小説キャンディキャンディFinal Story上・下巻 名木田恵子 (著) 祥伝社 (2010/11/1) の考察です
注:物語に関するネタバレがあります
あの人はどんな人1、あの人はどんな人2、に続き、あのひとの性格や性質を考察していきます。
小説から、あのひとに関する記述をさらにとりあげてみます。
壊れてしまったステアの”幸せになり器”を---
いとも簡単にあのひとは修理してくれた。
あのひとの帰宅を出迎えるキャンディは、あのひとを見てこう思います。
わたしをいつもときめかすやさしいその声
わたしの大好きな微笑
わたしの大好きな微笑
いまさら言うのもなんですが、あえて念のため---ブログ主は、あのひとはアルバートさんか、テリィかという2択で検証しております。この二人以外の可能性を検証するのは全く無駄な作業であると、ブログ主は思っておりますので、どうかご了承ください。
では戻りましょう。
オルゴールをいとも簡単に修理してしまうあのひと。器用な人みたいです。
あのひとがアルバートさんだったら---
一人で放浪の旅に出ていたアルバートさんなら、きっとそういう作業は得意であろうと推測できますね。アルバートさんが、オルゴールをささっと修理する姿は簡単に想像することができます。
あのひとがテリィだったら---
実はテリィはろくに授業にも出ていないのに成績はいつも上位であることが小説の中で説明されています。長い指を優雅に走らせてピアノを弾く様子や慣れた手で暖炉の火をおこす描写から、テリィは器用な人物であると繰り返し説明されていますので、テリィもオルゴールを簡単に修理できる人物であると推測できます。
ということで、オルゴールを修理する描写からは、アルバートさんとテリィ両方がその人物像にあてはまるようです。
次に、声と微笑の描写はどうでしょうか。
わたしをいつもときめかすやさしいその声
わたしの大好きな微笑
わたしの大好きな微笑
丘の上の王子さまとアルバートさんのことをキャンディはこんな風に表現してきました。
やわらかい声
やさしいあの声
光がこぼれるような少年の笑顔
哀しみを溶かしてくれたあの笑顔
まろやかな声で笑った
顔に似合わないやさしい声
やさしいあの声
光がこぼれるような少年の笑顔
哀しみを溶かしてくれたあの笑顔
まろやかな声で笑った
顔に似合わないやさしい声
テリィについてはどうでしょう。
高くも低くもない深みのあるテリィの声。
わたしの大好きな深みのあるテリィの声。
硬かったテリィの表情がゆるみ、微笑が広がっていく。
たったひとつの微笑だけでも、言葉より重く伝わることがる。
精悍で、それでいてどんな人の心をも溶かすような繊細でやさしい笑顔---
わたしの大好きな深みのあるテリィの声。
硬かったテリィの表情がゆるみ、微笑が広がっていく。
たったひとつの微笑だけでも、言葉より重く伝わることがる。
精悍で、それでいてどんな人の心をも溶かすような繊細でやさしい笑顔---
"やさしい声"というのはアルバートさんの声に対してよく使われている言葉だということがわかります。しかし、やさしい声を形容する"わたしをいつもときめかす"という表現が加わっていることで、テリィの姿が浮上してくるのです。アルバートさんのやさしい声に対しては、"ときめき"というよりも"癒し"や"包み込む"という言葉が形容されてしっくりきます。
恋人/夫婦関係になっているのであれば、アルバートさんの声にもときめいて自然ではないか---というご意見もきっとあることでしょう。ただ、そうすると、恋人や奥さんには誰でもやさしい声を使うよね、微笑は誰でもするよね、というしっちゃかめっちゃかな議論になってしまいますので、ここは作者が表現したこと、小説にあることだけを頼りに考察しております。なにとぞご了承ください。
"微笑"はテリィに対してよく使われている言葉ですね。アルバートさんであれば"微笑"というより"笑顔"という言葉で表現されるのが自然であるように感じます。
このあたりの、小説のテーマとは離れた細かい描写部分では、アルバートさんともテリィともどちらともとれる表現を使い、作者はあのひとに関するあいまいさを何とか残そうと試みているような気がします。
けれどもしかし、"わたしをいつもときめかす"という表現に作者の中のどうしても譲れないものを感じてしまうのは、ブログ主だけでしょうか。
実は最近、気がついた事があるのです。
私もFSを読んでオルゴールがずっと引っかかっていました。オルゴールを「いとも簡単に直せる」人物像はアルバートさんにもテリィにも当てはまり、どちらとも取れる曖昧なエピソードを名木田さんがなぜわざわざ入れたのだろうとずっと考えていました。
そして、ふと気がついたのです。
このオルゴールは、ステアが、キャンディがテリィと幸せになれるようにと願いをこめて作ったものでした。そしてその願いも叶わず、生きていても永遠に会えないテリィとの別れと同時に壊れてしまった。
あのひと(テリィ)がキャンディの元に戻ってきて幸せになれたから、オルゴール(キャンディが幸せになり器)も簡単に直った。テリィと幸せになれなくて壊れたのだから、それを直せるひとはやっぱりテリィしかいないのだ!!!と思ってしまいました(照)
もしかしてジョセフィンも同じ解釈かな?と勝手に思ったりして。
水仙~でも、オルゴールにテリィが触れただけで直った時、テリィに直させないんだ~??と読んでいる時思いました。だけどその解釈なら、テリィが戻ってきたから、そのオルゴールにテリィが触れただけで直った!?とするとつじつまが合うような感じがしてきたのです。
あくまで私の主観です。でもそう思ったらなんだかこうスッキリしまして・・・。
ブログ主さまに報告したくなって、カキコミさせて頂きました
ブログ主もecru様と同じ考えです。
このオルゴールはテリィの元へ向かうキャンディの幸せを願ってステアが渡したものですから、小説の中で「いとも簡単にあのひとは修理してくれた」とわざわざ書き込まれる場合、そのあのひとはテリィと考えるのが自然だと思います。
もしアルバートさんが修理してくれたのなら、30代のキャンディに回想の中であえて言わせる必要はないでですね。
また何か気づいたことがあったらいつでもシェアしてくださいね。
(原作(創作)も素晴らしいですねぇ~。)
オルゴールに関してなのですが・・・・
確かキャンディが学生牢に閉じ込められた際、テリィがステアに握手を求めましたよね。、
握手してテリィの手は繊細で発明家向き、と話したシーンがあったはずです。
(コミックかアニメ化忘れましたが)
テリィがいつか共同製作を・・・みたいなレスをしたと思います。
ステアの製作したオルゴールの故障をテリィが修理する。
(そもそもキャディとテリィとの幸福を願ったオルゴールだし。)
ある意味、実現した共同作業だったのでは???
このくだりはとても印象的でした。
私自身もオルゴールが好きなせいでもあるかもしれませんが・・。
アニメの方は確認してませんが、漫画ではこのようなやりとりです。
ステア「へえーきみの手はせんさいだな、発明家むきだよ。どうだい?共同研究は…」
テリィ「いつかぜひ…」
キャンディを思い出しこちらのブログに辿り着きました。
(なんでも20年封印状態だとか…悲しい事実に驚いています)
ステアのオルゴールを誰が直したのか?という部分ですが
間違いなくBTさんの仰る通り、あの箇所はステアの台詞を受けて
いると思います。
ステア「発明家向きだよ。どうだい?共同研究は…」
キャンディ「壊れてしまったステアの”幸せになり器”を---
いとも簡単にあのひとは修理してくれた。」
間違いなくあのステアの台詞がこのキャンディの言葉の伏線に
なっています。ですので「あの人」は間違いなく、テリィ
その人だと思います。
股余談ですが、テリィとキャンディ、二人を分かつ最大の要因であった
スザナの死もその後の二人を結ぶ暗喩になっていると思います。
キャンディに合う人はテリィしかいないと、子供の頃からずっと
信じていたので…この本の存在は本当に嬉しいですよね。
キャンディは名作ですし、いつか封印が解かれる日を願ってやみません。
本当に、キャンディキャンディという名作が封印されて、多くの人に届かなくなってしまったことはとても残念ですよね。
ただ、封印されていることで、作品の大切な部分が守られているという側面もあるのだろうと思っています。
そして通りすがり様のおっしゃるとおり、このサイトでは、あの人は間違いなくテリィです