犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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佐々木泉『墨戯王べいふつ』

2016年10月08日 | よみものみもの

達磨大師が梁の武帝と交わした問答の言葉、
「不識」(知りましぇーん、わっかりましぇーん)
の文字を団扇に作るために、
宋の三大書家である米芾(べいふつ)の字を使った。
http://blog.goo.ne.jp/su-san43/e/fe9eb38fb5dabee9c2acd4c1e3f8b826

米芾は行草で知られるが、実は小楷が得意だったそうだ。
大事に書いたので、あまり出回っていないとかなんとか。
古く晋の書家を尊び、下って唐の時代の書家への評価など、辛い。
ましてや、同時代の蘇軾や黄庭堅の書などはボロクソに言っているそうだ。

たくさんの書画を集め、史上初めて科学的な視点からの鑑定に優れた技術を持ったそうだ。
そして、臨摸(名画や名書を見ながら真似して書くこと)すると本物と見分けられないほどのものを
書いたそうで、それは後代の鑑識家にとってはひどく迷惑な話だ。

当時の書家や画家などの間では、所蔵する書画を物々交換する習慣があったという。
米芾はしばしば、借りた物を返さなかったということだが、
それは蘇軾や画家の王詵など、他の人もやっていたことのようだ。
みなさん書画を愛するあまり、おかしなことになっている。

そういった生き様を描いた漫画作品があるので、驚いた。
小学館のビッグコミックオリジナルで10数年前に連載していたそうだ。
中国の歴史ものと言えば、三国志などはあるが、
書家を中心にしたものは珍しいのではないだろうか。
しかも漫画。
一部の人には非常にウケそうだが、人気作品とまでは行かないだろう。
やはり、一巻にまとまる回数で連載は終わり、
コミックスも再版されている様子は無い。

名品を手に入れるために川に飛び込もうとするほどの
変わり者の米芾に、架空の登場人物を配して、
作品として面白い。
上述の蘇軾や王詵も登場する。
若くして帝位に就き、芸術に溺れて国を傾かせたという徽宗も、
本当にこんな容姿をしていたのではないかと思わせる。

良い作品だが、今頃ほめたところで古本しか出回っていないので、
ちいとも作家のフトコロのためにならないのが、残念。
子育ても一段落したであろう作者が、漫画界に復帰して
他の人の描かないような中国の歴史上の人物をネタにしてくれることを
願うばかりだ。

https://www.amazon.co.jp/%E5%A2%A8%E6%88%AF%E7%8E%8B%E3%81%B9%E3%81%84%E3%81%B5%E3%81%A4-%E4%BD%90%E3%80%85%E6%9C%A8-%E6%B3%89/dp/4091873219/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1475901420&sr=8-1&keywords=%E5%A2%A8%E6%88%AF


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