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バイオ・微生物実験好きな管理人による、研究仕事、日常、実験技術や理科系ネタのブログ

鯨油の資化細菌と共生

2006-02-27 20:28:22 | 微生物との共生
世の中には、まだまだ知らない生き物がいるものなのですね。

新種か、鯨の骨にゴカイ 相模湾で海洋機構が採取(共同通信) - Yahoo!ニュース 2月22日18時29分更新
海洋研究開発機構は22日、静岡県熱海市沖の相模湾に沈んだ鯨の死骸(しがい)から、新種とみられるゴカイの仲間を発見したと発表した。23日から神奈川県藤沢市の新江ノ島水族館で公開する。
 同機構がことし1月、無人探査機ハイパードルフィンで、深さ約900メートルの海底に沈んだマッコウクジラの骨に取り付いているのを採取した。
 この仲間は、いずれも鯨の死骸から見つかることから「ゾンビワーム」とも呼ばれ、2004年に米カリフォルニア沖で見つかったのが最初。これまでに世界で3種の報告がある。日本では同機構が04年に鹿児島県南さつま市沖約10キロの東シナ海でやはり鯨の骨から見つけ、別の新種とみて調べている。


文中、2004年に見つかった「ゾンビワーム」についての英文記事はこちら→'Zombie worms' found off Sweden
さて、このゾンビワーム、なんだか変な生き物らしい。
その名の由来は鯨の死体に取り付いているように見えたから。

探せど探せどメスしかいない、と思っていたら、メスはそのヒダヒダに小さな小さなオスを内蔵していた、とか。
そして、その生体構造はもっと不思議。
身体には管しかなく、どうやって栄養を得ているのかと思いきや、鯨の骨になっている部分は根っこのようになっており、その部分に細菌を共生させているのだとか。(写真を見るとわかると思いますが、すごく内蔵っぽい
その細菌は油を分解する能力があって、そのおかげで骨の中の油を栄養にしつつ、この「ゾンビワーム」は生きているらしい。
油を分解する能力があるってことはリパーゼとか持ってるのかな?
油が分解できると、廃油の浄化槽とかで使うことができるんですよ。
どんな細菌なのか見てみたいなぁ。培養が難しそう。

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植物病害防除に細菌

2005-10-09 21:58:02 | 微生物との共生
ついさっきまで、明日は仕事だと思っていました。
(´-`).。oO(そういえば・・・・・・・・・)
金曜日>あ、来週月曜って祝日だったのね・・・
って思った気がするorz

そんなボケボケを吹き飛ばすように、久しぶりに生物なネタにします。

土着性蛍光細菌Pseudomonas fluorescensという細菌がいます。
緑膿菌Pseudomonas aeruginosaの親戚ですが、コイツがなかなかやってくれるらしいです。

P.fluorescensは、土壌中で他の微生物に負けないように、周囲に抗菌物質を撒いているそうです。
そんなP.fluorescensは、(もちろんその他の有益な微生物もかもしれないけれど)植物に病害をもたらす細菌やカビの生育を抑制することができます。
というわけで、積極的にこのP.fluorescensを植物に与えて、病害を防ぐという栽培方法を行う試験が行われていたります。

日本では、P.fluorescensのMVP株、EG-1053株、ina frostban 氷核活性マイナス株が生物農薬(生きている物が農薬になる)として指定されていますので、実際に使用されている方もいるかもしれません。
実際の効果の程はどうかというと、元もとの土に病害微生物が多くいる場合には競合に勝つことが難しいようです。
そういう理由から、養土を担体(支持体)にして菌を定着させておき、それを栽培に用いる方法が有効と言われているようです。

2005年7月号のNatureに、P.fluorescensのゲノムが解読されたという論文が掲載され、そこでは新規なタンパク質をコードしたゲノムや、界面活性剤をコードしたゲノムが示されている様子です。

化学物質を用いずに生物をもって生物を制する栽培方法は、水耕栽培などでも多く使われるようになってきました。
有効的に、誰もが安心して使用でき、見ている側も安心できる、そんな栽培方法の認知度が高くなると良いですね。

こりゃあ駄目だ

2005-07-05 21:05:22 | 微生物との共生
あまりにも放っておきすぎる。すみません。

なんというか、元気なんですけど、やる気ないんですよ。
仕事も生活もケアレスミスばっかりやらかしていて自分が嫌になるんですよ。


まぁ。。終了しているブログなわけではないので、今日は2つニュースを紹介。

一つは、理研のチームが根に瘤を作る細菌「アグロバクテリウム」が、どのようにして植物の細胞の増殖を活性化させるか解明したと言う記事。
「植物の敵」の戦略解明 効果的な農薬作りへ(Yahoo!ニュース 共同通信)
以前に、窒素固定細菌の話をしましたが、その細菌は、植物にとって有益な窒素を供給する役割を持っています。この関係は「共生」です。
このアグロバクテリウムというのは、共生ではなく、「寄生」になります。
植物に感染すると、その植物は栄養を奪われ、生育不良となります。
つまりは植物にとって病気をもたらす植物病原菌です。

アグロバクテリウムのうち、アグロバクテリウム ツメファシエンス Agrobacterium tumefaciensは、植物細胞のDNAと形質転換(遺伝子の中に入り込んだり組み変わったりする)をすることで有名で、結構早い時期から遺伝子組み換えテクノロジーの一つの方法として利用されていた細菌です。
そのアグロバクテリウムが植物細胞の根で根瘤を作るとき、植物の葉緑体にDNAが入り込んで増殖が活性化される仕組みを解明したそうです。
そのDNAには、植物ホルモンを合成する情報が入っているそうで、アグロバクテリウムがもともと持っているDNAなのだそうです。


さて、2つめ。捏造関連です。
日本学術会議参加の113学会で不正行為(Yahoo!ニュース 時事通信)
役員会で話にのぼった事実だけを対象に調査。

■5年間の間に不正があった学会・・・113学会が「ある」と回答

■不正の内容
・論文の二重投稿 67学会
・論文やデータ盗用 23学会
・データのねつ造、偽造 6学会

■意見
・学会の名前を利用した商売

・・・ようやく取り締まることにしたわけですね。
役員会だけでこんだけ出てるんですから、もう少し自覚しましょう、研究者。
役員会にでていない話はどれだけあるんだ?って感じですよね。
しかもこれは学会単位でカウントしてる。
論文単位になったら一体どれだけの数になるのでしょうか。

共生する生き物たち3 ~昆虫と微生物

2005-02-21 20:27:57 | 微生物との共生
共生の第3回です。(1回目(2月15日)2回目(2月18日)

今日は昆虫と共生する細菌の話題。
昨日のゴキブリフェロモンといい、昆虫続きですね。
昆虫は全くの専門外なので、もしも間違っていたら、是非ご指摘ください。


昆虫は微生物と共生している場合が多いことは、結構有名な話です。
面白い記事としてあげておきたいのは、2004年、アブラムシが吸汁する植物を決めているのは、その内部に共生している細菌PALSUであるという発表です。((独)産業技術総合研究所 詳しい記事についてはここを参照

さて、一番有名なシロアリの例を。

シロアリというのは、樹を食い荒らす、害虫と思われがちですが、実は、森林にとって重要な役割を担っている昆虫です。
シロアリは、分解されにくい樹の成分、セルロースを分解して、無機物にしてくれるという大役をこなしています。

しかし、シロアリ自身はセルロースを分解する能力は持っていません。
…この流れ、このブログではおなじみになってしまって、とってもわかりやすいですね。(笑)
そうです、セルロースを分解しているのは、シロアリと共生している多鞭毛虫という原虫なのです。
シロアリと共生する多鞭毛虫は現在まで8属に定義されていて、その中でもセルロースを分解する主役といわれているのはTrichonymphaという原虫(原生動物)。
シロアリは、Trichonymphaが消化したセルロースをエネルギーとして利用し、反対にTrichonymphaは、シロアリのホルモンを耐久性のある細胞に変化する時に利用しています。

そしてなんと、ここでも共生のカスケードは存在しています。
多鞭毛虫は、自身の共生細菌であるスピロヘータ(螺旋(病原)細菌の総称。ちなみに私のハンドル名、spirillumは螺旋型の菌という意味)にセルロースを分解してもらっているのです。


こういうことを考えていくほど、地球環境と言うのは、微生物の力がなければ支えていられないんだな、と思わせてくれます。
まだまだ色々な微生物が未発見で残されていると予想される状況の中、どんな微生物があったら面白いのか想像してみるのも楽しい。
結構これ面白そう、と思うと意外と発見されいたりするものですよ。
驚きますけどね。(笑)


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共生する生き物たち2~レクチン介在性、動物と微生物

2005-02-18 20:15:49 | 微生物との共生
共生の第2回です。(1回目はここ
えーと、今日もレクチン介在性なのですが、どうしてこういう話題になるかと言うと、つまりは私がレクチンに興味があるからなのです。(笑)
学生の頃はレクチンに関連したタンパク質の分析や、クローニングをしていました。
(それからもう何年もたつけれど、レクチンの働きはとても面白いと思う気持ちは全然衰えません。)

今日は、動物と微生物の共生関係です。
動物は動物でも、一見動物には見えない「サンゴ」をターゲットにしてみます。

サンゴは、刺胞動物であるサンゴ虫が多数集まって群生しているものです。
このサンゴに寄生している微生物が「渦鞭毛藻」と呼ばれる、植物と動物の中間の存在である微生物です。
植物と動物の中間の微生物と言うのは、非常に有名なものとして「ミドリムシ」がありますが、葉緑体を持ち、細菌のようでありながら炭素源を光合成で作り出すことの出来る微生物。
レクチンはサンゴが持ち、渦鞭毛藻がそのレクチンに結合して共生関係が成立しているようです。
サンゴ虫の細胞の間に渦鞭毛藻がいます。

以前紹介した、マメ科植物に窒素固定細菌が供給する窒素化合物のように、サンゴに渦鞭毛藻が供給しているものとは何でしょう?

勘のいい方ならお気づきかもしれません。

サンゴは水中に生活しながらも動くことはありません。
しかしサンゴは動物なのです。
動物たるもの、酸素が無ければ生きていけません。

あれ?でも「サンゴは酸素を作り出す」なんて言葉、環境保護とか何とかで聞いたことあるよ?

そうですねー、よくそんなフレーズは環境保護で出てきています。
でも、サンゴは酸素を作り出す葉緑体のような器官はもっていません。
そこで出てくるのが渦鞭毛藻。
渦鞭毛藻は葉緑体を持ち、光合成が出来ます。
光合成が出来ると言うことは、二酸化炭素を吸収し、酸素を排出する活動をしています。
サンゴは、水中で生活するために渦鞭毛藻がつくる酸素が必要なのです。

サンゴと共生している渦鞭毛藻の名はSymbiodinium microadriaticum (Zooxanthella microadriatica)。
サンゴのほかにも、貝や、先日紹介した星の砂:有孔虫とも共生したりします。

さて、驚くべきなのはその渦鞭毛藻。
渦鞭毛藻はその内部に様々な葉緑素を持つもの(藻類)を共生させている場合があります。
マメ科植物が窒素固定細菌を取り込んで、細菌がバクテロイドと変化させるように、渦鞭毛藻は内部に藻類を取り込んで、光合成をさせているのです。
そのおかげで渦鞭毛藻は幅広いスペクトルでの光合成が可能となっています。

サンゴ礁=サンゴ虫(渦鞭毛藻(藻類))の群生
次々と共生がカスケードしているこの関係、面白いです。


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共生する生き物たち1~レクチンの観点から~どちらがどう選ぶ?

2005-02-15 20:06:34 | 微生物との共生
共生、と聞くと思い浮かべるのは何ですか?
生き物同士が共生しあっている関係と言うのは、自然界に幅広く存在しています。
身近な例で言えば、人間と腸内細菌は共生していますし、皮膚に常に存在している常在菌とも共生しています。

さて、今日のタイトルは共生する生き物たち1~レクチンの観点から
実は、共生する生き物たちの間には、レクチンがとても重要な役割をしています。
これまで、このブログでレクチンについて何度か触れています。(ウィルスレクチン2(2月3日)菌とウィルスレクチンの共通点とは(1月5日)

レクチンとは、特定の糖を見分けて結合する性質のあるタンパク質のことを言います。(大雑把に言うと)
ウィルスや菌は感染する時に宿主の細胞から生えたようになっている糖鎖を、「宿主の糖鎖だ」と見分けてくっつくことが出来るわけです。
そのときには「感染の機構の始まり」として紹介したレクチンですが、今回は「共生」です。
共生している生き物同士は、レクチンと、レクチンが結合する糖鎖とを持っているのです。

今日は1回目として、マメ科植物と窒素固定細菌の共生について挙げてみたいと思います。
共生としてとても有名なマメ科植物と窒素固定細菌。
窒素固定細菌は「根粒菌」という言い方もされますが、これはマメ科の根にできる瘤の中に生育している菌だからです。
窒素固定細菌は空気中の窒素を、アンモニアなどの窒素化合物に変換する働きをします。
植物にとって窒素が化合物になっていることは重要で、これを与えてくれる細菌なわけです。
さて、問題のレクチンはどちらが持っているでしょうか?

答えは植物側。
植物側がレクチンを持ち、そのレクチンにくっついてきた菌が内部に侵入しているのです。
くっついてきた菌側には、当然そのレクチンが見分けることの出来る糖鎖を細胞膜に持っています。
ウィルスが外側にレクチンを持っているのと同じように、マメ科植物の根の細胞表面にはレクチンが外側に張り出しています。
当然、レクチンには特異性があるので、特定の細菌だけがレクチンと結合し、優先的に根の内部へ入り込むことが出来ます。
ウィルスが感染するためにレクチンを持っているのに対して、植物は感染して欲しくてレクチンを持っているかのようにも思えて、なかなか興味深い事。
菌側にしてみると、「感染させてくれる親切な植物、わーい、ありがとう」。
植物からしてみると、「へへへ、まんまと罠に引っかかったな」(笑)

もう少しその機構を詳しく説明すれば、
レクチンが菌を捉えた後、その情報が伝わって根の細胞から菌を取り込みに行きます。
その後、植物側の菌のお守り体制(窒素や酸素、光合成産物などの有機物の受け渡しが出来る状態)が整えられます。
そうすると、菌は小胞(エンベローブ)の中に入り込み、細胞膜を持たない状態で存在(バクテロイド)するようになります。
植物はこのエンベローブ中のバクテロイドに窒素を送り込み、窒素化合物を作ってもらう代わりに、酸素や有機物をお給料としてあげているわけです。
菌としてみれば、「窒素化合物をあげてやっている」のではなく、「酸素や有機物ありがとう!」と言う状態。

ここでお得意の進化論。
マメ科植物などは窒素固定細菌を認識するためにレクチンを作ったのでしょうか?
それともレクチンを作っていた個体がよく成長し、同じ種のほかの個体よりも繁栄してきた結果、同じ種ではレクチンを持つものだけになってしまったのでしょうか?

(やっぱり生物って面白いなぁと思う。(笑))



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