しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

小松左京自伝 実存をもとめて 小松左京著 日本経済新聞出版社

2017-12-30 | 日本SF
これまた「覆面座談会事件」流れでいろいろ調べている中で本書の存在を見つけて購入しました。
日本SF史を紐解くと小松左京の存在感の大きさが目立ちます。

日本沈没」は日本SF市場最初にして最大のベストセラーでしょうし、万博のプロデュースやら未来学やらいろいろ露出が多く世間的なポピュラーさでも日本SF界ではピカ一(だった)でしょう。
(今ではかなり忘れられているでしょうが....)
前にも書いたかもしれませんがちょっと前の立花隆や今では池上彰のような存在でしょうか。

ただ日本SF界にとってはその存在は功績ばかりではないような...。
日本での現在のジャンルとしてのSFの閉塞感の一端には小松左京の早川書房との対決やらも影響していそうな気がします。
(早川よりのS-Fマガジンの記事など読んでいるからかもしれませんが)

1980年代の角川映画とSFの関係(ハヤカワ文庫からなだれをうっっての角川文庫への移籍等)、野生時代、徳間書店から出ていた日本SF専門誌「SFアドベンチャー」など小松左京の存在大きかった気がします。

時代もバブルでしたが...あまりに狭い世界で日本SFを発達させて来て、SF作家第一、第二世代の後にポピュラーなSF作家もしくは「SF」も書く作家が出て来にくくなかったんじゃないかというようなところもあります...。
日本SFバブルとでもいうような状況を生み出して、その後が失われた時代になってしまったような...。

村上春樹などは小松左京曰くの「大文学」としてのSFとして捉えれば十分SF作家な気がしますし、マンガやらアニメやらでこれだけSF的なものが普及している国ですから本来日本人はSF好きなんだと思うのですがねぇ。
(別な文章で見ましたが小松氏 村上春樹の評価低かったようです...)

本書は2006年に日本経済新聞紙上で連載された「私の履歴書」をまとめたもの+小松左京研究会の同人誌「小松左京マガジン」に掲載された小松氏への聞きだした「自作を語る」「高橋和己を語る」を合わせて2008年に出版されたものです。

これも絶版なのでAmazonで古本を入手。

内容紹介(「BOOK」データベースより)
1973年に発表した『日本沈没』が大ベストセラーとなり、2006年にはリメイク映画も公開され話題を呼んだ、日本SF界の巨匠・小松左京。その原点とも言える、戦後の焼け跡から始まった青春時代、文学との出会い、SF作家の道を歩むに至った契機とは、どのようなものだったのか?また、今なお輝き続ける膨大な作品群を生み出した執筆の舞台裏では、どのような着想や人々との出会いが第あったのか?文学の枠を超え、宇宙とは、生命とは、そして人間とは何かを問い続ける作家の波瀾万丈の人生と創作秘話。


第一部の「私の履歴書」の方はいかにも「私の履歴書」な感じで(意味不明?)無難に書かれていることもありSFへの言及が少なくそちら方面ではもの足りません。

でも小松氏が戦前の関西の上中流階級の子どもとして育ち、京都大学といういかにもな当時の教養人として育ったのはよくわかりました。

この頃の同様に旧制高校ー新制大学という流れの作家では星新一やら(一高ではないですが)北杜生やらと同じですね。
小松左京氏の場合、理系でなく文学部で共産党に入党してしまったりして就職に失敗するあたりが違ってくるわけですが....。

全体的に「当時としては最高の教育を受けたんだ」という自負のようなものを強く感じました。
その辺が後の万博やら未来学やらに積極的に関わっていくことにつながるんでしょうね。
もちろんかなり頭のいい人で好奇心旺盛だったというのもあるんでしょうけれども「自分は京大出の知識人」という意識は影響していたのではないでしょうか。

SF作家としての小松左京としてはその辺時間とられてしまったのが惜しいところです。
同じ関西出身の手塚治虫(大阪帝国大学医学部卒)などはアニメで若干時間はとられたのでしょうが文化人的活動はしなかったので質、量ともに圧倒的な作品群を残せたというのもありそうな...。
まぁ創作に対する執念の違いかもしれませんが。

第二部 自作を語るでは作品成立の裏話が書かれており小松ファンには楽しめる内容になっているのだと思います。
ただそれほど深くは自作をそれほど深くは掘り下げず周辺事情中心なので物足りない人には物足りないかもしれません。
「日本アパッチ族/復活の日」では福島正実氏を怒らせたいきさつなど語っています。
「日本アパッチ族」は「本格SFじゃないのでいいかと思った」そうですが....「未踏の時代」での記載みるとどうでしょう...。

前にも書きましたが私的には小松左京の長編はどこかで最後の方放り投げる雑さがあって正直それほど好きではありません。(作者本人も放り投げているのを認めていますしねぇ....)

「覆面座談会」でも溢れるほどの才能を「レムに匹敵する」とまで評価された人なのに惜しいですね...。

ただ自作を語るを読んでいると、なかなか面白そうなのでそのうち読んでみようかなぁとは思っています(特に短編)いつになるかは???ですが....(笑)

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