亡父の命日

父が亡くなつたのは２８年前のけふ。
私が大學に入つたばかりの時だつた。
一人暮しにも慣れ、學生アパートで先輩に麻雀を教はつて、その日も麻雀をしてゐた。

母から電話が入り、父親が亡くなつたことを聞いた。
まつたく悲しいといふ感情が起こらず、千葉まで歸る旅費をどうしようかと考へてゐた。
一緒に麻雀をしてゐた先輩や友人が金を貸してくれたお蔭で、翌日通夜にかけつけることができた。

通夜の席で亡骸に接しても、死んだといふ實感は湧いてこなかつた。
ただ、ああ死んだんだなあ、と思つた。
父とは決して良い關係ではなかつた私にとつて、通夜に始まる一連の儀式は面倒臭いものでしかなかつた氣がする。

父が死んだのは、彼が滿５３歳１０ヶ月のとき。
私は１９歳１０ヶ月だつた。
３４歳離れてゐたんだなあ、と思つた。

そんな私もあと６年で父と同じ年になる。
あと６年。
この６年で何をするべきか。
昨年、「うつ」でほぼ１０ヶ月近く會社を休んだ私。
會社といふ組織で生きて行くことが苦痛になつてゐる私。
でも生きて行かなくてはならない私。
時々、ほんたうに生きていかなくてはいけないのだらうか、などと考へる私。

嫌つてゐた父ですら５３歳１０ヶ月は生きてゐた。
私も父には負けたくない。
絶對に５３歳１０ヶ月までは生きてやらう、そんなことを思ふ、けふであつた。