しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

火星のタイム・スリップ フィリップ・K・ディック著 小尾芙佐訳 ハヤカワ文庫

2014-07-08 | 海外SF
短編集「マイノリティ・レポート」を読み、ディックづき、昨年ブックオフで105円で購入しておいた本書を手に取りました。

本書、絶版ではないようですが新本屋ではあまりみかけないですね。

ただ解説で川又千秋氏は「ディックの中では一番」「読んだSFの中では一番」というようなことを書いており、一部ではかなり高く評価されている作品のようです。

12年ローカス誌オールタイムベスト長編351位’14年SFマガジンオールタイムベスト27位(06年にはランクインしていなかった)1964年発刊。

内容(裏表紙記載)
水不足に苦しむ火星植民地で絶大な権力をふるっている水利労組組合長アーニイ・コット。彼は、国連の大規模な火星再開発にともなう投機で地球の投機家に先を越されてしまった。そこで、とほうもない計画をもくろんだ。時間に対する特殊能力を持っている少年マンフレッドを使って、過去を自分に都合のよいように改変しようというのだ。だが、コットが試みたタイム・トリップには怖ろしい陥穽が・・・・・・!? ディックの傑作長編

上記内容紹介は後半1/3辺りから後を書いている感じであまりいい紹介とは思えないです….。
前半は火星と登場人物紹介に近い内容で地味ですし、中盤は繰り返し描写ですから面白そうに内容紹介するとこうなるんでしょうが、ちょっとねぇ。

ディックの長編は「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」「ユービック」「高い城の男」と読みましたが、私的には本作はそれらと比べると完成度が低いかなぁという気がしました。

でもまぁ素材をさっと炒めてスパイス(薬物もありそう…)をパッ、パッと振りかけた感じで「素材の味も楽しめる新鮮な料理」という感じでこれもいいかなぁとも思います。
(相変わらず良くわからない感想ですが…。)

また火星の描写や精神病の描写、タイムスリップ理論などに「サイエンス」を求める人は「なんだこりゃ」という気になるかとも思いますが、本作はその辺気にしないで書いてあることを「ありのまま」に受け入れて「どう感じるか」というスタンスで読む作品かとも思います。

ストーリーを追うというより、場面場面を楽しむ作品かと思いますので印象的場面が続きます。

内向的で考え過ぎなジャックと外交的でぱっと行動するコットという対象的な立場・性格の二人の男性や、これまた対象的存在であるヒロイン二人の交錯していく感じや、中盤何度も巻き戻されて繰り返される修羅場などなどとても印象的な場面が続きますが、ストーリーとしてみると結局何が起こるわけでもない。

なお本作でも他のディックの長編同様ヒロイン二人は、お色気娼婦キャラのドリーンと貞淑な人妻キャラのシルビアと対象的なのですが魅力的に描写されています。
惚れてしまいそう。(笑)

ラストは安直というか「必要なのかな?」と感じましたが、これもまぁあまり本質的問題ではないような気もしますね。

ぐらぐらするような現実感を楽しむ作品かと思いますし、そういう意味で「ディック作品」を楽しむ人にはいい作品なんでしょうね。

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