小説キャンディキャンディFINAL STORY上・下巻 名木田恵子 (著) 祥伝社 (2010/11/1) の考察です 注:物語に関するネタバレがあります
あのひと考察セカンドシーズン「あのひと=アルバートさんじゃない」4回目。
FINAL STORYの物語そして”あのひと"考察にとって大切な要素、それは大人になったキャンディの心情や生活環境。ということで、今回はキャンディと”あのひと"が暮らす家を通して検証してみましょう。二人が暮らす家はどんな家なのでしょうか。
ポニー先生ーー
物語は、キャンディが”あのひと"と暮らしている家の居間で、重篤な病気から回復したポニー先生に手紙を書こうとしているところから始まります。居間には、ポニーの丘から見下ろすポニーの家の全景を描いた油絵が飾ってあり、その絵を見ているうちにキャンディの胸が熱くなり、記憶は遠いアメリカの子どもの頃へと遡っていきます。
ポニーの家の子ども時代、そしてレイクウッドでの美しく、儚く、苦しい思い出へ……
回想から覚めたキャンディは、昂った気持ちを鎮めようと居間から広いテラスに出ます。エイボン川を臨むテラスにはラッパ水仙の香りが漂い、キャンディはその香りを胸いっぱいに吸い込みます。しばらくテラスで気持ちを鎮め、キャンディはまた居間に戻ります。
ロンドン、セントポール学院へーーそしてテリィとの別れ、キャンディの自立への決意……
キャンディは、居間にあるキャビネットから”あのひと"から贈られた象嵌細工の宝石箱を取り出し、居間の机の上でその箱を開け、人生で出会った人々とやりとりをした手紙の束を手に取り、回想を始めます。
ロンドンからアメリカへ戻り、看護婦を始めるまでの出会いや出来事……
まだ居間にいるキャンディ。宝石箱の中から、テリィの切り抜きが入った分厚い封筒を取り出し、その後直面することになる、テリィやステアとの別れなど、人生のさまざまな曲がり角に想いを馳せます。
戦争、死、別れの予感……
居間で思い出の品々から昔を回想するキャンディが、ここで初めて改めてアルバートさんのことを思います(しかしここでもすぐに思考はテリィへと)。宝石箱の蓋を閉め、隣室の書斎に向かうと、そこは革表紙の書籍で埋まっていて、隅には写真が飾ってあります。その一枚は中央にウィリアム大おじさま、その周りにラガン家の人々、そしてラガン家の使用人たちとキャンディが写った写真です。
アードレー家、ラガン家に関わる人々の昔と今……
書斎でもう一つのアードレー家にまつわる写真に目をとめるキャンディ。それはステアのいないステアが写した写真ーー広大なアードレー家の本宅の敷地。アルバートさんのことは気になっていたが「それよりも」テリィに会えるとニューヨークに向かい、ステアともテリィとも別れることになった旅のことを思い出し、居間へと戻って再び宝石箱の蓋を開けます。
回想と「今」との行ったり来たりの間隔が短くなってテリィからの手紙へとつながりエピローグへーーそしてウィリアム大おじまさま/アルバートさんとの文通、心の中で書くアンソニーへの手紙……
日が暮れた薄暗い居間で「今」に完全に戻ってくるキャンディ。車で帰ってきたあのひとが部屋の灯りをつけてキャンディに声をかけますーーそしてエンディングへ……
いかがでしょうか。「今」と回想の組み立てから”あのひと”考察もできそうですが、ここで検証しているのはキャンディと”あのひと”が暮らす家。
居間→居間から出られるテラス→居間→隣室の書斎→居間ーーテラスや隣室を行ったり来たりできるこぢんまりとした部屋の構造、そして居間から”あのひと”が帰宅する車の音が聞こえ、帰宅した”あのひと”が居間の電気をつけるーー二人はどう見ても広大なお屋敷には暮らしていないようです。
ちなみにこちらがアルバートさんのご実家&本宅(笑)
水木杏子/いがらしゆみこ
別宅だとしてもレイクウッドのお屋敷レベル。アードレー家の大総長である限り、たとえ外国や別宅に住んでいたとしてもそれなりのお屋敷に暮らさざるを得ない人……それがアルバートさんの生きる世界の「現実」。
アルバートさんがアードレー家を捨てて、キャンディとこぢんまりとした家に暮らしている可能性もあるのでは?……と思いたい方は、どうぞ存分にその妄想の羽を広げてください……誰もそれを止めることはできませんし、ブログ主もそんな野暮なことはしませんから。ただ、もしそうだとしたら、前回の考察で検証した、キャンディが描いたアルバートさんの似顔絵(二人の大切な思い出)は、一体どこにあるのでしょうか……ねぇ。