しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

アーサー王宮廷のヤンキー マーク・トウェイン著 大久保博訳 角川文庫

2014-07-17 | 海外SF
何作かトウェイン作品を読んで勢いづいていたこともあり本書を手に取りました。

本作「古典的SF」というように評価されていたりします。
作品自体は昔から知っていて、19世紀の「ヤンキー」が6世紀イングランドのアーサー王宮廷にタイムスリップするというかなりベタなSF的設定。
気にはなっていたのですが、本の分厚さとどうにも面白いような感じがせず未読でした。

イメージ的には「火星のプリンセス」のジョン・カーター的いかにもなヒーローがアーサー王宮廷で大暴れする痛快活劇といったものかなーと思っていましたが….。
そういう作品ではなかったです。

内容(裏表紙記載)
コネチカット生まれのちゃきちゃきのヤンキー、ハンクが昏倒から目を覚ますと、そこは中世円卓の騎士たとの時代だった!科学の知識で、魔術師マーリンに対抗し、石鹸や煙草つくりに始まり、ついには新聞や電話網まで整備して、次第にお人好しのアーサー王の側近として地位を固めていくが・・・・・・。奇想天外なストーリーでSF小説の元祖とも呼ばれ、ひとつの価値観に凝り固まる現代文明を痛烈に批判する幻の名作が改訂版で登場!

SFといえばSFとも言えそうですが....、「アーサー王の死」のパロディと社会や人間性についての風刺小説という趣でしょうか。
パロディ的には「アーサー王の死」を読んでいればもっと楽しめたのでしょうが、なんとなく雰因気は伝わりました。
ちょこちょこっとアーサー王伝説も調べましたが、伝説の魔法使いマリーンを徹底的にバカにしているところなど元ネタ知っていればかなり面白そう。
小説家かつ教養人トウェインと、合理主義者トウェインのせめぎ合いとでもいうような感じで面白いです。

風刺小説の面では、「王子と乞食」「ハックルベリー・フィンの冒険」の流れを受けて、社会や人間性の矛盾を正面から捉えようという姿勢を強く感じました。

本作は「ハックルベリー・フィンの冒険」の後に書かれていて、「風刺」という意味ではより思いが強くなっているのか、かなり直接的に書かれています。
その辺が鼻につくといえばつくので文学作品として評価すれば「ハックルベリー・フィンの冒険」の方が上かとも思いました。

「未開人」をバカにして差別する19世紀の西洋人をその西洋人の祖先、それも伝説の王族も未開な状況であれば同じことであること、奴隷制度を支える貧困層のばかばかしさは未開でない19世紀でも変わらないことなどがこれでもかと書かれています。

石鹸やらなにやら
一方でアーサー王やランドルフの描き方には「尊厳をもつ人間」に対するちょっとした愛を感じました。
この辺も平等主義の理想家トウェインと、常識的教養人トウェインの葛藤ですね。
序文でトウェインが「王権神授についてはいまだに悩んでいる」というようなこと書いていましたがその辺が表現されています。

最後の最後はアーサー王の死も伝説通りの展開として、社会やらなにやらかにやらの矛盾が全て吹き出てヤンキー=ザ・ボスの施策は崩壊してしまうのですが、まぁラストはこうなるんでしょねぇ。

正直「すごいおもしろい」とまでは思えませんでしたが、トウェン節は堪能でき飽きずに600ページ近い作品を読み通すことができました。

私的にはハインラインの「異星の客」よりはつらくなかったです。(笑)
(そういえば本作「異星の客」と構図が似ているような気もする...)

ここまで本作、「SF」に分類しようか、「小説」にしようか悩んでいたのですが...。
やっぱり自由な世界設定と批判精神は「SF」な気がしてきたので私的には「SF」としたいと思います。

万人にはお勧めしませんがトウェインが好きなら「あり」な作品だと思います。

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