詩などを創るのが好きな旅する者のブログ

自分が創った詩や絵などの紹介

このために生きている!?

2013-02-21 12:10:54 | 

「お疲れさま」と胸の内に刻んで

一杯のビールを流し込んでゆく

身体全身にしみ渡ってゆく心地好いせせらぎ

何たる解放感

何たる幸福感

「このために生きてるんじゃないか」なんてね

 (2013年 2月発表)


がらくた

2013-02-20 20:04:17 | 

がらくたどもが泣いている

風に揺られて 雨に打たれて

壊れてしまったから

直せなかったから

それとも 時代の非情な仕打ち

今日も屍は積み込まれて

死神の見捨てた煙の墓場へと

あんたらが持て囃された日々は もう遠い

腐蝕した身体で何を思っているの

がらくたどもが泣いている

あんたらにもう明日は来ない

 (1996年 「詩集 輝きの下へ」より)


泥沼

2013-02-18 19:06:48 | 

いつだったでしょうか

ある町をぶらぶら歩いていました

何軒もの店を越えた遠くの方に

太陽がきらきら反射しています

眩しいほどのあの場所へ向かって

体が動いていました

湖です 湖だったのです

透明な水の煌めき

その中に美しい女性が立っていました

僕は引き込まれるようにして湖に浸かり

気がついた時には

もう好きになっていたのです

何度か会う内に その女性の気紛れに

胸の痛くなる夜が多くなりました

眠れない切なさに震えていました

やがて透明だった湖は濁り出し

茶色をした真実が僕を囲み始めました

一途でない彼女の行為がそうさせたのです

泥沼と化した湖に沈んでゆく自分がいました

手を伸ばせば まだロープに届きます

あのロープに摑まりさえすればいいのです

摑まりさえすれば

でもそうしませんでした

一歩踏み込んだのであれば どうなろうとも

結果が出るまでは沈みたかったのです

どんどん どんどん 沈みながら

もう湖に戻ることはありませんでした

まるで視界のない死海

泥沼の底にいました

見事に負けたのです

だけど本当に負けたのではありません

それから必死で這い上がろうと

僕は地上を目差したのです

何日も何日も 傷口の痛みをこらえ

幻影にうなされながらも

思いを振りかざし

そしてついに太陽の笑顔を見た時

僕は勝ったのです

そこには強くなった自分がいました

 (1996年 「詩集 輝きの下へ」より)


泉さん

2013-02-17 18:56:57 | 

泉さんが大きく口を開いて

乾ききったこの大地に

潤いを注いだ

みんな みんな 喜んで

みんな みんな 涙して

救われた

生き返った

手を合わせた

泉さん ありがとう

死んだ瞳は輝き出して

やっと未来が見えるんだね

 (2013年 2月発表)


夢の中の少年

2013-02-16 20:18:04 | 

昨日 夢を見たんだ

数々の高層ビルが

ひしめき合いながら並んでいる

聞こえてくるのは

あわただしいほどの騒音だけ

そんな街のすき間に

小さな空地がぽつんとあるんだ

そこで少年が独り 空を見つめていたよ

濁りのない澄んだ瞳だった

今何を考えているの

今何を求めているの

あの空を流れている雲のように

自由に そして大らかに

いつか飛べるのなら

少年はそう思っていたにちがいない

あの少年は僕自身だったのかもしれない

 (1996年 「詩集 輝きの下へ」より)