昭和初期の釜淵の滝の写真を見ることが出来たので、現在のそれと比べたくなって6月の月初めに訪ねてみた。
花巻温泉道路(県道37号線)を花巻温泉に向かう。その入口で左折して台温泉へ行く県道123号線(花巻温泉郷線)を進むと、台川橋を渡った直後の右手に
《1 台川河川公園》(平成21年6月2日撮影)
がある。
そこに入って行くと
《2 台川の河川》(平成21年6月2日撮影)
を見ることが出来る。奥に見える橋は”月見橋”である。
”台川”といえばご存じのように賢治の作品にも同名の童話があり
〔もうでかけませう。〕たしかに光がうごいてみんな立ちあがる、腰をおろしたみじかい草、かげろふか何かゆれてゐる、かげろふぢゃない、網膜が感じただけのその光だ、
〔さあでかけませう。行きたい人だけ。〕まだ来ないものは仕方ない。さっきからもう二十分も待ったんだ。もっともこのみちばたの青いいろの寄宿舎はゆっくりして爽(さはや)かでよかったが。
これから又こゝへ一返帰って十一時には向ふの宿へつかなければいけないんだ。「何処さ行ぐのす。」さうだ、釜淵(かまぶち)まで行くといふのを知らないものもあるんだな。〔釜淵まで、一寸(ちょっと)三十分ばかり。〕
<『校本 宮沢賢治全集 第九巻』(筑摩書房)より>
のように始まる。このみちばたの青いいろの寄宿舎がどこかは私には判らないが、そこからは30分ほどのところが釜淵の滝だと書いてあるから、釜淵の滝より約2㎞ぐらい下方の場所だったのだろう。もっともっと下流のところで生徒達と待ち合わせ、台川を日曜巡検したのであろう。
ところで、釜淵の滝へはこの公園からは一気には行けないので、一旦県道に戻りもう少し台温泉側に進むと、同じく右手に
《3 釜淵の滝入口》(平成21年6月2日撮影)
があるので、ここから入って行く。そこには
《4 熊注意》(平成21年6月2日撮影)
があるので、要注意!
遊歩道沿いには
《5 ヤグルマソウ》(平成21年6月2日撮影)
が咲いていた。
《6 月見橋から見下ろした台川》(平成21年6月2日撮影)
《7 ヤマメも棲んでいる》(平成21年6月2日撮影)
《8 台川沿いを遡る》(平成21年6月2日撮影)
《9 〃 》(平成21年6月2日撮影)
《10 〃 》(平成21年6月2日撮影)
やがて滝見橋が懸かっており、そこを渡ると
《11 釜淵の滝が現れる》(平成21年6月2日撮影)
《12 釜淵の滝の説明板》(平成21年6月2日撮影)
《13 台川と釜淵の滝の案内板》(平成21年6月2日撮影)
そして、次が現在の
《14 釜淵の滝全景》(平成21年6月2日撮影)
であり、次が
《15 昭和初期の釜淵の滝》(平成21年6月2日撮影)
<『目で見る花巻・北上・和賀・稗貫の100年』(鎌田雅夫監修、郷土出版)より>
の写真である。このモノクロ写真には
釜ヶ淵の滝(花巻市・昭和初期) 花巻温泉の西側にある高さ8メートル、幅約30メートルの滝で、融雪期に激しく落下する情景はナイヤガラ瀑布のミニ版といわれた。夏場は子ども達の水泳場として賑わった。
という説明が付されている。
この上の2つの写真を見比べると昭和初期の釜淵の滝はでかそうに見えるが、いまのそれはそれほどには見えない。まして、子供達がここで水泳することなどは昨今はなさそうだ。
《16 釜淵の滝》(平成21年6月2日撮影)
《17 滝の左側》(平成21年6月2日撮影)
《18 滝の右側》(平成21年6月2日撮影)
《19 滝壺の端》(平成21年6月2日撮影)
滝の左脇に遊歩道があるので上って行くと
《20 ウマノアシガタ》(平成21年6月2日撮影)
が咲いており
《21 句碑》(平成21年6月2日撮影)
が建っている。かつて高浜虚子がここを訪ねたようで
釜淵の滝より白し 秋の蝶
滝の上をあるきもし 橋を渡りもす
虚子
と記されている。
また、
《22 かなり大株のナツトウダイ》(平成21年6月2日撮影)
が珍しかった。
滝の上に出たところの
《23 台川》(平成21年6月2日撮影)
水は岩の上を流れている。
《24 滝の落ち口》(平成21年6月2日撮影)
《25 石走る水》(平成21年6月2日撮影)
《26 見下ろした滝壺》(平成21年6月2日撮影)
賢治の『台川』は次のように終わるが
もう下らう。滝に来た。下りてゐるものもある。水の流れる所は苔は青く流れない所は褐色だ。みんなこはごは下りて来る。水の流れる所は大丈夫滑らないんだ。〔水の流れるところをあるきなさい。水の流れるところがいゝんです。〕
あれは葛丸川だ。足をさらはれて淵に入ったのは。いゝや葛丸川ぢゃない。空想のときの暗い谷だ。どっちでもいゝ。水がさあさあ云ってゐる。「いゝな。あそごの水の跳ね返る処よ。」
うん、いゝ、早池峯山の七折の滝だってこんなのの大きなだけだらう。
もうみんなおりる。おれもおりる。たった一人あとからやって来る人がある。こはさうだ。
〔水の流れるところをあるくんです。水の流れる所を歩くんですよ。〕
さうだ。さうだ。いゝ気持ちだ。
<『校本 宮沢賢治全集 第九巻』(筑摩書房)より>
花巻農学校の生徒達と一緒に賢治はこの滝を下りていったことであろう。
なお、ここで登場している「七折の滝」について知りたい方は続きへどうぞ。
続きの
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花巻温泉道路(県道37号線)を花巻温泉に向かう。その入口で左折して台温泉へ行く県道123号線(花巻温泉郷線)を進むと、台川橋を渡った直後の右手に
《1 台川河川公園》(平成21年6月2日撮影)
がある。
そこに入って行くと
《2 台川の河川》(平成21年6月2日撮影)
を見ることが出来る。奥に見える橋は”月見橋”である。
”台川”といえばご存じのように賢治の作品にも同名の童話があり
〔もうでかけませう。〕たしかに光がうごいてみんな立ちあがる、腰をおろしたみじかい草、かげろふか何かゆれてゐる、かげろふぢゃない、網膜が感じただけのその光だ、
〔さあでかけませう。行きたい人だけ。〕まだ来ないものは仕方ない。さっきからもう二十分も待ったんだ。もっともこのみちばたの青いいろの寄宿舎はゆっくりして爽(さはや)かでよかったが。
これから又こゝへ一返帰って十一時には向ふの宿へつかなければいけないんだ。「何処さ行ぐのす。」さうだ、釜淵(かまぶち)まで行くといふのを知らないものもあるんだな。〔釜淵まで、一寸(ちょっと)三十分ばかり。〕
<『校本 宮沢賢治全集 第九巻』(筑摩書房)より>
のように始まる。このみちばたの青いいろの寄宿舎がどこかは私には判らないが、そこからは30分ほどのところが釜淵の滝だと書いてあるから、釜淵の滝より約2㎞ぐらい下方の場所だったのだろう。もっともっと下流のところで生徒達と待ち合わせ、台川を日曜巡検したのであろう。
ところで、釜淵の滝へはこの公園からは一気には行けないので、一旦県道に戻りもう少し台温泉側に進むと、同じく右手に
《3 釜淵の滝入口》(平成21年6月2日撮影)
があるので、ここから入って行く。そこには
《4 熊注意》(平成21年6月2日撮影)
があるので、要注意!
遊歩道沿いには
《5 ヤグルマソウ》(平成21年6月2日撮影)
が咲いていた。
《6 月見橋から見下ろした台川》(平成21年6月2日撮影)
《7 ヤマメも棲んでいる》(平成21年6月2日撮影)
《8 台川沿いを遡る》(平成21年6月2日撮影)
《9 〃 》(平成21年6月2日撮影)
《10 〃 》(平成21年6月2日撮影)
やがて滝見橋が懸かっており、そこを渡ると
《11 釜淵の滝が現れる》(平成21年6月2日撮影)
《12 釜淵の滝の説明板》(平成21年6月2日撮影)
《13 台川と釜淵の滝の案内板》(平成21年6月2日撮影)
そして、次が現在の
《14 釜淵の滝全景》(平成21年6月2日撮影)
であり、次が
《15 昭和初期の釜淵の滝》(平成21年6月2日撮影)
<『目で見る花巻・北上・和賀・稗貫の100年』(鎌田雅夫監修、郷土出版)より>
の写真である。このモノクロ写真には
釜ヶ淵の滝(花巻市・昭和初期) 花巻温泉の西側にある高さ8メートル、幅約30メートルの滝で、融雪期に激しく落下する情景はナイヤガラ瀑布のミニ版といわれた。夏場は子ども達の水泳場として賑わった。
という説明が付されている。
この上の2つの写真を見比べると昭和初期の釜淵の滝はでかそうに見えるが、いまのそれはそれほどには見えない。まして、子供達がここで水泳することなどは昨今はなさそうだ。
《16 釜淵の滝》(平成21年6月2日撮影)
《17 滝の左側》(平成21年6月2日撮影)
《18 滝の右側》(平成21年6月2日撮影)
《19 滝壺の端》(平成21年6月2日撮影)
滝の左脇に遊歩道があるので上って行くと
《20 ウマノアシガタ》(平成21年6月2日撮影)
が咲いており
《21 句碑》(平成21年6月2日撮影)
が建っている。かつて高浜虚子がここを訪ねたようで
釜淵の滝より白し 秋の蝶
滝の上をあるきもし 橋を渡りもす
虚子
と記されている。
また、
《22 かなり大株のナツトウダイ》(平成21年6月2日撮影)
が珍しかった。
滝の上に出たところの
《23 台川》(平成21年6月2日撮影)
水は岩の上を流れている。
《24 滝の落ち口》(平成21年6月2日撮影)
《25 石走る水》(平成21年6月2日撮影)
《26 見下ろした滝壺》(平成21年6月2日撮影)
賢治の『台川』は次のように終わるが
もう下らう。滝に来た。下りてゐるものもある。水の流れる所は苔は青く流れない所は褐色だ。みんなこはごは下りて来る。水の流れる所は大丈夫滑らないんだ。〔水の流れるところをあるきなさい。水の流れるところがいゝんです。〕
あれは葛丸川だ。足をさらはれて淵に入ったのは。いゝや葛丸川ぢゃない。空想のときの暗い谷だ。どっちでもいゝ。水がさあさあ云ってゐる。「いゝな。あそごの水の跳ね返る処よ。」
うん、いゝ、早池峯山の七折の滝だってこんなのの大きなだけだらう。
もうみんなおりる。おれもおりる。たった一人あとからやって来る人がある。こはさうだ。
〔水の流れるところをあるくんです。水の流れる所を歩くんですよ。〕
さうだ。さうだ。いゝ気持ちだ。
<『校本 宮沢賢治全集 第九巻』(筑摩書房)より>
花巻農学校の生徒達と一緒に賢治はこの滝を下りていったことであろう。
なお、ここで登場している「七折の滝」について知りたい方は続きへどうぞ。
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