水道橋博士「藝人春秋2」(文藝春秋)
上巻「ハカセより愛をこめて」/下巻「死ぬのは奴らだ」を読む。
前作の「藝人春秋」から4年。
「週刊文春」で連載されていたものをベースに、
博士が007よろしく、芸能界に潜入したスパイに扮して
とんでもない熱量で芸能界にうごめく人々を活写する。
文章の一行一行。
言葉の一語一語。
魂が宿っているというか、芸があるというか。
落語や漫談のような、マクラこそないけれど、
怒濤の展開のあとに「これしかない」というオチの付け方。
こんな文章、命を削らないと書けないと
思わせるほどの力がみなぎっていて、
それでいて、爆笑させたり、泣かせたり、考えさせられたりと、
博士の術中に見事にはまってしまったと気づいたときには、
すでに上下巻とも読み終わっていたという。
まるで本人が眼の前にいるかのようなリアリティというか空気感。
タモリが、デイブ・スペクターが、みのもんたが、
寺門ジモンが、江頭2:50が、石原慎太郎が、猪瀬直樹が、
昭英が、大瀧詠一が、立川談志が、
もちろん博士の師匠の高田文夫が、
そしてビートたけしが、喋り、語り、叫び、
その人間くさい素顔が読む者にぐんぐんと迫ってくる。
ナンシー関にオマージュを捧げたという、
江口寿史のイラストも素晴らしく、
今回の刊行を長いこと待っていた甲斐があったなあ、と。