晴れ、ときどき映画三昧

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「ダイヤルMを廻せ」(54・米) 80点

2014-03-21 18:48:39 | 外国映画 1946~59
 ・ヒッチの歯切れ良い倒叙形式ミステリー。

 「裏窓」(54)、「泥棒成金」(55)と続くヒッチコック監督、グレース・ケリー主演3部作、最初の作品。フレデリック・ノットの大ヒット戯曲を映画化した。日本では平面で公開されたが、当時珍しい立体(3D)映画で、フレデリック・ノットの大ヒット戯曲が原作のため、ほとんどが密室劇。

 のちに「コロンボ」など犯人がネタバレで犯行がどのようになされ、どのような結末を迎えるのか?に最大の興味となる倒叙形式ミステリーの先駆けドラマでもある。

 レイ・ミランド扮する元テニスプレイヤー・トニーは、G・ケリー扮する資産家の妻・マーゴとの関係が冷えているが上辺は愛妻家を装い、妻の不倫相手マーク(ロバート・カミングス)とは友人として接している。実は半年前から9万ポンドの遺産を狙って妻の殺害を企てていた。トニーは直接手を下さず、素行が悪く金に困っている大学の先輩スワン(アンソニー・ドーソン)に目を付け、20年振りに会って1000ポンドの報酬で犯行を約束させ筋書きを話す。

 それはマークと男だけのパーティに行った夜、トニーが掛ける電話を合図にスワンが物盗りを装ってマーゴを殺すというもの。予定どおりの筈が、苦し紛れにマーゴが掴んだハサミがスワンの背中に刺さって、死んだのはスワンだった。

 ヒッチコックは、会社との契約で引き受けた作品のため最初は乗り気ではなかったようだが、なかなか凝った演出ぶりは流石。立体映画という斬新な映像にも果敢に挑戦し、殺害シーンでは1週間掛けて綿密なリハーサルを重ね9kgも痩せた?という逸話が残っている。

 F・ノットの綿密な脚本も素晴らしいが、それを映像化したヒッチのキメ細かさと歯切れ良い演出は後の作品のお手本となっている。とくに小道具には凝り性のヒッチは壁の絵や彫像は本物を使い、舞台では及ばない映像ならではの小道具がストーリーの裏付けとなるような工夫がなされている。それはステッキ、葉巻、時計、ハサミ、スカーフ、ストッキング、ハンドバッグ、お茶のトレイ、手紙、カーペットなど何らかの小道具をあてがうことで物語が進展して行く。

 60年前の作品だけに現在見ると不自然なこともあるが、当時としては止むを得ないことも多い。その最たるものはハサミが背中に刺さって死んだのに出血がないこと。これは映倫が残酷なシーンを認めなかったため。

 筋書き通りに行かないたびにトニーは冷静沈着で臨機応変に対応するところがサスペンス描写の面白さ。なにしろ観客は妻殺害が予定どおりに行われその後どうなるかを期待していたのだから。R・ミランドはこの役がハマり役でのちに同じような役ばかり廻ってくるのは、俳優として幸せだったろうか?「コロンボ」でも2回犯人役で登場しているのも記憶に新しい。

 G・ケリーは正当防衛ながら、不倫という負い目から危うく殺人犯として死刑になろうとするヒロインなのに、悲壮感がまるっきり感じられないのが不思議。観客がハッピー・エンドになると思い込んでいるせいか?赤いドレス、白いワンピース、グレーの衣装と段々地味な衣装が境遇の変化を感じさせるが何を着ても美しさは変わらないのは、演技とは無関係なこと。

 不倫相手のマークを演じたR・カミングスはアメリカの推理作家という役だが、添えモノ感が拭えない。前半画面にかなり出ている割にあっさり殺されしまうスワン役のA・ドーソンともども損な役回りだった。

 もっとも役得だったのはハバード警部役のジョン・ウィリアムス。「コロンボ」同様、事件の鍵を握るのは彼の推理とそれを裏付ける最後の仕掛けで終盤の主役。そのキーがドア鍵なのは、ダジャレにもならないが・・・。

 例によってヒッチが何処に出ているかも興味のマトだが、よほど注意していても見逃してしまうだろう。ヒントは犯人の同窓生であること。

 お洒落なエンディングまでインターミッションのある105分。目を皿のようにして耳をダンボにしても新発見のあるヒッチコックの仕掛けは止まるところを知らない。

 


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