鑿壁偸光 漢字検定一級抔

since 2006.6.11(漢検1級受験日) by 白魚一寸

怱(匆)忙の書き取りが難しいと思う理由

2007年02月26日 | 18-3(第42回)

  文章題の書き取りで、ふぎょう(俯仰)は書けましたが、そうぼう(怱(匆)忙)は書けませんでした。

 俯仰は既に述べたとおり俯仰天地に愧じずという故事諺が14-3、18-1で書き取りで出ています。従って、文意を取らなくても、ふぎょう→俯仰と反射的に思い浮かびました。これに比して、怱(匆)忙は、一度も書き取りで出ていないので、そうぼう→怱(匆)忙という訓練が出来ていませんでした。

 ただ、過去問の書き取りで出たかどうかだけではなくて、ふぎょう→俯仰は想起しやすいのに対して、そうぼう→怱(匆)忙は想起しにくいのです。それは、ふぎょうと読む同音異義語が他にないのに対して、そうぼうと読む同音異義語が多いことに起因すると思います。

 同音異義語は、漢和辞典では調べられませんので、国語辞典のお世話になります。「広辞苑」(我が家は第四版)、「日国」(旧版)で引くと 「ふぎょう」は俯仰だけですが、「そうぼう」は、「広辞苑」には12個、「日国」には17個も熟語が載っています。また、「辞典」の見出し語になっているものだと、

怱(匆)忙、僧坊(房)、蒼茫、蒼氓、双眸、喪亡、草莽、草茅

が見つかりました。

 俯仰も怱(匆)忙も1級を学習してから知った熟語ですが、ふぎょうは、他の同音異義語はないのですから、ふぎょうという言葉に出逢ったとき、初めて聞く言葉で新鮮です。つまり、ふぎょう=俯仰は1対1の対応ですから定着性が良いと思います。

 これに対して、そうぼうについては、他の熟語を既にいくつか知っていますから、そうぼう(怱(匆)忙)という言葉に出逢っても、新鮮さに欠け、定着性が悪いような気がします。そうぼうと漢字は、1対多の対応になります。しかも同音異義語が沢山ありますから、書き取りのときにどれを選択するかも大変です。 そうぼう→怱(匆)忙が浮かんでも、他の熟語も浮かびますから、文意を取って、選択するという作業が必要となります。同音異義語問題を解いているようなものです。

 私がこのことを痛感したのは、16-2の文章題A(山路愛山「頼襄を論ず」 青空文庫でもうすぐ公開)を解いたときでした。

田沼意次父子君寵を恃んで威権かくしゃく(赫灼)たる時とす

で、「かくしゃく」と問われたので、反射的に矍鑠と書きました。当時、赫灼という熟語を知らなかったから致し方ないですが、かくしゃく=矍鑠と1対1の関係だと思っており、かくしゃく=(漢字)が1対多の関係で有ることには及びもつきませんでした。父子とか威権には、矍鑠は似つかわしくないことは、答えを見て気づきました。なお、かくしゃく(矍鑠・赫灼)は11-3の同音異義語問題で既に出題されていました。

 音熟語の書き取りは、文章題に限らず、平仮名を選択して漢字を書かせる語選択書き取りや対義語・類義語問題でも同音異義語の中から探さなければいけないときがあります。結局は熟語の意味をきちんと押さえておくことが肝要だと思います。国語辞典を使って、同音異義語を纏める方法もあるでしょうが、なかなかそこまでは出来ません。



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