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描写だけがリアルであとは・・・『私の男』by桜庭一樹

2016年12月04日 | 小説レビュー
~落ちぶれた貴族のように、惨めでどこか優雅な男・淳悟は、腐野花の養父。
孤児となった十歳の花を、若い淳悟が引き取り、親子となった。
そして、物語は、アルバムを逆から捲るように、花の結婚から二人の過去へと遡る。
内なる空虚を抱え、愛に飢えた親子が超えた禁忌を圧倒的な筆力で描く第138回直木賞受賞作。「BOOK」データベースより


前から読みたかった作品です。浅野忠信と二階堂ふみの主演で映画化もされています。

さて内容ですが、文体自体は読みやすく、「現在~過去へ・・・この二人の奇妙な関係はこのようにして生まれて、絆が深まってきた。」という感じで、謎を解き明かしていくストーリー仕立てになっています。

二人が絡み合うシーンの描写は目に浮かぶように描かれていてスゴいと思うのですが、肝心の物語の伏線回収や脇役たちの人物設定が中途半端で、「絡めてみたけど放ったらかし」感が否めません。

花が生まれるきっかけとなった事件や、淳吾と両親との関わり、死体の処理など、チョロっと簡単に書かれていたりしていて、もうちょっと踏み込んで内容を濃くしてもらいたかったですね。

ただ単に語り部を変えて過去を遡っていくだけでなく、時系列を交差さしたり、人物を交差させたり、「そうやったんや!」と思わせるような仕掛けが欲しかったですね。

あとから直木賞受賞作品と聞いて、少なからずショックを受けました

★★2です。