「心ゆたかな暮らしを」  ~Shu’s Page

小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

ヤバさ抑え目でも深い!『むらさきのスカートの女』by今村夏子

2022年09月22日 | 小説レビュー

『むらさきのスカートの女』by今村夏子 

~近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない“わたし”は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する。『あひる』、『星の子』が芥川賞候補となった話題の著者による待望の新作中篇。「BOOK」データベースより

 

第161回芥川賞受賞作なんですね!すごい 

今村夏子さんの作品は、本当にびっくりさせられることが多いです。読んでいて「ここまで書いていいんか!?」的な気持ちになったり、ドキドキしながら読んでいました。

今回の『むらさきのスカートの女』は、そういうドキドキ感は控えめでも、しっかりと奥深さを感じさせる作品です。

大どんでん返しとまではいきませんが、途中までぼやけていた語り手の正体というか、何もかもが最後に明らかになって、スッキリとした読後感です。

★★★☆3.5です!

 

 


ふむふむ…。『クリムゾンの迷宮』by貴志祐介

2022年09月21日 | 小説レビュー

『クリムゾンの迷宮』by貴志祐介 

~藤木はこの世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を覆う、深紅色の奇岩の連なり。ここはどこだ?傍ら携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された」

 

貴志祐介氏の作品は、こわ面白い『黒い家』by貴志祐介 以来で三作目です。割とグロテスクな描写が好きな作家さんなのかな?とも思いますが、今回の作品はそれほどでもありませんでした。

突然、現実世界から「殺すか殺されるか?」という脱出ゲームの世界に放り込まれ、まさにサバイバルを実体験させられる主人公の藤木ですが、何というかそれほどの緊迫感がありませんでした。

クライマックスでも「こういうことで助かるんちゃうか?」と思えたりしましたし、ヒロインの藍の存在もイマイチでした。

以降ネタバレです。

主人公が助かって謎の賞金500万円をもらって現実世界に戻されるのですが、その後の蛇足のような語りは必要なかったと思います。

本作の内容はともかくとして、私が中学2年の時に友達から貸してもらって、少しの期間ハマった「アドベンチャーゲームブック」シリーズが出てきたのが嬉しかったです。

『サソリ沼の迷路』という作品で、三人の魔法使い(善・悪・中立)の度の魔法使いの弟子になるかというところから物語が分岐していき、最終的なエンディングも違ってくるという内容でした。弟子になる魔法使いを選びなおして何回も何回もやり直して楽しんだ記憶があります。

クリムゾンの迷宮もそれなりに楽しめましたし、時間つぶしにはとても良かったです。

★★★3つです。


『緋い記憶』by高橋克彦

2022年09月20日 | 小説レビュー
 
~古い住宅地図に閉じ込められた思い出の町、あの少女の家は空き地とだけ記されていた…。凍りついた時のゆるやかな復讐が始まる―。表題作ほか7篇。「BOOKデータベース」より
 
なかなかの短編集でした。直木賞受賞作品なんですね!短編集にしては、どうりで中身が濃いと思いました。
淡々とした語り口調の中にホラー・サスペンス要素満載で、想像しながら読むと、結構怖かったです
 
高橋克彦氏の作品は初読だったのですが、結構好きになりました。
 
また別の作品も読んでみたいです。
 
★★★3つです。
 

そうなんですけどね...。『千日のマリア』by小池 真理子

2022年09月16日 | 小説レビュー

『千日のマリア』by小池 真理子 


~誰にも言えない、でも決して忘れることはない罪深い記憶。男と女の間を流れていった時間―。夫と移住しペンションを営んだ家をたった一人引き払う時、庭に現れた美しい動物(「テンと月」)。義母の葬儀で棺に寄り添う男が思い起こす光景とは(表題作)。心の奥底深く降り積もった思いを丹念にすくいとる珠玉の短編集。「BOOK」データベースより

 

う~ん、相変わらず小池真理子さんの美しくも官能的で、どこか淋しい雰囲気の漂う、『生と死、愛と性、男と女を見つめた珠玉の8篇』が収められている短編集です。

まぁ短編なので、どれもうまくまとめられているなぁという感じでサラサラと読めます。やはり表題の『千日のマリア』が一番心に刺さるというか、なんとも言えい気持ちになりますね。

小池さんの作品はとても好きなので、どんどん読んでいきたいと思います。

★★★3つです。

 


とても味わい深い文章『心淋し川』by西條奈加

2022年09月06日 | 小説レビュー

『心淋し川』by西條奈加

不美人な妾ばかりを囲う六兵衛。その一人、先行きに不安を覚えていたりきは、六兵衛が持ち込んだ張形に、悪戯心から小刀で仏像を彫りだして…(「閨仏」)。飯屋を営む与吾蔵は、根津権現で小さな女の子の唄を耳にする。それは、かつて手酷く捨てた女が口にしていた珍しい唄だった。もしや己の子ではと声をかけるが―(「はじめましょ」)他、全六編。生きる喜びと哀しみが織りなす、渾身の時代小説。「BOOKデータベース」より
 
本当に久しぶりに、「小説レビュー」をアップします
昨年から全く本を読む時間が無かったので、ようやく図書館での貸し出しを再開することが出来ました!本当にうれしいです
 
さて、西條奈加さんの作品は、江戸の人情噺かと思いきや『まるまるの毬』by西條奈加、以来ですが、とても読みやすく美しい時代小説を書かれます。

『まるまるの毬』でも感じたのですが、ストーリーのプロットがとても上手く構成されていて、読んでいて「ん?」と感じる箇所がほとんどないですし、中だるみすることなく、スラスラ読めてしまいます。

 

今回の『心淋し川(うらさみしがわ)』は、【第164回直木賞受賞作】であり、ずっと読んでみたいと思っていました。

内容は、連作短編集で、「心町(うらまち)」という一つの集落で、貧しくとも強く生きようとする人たちの人間模様を描いてあります。

その貧乏長屋集落の中心にいる差配(所有主にかわって貸家・貸地などを管理すること。また、その人。差配人)の茂十という男が、物語のカギを握っており、段々と色々なことが明らかになっていく様は読んでいて気持ちいいです。

色々な登場人物が出てきますが、それぞれに一生懸命に生き抜いており、それが西條さんの筆によって、生き生きと描かれています。

久しぶりに小説を読破し、しかも良い内容だったので、心がとても豊かになりました。

★★★☆3.5です。


やはり合わないのか?『百花 』by川村元気

2022年02月20日 | 小説レビュー

『百花 』by川村元気

~大晦日、実家に帰ると母がいなかった。息子の泉は、夜の公園でブランコに乗った母・百合子を見つける。それは母が息子を忘れていく、始まりの日だった。

認知症と診断され、徐々に息子を忘れていく母を介護しながら、泉は母との思い出を蘇らせていく。ふたりで生きてきた親子には、どうしても消し去ることができない“事件”があった。母の記憶が失われていくなかで、泉は思い出す。あのとき「一度、母を失った」ことを。

泉は封印されていた過去に、手をのばす―。現代において、失われていくもの、残り続けるものとは何か。すべてを忘れていく母が、思い出させてくれたこととは何か。「BOOK」データベースより

 

菅田将暉と原田美枝子のW主演で映画化されることが決定しており(2022年9月公開)、映画化誕生秘話のようなものをテレビで見て気になって本を借りてきました。

川村元気は、「世界中から猫が消えたなら」by川村元気の感想でも書きましたが、深みがないというか、何となく薄いんですよね 

そしてこの『百花』も同じように薄く浅いんです。

筆者が伝えたいことや描きたいことはわかるんですが、僕には伝わってこなかったですね。サラサラと文章やセリフを書き連ねていっている感じです。

好みの問題ですかね?

 

★★☆2.5ですね。

 

 


評価は高いのですが…『イノセント・デイズ 』by早見 和真

2021年12月30日 | 小説レビュー

『イノセント・デイズ』by早見 和真

~田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪で、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がる世論の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士たちが再審を求めて奔走するが、彼女は…筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。日本推理作家協会賞受賞。「BOOK」データベースより

 

ラストシーンで、映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」が思い起こされました。

とても深い意味のある小説で、考えさせられることも沢山ありますが、もう少しまとめられたら良かったと思います。

主人公『田中幸乃』に関わった色々な方々の視点で語られるんですが、この書き方が良くなかったのかも知れません。

いっそ、第三者的な目線で普通にストーリーを追っていけば読みやすかったかもしれませんし、せっかくの長編ミステリーが、長すぎて面白みに欠けました。

★★★3つですね。


ありえるかもよ(~_~;)『消滅世界』by村田 沙耶香

2021年12月23日 | 小説レビュー

『消滅世界』by村田 沙耶香


~「セックス」も「家族」も、世界から消える。日本の未来を予言する圧倒的衝撃作。「BOOK」データベースより
 
最近の「LGBTQ」に対する世界の流れの中にあって、「家族とは?」、「恋愛とは?」、「結婚とは?」、「子育てとは?」…、などなど、これまで自分自身が植え付けられてきた価値観が大きく揺らぐ中で、村田沙耶香さんの作品には、いつもいつも驚かされつつも、「あと数十年で、こういう世界になってるかも」と思わされます。
 
恋愛して、結婚して、セックスして、子どもが生まれて、二人で育てて、自分の子供が成人して、結婚して、孫が生まれて、家族制度が繋がっていくという世界観の中で生きてきましたが、ここにきて、世の中の価値観が大きく変化する環境の中で、同性婚やセックスレス夫婦、人工授精などが普通に認められつつある社会に、「これから世界はどのようになっていくのか?」と、考えさせられます。
 
そんな中で村田沙耶香さんは、いつも時代を先取りし、「普通」とか「当たり前」とかの殻を突き破って、とんでもない小説を我々に読ませてくれる素敵な作家さんです。
 
是非とも多くの人に村田さんの作品を読んでもらいたいものです。
 
★★★☆3.5です。
 
 
 

小池さんらしいが…、『狂王の庭』by小池 真理子

2021年12月15日 | 小説レビュー

『狂王の庭』by小池 真理子 


~「この庭をあなたに捧げる―。」昭和27年、東京都下国分寺。広大な敷地に、全財産を投じてルートヴィヒ二世さながら華麗でシュールな西洋庭園を造った異端児・青爾。妹の婚約者である彼に惹きつけられる美しい人妻・沓子。没落する華族社会を背景に、虚無と孤独と耽美の極地で、激しく求め合う男と女を描ききった、世紀の恋愛巨編。「BOOK」データベースより

 

小池さんらしく描写が丁寧で美しく、実話のような物語で引き込まれます。

しかしながら、やや冗長な感じで盛り上がりに欠けますし、脇役のキャラクターも「もう一歩」という感じで少し残念でした。

青爾と沓子が惹かれ合いながら深い恋に堕ちていくんですが、お互いに惹かれ合う理由付けが今一つで、そこまで物語に没入できませんでした。

とても長い作品であった分、間延びして楽しめなかったです。

 

★★☆2.5ですね。


良かったですねぇ~『名も無き世界のエンドロール』by行成 薫

2021年11月23日 | 小説レビュー

『名も無き世界のエンドロール』by行成 薫


~ドッキリを仕掛けるのが生き甲斐のマコトと、それに引っかかってばかりの俺は、小学校時代からの腐れ縁だ。

30歳になり、社長になった「ドッキリスト」のマコトは、「ビビリスト」の俺を巻き込んで、史上最大の「プロポーズ大作戦」を決行すると言い出した―。

一日あれば、世界は変わる。男たちの命がけの情熱は、彼女に届くのか?大いなる「企み」を秘めた第25回小説すばる新人賞受賞作。「BOOK」データベースより

 

作者の行成薫氏は、本作で『第25回小説すばる新人賞』を受賞してデビューされました。

読んでいてスピード感もあり、キャラも立っていて、グイグイと引き込まれます。他の方のレビューにもあるように「伊坂幸太郎テイスト」溢れる作品です。

岩田武典、新田真剣佑のW主演で映画化もされており、この作品の評価が高かったことを物語っていますね。

さて、本作のストーリーですが、いわゆる「成り上がり」のサクセスストーリーのように感じますが、映画の見出しにも書いてある通り、実は… な内容です

そういう大どんでん返し的なところも、「伊坂幸太郎テイスト」と言われる所以でして、読んでいて面白かったです。

しかしながら、たびたび登場する、キダとマコトとの会話シーンの中で、時々、「これ、どっちのセリフや?」と、混同する箇所も見受けられ、「新人っぽくていいね」と、寛大な心で楽しませてもらいました!

種明かしの場面では、とても良い緊張感の中、クライマックスを迎え、最後は静かにエンドロールがゆっくりと流れていくような心地よさがありました。

また、映画も観てみたいですね。

 

★★★☆3.5です!