しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

混沌ホテル コニー・ウィリス著 大森望訳 ハヤカワ文庫

2017-10-07 | 海外SF
これまたコニー・ウィリスづいてのチョイスです。

空襲警報」でも書きましたが、原書は“The Best of Connie wiliis:Award-Winning Stories”(全10編)として、ウィリスのネピュラ賞・ヒューゴー賞受賞作を集めて刊行のものを2分冊しています。

原書とは収載順を変え「空襲警報」はシリアスな作品を収載、本書の方はユーモア系(ラブコメ?)の作品5篇を収載しています。

本自体は昨年くらいにブックオフで見かけて入手済みでした。

序文では自身のこれまでのSF体験、SF作家たちへの(特にハインラインへの)感謝の辞。
各編には作者のコメントつきです。

内容紹介(裏表紙記載)
ハリウッドのとあるホテルで、なぜか国際量子物理学会が開催されることになった。各地から名だたる学者が集まってくるが、量子論さながらの騒動が次々と発生し、事態はカオス化していく・・・・・・ネピュラ賞受賞の表題作、短編集初収載のクリスマスSF「まれびとこぞりて」、傑作風刺SF「女王様でも」ほか、SF界きってのストーリーテラーのユーモア系短編から、ヒューゴー賞/ネピュラ賞受賞作のみ全5篇を収録した傑作選

読後の感想「空襲警報」で否定的な感想書きましたが、本書の方は非常に楽しめました。
犬は勘定に入れません」等、長編のコミカルな部分と共通点が多く受け入れやすかったのかもしれませんが、ウィリスはユーモア系の作品の方が合う気がしました。

各編紹介・感想

○混沌ホテル At the Rialto 1989年10月
1990年ネピュラ賞

ハリウッドで開催された国際量子物理学会で騒動が発生し…。

奇妙な状況が発生して現実が「ずれていく」のは「空襲警報」収載の「ナイルに死す」の項でも書きましたがなんだか初期の筒井康隆的。
筒井康隆、先鋭的な作家だったんだなぁ..などと違うところで感心しました。

「量子力学」「混沌(カオス)理論」には詳しくないですが、ドタバタ感、楽しめました。

○女王様でも Even the Queen 1992年4月
1993年ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞ほか-ショート・ストーリー部門

裁判官の娘はとある団体に入り....。

訳者あとがきで「史上初の月経SF短編」と書かれていましたが….。
男性の私としてはなんとも???な作品です。(笑)

フェミニスト集団・自然へ帰れ的集団を戯画的に描いていて物議をかもしたんだろうなぁという作品です。
なんともパワフルな女性がいっぱい出てきて圧倒されますが主人公の姑カレン女史が一番かなぁ、「なにが」かはともかくですが...。

○インサイダー疑惑 Inside job 2005年12月
2005年ヒューゴー賞

霊媒師やチャネラーのインチキを暴いて記事にしているロブは助手のキルディからの電話である霊媒師を取材するが….。

ミステリー風ラブコメ+霊媒師に関わるファンタジーというところでしょうか?
力作ですが….SFではないような気がします。
「犬は勘定にいれません」や「航路」で霊媒師やチャネラーを戯画化しているウィリスらしいテーマですが…作品の上では「霊」を認めているのは掟破り感があります。

ウィリスらしい熟練のストーリーまわしでラブコメ楽しめました。

また本作で日本ではなじみのないH.Lメンケンなる人物初めて知りました。

「理想主義者とは、薔薇はキャベツよりいいにおいがすると気づき、それなら薔薇でスープをつくったほうがキャベツでつくるよりおいしくなると結論する人々である」など数々の名言を残しているようで興味をもって著作を探してみましたが邦訳されている作品は見つけられませんでした。

○魂はみずからの社会を選ぶ-侵略と撃退:エミリー・ディキンスンの詩二篇の執筆年代再考:ウェルズ的視点 The soul Selects Her Own Society 1996
1997年ヒューゴー賞ショート・ストーリー部門


エミリー・ディキンスンの詩二編に認められる(?)火星人撃退の痕跡は…。

詩に関する考察論文の形態をとった作品です。
正直賞を取る作品には思えませんでしたが,,,,ファン受けよかったんでしょうかねぇ。

序文でハインラインに対する感謝を述べていてアシモフに対してコメントなしで、「空襲警報」収載のSF大会スピーチでも「アシモフ」の名前は一回しか出ていきませんが、本作の論文形式のフィクションはアシモフの「再昇華チオモリンの吸時性」(「母なる地球」収載)を下敷きにしているような感じがしますし、特にユーモアパートの方はアシモフの影響が濃い気が(「女王様でも」の強い女性陣とか)するのですが….気のせいかしら?


〇まれびとこぞりて All Seated on the Ground 2007年12月
2008年ヒューゴー賞

アルタイル人たちは地球人たちが何をしても反応がなかったが…。

これまたラブコメもの+ミステリーです。
「犬は勘定に入れません」やら「航路」の周りのなんともいえない理解のなさの中問題解決にあたるうちに結ばれる男女....。
書いていて恥ずかしいですが、楽しめました。

しかめつらで人々をにらむアルタイル人がちょこんと床に座ったり、ラストで嬉しそうに飛ぶ姿がとてもかわいらしかったです。



ページ的にも内容的にも力が入っていたであろう「インサイダー疑惑」と「まれびとこぞりて」の2作がとても楽しめました。(ラブコメですが)

どちらかといえば....。
「まれびとこぞりて」の能天気さというかシンプルさが気に入りました。
「インサイダー疑惑」の方は「なぜメンケンが霊媒師に?」なぜ「セレブな美女が貧乏記者を好きになるのか?」がどうも納得感がなかったです。

なお「空襲警報」「混沌ホテル」2冊読んでみての感想ですが原書の収録順にしてもらった方が作品集としてはバランスとれていたかと思います。

序文は「混沌ホテル」に収載されていますが「空襲警報」収載の「クリアリー家からの手紙」について言及されていたりでちぐはぐ感がありました。

短編集を上・下にすると販売的には今一つでしょうし、1冊にすると分量多かったんでしょうけれども….。

なお原書の収載順は
「クリアリー家からの手紙」
「混沌ホテル」
「ナイルに死す」
「魂はみずからの社会を選ぶ」
「空襲警報」
「インサイダー疑惑」
「女王様でも」
「マーブルアーチの風」
「まれびとこぞりて」
「最後のウィネベーゴ」
だそうです。

大森望氏が訳者あとがきで「この順に読みたい人は2冊そろえてから読んでね」というようなことを書いていましたが、筒井康隆チックな「混沌ホテル」「ナイルに死す」が並び、「女王様でも」の後に老境の夫婦の純愛ものという感じの「マーブルマーチの風」が並ぶというのはかなり考えられた順番だったのではと思うのですが…。

まぁしょうがないですね。

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