジア的!

 2番目のアスファルトを剥がす会社はたぶんカフェでみんなで昼食を食べていたのだろう。

 今の会社は作業員が9人もいる。ある日、太った若い作業員が12時過ぎ、一人で資材置き場に帰ってきて、使い古したパネルをツルハシで壊し始めた。かなりこなごなにしてから布に油を湿らせて火を点け、ドラム缶コンロに入れてパネルの木っ端を投げ入れた。賄い係だろう。昼ご飯はバーベキューだ。昔は道路工事の片隅で作業員の一人が火をおこして肉やチキンを焼くのをよく見かけた。このごろ見かけないなと思っていたのだが。

 

 

炭火コンロ、テーブルには置き忘れたサグレスのビール瓶、宴の後。

 

 昼食は大幅に遅れて2時過ぎに作業員たちが集まって来た。総勢9人、すでに焼きあがった肉や鰯をパンにはさんで食べ始めた。

 まるで立ち食いパーティーのように賑やかだ。作業の疲れも吹っ飛んだだろう。

 

真新しいアスファルトにジャカランダの花びら。(写真は全て我が家のベランダから撮影)

 

 いまジャカランダが真っ盛りだ。昨日舗装が出来上がったばかりの真新しいアスファルト道路にジャカランダの紫色の花弁がちりばめられ、黒とムラサキ色のコントラストを奏でている。 MUZ 2022/05/31

 

 

 

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