酒造コンサルタント白上公久の酒応援談 

日本文化の一翼を担い世界に誇るべき日本酒(清酒)および焼酎の発展を希求し、造り方と美味さの関係を探究する専門家のブログ。

酒造りの遺言

2024-02-06 14:45:37 | 総合
櫂で溶かすな麹で溶かせ
昔の鑑定官のことばです。蒸し米を溶解しグルコースに分解するのは麹の酵素でありもろみの蒸米を櫂で潰すと良い酒にならないという教えです。酵素力の弱い麹だともろみが溶けません。下手な杜氏は良い麹を作れなく塗りハゼ麹を作ってしまい、もろみを溶かそうとして無暗に櫂を入れもろみをどろどろにしてしまします。結果として吟醸香どころか酸臭のする酸っぱい薄くて辛い酒になります。
酒蔵に入れない納豆、みかん、女性
現代ではありません。女性が酒を造る時代です。納豆もみかんも食べています。
酒造りは捌け
これは私の遺言です。良い蒸米(作業性が良い)で捌けのいい麹を作り、捌けのいいモト、捌けのいいもろみ、出来た酒は捌けがいい。捌けのいいもろみは短時間低圧で上槽ができ、澱下がり早く酒の濾過が容易。もちろん吟醸香は良くでます。もろみのメーターが切れないのは捌けが悪いからですね。低温発酵しにくいとされている協会7号酵母も5℃でメーターが切れます。
酒に問題があるのは自分の蔵に原因がある
立派な酒を造っている人がいるのだから。
腐った酒にもうまい酒がある
少し腐った(?)もおいしい。市販酒ですごく評判のいい酒に少し腐ったのがありました。何年かして蔵元は気が付いたのか普通の酒になったら人気が落ちました。腐った酒(乳酸菌)の研究をしてください。

新型コロナ禍飲酒動機機会の減少

2022-11-28 11:47:20 | 総合
新型コロナが中国の重慶で発生し世界軍人運動大会で世界中から参加した軍人が感染し世界にウイルスを伝播してから三年が経つ。日本で騒がれたのは翌年の大型客船で多数の感染者が出てからである。ウイルスはタイプを変えいまだに収束の兆しが見えない。感染拡大抑止には人との接触を極力避けるのが有効な対策のひとつとされた。お酒は人と人をくっつける特性がある。飲食店は閑古鳥どころか閉店に追い込まれたところがある。もちろん結果としてお酒は売れない。家飲みでは粋が上がらぬ。つくづくお酒の特性を知ることとなった。

新型コロナ流行で世界経済は一旦落ち込んだが一転コロナ対策資金が世に大量に溢れアメリカはコロナバブル経済となったが、インフレは凄まじく金融引き締めで景気は急速に落ち込んでいる。世界経済は中国の経済政策、コロナ対策の失敗で来年は落ち込むと見込まれている。日本では行動の制限が緩和され飲食店には多少の盛り上がりがあるようだが年明けとともにどうなるか。

追い打ちをかけるようにロシアは不条理な理由でウクライナに戦争を仕掛け世界経済を揺るがしている。こういう不遇な時代は避けたいが人類の歴史をみれば稀ではない。苦難の時代は平和な時代より多いのかもしれない。何とかして生き残らねばなりません。

鑑評会と品評会

2022-11-09 16:44:10 | 総合
品物(動物も)の品質の優劣を評価格付けし賞状を授与する言葉として品評会は明治以降使われ最近まで品評会という言葉が巾を利かせていました。鑑評会ということばは日本酒と本格焼酎の品質鑑定会にしか使われていませんでした。品評会と鑑評会の違いは昔は鑑評会では賞を与えないという違いでした。鑑評会の代名詞とでもいう全国新酒鑑評会も長らく賞状は与えられていません。昭和50年代になって金賞の賞状が付与されて品評会との違いが無くなったといってもいいでしょう。爾来40年余、今や鑑評会が清酒以外の分野でも使われ始め品評会の牙城を崩しつつあるかのようです。家畜やペットでは品評会がつかわれています。・・・テレビ見ていて驚きました。
なんで鑑評会という言葉が発明されたか?
明治の自家醸造禁止酒税法成立以降酒類の監督官庁は大蔵省でした。品評会は産業行政の一環なので産業行政をしない大蔵省は品評会ということばを使えないので代る言葉として鑑評会を考えだしたと先輩から聞きました。この辺の経緯は失われているので今さらです。

後期高齢者になるのを機に酒類産業から引退します。これからは思い出話を書こうかと思います。最近は酒の様相も様変わり時代に合わせて魅力的な酒が生み出されていくでしょう。日本醸造協会出版の酒造教本は第三版が増刷されました。初版から20年以上経っていますが専門書としてはベストセラーだそうです。なお、英訳本もあります。

現代日本酒の技術のルーツはどこから来たのか

2022-09-16 22:50:49 | 総合
日本酒(清酒)はどうやって現代に至ったのかあまり耳にしたことがない。ルーツはどぶろくであろうが今の清酒の形が出来上がったのは西暦年第1800年の灘、西宮の酒作りである。それ以前の酒は甘くて酸っぱいとろっとした酒であった。飽きやすい酒だった。灘・西宮の酒造りで酒の味が一挙に変化したのである。何杯でも飲めるの見飽きしない辛口になった。嗜好性が一挙に向上したのである。コペルニクス的とは言わないが味革命が起きた。酒造り技術の担い手は丹波の出稼ぎ杜氏であった。革新的な酒作りの技術は現代に引き継がれ、清酒の仕込み配合はその当時の基本を引き継いでいる。詳しくは日本醸造協会発行の酒造教本のとおりである。もっと詳しくは本ブログに記してある。
灘・西宮の酒造技術が全国に普及した過程は謎である。諸先輩や全国の酒屋さんの話の断片を拾い集めると江州商人と丹波の杜氏がタグ組んで一緒に全国で酒造りを始めたという。十一屋とか江州店の作り酒屋は多い。地方では依然として古い技術で野暮ったい酒(いなか酒)を造っていたので勝敗は明らかだった。瞬く間に灘・西宮の酒(本場の酒)が全国を席巻したのは当然の結果だった。

くだらん:上方から江戸に行くことを下ると言った。灘・西宮で造られた良い酒だけが江戸に下った(送られた)。くだらんとは江戸に送ることができない品質不良の酒をさす。

新技術が日本中に広まると酒造り集団が各地で誕生した。九州は築後杜氏、五島列島にも小さな杜氏集団が平成時代もあった。広島(安芸)杜氏、出雲杜氏、丹波杜氏、丹後杜氏、糠(福井)杜氏、能登杜氏、越後杜氏、志太(静岡)杜氏、信州杜氏、南部杜氏、山内(秋田)杜氏・・・令和になった今ほとんど残っていないと聞く。現代の技術の担い手は酒造会社、研究機関、大学になっている。日本醸造協会、もやしメーカーも根幹的な技をを保有している。

間もなく後期高齢者になるので下らない話でも残せば何かの役に立つかもしれないという気持ちです。文字で残さなければあったことも無かったと同じで記録するというのは大事です。

日本酒の未来

2021-06-27 12:51:44 | 総合
本日安価なワインを買った。チリ産、赤、750ml、税抜き458円。ポイント還元入れるなら税込み1本500円。何という安さ。1本はフルボディ、他はミディアムボディ。肉料理のに使う予定だが味見。樽貯蔵の香があり不良香は感じられない。酸味、苦味は丁度いい。甘が残らずボディもある。渋みが荒いのは仕方ない。後記:メトキシピラジンの匂いが強かった。これは好き嫌いあるが嫌いだ。
価格で対抗できる日本酒でこんな安いのは紙パック品だろう。ワインは瓶だ。見た目どちらがいいか誰でもわかる。パック日本酒が美味いならまだ見込みはある。安く作った日本酒はそれなりの味だ。消費者を満足させられる物を見たい。日本酒に関わる者として髀肉の嘆だ。

東京駅中で日本酒造り

2020-07-09 17:18:46 | 総合
令和2年7月8日付き日本経済新聞に東京駅構内(駅ナカ)で酒小売店が日本酒製造免許を得て製造販売すると報じた。日本酒製造免許は新規免許が認められてこなかったが最近輸出専用日本酒の製造免許が下りたと知った。今、小売店に製造免許が下りた。新規需要開拓や人目につく場所で日本酒ピーアール目的だという。従来の日本酒蔵だけの市場開拓努力では足りないから助っ人蔵ということだろう。造ってその場で売れば多くの興味を持たれ、新感覚日本酒の開発に繋がるかもしれない。8月3日東京駅「グランスタ」で開業、日本酒、どぶろく、リキュールを製造する。どぶろくは雑酒に分類され雑酒既存酒蔵でこの免許を有するところは極稀だ。雑酒(どぶろく)免許は異例。清酒の製造は小規模製造所では困難である。どのような設備で造るのか興味のあるところでもある。既存酒蔵も負けじと本家本元の技術力を発揮し発奮してもらいたい。

日本酒のうまさ

2020-05-12 14:09:50 | 総合
 日本酒の味の根幹は米の味である。米の旨さは日本酒の旨さのベースだ。良い米なくして良酒なし。良い米の代表、山田錦は旨い米だろうか。旨い米の代表はコシヒカリである。コシヒカリの遺伝子をもつ米はヒカリが名前につく。ヒノヒカリはうまみの強い米である。山田錦は旨さはコシヒカリほど強くない、どちらかといえばあっさり、さっぱりである。でも酒にするとちょうどいい具合の旨さとなる。コシヒカリの酒は甘みとうま味が出る。最初の一口は旨いのである。でも味の濃い酒は飽きがくる。酒米としては山田錦が勝る所以だ。
日本酒の特徴はフルーティーな香り吟醸香である。この香があってこそ現代の酒であり世界でも愛される。もし吟醸香がないと日本酒はいかなる感じになるか。鼻をつまんで口に含めば甘い、すっぱい、苦い、渋いである。旨味はどこ?。旨味はささやか過ぎて影が薄い。日本酒は甘くてすっぱい酒でもある。甘酸バランスが求められる。吟醸酒の歴史は酸を少なくするかの醸造技術の歴史である。全国新酒鑑評会の入賞酒は酸度が低い(1.1~1.4)というのが常識であった。常識が覆ったのは昭和50年代後半広島の加茂鶴の酒が全蔵金賞という時代があった。なんと酸度が1.7~8と常識外れに高かった。甘酸バランスがよく吟醸香強くそれまでの吟醸酒の常識を覆した。酸は多くてもバランスが良ければうまい。認識が変わったのだ。
 最近酸の多い酒が見られるようになった。蔵として酸の多いのは千葉県の木戸泉だろう。乳酸発酵モトという独自な製法で骨太な酒だ。最近販売量が増えている。市場が酸の多い酒を受け入れる時代になった。酸の味で興味深いのは栃木県の仙禽だ。評判の酒である。この酒は乳酸菌発酵した形跡がある。驚くべきことに腐敗した香味が感じられないことだ。若いころ、貯蔵していた酒が火落ちし味を見るとおいしい。ワインは貯蔵中に乳酸菌を繁殖させきつい酸味(マロン酸)をやや穏やかな乳酸に発酵させている火落ち菌も使えるのでは思った。果たせず今に至っている。火落ちは酸度の減少でなく乳酸を増加させるので酸味が立つ。やり過ぎれば腐ったすっぱい酒だ。ちょうどいいところで止めれば面白い。
 酸の多い酒は外にいろいろ方法がある。多くの蔵で挑戦して面白い旨い今までにない酒が出回ることを期待したい。
新型コロナウイルスパンデミックで業界は大変でしょうが耐えて欲しい。コロナ制圧時にはおいしい日本酒で祝いたい。

安いスコッチウイスキー

2020-01-24 12:49:05 | 総合
チラシを見て税込み759円のスコッチウイスキーがあった。アルコール分40%、700ml、ブレンディッテドウイスキー。こんなものに妙に気がそそられるのは団塊世代の業か。若いころスコッチウイスキーは超高級品だった。初任給3万5千円(ベースアップで3万8千円)、服も何も買えず生活で精いっぱいの時代だった。そのころスコッチと言えばジョニーウォーカーだ。憧れのスコッチウイスキー、ジョニーウォーカーの黒が1万円だった。憧れが頭に刷り込まれた。品質や旨さでなく価格に対して屈服していた。それが叔父の家を訪ねたらあった。米軍用の1リットル瓶だった。これがジョニ黒か。味は価格の権威に押されて引っ込んだ。ただ焦げ臭味が強いという印象だった。今やそれすら何にも残っていない。
で、チラシのウイスキーだがやはり焦げ臭が強い。強すぎだ。後味に残る。切れないのだ。香りの広がりも深みも無い。値段は値段のものだ。安いには理由がある。
若いころスゴイと思ったウイスキーがある。マッキンリーのレガシィ18年ものだった。職場に放置され誰も飲まなかったので一人で飲んでしまった。香りが豊かで味に幅があった。何よりもウイスキーとは思えない甘さとキレがあった。もちろん糖分はゼロだ。糖を入れると香りが萎み味が重くなる。その後こんな酒にお目にかかったことはない。なお、アルコールは甘い物質である。その甘さを殺しているのは

山田錦、原料米と酒の味

2019-11-22 14:52:53 | 総合
日本酒の原料は言わずと知れた米である。日本で開発された日本産であることが日本酒の味を特徴つける。
山田錦は酒造原料として誰もが無視しえない最高最適品種である。酒にすれば香味はまろやか豊かな味わい、これを凌駕する米はない。産地は兵庫県を最高とし西日本各地である。奥手品種で反収が少ないので高価である。高価を勘案しても余りあるパフォーマンスが期待される。誰が醸しても良い酒ができる。技術未熟な者が麹を作っても実用に供せる。

雄町、山田錦と並び称される米だが個性が強い。軟質の米で濃厚でまったりした酒質となる。この米で山田錦のような酒を期待してはいけない。それは雄町の個性を殺すことになる。雄町の個性を引き出した酒はマレである。大阪府三島産を最高としたが今ない。岡山県赤岩産がこれに次ぐ。

五百万石、多収量で収穫時期が早い。やや硬質だが使い勝手はいい。酒質は淡麗でクセが少ない、逆に言えば個性が少ない。一般的な高級酒向きである。

美山錦、五百石同様硬質で淡麗な酒ができる。

愛山、軟質米、味はクセ無く個性が無いようにも思えるが淡白ではない。山田錦の匹敵する微妙なまったり感がある。山田錦に匹敵する高級な酒にすることができる。製造に扱い難いのが難。長期熟成に耐える。山田錦を東の正横綱とするなら愛山は西の正横綱だろう。

八反、八反錦、広島を代表する酒造好適米。やや硬いがすっきりした酒になる。

酒小町、秋田県の米、淡白な味わいであるが五百石よりほのかなうま味が感じられる。期待できる新顔である。

一般米
日本晴、かってササニシキが登場するまでは栽培数量最大の米で当時は酒の原料米としても使われていた。硬質で良い酒ができたが今では日本晴れの酒は見られない。

ササニシキ、酒造原料米として使われることはマレである。軟質なので蒸し米が柔らかくべとつくので作業性がよくないからである。これで作った酒は味が濃くうま味が強い。ハツシモ(岐阜県西濃)という軟質米高級品種で作った酒は非常に伸びのあるコクの深い酒だった。これら軟質米は米の味が酒の味に反映される。

他に各地に一般米(食用)がある。それぞれ味に個性があり特長のある酒が醸される。一般米ということで無視されるのは惜しい。

赤飯(あか飯)

2019-04-26 21:12:54 | 総合
あか飯とは気温が上がり始める3月ころから蒸し米の一部が橙黄色からくすんだ赤い色になる現象をいう(高地、東北以北など寒冷地域ではほとんど起こらない。シュードモナスなど一般細菌の繁殖が原因とされている。)。赤飯ならめでたいがあか飯は仕込み蔵の疲れ(微生物汚染が進行)を意味し、醸された酒は寒造りの酒に比べると香味が劣る。寒造りの酒が一番だと言われる所以である。クライアントの蔵は現在も仕込んでいる。四季醸造の蔵でなく季節蔵である。季節蔵は昔なら2月には仕込みは終了していた。昨日は30℃3近くまで蔵内気温が上がったという。あか飯は発生していない。搾った酒も真冬の造りレベルの品質である。あか飯防止策については酒つくりの本には書かれていない。防止策は衛生管理に尽きるといいたい。クライアントの対策は洗米、浸漬、水切り、貯蔵の衛生管理である。用水は塩素消毒し、器具も汚れを落とし殺菌して使い、吸水させた浸漬米は冷所で保管している。意外と放冷の空気の汚染(真冬より細菌類は多い?)は酒の品質に影響していないようだ。蒸した後の放冷で蒸米につく空中の菌はもろみの中で繁殖するほど多くない、無視できるといことだろう。これも蔵内の清潔があってこそ空中の菌も少ないのだろうと思う。あか飯対策のもう一つの対策としては吸水・水切り後即日に蒸しあげることも良いと思う。でも良い酒を得るには蔵内の衛生管理の徹底と心得る。

櫂入れ操作の意義

2019-03-06 22:52:20 | 総合
某公共放送のある酒造場のドキュメンタリーでもろみに櫂入れを一切しない驚愕の技術があると番組で絶賛していたと知人が半分驚き半分呆れた顔で教えてくれた。それは絶賛すべき新技術なのか単なる思い付きなのか、櫂入れはなんのためするのかという疑問に至ると思う。

櫂を入れてもろみを撹拌するのは留め仕込みからいつごろかにより目的が違う。酒母ではまた違う。櫂入れは目的をもってされもくろんだ効果がある反面良くないこともある。どちらを選ぶか、目的に合ったやり方は何かと数多の杜氏は長年考えてきた。科学的にはどうか。
櫂をもろみ全期間入れないという仕込みは寡聞である。かといって革命的ではない。櫂入れは絶対と思っていた素人がそのような仕込みを見れば驚愕するかもしれない。でもそれを褒め上げるのは素人の何とか。

100年も前に技術者は「櫂で溶かすな麹で溶かせ」という言葉を残している。櫂を使い過ぎて蒸米を練って糊にすると米は溶けず酸っぱい薄辛い酒になると警告している。糊のミセル構造は酵素を閉じ込めた状態にし酵素作用を阻害するためと説明されている。また、酵母も同じように固定されブドウ糖や栄養分の取り込みが邪魔され活性が削がれる。酷ければ酸っぱい臭いのする薄辛いアルコール分の低い酒になる。

糊っけを嫌うという意味では無櫂入れはあるのかもしれないが、吟醸造りのような低温仕込みではもろみの一部(タンク底)が動かなくて糊が出たと同じような状況が起きる可能性もある。昔吟醸造りで仕込み後5日以上櫂入れなしという酒を何年かにわたり見たが特殊な酸臭(低級脂肪酸?)が鼻を突いた。このようなことは過去多くの人が認識し対策を考えてきた。球形タンクや撹拌機を装備したタンクもその一つである。

日本酒はなぜ負け続けるのか

2019-02-18 11:14:06 | 総合
酒とは清酒(日本酒、日本酒といういい方は最近)を指した。酒飲みたいといえば清酒のことだった。祭りや祝言など酒を飲めることは酒飲みには大いなる楽しみだった。酒は憧れであった。戦後経済が復活し高度成長と生活が豊かになるにつれ清酒以外の酒、ビール、ウイスキーが伸長し昭和30年代にビールが清酒を追い抜いた。それでも清酒は昭和50年まではシェアを落としながらも成長した。が、ここをピークに減少の一途でいまだ歯止めがかからない。今年はEUとの間にEPAがスタートし関税がゼロとなりワインの攻勢が始まった。TPP発効もあり清酒にとっては弱り目に祟り目だ。ワインの価格は超高額品から安ワインまで色々だが低価格ワインは750ml500円未満のワインも珍しくない。そんなに安い清酒はない。安い清酒は紙パックの低アルコール分の商品だ。味が薄くてペラペラ。そんなのを買う人とはどんな人だろうと常々思う。安酒分野では清酒は競争力が弱い。しかし安くて濃くてうまい酒は不可能ではない。清酒の定義で認めている副原料を最大限使えばいい。昔の三倍増醸酒は今でも製造可能なのだ。昔の酒蔵見学で見学者にどの酒がおいしいかと尋ねればほとんどの人が三倍増醸酒を指さした。武士は食わねど高楊枝もいいが現実もあります。
なお、本人は最高の日本酒を目指しているので品質勝負しています。喰われた市場を取り返すには日本酒の凄みと高みを示すべきと思っています。

最高の酒

2019-02-02 15:19:49 | 総合
最高の日本酒って何だろう。どのようなものだろう。香り、味、口当たり、ボリューム感と挙げてはみても具体的に表現できない。えも言われないものだろう。少なすぎず出過ぎずえも言われない豊かさ満足感そんな何かを求めて酒つくりに苦闘してきた。日本酒の歴史からのとりあえずの回答は吟醸酒であろう。吟醸酒は精米歩合70%以上の米、粕歩合20%の酒とは一線を画す。成分的には酸度及びアミノ酸度が低く口当たりが柔らかくすっきりした味である。明らかな違いがある。で、そこで止まるのかと言えばそうではない。やはり、その上を求めるのが人の欲であり現状に満足しないのだ。消費者が求めるのか造り手が煽るのか、日本酒は進化する。進化しなければ廃る。そういう恐怖じみたこともある。

ワインの超高級酒は100万円を超える。日本酒(720 ml)は1万円代だ。その差は何か。ひとつには市場の大きさの差であり、金持ちのレベルの差である。ワイン市場は世界の金持ちの金満ぶり権力を見せつける場である。政治的な側面を持っている。また、そういう歴史が長い。日本酒は1万円市場を作り出せていない。簡単でないのは日本人の物の考え方に根差していると思う。奢侈に慣れていない。むしろ奢侈は不道徳なのだ。さらには旨い数千円の日本酒は数多ある。万のお金を出さなくても満足なのだ。

それでも出したい通を呻らせる日本酒。超高級ワインと互角に渡り合える酒。未だ市場では見ない凄い酒。私は見たその片鱗をもった凄い酒造り造りの技術。40年以上も前のことだ。その杜氏さんの影響を受けた杜氏も多い。その杜氏さんの技術は私に大きな影響を与えその後多くの人に酒造技術を教えてきたがレベルは半分もいかない。今、技術と品質を残したい。残すことがその名杜氏さんの手向けになると思って。

精米割合、精米歩合

2019-01-01 10:13:32 | 総合
日本酒の原料は白米である。白米と云っても精米の程度はいろいろ。そこで精米の程度を示す指標が必用となる。ご飯の白米は7分(搗精割合、尺貫法表記)搗きがスタンダード、つまり玄米重量の7%の糠を取り除いたものである。飯米では尺貫法が生きている。
酒米の精白度は搗精割合が使われていたが尺貫法が禁止され精米歩合が使われるようになった。筆者がこの世界に入った1970年ころは二つの言い方が混在し、高年齢層は尺貫法、若年層はメートル法でややこしかった。当時3割精米といえば搗精割合3割のことであり玄米重量の30%が糠として取り除かれた白米という意味だった。メートル法の精米歩合では70%となる。清酒の製法品質表示基準で使われているのは精米歩合(%)である。最近精米割合が精米歩合同様白米重量割合として使われている。磨き割合も同じだ。3割精米=70%精米でなく、現代では3割精米といえば30%精米という意味で使われている。混乱は少ないのかもしれないが釈然としない。数字が小さいほど高加工というのは人間の感情としては違和感を感じる人も多いだろう。高精白を示すなら精白度(%表示、%表記は省略)がいいのではなかろうか。精白度0は玄米、糠として取り除かれた比率が30%なら精白度30、50%精米なら50。30%精米なら70だ。数字が大きいほど精白度が高い。こういう提案は混乱を広げるかもしれない。
TPP11、EUとのEPAの発効により安価なワインが大量に入り込む時代になった。日本酒は進化しなければ消え去る。日本酒に新しい時代が訪れんことを祈ります。新年あけましておめでとうございます。

不味い大吟醸酒を葬れ

2018-12-29 09:41:08 | 総合
日本酒の税法的名称は清酒である。酒イコール清酒であった。日本酒の代表的銘柄〇〇正宗の正宗はセイシュウと読めることから日本酒の銘柄として使われてきた。清酒は身近な言葉だったのだ。近年清酒という言葉は死語のごとく聞かれない。ここでは清酒と日本酒の両方の言葉を使わなければならないのは時代の流れだ。日本酒が一般名称といっても過言ではない。酒と言えば清酒を指していた時代は昭和40年(1965年)以前だった。清酒は昭和30年代半ばにビールに量的に抜かれるまでは日本の酒として君臨してきた。当時、宴会は生活の中に根づいていた。めでたい時、そうでないとき折り目節目で酒を飲む宴会した。そういうものを宴会文化とでもいうなら宴会文化は公務員の綱紀粛正コンプライアンスが求め始められきた昭和の終わりころから減少し、その流れが地方公務員に及んだ時息の根を断たれた。料亭は減少し地方で生き残っていた料亭も平成10年ころにはめっきり減った。公務員が大のお得意様だったのだろう。料亭の酒と言えばもちろん清酒(日本酒)だった。このころはまだ清酒の味は信頼されていた時代だったのかもしれない。

清酒は三増酒問題で品質を叩かれ昭和50年をピークに販売量を落とし続けている。いまやピークの30%でなお凋落のめどがたたない。量を追うものではないが量も大切な事項だ。量が無くなれば消費者の目に留まらなくなり存在すら意識されなくなる。量が減り続ける原因は何か。清酒だけが減り続けるのはなぜか。答えはひとつ不味い物が出回って消費者を失望させているからだ。

こういう仕事をしながら普段酒を飲まない人間だがスーパーのチラシを見ていてふと1000円以下の大吟醸って何かという疑問が起き購入してみた大手メーカーのもので880円(税別)だ。どうしてこんな値段で造れるのか売れるのか。答えはまずい、吟醸の品質コンセプト(個人の)にまったく合っていない。アルコール分は14°台、香りは吟醸香というよりアルコール臭が立ち味は米や麹の風味乏しくアルコール味でうすっぺらい。とても大吟醸どころか日本酒も名乗って欲しくないレベルだ。安いからコストをかけられないという生産者の言い訳をごもっともと理解してくれる物分かりのいい人はレアーだろう。いくら安くても消費者は大吟醸酒として買っているのである。大吟醸という名称の信頼性を揺らがせかねないと老婆心ながら思う。

品質名称と味で消費者を失望させないよう切に願う。