帝国の再生:ソビエト連邦で実際起こっていること(続き)
The Fatima Crusader Issue 38, Fall 1991より
Donald S. McAlvany
The McAlvany Intelligence Advisor(MIA) Sept./Oct. 1991 issue
結論
ソビエトの定義によれば、平和、民主主義そして社会進歩は資本主義を正確に表さない。他方において、世界共産主義(あるいはわれわれはそれを社会民主主義と呼ぶべきであろう)はその基本的な諸理想のうちに平和、民主主義そして社会進歩の諸前提を含んでいる。[注:平和は彼らにとって世界的な共産主義的抑圧であり、またすべてのレジスタンスの終焉である。]それゆえに、現在のソビエトの諸々の展開は厳密に、それのために拡張のよりよい機会を達成するための国の再編成と一致しているのである。将来には、社会民主主義者や民族的民主主義者を含む、共産主義あるいは社会主義の傾きを持った世界におけるすべての政治団体が一つの共通の世界運動のためにCPSUとのパートナーとなるであろう。
1990年第25回党大会が述べたように、「USSRは一つの単一国家から諸国家の友好関係への移行期にある」。この諸国家の友好関係は現在はソビエト連邦のうちにいない数億人の人民と今はUSSRのうちにいない大多数の諸国家を含むであろう。われわれは今日、現在のソビエト連邦よりは遙かに大きいであろう一つの新しい社会主義的-共産主義的集合体の誕生を目撃しているのである。専制君主によって支配されている国々において、王が死ぬとき、叫びが上がる:「王が死んだ--王様万歳」(新しい王を意味する)。現在の場合には、こう言われ得る。「帝国は死んだ--帝国万歳」(新しい拡張された帝国を意味する)。
ソビエトの人間たちはチェスの天才である(世界において最善)。彼らは東と西の間の連続する競争を巨人のチェス競技と見ている。試合の最終目標は王--それはアメリカである--を取る、あるいは詰むことである。しかし中間目標は女王(それは西ヨーロッパである)を取ることである。ひとたび女王、そしておそらく彼女の司教たち、ルークたち、あるいは騎士たち(すなわち;南アフリカ、フィリピン、おそらく韓国、等々)が倒れたならば、王(すなわち;アメリカ)は攻撃され易くなる。それは彼が倒れるまで単に時間の問題にしか過ぎないであろう。しばらくの間は、たとえソビエトのチェス名人たちが彼らのポーンたち、ルークたち、あるいは騎士たち(すなわち、バルト諸国、少数の東ヨーロッパの国々、そしてソビエト諸共和国のいくつかの国)を犠牲にしなければならないとしても、彼女の敵たちの女王(すなわち、西ヨーロッパ)を取るというより大きな利益にとって、現在の犠牲はそれに値するものである。しかしながら、このチェスの試合においてソビエトのチェス名人たちは彼らのポーン、ルーク、司教そして騎士のすべてあるいは大部分を取り戻したいと望んでいる。
IV.ソビエトの軍事的増強
「START[Strategic Arms Reduction Talks=戦略兵器削減交渉]条約をもってしてさえ、あなたがた(ソビエトの人間たち)は30分で合衆国を破壊する能力を持つであろう。」
「われわれの外交政策の効力はわれわれの国の力--その構成部分はわれわれの軍隊である--によって確保されている。」
ソビエト連邦において起こっている信じられないくらいの政治的大改革にもかかわらず、ガルガンチュア的なソビエト軍事機構は無傷のままであり、実際に変化していない。KGBはソビエト軍の指揮下に移るであろう。そのことはいずれの組織の役割の縮小をも意味しない。ソビエト軍は今なお500万人の軍人、25万人のSpetznaz特殊部隊、そして150万人のKGB兵士そして/あるいは職員を持っている。彼らは今もなお、通常兵器ではアメリカの5倍、戦略核弾頭ではアメリカの5倍から6倍の軍備を持っている。彼らは今なおアメリカをターゲットにした2万発の核弾頭を保有している。もし「強硬派」のクーデタが本物であったとしたら、ソビエト軍はこれらの核ミサイルをアメリカに対して発射することができたであろう。そしてわれわれは彼らに対して無防備である。われわれは、担当している者--「強硬派」あるいは「改革派」--にかかわらず、それらの一つでさえ止めることはできない。
A.ソビエトの軍事教育と教え込み
ロシア革命以来、ソビエト連邦は軍隊を社会主義の利益を守るための最も重要な力だと考えてきた。ソビエト軍隊は「科学的共産主義」の最近の諸理論に一致して教育されており、彼らの装備は一番最近の諸科学の発展に従って更新されている。西側諸国の兵士とは違って、ソビエトの兵士は彼の祖国にまず第一に奉仕するのではなくて、ソビエト連邦の共産党に彼の第一の忠誠を誓い、その義務を負うのである。このことはニカラグアのサンダニスタ軍における共産主義者サンダニスタたちについても同じように真である。
統制し、共産主義のイデオロギーを教えるために共産党統制委員と政治指導者たちが各軍隊単位に配属されている。すべてのソビエトの人間たちは軍隊での訓練を経験し、軍隊で奉仕する。戦争技術、戦略そして異なった種類の装備の操作は別にして、訓練は大量の政治的および愛国的教育を含んでいる。
大愛国戦争(第2次世界大戦)の間、すべての教育とプロパガンダはナチスに反対して教えられていた。しかしナチスの死と共に、ソビエトの人間たちは彼らの視界をドイツのナチズムと日本の軍国主義からアメリカの帝国主義へと再訓練した。不幸なことに、現在の破廉恥な偽情報にもかかわらず、われわれアメリカ人は相変わらず第一級の敵である。そしてソビエト兵士の基礎的教育はアメリカ兵士に対する彼の優越を証明することに向けられている。
第2次世界大戦以来過去46年にわたって、ソビエトの人間たちは政治的教え込みの信じがたいほど洗練された、包括的なそして徹底的な体系を発展させてきた。それは5歳の子どもたちから始まり、若い成人になるまでずっと(学校の内外で)続けられる。この教え込みの二つの主要な組織はコムソモール(青年共産主義同盟)とDOSAAF(陸海空軍との協力のための自発的協会)である。コムソモールが政治的教え込みにおいて手段的なものであるのに対して、DOSAAFはソビエト青少年を戦争のために準備することにおいて最も重要な組織である。DOSAAFはCPSU中央委員会軍事部門およびUSSR国防省の下で働いている。そして16歳から18歳の間のすべての青年男女の義務的前軍事訓練を行っている。ソビエト連邦の青年人口の大部分はDOSAAFにおける彼らの会員身分を持ち続けている。1988年にはDOSAAFの会員は1億700万人を超えた。
ソビエト連邦においては、全人口の政治的教育、しかし特に軍隊そして徴兵年齢あるいは徴兵年齢前の青年の政治教育は最も重要なものである。ただ政治的に教え込まれた兵士だけが社会主義国家の防衛において戦い、そして英雄的に行動する準備ができているのだとうことが強く信じられている。USSRのすべての青少年が5歳から20歳までに受けるその種の反アメリカ政治的教え込みでよく見かけるタイプは、ドゥルジニン(M. I. Druzhinin)将軍(DOSAAF教育における指導者)による若者は隊列において男になるという書物からの次の章句である。
「合衆国の帝国主義は前代未聞の軍備競争を引き起こしてきた。それは最も野蛮な大量破壊兵器でもって生意気にもガラガラ音を立てている。それはその力でもって解放運動と平和のための人民の闘争を踏みつぶそうと渇望している。それは人類を核戦争の破壊的突発へ引きずり込もうと脅迫している。それはわれわれの惑星の全文明を燃やして灰にする能力を持っている。」
「ソビエト軍が単にわれわれの母国の試験済みの見張りであるばかりでなく、また地球上の平和の保証人でもあるということは無益なことではない。もしわれわれの陸軍や海軍が彼らと同じように強力でなかったならば、もしわれわれが高度の技術、軍事的熟練、不屈の道徳的精神の完全な混合を自分たち自身において示しているそのような戦闘能力を所有していなかったならば、反動的な帝国主義者のグループ、特にアメリカ合衆国は、ずっと以前に、彼らの黒い夢想--政治組織としての社会主義の滅亡--を実現するために、ソビエト連邦および他の社会主義諸国に対する攻撃を行おうと試みたであろう。」
「ごく最近のアメリカの大統領たちがわれわれの祖国に対する核攻撃の計画を承認した、そしてそれもただ1度や2度ではない、ということは今では周知の事実である。これらの計画はコード名、『トロイア人』、『ドロップショット』、等々を持っていた。ただソビエト兵士の強力な報復能力と攻撃者の打撃に一つの破壊的な打撃でもって答える準備態勢だけが彼らの狂信的な計画を粉々にしたのだ。」
[編集者注:」これはソビエト指導部がアメリカの友人でありパートナーである振りをしているときでさえ、ソビエトの青少年がそれでもって教え込まれているこの主の反アメリカ・プロパガンダのほんの小さなサンプルである。]
最近、軍隊の中により政治的なイデオロギーを注入する傾向はより強くさえなった。与えられる理由は二つの社会体系--帝国主義と社会主義--の間の鋭い敵対関係の極端に複雑な諸条件の具体化である。オレグ・A. ベルコフ(Oleg A. Bel'kov)が祖国防衛の準備完了という書物において書いたように、「未来の歴史家たちは、勝利の好機を保証するために責任ある諸個人が機関銃の数や大砲の台数よりも、もっと勤勉に軍隊における現在の共産主義者たちの数を数えていたことを見出して驚くであろう。」言葉を換えて言えば、政治的教え込みは武器よりももっと重要なのである。
ソビエト軍指導部はアメリカ帝国主義者たちとの戦争が不可避であると信じている。彼らの書き物において、彼らは絶えず「不可避の来るべき戦争」に言及する。「彼らはただソビエト連邦だけが、その軍隊をもって世界を救うことができる。」ドゥルジニン将軍がソビエトの見解を説明しているように:
「帝国主義がその反人間的、反動的そして軍国主義的本質と共に存在するかぎり、われわれの祖国に対する軍事攻撃の危険は依然として一つの事実のままである。近年、そのような攻撃の危険は特に増大した。われわれはまず確実である攻撃をかわし、国家の安全を信頼に満ちて保証することができるように十分に軍備を整えなければならない。経験は、この問題をうまく切り抜けるために準備があらかじめ始められなければならないということを示している。われわれは一撃を与えるために雷を待つことはできない。われわれはすべての年齢の青少年に頼りながら始めなければならない。われわれは時間を無駄にすることはできない。そのような損失は代わりのないものである。そして戦争の間には大量の血を犠牲にする。用心せよ、友人たちよ、そしてあなたたち自身の結論を出しなさい。」
[編集者注:西側にいるわれわれはわれわれ自身の結論を出さなければならない。]
ソビエト軍事教育および教え込みにおけるもう一つの不吉な展開は18世紀ロシアの傑出した将軍、軍事的天才そして戦略家である陸軍元帥アレクサンダー・スヴォロフ(Alexander Suvorov)の書き物、戦略および戦術の復活である。スヴォロフの戦略および戦術に関する著作(彼のライフワークである征服するための科学においてスヴォロフによって最初に出版された)が最近再出版され、書き直された。そして数十万部がソビエト軍と政治家階層に広く配布されている。スヴォロフの迅速性、機動性、大胆な攻撃、等々の上出来の戦術は、孫子の戦術が数十年にわたってソビエト軍とKGBにとってのバイブルであったのと同じように、USSRにおいて広く研究されている。USSRにおけるスヴォロフの復活は一つの新しいそして遙かにもっと攻撃的なソビエト軍の戦略を特徴づけることができるであろう。
B.ソビエトの武器獲得
ソビエトの国内における財政的および政治的諸問題のすべてにもかかわらず、次の分野の軍拡と戦争準備は遅れることなく続いている:
1)この3年間(1988年から1990年)に、8つの主要武器カテゴリーにおいてソビエトはその生産高がわれわれを上回った。
2)ゴルバチョフが権力の座にあった最初の6年間、ソビエトは9つの別々の武器カテゴリーにおいてアメリカの生産高を上回った。
3)ゴルバチョフはKGBとソビエト軍の予算をそれぞれ20%および37%次の12ヶ月のために増やしたばかりである。USSRは(タイムズ・マガジンによれば)そのGNP[国民総生産]の50%をその軍事/産業複合体に対して費やしている。アメリカは6%(およそ4.5%そして次に3.5%下落)費やしている。
4)ゴルバチョフはUSSRの600の軍事工場の消費財工場への大量転換を約束した。ただ6つだけが転換した。
5)ソビエトは東ドイツに戦術核兵器および化学兵器を置いていた。そして今もなおそれらを維持している。東ドイツには、彼らはまた38万人の軍隊を今なお駐留させている。彼らはその地域の想定された独立にもかかわらず、東ヨーロッパに50万人の軍隊を今なお持っている。
6)ソビエトは大西洋からウラル地方までの地帯に今なお60から70の現役師団そして30の動員師団を持っている。
7)ソビエトは今やモスクワの周囲に75の深層地下市民防衛構造を完成させた。--その構造の各々はペンタゴンの大きさである。なぜか?彼らはわれわれが第一撃を始めたくないことを知っている。しかしわれわれはSLBM搭載の潜水艦から報復するであろう。
8)クレムリンは18基の新しい軌道可動型第一撃SS-24ミサイルを配備したばかりである。そしてそれらを列車に乗せた1100ヤードの長さの発射台に据えた。彼らは現在3000マイルの射程距離のあるSS-20ミサイルをキューバへ移動させている。
9)軍ジャーナル(1991年8月)は、大量の道路および軌道で動かせる核ミサイル、潜水艦搭載、地上および空中発射核ミサイルを含む、ソビエトが今充足している多くの新しい通常核および戦略の展開と配置のリストを上げている。
10)ソビエト政府は最近、500万人の徴兵年齢の学生たちのための兵役免除を撤廃した。これらの学生の多くあるいはすべては今やソビエト軍の兵役につかせられ得るであろう。--ソビエト軍は500万人から1000万へと倍になることができるであろう。
ソビエト「改革派」が平和、協力そしてパートナーシップを語っている間に、彼らの軍隊は全力を挙げての拡張と近代化計画を続け、戦争の準備をしている。彼らは平和を語っている。そして国として戦争体制へと動いている。
C.アメリカに対するソビエトの核戦争計画
合衆国に対するソビエトの全般的核戦争計画(ペンタゴンによってRISOPと呼ばれている。Red Integrated Strategic Operations Planから)は2500の標的をカバーすると信じられている。おおよその優先順位におけるそれらのうちの主たるものは:
1)1000のミニットマンとMX ICBMサイロ、それらのサイロのための100のICBM発射コントロール・センターそして別の50の命令およびコントロール施設、そして核兵器貯蔵所。少なくとも1150の「強化された」--すなわち、要塞化した--兵器施設標的の総計となる。これらは少なくとも2発そしておそらく3発のソビエトの弾頭によってそれぞれ命中させられるであろう。
2)別の54の核爆撃機と爆撃機発進基地そしてミサイル発射潜水艦を修理する少なくとも3つの海軍基地。これらは割合に「地味な」"soft"標的であるけれども、暴走したものやミサイルが無力化されることを確実にするよう多様な攻撃のために標的とされるであろう。
3)およそ475の他の海軍基地、飛行場、港、ターミナルビル、基地、貯蔵所、そして通常軍事力ならびに核軍事力に関連した他の軍事基地。
4)軍事機器において年間100万ドルあるいはそれ以上の国防省契約を持つおよそ150の産業施設。
5)国の電力の70%を産み出している325の発電所。
6)国の石油製品の70%を造り出しているおよそ150の精油所。
7)およそ200の「地味な」経済的通信、輸送、化学および市民的指導層の標的。
最後のこれら4つのカテゴリーにおいて、多くの標的は十分に近接して一緒のところに位置しているので、それらを破壊するのにただ1発の核兵器だけが必要とされるであろう。
D.ただ強者だけが生き残る
以下の論考は筆者のよき友人、前NATO軍最高司令官サー・ウォルター・ウォーカー将軍から自由世界の人々への一つの警告である。彼は英国軍の英雄であり、世界の最も偉大な地勢戦略の専門家である。彼はソビエトの戦略と戦術に関する何冊かのすぐれた書物を書いた人であるが、インドネシアのボルネオ侵略やソビエトのアフガニスタン侵略をあらかじめ警告した。筆者と同じように、ウォーカー将軍はソビエト熊が戦争の準備をしていると見ている。
私は、前NATO軍最高司令官として、あなたたちに行く手にある非常に危険な脅威について告げることは私の義務であると考える。それは、われわれが今最大の戦略的欺瞞の一時期にいることは確かだと私は知っているからである。おそらく全歴史の中で私が、次の10年のうちに行く手にある未来についてあなたたちに警告することなしにこの機会を見送ることを許すべきでないと感じている時期なのである。
私は冷戦はまだ終わっていないのであって、ただ一時的な鎮静の状態にあるに過ぎないということを最も強調して言う。例を挙げよう:多数のソビエト市民が今なお食物を求めて列を作っているにもかかわらず、ソビエト連邦は単にイラクだけでなく、アフガニスタンにおける共産主義体制やキューバやリビアのようなソビエトの衛星諸国に武器を供給し続けている。そうしているときに同時に、ますます多くの金が、彼らが自分たち自身の軍隊のために切った大きさのケーキの中へ注ぎ込まれている。
モスクワとの取引において、危険はますます不安にするようなものであり、はるかに大きいものであろう。普通の人は、ソビエト連邦が今なお西側に脅威となり得る軍事機構を維持するためにその資源のうちの莫大な比率を割いているということを告げられて来なかった。
一例として挙げれば、彼らの海軍は現在主要な再建計画に忙しくしている。海軍は65000トンのティビリシ--最初の主要空母--を進水させた。[西側の]一般大衆はゴルバチョフが6週毎に1隻の新しい原子力潜水艦を進水させていることに気づいていない。この海軍増強の目標はアメリカとヨーロッパとの間の戦略的結びつきを切断し、ペルシャ湾海域とアフリカ・ホーン岬周辺のシーレーンを支配することである。海の支配なしのNATOは無意味である。
「彼のすべての困難のただ中でゴルバチョフは今や将軍たちやKGBの主人たちの執拗な要求でソビエト軍事予算を37%も増加させた。これはこの国のGNPの40%に相当する。彼がこの増加を行った同じ日に、われわれの国防総省長官は全イギリス陸軍の4分の1に当たる4万人のイギリス軍が削減されるであろうと告知した。これは自殺的な決定である。さらに、西側の軍縮と工業技術移転はゴルバチョフと彼の強硬派の軍指導者たちが視野に入れていることである。彼と何らかの大きな取引をするということは単に愚かなことであるばかりでなく、大きなペテンである。
「ソビエトの軍事的脅威は消失したのでは「ない」。NATOの中立化は長い間ソビエトの最も重要なグラスノスチ欺瞞の目標の一つであってきた。戦車の生産は古い戦車に取って替わるものとして弱まっていない。そして彼らはまたいくつかの新しいヘリコプター、1機の巨大な輸送機、他のヘリコプターを撃墜するよう設計された戦闘機そして高性能対戦車ヘリコプターをも導入した。
「ソビエト経済の崩壊にもかかわらず、--クレムリンは--軍からの圧力の下で--軍事予算を実際に420億ドルから1600億ドル以上にまで増加している。それとは対照的に、わずか75億ドルが教育のために、そしてわずか45億ドルが保健のために取って置かれている。しかし、GNPの40%以上を消費していてさえ、この額は軍のエリートを満足させるには十分ではないであろう。もしソビエト連邦における経済的破局があるとするならば、そのとき確かに西側はバターが銃の前に来なければならないと主張すべきである。西側からのいかなる援助も厳格な条件を設けなければならない。真っ先の条件はソビエト連邦およびバルカン諸国における自由と独立である。
1990年11月19日のヨーロッパ通常軍(Conventional Forces in Europe=CFE)条約の調印にもかかわらず、ソビエトはすでにおよそ17000台の戦車とそれにプラスそれ以上に多くの装備[すなわち、総計7万の装置]をウラル山脈の反対側--条約の地理的区域を超えて--移動させてた。そしてハンガリーからの数機のソビエト航空機がソビエトの海軍の色に塗り替えられた。これもまた条約の外側である。
「最近、NATOのニュールックについて多くのおしゃべりがあった。人はそれらの言葉を読み続けている--私は『今、冷戦が終わったからには』を引用する:私があなたに告げていることに照らして、私は最も強調的に、冷戦はまだ終わっていないのであって、ただ鎮静の状態にあるにすぎない、と言う。厳然たる真実は恐怖に駆られたKGBが強化され、拡張されているということである。昨年、アメリカのFBIは30人の外国スパイを逮捕したが、そのうちの28人がKGBであった。これは新記録である。今日、KGBは150万人の人々と600万人の情報提供者を雇用している。そしてソビエト経済の危機にもかかわらず、KGBはその最近の予算において20%の増加を受けた。
「私は、もしわれわれがしっかりと立ち、危機を防がないならば、証明できる真実はクレムリンの利己的な卑下のポーズとは反対に、ソビエト連邦は崩壊に瀕しているのではないのだという赤裸々な事実をあなたに残す。他方において、西側の防衛力は崩壊に瀕しているのだ。
E.アメリカ人は軍縮へと駆り立てられている
「見せかけの」ソビエト帝国の解体、共産主義の死、冷戦の終結そして「自由な改革者たち」の再起(すなわち、USSRにおける「民主主義の諸勢力」)は合衆国およびヨーロッパの政治的および軍事的指導者たちをして彼らの軍縮計画を加速せしめる原因となっている。ブッシュは合衆国核ミサイルをヨーロッパから撤収した。ヨーロッパから合衆国の戦車、飛行機そして軍隊を撤退させている。実際、われわれの戦車、潜水艦そしてF-16の生産ラインを操業停止している。43箇所の合衆国国内基地、79箇所のヨーロッパにあるアメリカ軍基地を閉鎖している、そして合衆国の非ヨーロッパ軍事施設の535を閉鎖、フィリピンにあるわれわれの巨大な空軍基地(クラーク・フィールド)を閉鎖した。合衆国陸軍部隊を35万人、合衆国海軍を50%削減、これから先5カ年にわたって合衆国軍隊の全体の大きさを25%削減する、そしてアメリカの91の重要な戦争物資の戦略的備蓄品を40%削減する計画をしている。
合衆国軍隊の消費傾向は1996年で国防にGNPの3,6%しか費やさないであろうというほどのものである。(第2次世界大戦前--アメリカが非常に軍縮をし、防衛力不足、そして真珠湾攻撃をされたそのとき--以来、最低のレベルである。)その一方で、ソビエトはその軍事費にGNPの40-50%を費やしている。
ブッシュとゴルバチョフは、合衆国とソビエトが核兵器工場を30%まで削減すると想定されているSTART条約に調印したばかりである。しかし、ソビエトは1962年の核実験禁止条約、1972年のABM条約、1987年のSALT I、SALT IIに関する条約、INF条約、1991年のヨーロッパにおける通常兵力条約で不正をして騙した。そして彼らは同じように新しいSTART条約でも不正をして騙すであろう。それは合衆国にとっては一方的な軍縮に等しい。なぜなら、われわれは条約を固守するであろうから。そしてソビエトはそうしないであろうということをわれわれは知っているからである。
一方で、合衆国軍縮折衝者リチャード・バート(Richard Burt)によれば、ソビエトは現在5つの新しい戦略核体系を開発し、配置している。STARTの下でソビエトは「うわべは」彼らの大型ミサイルを半分に削減するであろう--しかし軍事専門家たちは残されるものはより致命的なものであろうと報告している。なぜなら、SS-18はより大きな精密度と破壊力をもって近代化されてきたからであり、1基あたり10発よりもむしろ14発の弾頭を装着することができるからである。われわれはそのような強力な第一撃ミサイルを持っていない。
われわれはまた可動型ミサイルを持っていない。彼らはSTARTの下でそれらの数字を倍増させた。われわれがMXとミニットマンについて話し合った間に、クレムリンは軌道可動型SS-24と道路可動型SS-25を配備した。そしてSTARTの下で次世代[ミサイル]を開発することを許されるであろう。検証は実際上不可能であろう。砂漠の嵐作戦中に、われわれはサダムのスカッド[ミサイル]を発見することができなかった。それゆえ、イラクよりも20倍から30倍も大きなソビエト連邦の一地域にある戦略ミサイルをわれわれが発見できるとどうして考えられようか。
1991年6月7日に、合衆国下院議会は、ソビエトが1989年および1990年に長距離爆撃機において140対1でわれわれよりも過剰に生産したという事実にもかかわらず、注文中の14B-2ステルス爆撃機の完成後に合衆国の爆撃機の生産を終了することを可決した。合衆国[下院]議会はまた(ブッシュ政権の勧告で)--ピースキーパーICBMの最大限生産と配備を50基のミサイルに制限し、そして「信頼性テスト」のためのミサイルをたった12基に制限することを可決した。これらは、ソビエトが1989年および1990年にICBM生産において265対21でわれわれより過剰に建造したという事実にもかかわらず削減しているのである。
下院はまた(ブッシュ政権の勧告で)ソビエトが1989年および1990年に潜水艦において24対14でわれわれよりも過剰に建造した、そして現在1隻の新しい核潜水艦(1隻30億ドルの値段)を6週ごとに--1年で9隻になる--建造中であるという事実にもかかわらず、合衆国潜水艦生産を1年に1隻へ削減することを可決した。下院はまた(ブッシュ政権の勧告で)合衆国SLBM(Submarine launched ballistic missile= 潜水艦発射弾道ミサイル)の生産を劇的にわれわれの小型化した潜水艦艦隊に匹敵するところまで削減することを可決した。これは、ソビエトが1985年から1988年までのSLBM生産において375対107の割合で、そして1989年と1990年には165対103の割合でわれわれより過剰に建造したという事実にもかかわらず、のことでである。下院はまた(ブッシュ政権の勧告で)ソビエトが1989年および1990年に1300基のSRBM(short-range ballistic missile=短距離弾道ミサイル)を建造したという事実にもかかわらず、短距離弾道ミサイル生産ゼロを可決した。そしてソビエトのICBM、SLBM、SRBM、潜水艦および爆撃機の連続した非常に高い水準の生産にもかかわらず、下院議会は、--そのような諸々の戦略的兵器に対する保護のための--戦略的国防主導権(Strategic Defence Initiative=SDI)予算を40%引き下げることを可決した。ブッシュ政権は46億ドルを要求した--下院議会は27億ドルを可決した。
下院軍務委員会および下院認可委員会の両方(これらの「産み落として/閉じる」("builddown/shutdown")法案を送付した)において、これらの戦略的兵器体系の生産を終わるあるいは削減する有力な理論的根拠は:気にするな、冷戦は終わったんだ。われわれは勝った。平和が手許にある。われわれはゴルバチョフを信用する。われわれは社会的計画のため(すなわち票を買うため)の平和の配当金を必要とするのだ。不幸なことに、物欲しそうな考え方のこの同じ態度が上院、ホワイトハウス、国務省、体制側のメディア、そして一般大衆の多くにも拡がっている。
弁護士で防衛顧問のジム・ジラード・ジュニア(Jim Girard Jr.)は最近こう書いた:「冷戦が終わった、そしていわゆる平和の配当金は真実であると考えている多くの人々は、彼らが、少なくとも軍備競争の半分--ソビエトという半分--が今なお統制を失って荒れ狂っているということを見失うほどに絶望的である。」
これらの数字のうちに内在している危険を認めることを拒否する人々はジョージ・オーウェルが「恐るべきものを信じない意志」と呼んだものの生きた見本である。この場合における「恐るべき」事柄はもちろん、ソビエト大統領ミハイル・ゴルバチョフが心の内に悪しき目的をもって戦略兵器における巨大な増強を意図的にそして熟慮して追求しているという考えである。
いずれにもせよ、その厳しい数字はUSSRの貧困に打ちひしがれた人々が爪楊枝やトイレットペーパーの便宜も与えられることができない時期の間に、クレムリンはどういうわけか、いわゆる「戦略的三種の神器」--ミサイル、爆撃機そして潜水艦--のすべての部門において合衆国を巨大な差で追い越して多く生産し続けるほどにその欠乏した資源を再構築する(ペレストロイカ)諸々の方法をなお見出したのだ。
ゴルバチョフによるそのような断固とした戦略兵器増強に直面して、われわれとわれわれのNATOそして日本の同盟はUSSRに対する大規模な経済援助を求めるいかなる「大バーゲン」提案をもでたらめに非常識なものとして拒絶すべきである(すなわち、年毎に350億から500億ドルがゴルバチョフによって要求され、これを書いているときに、合衆国の高官たちのグループで真剣に考えられている。(続く)