ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

176. フクロウと猛禽類

2021-06-01 | 風物

松の枝先にしがみついた猛禽類(2021年5月、台所の窓から撮影)

 

 コロナ禍で外出は控えている。1週間に1度スーパーに買い物に行くくらいで、殆ど外出はしない。

 家の中に居るだけだから、どうしても運動不足になってしまう。

 時たま思い出した様に、台所の窓に摑まって屈伸運動などを始めてみる。

 窓の外には途切れることなく様々な鳥が飛び交っている。

 鳩であったり、燕であったり、カモメであったり、シラコバトであったり、メルローであったり。

 その他にも名前の知らない小鳥たちが無数に訪れる。

 先月はお隣のマンション屋上に取り付けられた作り物のフクロウのことを書いた。

 陶器製のフクロウが5つ、屋根の上でにらみをきかせている。据え付けられてもう一ヶ月ほど経っただろうか。その間、不思議なことにその屋根には鳩は全然来なくなった。と言っても一度か二度鳩が止まっていたのを見たことがある。やっぱり鳩もあのフクロウは動かないから怖くないよと噂が広まったのだろうか。二羽の鳩は作り物のフクロウのすぐ下の屋根に止まって、フクロウを気にする様子もなく遊んでいたが、しばらくしてどこかに飛んで行った。

 その分、我がマンションの屋根には鳩が多く来るようになった様にも思う。

 今朝方、作り物のフクロウからは死角になる我が家の風呂の窓で鳩が寝ていた。窓をとんと叩いたら一目散に飛んで行った。でもすぐに戻って来たので追い払ったが、又、戻って来た。そして今度はつぶらな瞳でガラス窓をコンコンとノックした。餌を催促しているのであろうか。

 次の日、「ピー、ピー」と聞きなれない鳥の声が聞こえた。そして目の前を一羽の鳥が飛んで行った。初めて見る鳥。それは背中が薄茶色で、羽根を広げてスーと飛んで行った。鳩よりも少し大きい。小型の猛禽類のように見えた。さっきの聞きなれない声の持ち主に違いない。猛禽類にしては鳴き声がかわいらしいが、それでも鳩にとっては怖いのだろうか。その声がすると、鳩たちは急いでどこかへ飛んで行った。

 

 ある日、その鳥が凄い勢いでとんでいた。何かに追われて逃げ惑っている様で、近くの松の木に慌ててしがみついた。その後を数羽の燕たちが追いかけて攻撃している。燕に追われて逃げる猛禽類。それは巣立ちをしたばかりの雛かもしれない。心細そうに親を呼んでいるようだが、親の姿は見当たらない。猛禽類は巣立ちしたその日から一人で生きて行かないといけないのだ。

 例えば燕は集団で生きている。巣立ちの前に飛ぶ練習、燕の学校は立派な大人の燕が先生だ。よちよち歩きのヒナが何度も墜落しそうになっても励ますように声をあげて催促する。雛たちはお互いに競い合うように何度も挑戦して、飛ぶごとに上達していく。

 猛禽類は孤独だ。巣立ちに失敗したら巣から落ちてしまう。地面に落ちると誰も助けてくれない。それどころか、キツネや山猫に襲われてアウトになる。猛禽類の人生は厳しいのだ。

 ふと屋根の上を見ると、5個のフクロウはあいかわらずじっとしている。いや、北側の一羽が頭を動かしている。目をこすってもやっぱり動いている。鳩が来なくなったのはこれだ。

 他の4羽はじっと動かないが、北側の一羽だけ、首をふらふら動かしている。風が吹いて動いているのだ。きっと。

 

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