2019年10月25日18時頃
ブルゴス裏通り、マカティ地区、マニラ
何気なく歩いていると浅黒い少年が俺の右半身にへばり付いてきた。
肌の熱と感情を失った顔が印象的な日本で言う小学校中学年てところか。
よくある物ごいと思った。
幼い女の子が小銭貰うまで行く手を遮るような事は何度か経験があった。
少年に対しやんわりと離れるようなにしていたが、思いの外アタックが激しいのに違和感を覚えたので突き放した。
少年は走り去った。
すると一部始終を見ていたのか、いつもはヘラヘラしている立ちんぼ嬢がシリアスな表情で
「 Be careful 」
右足を見るとリードでパンツに繋げていた財布がブラブラと垂れ下がっている。
何だ、これは。
手に取って見るとファスナーが開き中身が無い。
しまった、やられた。
瞬時に理解した。
振り向いたがヤツはもういない。
嬢は怪訝な顔で俺を見ている。
慌てるな、取り乱すな、落ち着け。
一旦ホテルに戻ろう。
道は判る。
冷静に。
いくら盗られたか?
午前中に2万両替したので前残を含めると14000pくらいか。
3万円てか。
今すべき事は?
警察に訴えるか。
ヤツの顔は覚えている。
その近所をシマにしているはず。
目撃者(嬢)もいる。
どうにかなるかも。
いや甘い。
たった2日間で解決するか?
金が戻るか?
その為に残り2日間を費やすか?
ベストは判らない。
ベターを探せ。
不本意だが諦めだ。
諦めろ!
それがベターだ。
利口だ。
何故ならこうなった原因は俺にある。
海外危険情報で明確に注意換気されている。
それを怠った。
反省してみる。
要因3つ
・あの路地裏は俺のアンテナでは危険ではなかった。
・財布をリードで繋ぎ膝横のファスナー付きポケットに入れ、ファスナーは固いので開き難い。
・ヤツを物ごいと思い、スリと思わなかった。
上記3つに対する要因は
・旅行し慣れたタイではどんな路地裏でもスリなどあわなかったので意識が楽観的になっていた。
・最近まで頑丈なウエストポーチを使っていたが煩わしくなってきたので軽量な財布に変えた。
・俺はお人好しなところがあり物ごいを邪険にできなかったりする。
白人などは少女だろうが 「 よるな! 」 とばかりに突き飛ばしたりする。
油断、過信、怠慢
ああ、何て愚かな...
しかし落ち込んでばかりもいられない。
ポジティブシンキング
3万円でいい教訓だ。
パスポート(持ってなかったが)、カード、スマホを盗られなくて良かった。
怪我もしてないし。
それしてもヤツの技術は鮮やかだったな。
その道で生きていくのだろう。
行く果てはのたれ死にか。
グッドラックを祈ってやるぜ。
でも後からジワジワくるのだろうな。
ヤツの顔、空の財布が脳裏に焼きついている。