しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

EXPO’87 眉村卓著 角川文庫

2017-12-30 | 日本SF
これまた「覆面座談会がらみで読み出しました。
本作、座談会では酷評とはいえないまでもかなりけなされていました....。

眉村卓氏の作品は角川文庫で出ていたジュブナイル作品(「ねらわれた学園」やら)を小学生時代かなり読んでいました。

本書も当時角川文庫に収載されていたのは知っていて「ちらっと」気になっていなのですが、「大人向け」ということもあり敷居が高く買わず、読まずでした。

今回35年越しの再会です。
1968年発刊の作品、絶版のため本自体はamazonで古本で入手
このカバー懐かしい....。

内容(表紙折り込み記載)
人類文明の祭典”万国博”が三年後に予定され、各社が新製品の出品をめぐり、激烈な競争をしていた。大阪レジャー産業にも”夢を作る装置”に財閥関係企業から不当な圧迫が加わった。
が、剛腹な専務は、総合プロダクションを使って反撃を開始した・・・。
 しかし謀略合戦は、企業間だけにはとどまらない。男性優位の文明を一気に覆そうと、万博反対を叫ぶ女性の党の画策。マスコミ操作で自己満足に生きる”ビッグ・タレント”。そして産業コントロールのために育成された能力人間”産業将校”の思惑・・・。社会は今、巨大な渦となって動きはじめた・・・。
 産業文明を鋭く抉り、人類のあり方を考察する問題の近未来社会SF


「覆面座談会事件」では
”E 三章までは面白かったな。でもそれからが……伏線が陳腐だし、第一あの催眠術が困っちゃうな。あれが、結局一番大きな役割を果すものになってるからね。未来の経済の動きそのままが出てくる未来SFとして、最初すごく期待したし、結構も悪くなかったと思うんだけど……。”
と評されていますが....。

私もまったくの同感でした。
出だしは「近未来」の感じもいい感じで出ていて「産業将校」もネーミングは別としてサイバー・パンクっぽい感じで「オッ」と思ったんですが...。

催眠術が出た辺りで完全にいつもの眉村卓の「ジュブナイル」と同じになっていまた....。
「産業将校」とコンサルティング会社の山根氏、ビック・タレントとの知恵を絞った戦いなど楽しみだったのですが...。

最後は催眠術でなんとかしてしまうのか思うと安直感が拭えませんでした。
ジュブナイルで美少年が高校の生徒会長に催眠術使うのならありかもしれませんが、政党やら財閥系企業の幹部に催眠術使って支配権手に入れるって...どうでしょう?

が....、「産業将校」同士の会話が常人に理解できないものなことやら、創造者の意図に反して自己増殖していくところなど今の「AI」をめぐる懸念そのもので着想はいいと感じましたが、当時の眉村卓氏の筆力ではここが限界だったんでしょうね.....。(文章もなんだかおかしい部分が目立ちました)

文明論的なものも書かれていたのですがストーリが安直な中で語られてもちょっと薄っぺらに感じました。

財閥系の会社の経営陣、大坂レジャー産業の専務なども源氏鶏太のサラリーマン小説的な紋切り型だったような気もします。

全体的にけなしてしまいましたが発刊年の1968年当時ではそれなりに目新しかったのかもしれませんし、着想は買いなのですが、現代視点でみると読む価値が低い作品な気がしました。

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