Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ソウル・ミュージック ラバーズ・オンリー/山田詠美

2013-09-19 | 読書
 山田詠美の小説を読んだことがなかった。映画化された「ベッドタイムアイズ」のイメージが僕には強くって、まだ若造だった僕にはとっても遠い世界のお話だった。ミドルエイジになった今、直木賞受賞作「ソウル・ミュージック ラバーズ・オンリー」をやっと読む気になった。男と女の話が無性に読みたかったからだ。

 今まで読んだ小説に似たものはない・・・正直、圧倒された。文章がいちいちカッコよくって、しかも人を愛すること、好きになるなったときのどうしようもない感じが活字の向こうから伝わってくる。男心も女心も描写がとても丁寧だ。セックスの描写にしてもいやらしさはまったく感じない。それは行為を表現するのではなく、そこで何を感じているのかがはっきりと描かれているからだろう。先日読んだ石田衣良の「SEX」も同じ性をめぐる短編集だが、あれはそれぞれの登場人物やその物語が魅力的な本だった。でも・・・どこか客観的な視点で行為や状況を描写する、そう、官能小説ぽい文学。「ソウル・ミュージック ラバーズ・オンリー」は違う。同じ活字で描かれた物語なのに、体に染み、心にズカズカ踏み込んでくる。そう、ソウルを感じるのだ。

 ミセス・ジョーンズが「セックスはお菓子のようなもの」と少年を諭す台詞。バリーがジャニールウを思ってする行為。ソニーが死んだ恋人を思ってする行為。苦さを味わって成長するDJブースの若者。抱き合って、絵の具まみれになって床を転げ回るウィリー・ロイと私。男と女の数だけ物語はある。そして、それぞれの物語を彩る音楽。彼にそっくりの声のテディ・ペンダーグラスを聴く、という場面に、ちょっと過去の自分の行動に思い当たるところが(汗)。ラストを飾るのが、パーシー・スレッジの「男が女を愛する時」というのが素敵。ウィリー・ロイが言うようにこういう音楽流れる貴重な瞬間が人生をつくるのだ。






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