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バイオ・微生物実験好きな管理人による、研究仕事、日常、実験技術や理科系ネタのブログ

共生する生き物たち1~レクチンの観点から~どちらがどう選ぶ?

2005-02-15 20:06:34 | 微生物との共生
共生、と聞くと思い浮かべるのは何ですか?
生き物同士が共生しあっている関係と言うのは、自然界に幅広く存在しています。
身近な例で言えば、人間と腸内細菌は共生していますし、皮膚に常に存在している常在菌とも共生しています。

さて、今日のタイトルは共生する生き物たち1~レクチンの観点から
実は、共生する生き物たちの間には、レクチンがとても重要な役割をしています。
これまで、このブログでレクチンについて何度か触れています。(ウィルスレクチン2(2月3日)菌とウィルスレクチンの共通点とは(1月5日)

レクチンとは、特定の糖を見分けて結合する性質のあるタンパク質のことを言います。(大雑把に言うと)
ウィルスや菌は感染する時に宿主の細胞から生えたようになっている糖鎖を、「宿主の糖鎖だ」と見分けてくっつくことが出来るわけです。
そのときには「感染の機構の始まり」として紹介したレクチンですが、今回は「共生」です。
共生している生き物同士は、レクチンと、レクチンが結合する糖鎖とを持っているのです。

今日は1回目として、マメ科植物と窒素固定細菌の共生について挙げてみたいと思います。
共生としてとても有名なマメ科植物と窒素固定細菌。
窒素固定細菌は「根粒菌」という言い方もされますが、これはマメ科の根にできる瘤の中に生育している菌だからです。
窒素固定細菌は空気中の窒素を、アンモニアなどの窒素化合物に変換する働きをします。
植物にとって窒素が化合物になっていることは重要で、これを与えてくれる細菌なわけです。
さて、問題のレクチンはどちらが持っているでしょうか?

答えは植物側。
植物側がレクチンを持ち、そのレクチンにくっついてきた菌が内部に侵入しているのです。
くっついてきた菌側には、当然そのレクチンが見分けることの出来る糖鎖を細胞膜に持っています。
ウィルスが外側にレクチンを持っているのと同じように、マメ科植物の根の細胞表面にはレクチンが外側に張り出しています。
当然、レクチンには特異性があるので、特定の細菌だけがレクチンと結合し、優先的に根の内部へ入り込むことが出来ます。
ウィルスが感染するためにレクチンを持っているのに対して、植物は感染して欲しくてレクチンを持っているかのようにも思えて、なかなか興味深い事。
菌側にしてみると、「感染させてくれる親切な植物、わーい、ありがとう」。
植物からしてみると、「へへへ、まんまと罠に引っかかったな」(笑)

もう少しその機構を詳しく説明すれば、
レクチンが菌を捉えた後、その情報が伝わって根の細胞から菌を取り込みに行きます。
その後、植物側の菌のお守り体制(窒素や酸素、光合成産物などの有機物の受け渡しが出来る状態)が整えられます。
そうすると、菌は小胞(エンベローブ)の中に入り込み、細胞膜を持たない状態で存在(バクテロイド)するようになります。
植物はこのエンベローブ中のバクテロイドに窒素を送り込み、窒素化合物を作ってもらう代わりに、酸素や有機物をお給料としてあげているわけです。
菌としてみれば、「窒素化合物をあげてやっている」のではなく、「酸素や有機物ありがとう!」と言う状態。

ここでお得意の進化論。
マメ科植物などは窒素固定細菌を認識するためにレクチンを作ったのでしょうか?
それともレクチンを作っていた個体がよく成長し、同じ種のほかの個体よりも繁栄してきた結果、同じ種ではレクチンを持つものだけになってしまったのでしょうか?

(やっぱり生物って面白いなぁと思う。(笑))



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