酒造コンサルタント白上公久の酒応援談 

日本文化の一翼を担い世界に誇るべき日本酒(清酒)および焼酎の発展を希求し、造り方と美味さの関係を探究する専門家のブログ。

米の力

2014-09-13 10:38:35 | 総合
 東南アジから中国、日本にかけては米食は当たり前だ。当たり前の食べ物だからいつも通りの味かどうかは関心はあっても、その味や香りの特徴を普段は考えない。米の味はご飯を食べて表現するのは難しい。比較したり、米を使っているかいないかで味の変わる食品を食べて(飲んで)みると分かりやすい。
 麦(大麦)と比較すれば米の味の特長威力が分かるというものだ。平成5年は冷害で米は大凶作だった。日本中パニックになりタイ米など長粒米が大量に輸入され量は満たされたが日本産米の旨さの有難味が実感されたと思う。日本産米しか使わない日本酒は原料不足で大騒ぎになり、緊急措置の一つとして大麦を原料の一部に使用することが検討され、大手酒造メーカーで試験醸造された。新酒の時は麦の味が勝り香りは酷く市場性はないものと判断された。5年後貯蔵熟成された酒を利き酒する機会があった。日本酒とはかけ離れた酒ではあるがこれはこれで飲めるが長期熟成が必要であり日本酒にはるかに及ばないので市販は困難だろう。貴重な経験だった。
 実はビールにも米は使われ日本のレギュラービールには例外なく使用されていると思う。理由は味がまろやかになり旨味に幅がでるからである。外国ビールにも米が使われている銘柄がある。この銘柄は日本のビールより多くの米が使われ味が大変すっきりして飲みやすく、輸入ビールといえばこの銘柄で人気だった。
 ビールに米が使われなくなったらどうか。スーパードライは発売当初米は使われていなかった(原材料表示に米がなかった。)。当然他社との品質は一目(味)瞭然であった。が、発売1年後くらいから原料に米が使われるようになった。気づいた消費者は少ないだろう。やはり米無しのビールは美味くないのだろう。
 蛇足、ビール原料として米は主原料の麦芽よりはるかに高価である。なのに米を使うにはそれなりの利点があるからだ。それこそ米の力だ。