・ 大人も楽しめる英作家P・ネスのファンタジーを実写化。
病を患っている母の事実を受け止められない英国湖水地方に住む13歳の少年に、イチイの樹の怪物が語る「善悪」「信念」「存在」の物語を描いた寓意に満ちたファンタジー。
パトリック・ネス原作を自ら脚本化、「永遠のこどもたち」(07)、「インポッシブル」(12)のスペイン監督J・A・バヨナが担当し、ゴヤ賞9部門を受賞。
12時7分、少年・コナーの前に現れた怪物が語る3つの物語はとても哲学的。
最初の<黒の王妃と若き王子の物語>は、別の真実があって「善悪」には二面性があることを示唆。
2つ目の<薬師の秘薬の物語>は、娘を救うために神父が信仰心を揺るがす矛盾をついて「信念」の難しさを暗示。
3つ目の<透明人間の男>は、「存在」を無視されることの辛さを伝えている。
少年が持つ様々な矛盾を怪物は比喩的に語って聞かせ、4つ目に真実の物語を語るよう迫って行く。それはお互いが離れたくなくても別れなければならないことやウマが合わない人とも受け入れなくてはいけないことなど大人が現実に向き合っていることを少年に諭しているようだ。
コナーを演じたルイス・マクドゥーガルは少し幼い感じもするが、いじめられっ子で両親の離婚に悩む等身大の少年を大きな眼と細い身体で好演。母親役のフェリシティ・ジョーンズはダイエットを頑張って静の演技、祖母役のシガニー・ウィバーは孫への愛情を隠していた思いやりのある役柄で好印象。
米国に新家庭を持つ父トビー・ケベルが唯一身勝手に感じるが、これが大人の世界だという役割。
イチイの怪物の声を担当したのはリーアム・ニーソン。モーション・キャプチャー(動きをデジタルに記録する技術)にも挑戦、陰の主役でもある。
原作にはない叙情的なエピローグは、葛藤する少年が本音を言うことで大人への階段へ一歩踏み出したようだ。
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