しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

背教者ユリアヌス 上・中・下 辻邦生著 中公文庫

2015-12-26 | 日本小説
楡家の人びと」読後に読みたくなったのが本作、北杜夫の盟友辻邦生の代表作(といってもいいのでは)です。

「楡家の人びと」同様中学か高校(多分高校)時代に入手し途中まで読みかけていて長らく未読となっていた作品です。
当時の国語の先生が夏休みのお薦めの本として挙げていて手に取った記憶があります。

そのとき上巻の途中まで読んでいて面白かった記憶があるのですが…。
当時の私の読書力ではその後読む気力が出ず未読のまま30年近くたってしまいました。
今回読んだ本も当時入手したもの

3冊組のものを地元の古本屋で入手したものです。
引っ越し繰り返しながらも「読もう読もう」と思い持ち歩いていました。
奥付見ると昭和49年12月初版、昭和53年1月 6版のもの。
古い...。
1969年~1972年まで「海」に連載され初刊は1972年(昭和42年)です。

内容紹介(裏表紙).
上:ローマ皇帝の家門に生まれながら血をあらう争いに幽閉の日を送る若き日のユリアヌス。やがて訪れる怒涛の運命を前にその瞳は自負と不安にわななく。
毎日芸術賞にかがやく記念碑的大作

中:けがれなき青年の魂にひたむきな愛の手をのべる皇后エウセビア。真摯な学徒の生活も束の間、副帝に擁立されたユリアヌスは反乱のガリアの地へ赴く。
毎日芸術賞にかがやく記念碑的大作!

下:永遠のローマよ。日の神は今わが生を見棄てられた! ペルシャ兵の槍に斃れたユリアヌスは、皇帝旗に包まれてメソポタミアの砂漠へと消えてゆく。
毎日芸術賞にかがやく記念碑的大作!


読後のとりあえずの感想は「30年越しでやっと読めた」という満足感と「もっと素晴らしい作品かと思っていたのに期待外れだった」残念感が入り混じったものでした。
読むタイミングとしては大学生、20代くらいがベストだったのかなぁという感じ。

後半ユリアヌスがガリアに赴任してから作品に入り込めずきつかった…。
下巻は読み通すのが苦痛でさえありました。

かなり評価の高い作品なので私の読み方が悪いのかもしれませんが…。

上巻の途中までは読んだ記憶もうっすら残っており、当時も感じたのですが読みやすくかつとても面白い。
純文学というよりもギリシャ神話の神様らしきものも全編登場しますし…、超現実的な個所、運命的な暗示などが随所に登場しますし神話のパロディもしくはファンタジィ風の構成になっています。
いわくつきの「皇帝の甥」という身分のユリアヌスが本名で出歩いて友人と話をしていても誰も気づかないというようなご都合主義的展開もありますがファンタジイと思って読めば全然気になりませんでしたし、たくらみとして楽しめました。

ただ中巻後半辺り以降、ユリアヌスがガリヤに赴任し立場も運命も大きく転回してからは「哲人」かつ「読書家」ユリアヌスの理想を追い求める姿は変わらないわけですが…ご都合主義的なところは置くとしても展開が雑かつ平板になってしまったように感じました。
「理想」と「現実」の間で苦悩する姿、「悲劇」に向かって突き進んでいく姿やキリスト教徒との対立を通じた宗教と社会の矛盾などがもっと丁寧に書かれていればかなりの名作になっていたのではないでしょうか。

ユリアヌスが権力を握ってからの「青さ」的なところは私がもっと若ければ共感できたよのかもしれませんが40代オヤジとしては青年の苦悩は共感しにくいものがあったのかもしれません。
当時のローマ雰因気を伝える作品としては良い作品とは思いましたが残念ながら大傑作とは感じられませんでした。
ただ若い人にはお薦めかもしれません。

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