どうぶつのこころ

動物の心について。サルとか類人猿とかにかたよる。個人的にフサオマキザルびいき。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

飼育アマゾンタンスイエイの道具使用

2009-12-22 06:38:43 | 思考・問題解決
A54 Kuba, M. J., Byrne, R. A., & Burghardt, G. M. (2009).
A new method for studying problem solving and tool use in stingrays.
Animal Cognition. (DOI:10.1007/s10071-009-0301-5)

エイ(Potamotrygon castexi)における問題解決と道具使用を研究するための新方法
軟骨魚類の認知能力をテストすることは、高次脊椎動物の認知機能の進化的起源を理解するうえで、重要である。われわれは、アマゾンタンスイエイ(Potamotrygon castexi)を5個体用いて、学習課題と問題解決課題をおこなわせた。管テスト装置を開発して、単純だが洗練された手続きを用いることで、水生動物のもつ認知能力をテストした。5個体ともすべて、水を道具として使用することでテスト装置から食物をとりだすことを、迅速に学習した。〔そのあと、管テスト装置に適用した〕実験プロトコルでは、動物が誤った視覚手がかり決定を修正できるようにしてあり、5個体の被験体のうち4個体は、最初に正しい選択をおこなえなかったが、錯誤を修正できた。5個体の被験体のうち1個体は、この視覚弁別課題で、100%の正解試行を達成した。水を仲介物として用いることでテスト装置から食物をとりだす能力は、エイ類の道具使用を示した最初のものである。新奇のテスト装置から食物を回収する道具課題で一定の遂行を示し、そのあとでおこなった弁別/錯誤修正課題でも迅速に学習したことから、脊椎動物の系統において認知機能の起源を研究するのに、軟骨魚類が有用でありうることがわかる。
キーワード:道具使用(Tool use)・問題解決(Problem solving)・認知(Cognition)・学習(Learning)・魚類(Fish)・エイ(Stingray)・Potamotrygon castexi


人気ブログランキングへ

前回の記事はタコの道具使用(tool use)。これはエイの道具使用。もうどんな動物が道具を使用しても驚かないような気がする。

著者は、マイケル・J・キューバ(Michael J. Kuba)(イェルサレム・ヘブライ大学 Hebrew University of Jerusalem)、ルース・A・バーン(Ruth A. Byrne)(ウィーン医科大学 Medizinische Universität Wien)、ゴードン・M・バーガート(Gordon M. Burghardt)(テネシー大学 University of Tennessee)。キューバとバーンは、タコの研究で活躍している。バーガートは、ヘビなどの爬虫類の研究をおこなっている。バーガートさんは、ヘビが大好きな方で、たまたま巳年生まれであるのだが、ご自身でそれを知っておられた。ヘビマニアすぎる。

魚類の認知については、2006年にまとまった本が出ている。
Brown, C., Laland, K., & Krause, J. (2006). Fish cognition and behavior. Oxford: Blackwell Publishing.
ISBN1405134291

サメやエイの属する板鰓類(軟骨魚類の一部)は、脊椎動物のなかでも比較的古い系統であるが、比較認知的な観点から研究されることは少ない。先行研究によると、板鰓類でアロメトリ分析をおこなったところ、体重にたいする脳重の比は、分類群によっては、鳥類や哺乳類のいくつかを超えていた。エイは、その比が板鰓類のなかでも最大である。

魚類の道具使用は、議論が多いところだが、テッポウウオの水鉄砲使用が有名である。サメやエイも、噴流を使用することで知られていて、それによって水底の砂に隠れた獲物を見つけることができる。今回の被験体のエイも、この行動をおこなう。しかし、後述のように、この研究で被験体は別の戦略をとった。

被験体は、飼育アマゾンタンスイエイ(Potamotrygon castexi)。実験を経験したことのない亜成体で、オス3個体、メス2個体である。

訓練段階。実験装置は、まっすぐで不透明な管であり、中央にイカ片やイトミミズを置いた。全個体が自由に装置を使うことができた。全個体が1日分の食物をとったらその日は終了である。全個体とも、2日で学習できた。食物を獲得する戦略は、ひれで水流を起こしたり(undulating fin movements)、円盤状の身体を吸盤のように動かしたり(suction)することで、自分のほうに引き寄せた。噴流を起こして押しだすものはいなかった。

問題解決課題。実験装置の管の両端にジョイントをつけた。ジョイントも両端が空いているので、それだけだとただ長くなっただけだ。しかし、片方のジョイントには、鉄網が張ってあり、水流と匂いは通すが、食物をそこからとりだすことはできない。そのじゃまな網のある側には黒いテープが、反対の何もない側には白いテープが巻いてあり、正解の出口は視覚的に弁別できる。1試行は3分で、最初から正しいほうに行くか、錯誤を修正するかすることで、食物を獲得すれば、成功とされた。1セッションは、5回成功するまで続けられた。8セッションおこなったところ、全個体とも失敗試行が減少していき、学習がみられた。このうち、黒白の視覚手がかりを用いたのは1個体(オス3)のみで、残りの4個体は試行錯誤学習によって錯誤を正しい方向に修正していた。そのときに使用した戦略は、訓練段階と同じく、undulating fin movementsとsuctionだった。1個体(オス3)だけは、噴流を管のなかに流しこむこともした。

視覚手がかりを使うことができるのもすばらしいのだが、錯誤を修正することもエイにとっては特筆すべきことであるようだ。というのも、このエイたちは食物を手に入れるときに、自分のほうに寄せる戦略をとっているからだ。このとき、匂いも自分のところに流れてくるため、この認識を抑制して反対方向に向かう必要がある。これはエイにとって非常に要求水準の高いと考えられるそうだ。著者は、エイの認知能力が真骨類(一般的な魚類のことで、硬骨魚類の一部)だけでなく、両生類、鳥類、哺乳類に比肩すると述べている。

思ったのは、これが道具使用に相当するかどうかである。著者らも引用しているが、前回述べたとおり、動物の道具使用の研究では、道具使用は、「環境にある遊離物を体外で利用することで、ほかの物体や生物、使用者自身の形態や位置、状態を、利用しないときよりも効率よく変化させることで、そのとき使用者は使用中ないし使用直前に道具を保持または運搬するのであり、道具を適切で効果的な向きに直す責任をもっている」(tool use is the external employment of an unattached environmental object to alter more efficiently the form, position, or condition of another object, another organism, or the user itself when the user holds or carries the tool during or just prior to use and is responsible for the proper and effective orientation of the tool)と定義されている(ベンジャミン・B・ベック Benjamin B. Beck)(1980)。ここで重要なのは、道具が遊離物(unatteched object)であるということである。反対に、遊離しておらず、環境において不動のものとみなされているものは、基盤(substrate)と呼ばれ、陸上動物にとっての地面、樹上動物にとっての樹木、海生動物にとっての海などである。クロスジオマキザル(Cebus libidinosus)が堅い実を石(遊離物)で叩き割ることは道具使用であるが、直接実を手にもち、それを地面(基盤)に叩きつけて割ることは、道具使用ではなく、基盤使用(substrate use)として区別される。その定義は、「ひとつの物体を(ひとつまたはふたつの操作器官で)操作し、固定された基盤ないし媒体に関係づけること。たとえば、物体を地面にこすりつける、物体を水のなかで洗う、物体を表面に叩きつける、物体を表面に投げつける」(manipulation of one object (with one or two manipulators relative to a fixed substrate or medium, e.g. rubbing an object on the ground, or washing an object in water, or banging an object on a surface, or throwing an object onto a surface)である(Parker & Gibson 1977)。スー・テイラー・パーカー(Sue Taylor Parker)とキャスリーン・R・ギブソン(Kathlenn R. Gibson)は、物体-基盤操作(object-substrate manipulation)と呼んでいた。水のなかで生きるエイにとって水は基盤であるが、今回の行動は道具使用なのか基盤使用なのか。
Beck, B. B. (1980). Animal tool behavior: The use and manufacture of tools by animals. New York, & London: Garland STPM Press.
ISBN0824071689

テッポウウオの噴流使用であれば、道具使用である。それを拡張するなら、サメやエイが水中で砂のなかの獲物を見つけるために噴流を使用するのも、道具使用である。今回の個体のなかには、噴流を使用したものもいたが、たいていは、ひれで水流を起こしたり、円盤状の身体を吸盤のように動かしたりすることで、自分のほうに引き寄せていた。ここまでくると、基盤使用に近いのではないかと思えるかもしれない。

しかし、上で述べた基盤使用の例では、操作しているのは、実(目標物)であり、地面(基盤)ではない。他方、今回エイが操作しているのは、食物(目標物)ではなく水である。これは、目標物以外のものを操作して目標物を回収する道具使用であるといえる。つまり、このエイの行動で、水は、基盤としてあるだけでなく、手段(道具)となるように積極的にエイからはたらきを受けているということである。明確に道具としての水が基盤としての水から遊離していないだけで、これは道具使用である。

と書いたものの、噴流はともかく、ひれや身体全体を動かして水流をつくるのは、道具使用というよりは、複雑な運動の学習というほうがふさわしい気もする。道具使用も複雑な運動の学習の1種であるけれども。

軟骨魚類の知性の論文を読んだことはなかったので、とにかく新鮮でおもしろかったです。

人気ブログランキングへ
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

野生メジロダコの道具使用

2009-12-22 06:37:43 | 思考・問題解決
A53 Finn, J. K., Tregenza, T., & Norman, M. D. (2009).
Defensive tool use in a coconut-carrying octopus.
Current Biology, 19, R1069-R1070. (DOI:10.1016/j.cub.2009.10.052)

メジロダコにおける防具使用


人気ブログランキングへ

National Geographic News日本語版)などでニュースが出ていた研究。著者の所属しているヴィクトリア博物館のウェブサイトにも、ニュースが出ている。『カレント・バイオロジー』(Current Biology)のCorrespondenceとして掲載された。

著者は、ジュリアン・K・フィン(Julian K. Finn)(ヴィクトリア博物館 Museum Victoria、ラ・トローブ大学 La Trobe University)、トム・トレゲンザ(Tom Tregenza)(エクセター大学 University of Exeter)、マーク・D・ノーマン(Mark D. Norman)(ヴィクトリア博物館)。彼らは、ミナミハンドウイルカ(Tursiops aduncus)がオーストラリアコウイカ(Sepia apama)を手順に沿って処理して食べるという報告と同じ著者(Finn, et al. 2009)。

調査個体は、野生メジロダコ(veined octopus, Amphioctopus marginatus)20個体以上。インドネシアの北部スラウェシ島とバリ島の海岸あたりで、水深18 mの下干潮帯にある未固結基盤の上を、1998-2008年にかけて500時間以上潜水した。

メジロダコは、殻の貝殻や、捨てられたココナツの殻、その他の廃棄物に隠れた。4事例では、ココナツの殻を身体の下に抱えて、最大で20 m移動した。2個体のタコは、水流で泥を飛ばすことで、埋まっているココナツの殻を拾いだした。

殻をもって移動するときは、ココナツの半球状の殻の凹面側を上にして、それに覆いかぶさって腕で挟んだ。著者らはこれを「竹馬歩行」(stilt walking)と呼んでいる。この歩行の際は、殻は身体の下にあるため、そのままでは常時防具としての役割を果たしているということにはならない。将来その都度使用するために運搬しているということになる。

おそらくこの話を聞いた人のほとんどが、ヤドカリなどの貝殻使用とどうちがうのかという疑問をもつだろう。そう思うのは、「道具」(tool)が自然カテゴリではないからである。したがって、「道具使用」(tool use)も自然カテゴリではない。動物研究における道具使用の定義としてもっとも有名なのは、ベンジャミン・B・ベック(Benjamin B. Beck)(1980)によるもので、「環境にある遊離物を体外で利用することで、ほかの物体や生物、使用者自身の形態や位置、状態を、利用しないときよりも効率よく変化させることで、そのとき使用者は使用中ないし使用直前に道具を保持または運搬するのであり、道具を適切で効果的な向きに直す責任をもっている」(tool use is the external employment of an unattached environmental object to alter more efficiently the form, position, or condition of another object, another organism, or the user itself when the user holds or carries the tool during or just prior to use and is responsible for the proper and effective orientation of the tool)である。
Beck, B. B. (1980). Animal tool behavior: The use and manufacture of tools by animals. New York, & London: Garland STPM Press.
ISBN0824071689

ハキリアリが葉を集めてキノコ栽培の肥料にするといったような行動は、単なる刺激にたいする反応として、こういった道具使用行動からは除外されている。また、ヤドカリの殻のように、つねに効果をもつものも、単純な行動として、一般に除外されている。道具というのは、特定の目的のために使用されるまでは効力をもたない。タコがいかに柔軟な行動を披露するのかを研究するためには、こういった切りわけが重要になるのかもしれない。しかし、もっと実証的な証拠(たとえば、実験室の心理学的研究)がないと、恣意的な切りわけと思われてしまうかもしれない。タコの道具使用をヤドカリの貝殻使用から切りわけるのは、霊長類の道具使用を昆虫などの物体利用から切りわけることよりも、ずっと難しいように思う。

タコの道具使用の研究があってびっくりして、もう何の動物の道具使用研究があっても驚かないと決心したのだが、すぐにそれは破られることになった。続く

人気ブログランキングへ
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

内井惣七『ダーウィンの思想』2

2009-08-28 04:37:06 | 書籍
こちらの書評にかかわる書籍リストです。

今西錦司, & 飯島衛. (1978). 進化論:東と西. レグルス文庫, 104. 東京: 第三文明社.
ASINB000J8LE9E
内井惣七. (1996). 進化論と倫理. Sekaishiso seminar. 京都: 世界思想社.
ISBN4790706060 [著者による公開]
Sinnott-Armstrong, W. (Ed.). (2008). Moral psychology: Vol. 1. The evolution of morality: Adaptations and innateness. Cambridge, MA: The MIT Press.
ISBN0262693542
Boakes, R. (1984/2008). From Darwin to behaviourism: Psychology and the minds of animals. Cambridge, England: Cambridge University Press.
ISBN0521280125
ボークス, R.. (1990). 動物心理学史: ダーウィンから行動主義まで (宇津木保, & 宇津木成介, 訳). 東京: 誠信書房. (原著刊 1984)
ISBN4004312027
Darwin, C. (1998). The expression of the emotions in man and animals (P. Ekman, Author of the introduction, afterword, and commentaries). Oxford: Oxdord University Press. (1st ed. published 1872; 2nd ed. published 1889)
ISBN0195112717 [Paperback] [200th anniversary ed.]
ダーウィン, C.. (1931). 人及び動物の表情について (浜中浜太郎, 訳). 岩波文庫, 青, 912-7. 東京: 岩波書店. (原著第2版刊 1889)
ISBN4003391276
この『人間および動物における感情の表現』は、ぜひオックスフォード大学出版局版で読んでほしい。岩波文庫で読むとしても、これを手元に置いてほしい。ダーウィンの著作にはどれについてもいえるのだが、現在の知見からすると誤りを含んでいる。オックスフォード版は、情動や表情の研究で有名な心理学者ポール・エクマン(Paul Ekman)が補足を書いており、現在の知見が補足されている。

たとえば明らかな間違いとしては、オックスフォード版135ページ(岩波文庫版166ページの)の図17にあるクロザル(Cynopithecus niger, 現在のMacaca nigra)。「愛撫されて喜んだ時」とされているが、これは恐れの表情である。ダーウィンは「此の表情は、知らぬ人には愉快の表情としては決して認められない」と述べているが、本当にサルは撫でられるのを嫌がっているのだ。

また、岩波文庫版は翻訳も怪しいところがあるかもしれない。岩波文庫版117, 164ページで「尾長猿」としているのは誤りで、オマキザルのことである。オックスフォード版93, 133, 136ページ(岩波文庫版117, 164, 167ページ)のCebus azaraeは、分類学的にいろいろ議論があるようだが、パラグアイオマキザル(Paraguayan capuchin monkey, Cebus libidinosus paraguayanus)もしくはズキンオマキザル(hooded capuchin monkey, Cebus cay)であるようだ(Rylands et al 2005)。また、オックスフォード版133ページ(岩波文庫版164ページ)のCebus hypoleucusは、見慣れないかもしれないが、ノドジロオマキザル(Cebus capucinus)の昔よく使われていた異名であり、こちらは異論の余地はない。

de Waal, F. (2006). Primates and philosophers: How morality evolved. Princeton, NJ: Princeton University Press.
ISBN0691124477 [Paperback]
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

内井惣七『ダーウィンの思想』1

2009-08-28 04:17:19 | 書籍
内井惣七. (2009). ダーウィンの思想: 人間と動物のあいだ. 岩波新書, 新赤版, 1202. 東京: 岩波書店.
ISBN4004312027
人気ブログランキングへ

著者は京都大学の内井惣七。退職前は京都大学文学部の所属。ざっと読んだだけですが、感想――というより雑感です。なお、私は、チャールズ・ロバート・ダーウィン(Charles Robert Darwin)その人についてよく知っているわけではないので、ダーウィン本としての評価はわかりません。つまり、ここでいわれているダーウィンの思想が内井自身の立場に引きずられているとしても、判断できないということです。

第1章は「ビーグル号の航海」。ダーウィンの進化論=転成(transmutation)説の出発点ともいうべきビーグル号の航海のなかで、彼がどういうことを経験し、どのように思想を形成していったのかを説明している。そのとき、つねに地質学の成果、とくにチャールズ・ライエル(Charles Lyell)を参照している。進化論と地質学とのかかわりは、思想史的な観点から興味があったので、非常におもしろかった。ビーグル号航海にまつわる伝記としてまとめながらも、思想の要点を段階的に押さえているので、散漫な記述とはなっていない。

第2章は「結婚と自然淘汰説」。ダーウィンの結婚と、その時期にダーウィンが抱いていた自然淘汰説について述べている。ここで、道徳の問題が小出しにされているが、これは第6章への伏線である。

第3章は「ダーウィンのデモン:進化の見えざる手」。第2章で触れた自然淘汰説について、同時期の原稿『スケッチ』と『エッセイ』にもとづいて説明している。ここで内井は、「ダーウィンのデモン」というものを導入している。有名なラプラスのデモン、マクスウェルのデモンに倣い、著者が独自に考案したデモンである。結局ダーウィンのデモンとは、淘汰をおこなう自然のことである。そのため、読者によっては、最初から自然をもちだせばよく、デモンをもちだすことは話が煩瑣になるだけだと思うかもしれない。しかし、自然を最初にもってくると、自然環境と動物とのさまざまな相互作用を思い浮かべてしまうのではないか。まず抽象的なデモンを想定し、デモンにどのような役割を与えればよいのかを考えていくという構成的な説明のおかげで、自然淘汰の原理のなかで自然に課せられた役割がわかりやすくなっている。また、ダーウィンのデモンもマクスウェルのデモンも、ふるいとしての役割をもっているという意味では類似しており、このような類似を描けることは、科学的世界観の観点からも興味深いと思った。

第4章は「種はなぜ分かれていくのか:分岐の原理」。『種の起源』が結実するには、第3章の自然淘汰の原理だけでは不十分であり、さらに分岐の原理が必要である。ここでは、分岐の原理を得るに至る歴史的な過程と、分岐の原理そのものの説明をおこなっている。それぞれ、自然淘汰の原理でいえば第2章、第3章に相当する部分である。さらに、分岐の実証例として、有名なフィンチのクチバシの例がとりあげられている。

本題からは外れるが、この章の末尾で、内井は棲み分け(habitat segregation)をとりあげ、「『分岐の原理』にさえ気づいていなかった」として、今西錦司を痛烈に批判している。今西の名前は出していないが、今西であることは明らかだろう。たとえば、飯島衛は、今西との対談のなかで、「生態学が『すみわけ』とか『なわばり』とか、あるいは『順位制』とかいうような生物の秩序の論理をみつけたのは、非常に大きく評価されていいんじゃないかと思っとる」と述べているが(今西錦司 & 飯島衛 1978)、内井はこういった主張に反対しようとしているのだろう。棲み分けのような一見すると競争原理とは程遠いものも、ダーウィンの原理のなかで説明できるということである。内井がダーウィンの原理のなかにある人為淘汰とのアナロジーをもちだし、一方で今西が同じ対談のなかでそれを「逆立ち」と評価しているのもおもしろい。

今西は、また、「ダーウィンは自然を相当見てるんですけどね、自然淘汰説を持ってきて割り切ろうとした」とダーウィンを評している。ここから読みとれるのは、自然を見ていれば、そう簡単に自然淘汰だけで割りきろうとは思わないはずなのにという気持ちだろう。もう少しつっこむと、自然の多様性に目を向ければ、安易に生物全体にわたる一般原理へ帰納しようとは思えないということといえるかもしれない。これは、内井の「『棲み分け』はきちんと、しかも実証的に説明できるのだ」という帰納への指向が強い書き方とは対照的だろう。内井が第6章で触れているとおり、現在では進化ゲーム理論が整備され、協力行動といった秩序的な行動が利己的なエージェントのなかからどう出現するかといったことについて、理論的な研究が進んでいる。一方で、動物行動学者は、どこにその動物が実在するのかという疑問をもちつづけているのではないか。動物行動学では、一般的な原理を提出するとしても、異なる生物分類群に同じ原理を適用するときには、あるいは異なる行動の背景に同じ原理を想定するときには、もちろんどのような原理なのかにもよるが、慎重になることだろう。あらかじめ全分類群に通用する原理をたちあげることはまずないだろう。今西は彼独自の進化論のなかで、現在の動物行動学はダーウィニズムのなかで、それぞれ研究をおこなっているわけだから、両者の立場はまるで異なっている。しかし、両者が一般化に慎重であるとするならば、その背後にひそむ心情については、共通するものがあるのだろうと思う。

第5章は「神を放逐:設計者なしのデザイン」。ここでは、あまりにも精妙なデザインをもつランの進化を、ダーウィンの原理のなかで説明している。つまり、因果的に説明している。そうすることで、そこに神の意志といった目的論的な要素を介在させる必要がないことを示している。当時、花と昆虫の共進化のようなものを説明するときに、因果的な転成説と神の配慮にもとづく説明との折衷案があったとのこと。著者は、説明が複雑になるのを避け、端的に本質だけをわかりやすく紹介している。しかし、理論上の点だけでなく、ランの花もつ巧妙なしかけについても、非常に詳しく書かれている。

第6章は「最後の砦、道徳をどう扱うか」。道徳の起源に迫った章で、内井惣七(1996)の改訂版である。著者が進化倫理学者であることから、この章で終わるのはしかるべきことなのだが、近年、道徳の進化についての研究が盛んであり(たとえば、Sinnott-Armstrong 2008)、時宜にかなった終わり方といえるだろう。ダーウィンの大著『人間の由来』で述べられる大きなテーマは性淘汰と道徳の起源であり、ここでは道徳の起源に絞るというわけである。ところで、著者渾身の章であるが、気になる点がけっこうある。

ここでもライエルのとの関係、とくに彼の著書『人間の古さ』に触れている。人類の歴史が思われていた数千年単位よりはるかに古いことがわかったのだが、これはダーウィンに有利にはたらいたと述べている。しかし、地質学は何もダーウィンに有利にはたらいていただけではなかったのだが、これについては不思議と触れていない。それは、当時物理学によって推定されていた地球の年齢である(ボークス 1990)。そのため、151ページに現代の地質時代区分表を載せているのは、多少誤解を招くものだろう。

『種の起源』の刊行時点では、ダーウィンの理論が必要とする10億年という数字は、そのときの地質学と矛盾するものではなかった。しかし、ダーウィンの晩年には、地球の年齢から推定できる生命の年齢は、熱力学の発達ともに一挙に2~3億歳に削られ、それが定説となってしまったのである。これが要因となって、ラマルクの獲得形質の遺伝の原理は保持されることになった。ダーウィンも性淘汰の原理とともに、獲得形質の遺伝の原理を導入している。『人間の由来』の続編とでもいうべき『人間および動物における感情の表現』(Darwin 1872)でも、ダーウィンは情動表出の進化に、獲得形質の遺伝の原理を適用している。ただし、この獲得形質の遺伝についても、目的論的な要素は完全に排されており、自然選択の原理を補う因果的な原理であることには注意しなければならない。

私の興味のある動物心理学の歴史では、ダーウィンのすぐあとの時代、ジョージ・ジョン・ロマネス(George John Romanes)は、獲得形質の遺伝を強く支持していた。ほぼ同時代、コンウィ・ロイド・モーガン(Conwy Lloyd Morgan)がはじめて、1890年に獲得形質の遺伝を斥けた。

地球の年齢については、トマス・ヘンリー・ハクスリー(Thomas Henry Huxley)の論争相手のラーグスのケルヴィン男爵ウィリアム・トムソン(William Thompson, Baron Kelvin of Largs)は、地球の年齢を1億年に、のちには2000万年に見積もっており、ハクスリーはこの時点では論争に敗北している。しかし、ケルヴィンには偏った前提があることが明らかになると、地球の年齢は1億年を超えるところまで延ばされた。最終的に地球の年齢が現代的に計算されるには、マリア・スクウォドフスカ=キュリー(Maria Skłodowska-Curie)、アーネスト・ラザフォード(Ernest Rutherford)らの放射線研究を待たねばならず、これは20世紀に入る。

地球の推定年齢は、このようにダーウィンの理論にかかわってきたようだ。一方、内井は、地質学の知見に多く触れておいて、地球の年齢にはまったく言及していない。したがって、獲得形質の遺伝についてはまったく触れていない。この点は気になった。ダーウィンの理論に獲得形質の遺伝の原理を組みこむかどうかは、非常に重要なところだと思うのだが、まったく触れなくてよいのだろうかと気になった。

もうひとつ気になったのは、フランス・B・M・ド・ヴァール(Frans B. M. de Waal)の扱いである。内井のもとづいているのは、ド・ヴァール(原著1996)の『利己的なサル、他人を思いやるサル』である。あまりにも唐突にド・ヴァールが出てくる印象である。そのせいで、ド・ヴァールの話は非常に一般受けがよいため、その流れでド・ヴァールを引用しているように見えてしまう。たしかに、ド・ヴァールがダーウィンの思想をどう引き継いでいるのか述べれば十分であるのだが、内容を充実させるためにも、上で述べた軽い理由で飛びついたわけでないということをいうためにも(内井は、ド・ヴァールとセイラ・F・ブロズナンSarah F. Brosnanの心理学的実験についての論文を書いている。田中泉吏 & 内井惣七 2005)、動物行動学や霊長類の道徳起源論のほかの立場と比較して、そのなかへの位置づけを書いておいたほうが、説得力が増したのではないか。

これと関係するが、内井の書き方からすると、引用するのがド・ヴァールでなければならない理由がわからない。ド・ヴァールは、内井が指摘するまでもなく、道徳起源論にかんして、ダーウィンのブルドッグであるハクスリーよりも自分のほうがダーウィン寄りであることを主張している(de Waal 2006)。この本では、道徳行動が道徳感情に由来するものであって、利己的な心がまずあってそれを隠す覆いによって実現されるものではないというように、2つの立場を分離しようとした(私の記憶が正しければという条件がつくのだが)。そのため、内井は210ページで、道徳行動の特徴をまとめるときに、「『擬人化』した記述を使おうが、もっと無味乾燥な『行動主義的』記述を使おうが」という前置きを用いているが、これではド・ヴァールがせっかく分離しようとした2つの立場が同じものになってしまうのではないか。ド・ヴァールはかなり意図的に擬人的な表現を使っているのであって、それを無視するのであれば、わざわざド・ヴァールを引っ張ってくる理由はないだろう。おそらく、内井がド・ヴァールにもとづいて書いた理由は、ヒトとヒト以外の動物のあいだの道徳感情の連続性を明示的に主張しているからだろう。しかし、理論的な立場としては、上で述べたとおり内井はド・ヴァールからはズレていて、むしろ本来の進化心理学に近いのではないか。

ところで、ド・ヴァールは、霊長類の社会のなかでも、仲直りのような個体間の親和的な関係に興味をもっている。つまり、ただの個体間の競合を超えるものである。そこで気になった点ではなく、余談であるが、ド・ヴァールは、少なくとも部分的には今西を評価している。「今西は〔棲み〕分けがどう生じるかを説明したわけではなかったが、闘争をふくむ説明に精力的に反対していたのである」(Imanishi did not seek to explain how segregation might have come about, and was vehemently opposed to explanations that involved strife)と意義を見出そうとしている(de Waal 2003)。また、ド・ヴァールは今西の『生物の世界』の英訳版に書評を寄せており、リップサービスなのかもしれないが、非常に好意的に評価している(de Waal 2004)。これらは、上で述べたド・ヴァール自身の興味によるところが大きいと思われる。

完全に細かいことだが、201ページの「サルや霊長類」は「サルや類人猿」と書きたかったのではなかろうか。

以上、長くなったが雑感を書いた。Amazon.co.jpの書評では、ダーウィン以外の人物や著者自身の見解が入り乱れて読みづらいと書かれているが、それほどでもない。ダーウィン以外といっても、ライエルかアルフレッド・ラッセル・ウォレス(Alfred Russel Wallace)がほとんどである。著者が独自にもちこんだのも、「ダーウィンのデモン」くらいだ。あとは、基本的に手際のよいダーウィンのまとめである。評伝が中心でダーウィンの思想の本質がわからなかったり、思想ばかりでダーウィンがどんな人なのかわからなかったりすることもない。ダーウィンの人生にそこそこ触れつつ、ダーウィンの原理が端的にわかる仕組みになっている本であるので、興味をもたれた向きにはぜひどうぞ。

長谷川眞理子など、ちゃんとダーウィンについて評価できる人の書評が読んでみたいと思う。

文字数制限で書籍リストが書けなかったので、こちら

人気ブログランキングへ
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

フサオマキザルは模倣されることを好む

2009-08-15 23:49:59 | 社会的知性
A52 Paukner, A., Suomi, S. J., Visalberghi, E., & Ferrari, P. F. (2009).
Capuchin monkeys display affiliation toward humans who imitate them.
Science, 325, 880-883. (DOI:10.1126/science.1176269)

オマキザルは自分の模倣をおこなうヒトにたいして親愛を示す
社会的相互作用のあいだ、ヒトはよく、無意識的にも非意図的にも他者の行動を模倣している。そうすることにより、相互作用相手とのラポール、結びつき、共感が増す。この効果は、集団生活を促進させる進化的適応であると考えられ、ほかの霊長類種と共有されている可能性がある。ここで示すのは、高度に社会的な霊長類種であるオマキザルが、ヒトの模倣者のことを非模倣者よりもさまざまな方法で選好するということである。すなわち、サルは模倣者のほうを長く注視し、模倣者のほうの近くで長い時間をすごし、またトークン交換課題では模倣者のほうと頻繁に相互作用をおこなっている。これらの結果が示すように、模倣はヒト以外の霊長類で親愛を促進しうる。行動を合わせることは、他者にたいする向社会的行動をひき起こすが、これは、オマキザルにおいても、ヒトをふくむほかの霊長類においても、利他的な行動傾向の根底にあるメカニズムのひとつだったのだろう。


人気ブログランキングへ

CNN.co.jpScienceNowなどでニュースが出ていた研究。

著者は、アニカ・パウクナー(Annika Paukner)(アメリカ国立衛生研究所動物センター National Institute of Health Animal Center)、スティーヴン・J・スオミ(Stephen J. Suomi)(アメリカ国立衛生研究所動物センター)、エリザベッタ・ヴィザルベルギ(Elisabetta Visalberghi)(イタリア国立学術会議認知科学技術研究所 Consiglio Nazionale delle Ricerche Istituto di Scienze e Tecnologie della Cognizione)、ピエル・F・フェッラーリ(Pier F. Ferrari)(アメリカ国立衛生研究所動物センター、パルマ大学 Università di Parma)。

ヒト以外の霊長類が模倣に影響されるか、あるいは模倣を理解できるかどうかといったことについての研究が、大型類人猿やマカクでおこなわれてきた。しかし、ヒト以外の霊長類で、模倣がその後の社会的相互作用や親愛関係に与える影響についての研究は、これが初めてである。

被験者はフサオマキザル(Cebus apella)12個体。すべてアメリカ国立衛生研究所動物センターで飼育されているもの。

模倣の影響をみるための装置は、次のとおり。3つ続きのケージがある。左右のケージの前に、それぞれ実験者が立っている。被験者は中央のケージにいるが、実験者にどれほど近づくかを調べる場合には、ケージのあいだを行き来できるようになっている。

実験1。被験者がボールで遊んでいるとき、片方の実験者(模倣者)は被験者がボールを操作するのにあわせて模倣をおこなった。一方、もう片方の実験者(非模倣者)は、被験者と同時ではあるが異なる動作をおこなった。被験者が各実験者を見る注視時間を、親愛関係の指標とした。被験者は、非模倣者と比べて、模倣者のほうを長く注視した。

実験2。同様の模倣実験をおこなった。この実験では、被験者が各実験者に近づくことを、親愛関係の指標として用いた。被験者が移動して各実験者のまえのケージにいることを、その実験者に近づいていることと定義した。さらに、注視時間も測定した。被験者は、非模倣者と比べて、模倣者のほうを長く注視した。また、非模倣者と比べて、模倣者のほうの近くで長い時間をすごした。

実験3(統制実験)。模倣者のほうが被験者のサルに注意を向けていて、それが影響を与えている可能性を排除する統制実験である。両実験者は、模倣も何の動作もおこなわなかった。片方は、被験者に顔を向けていた。もう片方は、被験者から顔を背けていた。これまでと同じく、注視時間と近接時間を指標とした。被験者は、自分から顔を背けている実験者と比べて、自分に顔を向けている実験者のほうを長く注視した。これは、実験者の注意が被験者のサルに影響を与えていることを示唆している。一方、近接時間は、被験者に顔を向けている実験者と被験者から顔を背けている実験者とのあいだで、差はみられなかった。これは、実験者が被験者のサルに単純に注意を向けていることが、被験者のサルが実験者に近づいてくるかどうかに影響しないということを示唆している。この結果は、実験2の結果が模倣の影響であることを支持する。

実験4。実験1と同様の模倣実験をおこなった。この実験では、どちらの実験者とより頻繁に交換をおこなうかどうかを指標にした。被験者はすでに、自分のもっているトークン(引換券)をヒトがもってきた食物と交換する課題を習得していた。これを指標とすることができたのは、恐れている相手とは交換をおこないたがらないことがわかっていたためである。被験者は、非模倣者と比べて、模倣者のほうと頻繁に交換した。

実験5(統制実験)。実験3と同様の統制実験をおこなった。注視時間と交換の頻度を指標とした。被験者は、自分から顔を背けている実験者と比べて、自分に顔を向けている実験者のほうを長く注視した。これは、実験3と同じ結果である。一方、交換の頻度は、被験者に顔を向けている実験者と被験者から顔を背けている実験者とのあいだで、差はみられなかった。これは、実験者が被験者のサルに単純に注意を向けていることが、被験者のサルが実験者と交換をおこなうかどうかに影響しないということを示唆している。この結果は、実験4の結果が模倣の影響であることを支持する。

野生のオマキザルも、遊動、採食、捕食者からの防衛のときなどに行動を同調させている。行動の同調は、その場で社会的学習の基盤となるメカニズムとしてはたらくだけでなく、その後の社会的相互作用を増すように影響しているのだろう。ヒトだけでなく、ほかの集団生活をおこなっている霊長類でも、行動の同調は、親愛を増す「社会的な糊」(social glue)としてはたらいていると考えられる。

論文の内容は以上です。動物園でオマキザルをみたら、ぜひマネをしてみましょう。

人気ブログランキングへ
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

野生クモザルが棒で身体を掻く

2009-07-27 01:40:14 | 思考・問題解決
A51 Lindshield, S. M., & Rodrigues, M. A. (2009).
Tool use in wild spider monkeys (Ateles geoffroyi).
Primates, 50, 269-272. (DOI:10.1007/s10329-009-0144-3)

野生クモザルの道具使用
道具使用は、新世界ザルでも旧世界ザルでも、さまざまな霊長類種で観察されてきた。しかし、そのような報告は、おもにもっとも優れた道具使用者〔チンパンジー(Pan troglodytes)、オランウータン(Pongo pygmaeus)、オマキザル(Cebus sp.)〕にとりくんでおり、その道具使用にかんする考察も、採食の枠ぐみに限定されていることが多かった。ここでわれわれが示すのは、野生のジョフロワクモザル(black-handed spider monkeys, Ateles geoffroyi)で、新奇かつ自発的な道具使用が観察されたということである。そこでは、メスのクモザルが自己指向的な方法で遊離した棒を使用していた。われわれは、いくつかの要因を導入することで、Atelesが道具使用をおこなえることや、それでもその道具使用がかぎられたものであることを説明する。また、関連研究の総合を進めることで、クモザルの認知能力や霊長類の道具使用行動の進化にたいして洞察を得る。
キーワード:道具使用(Tool use)・Ateles geoffroyi・認知(Cognition)


人気ブログランキングへ

著者はステイシー・マリー・リンドシールド(Stacy Marie Lindshield)(アイオワ州立大学 Iowa State University)、ミシェル・A・ロドリゲス(Michelle A. Rodrigues)(オハイオ州立大学 Ohio State University)。

この記事でジョフロワクモザル(アカクモザル、チュウベイクモザル、Ateles geoffroyi)の実験的研究を紹介し、この記事この記事で野生霊長類の道具使用を紹介した。今回は、野生ジョフロワクモザルの道具使用の事例報告である。クモザルの道具使用はこれまで報告されていない。

要旨では「自己指向的な方法で遊離した棒を使用していた」とあってわかりづらいが、実際におこなっていたのはわかりやすいことで、棒で自分の身体を掻いていた。また、系統的に観察はしていないとのことだが、観察者に向かって枝を落とすという道具使用もみられた。

この論文で初めて知ったのだが、ここで引用されている諸論文によると、ジョフロワクモザルの新皮質の割合は、フサオマキザル(Cebus apella)やボンネットモンキー(Macaca radiata)に類似しているとのことである。加えて、脳化指数(encephalization quotient)は、チンパンジー(Pan troglodytes)に匹敵するらしい。前の記事でもジョフロワクモザルの離合集散社会に触れられていたが、ここでは、群れの離合集散ダイナミクスが認知を強める可能性を指摘している。これらは、常習的な道具使用のような柔軟な知性の発揮がジョフロワクモザルにもありうることを支持している。

一方で、クモザルに道具使用がみられない理由として、次のことがあげられている。道具を使用するには、道具で環境から食べものをとりだす必要性に迫らなければならないが、クモザルはそういった採食をおこなっていない。また、親指が退化しているため、手の操作能力が制限されている。後者の点は、非常に手先が器用なチンパンジーやオマキザルとは対照的である。

道具使用はなかなか難しいかもしれませんが、前の記事でとりあげたように、クモザルが今後、社会的知性研究で活躍するとおもしろいですね。

人気ブログランキングへ
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

野生ニホンザルのデンタルフロス

2009-07-27 00:56:58 | 思考・問題解決
A50 Leca, J.-B., Gunst, N., & Huffman, M. A. (2009).
The first case of dental flossing by a Japanese macaque (Macaca fuscata): Implications for the determinants of behavioral innovation and the constraints on social transmission.
Primates. (DOI:10.1007/s10329-009-0159-9)

ニホンザル(Macaca fuscata)によるデンタルフロスの最初の事例:行動の導入の決定因と社会的伝達の制約にかんする含意
ニホンザルによるデンタルフロス行動の事例をはじめて報告する。横断データを用い、この新奇の道具使用行動が集団水準で生じているのか評価した。この行動は、中央〔の群れ〕にいる中程度の順位と年齢のメスが、毛づくろいの相互行為をおこなっているあいだに頻繁におこなっており、それが少なくとも4年前には現われていた。しかし、それはこの導入に独特のままにとどまり、現在にいたるまで群れのほかの成員に広がっていない。この導入を促した要因として、環境的文脈やこの導入者の個体特性、その行動の構造的および機能的な面といったものを調べた。群れの大きさと血縁、順位は、ほかの群れの成員がその導入者を観察する機会を制限すると考えられる社会人口統計学的な要因である。そのため、その行動は新しい行動的な伝統となりうる潜在的な候補であるものの、それらの要因のために拡散に制約が課せられている。これは、自然条件下にて霊長類で道具使用行動が自発的にあらわれたのを記録した稀有な研究のひとつである。ヒト以外の霊長類の社会的な群れのなかで〔新奇の行動の〕導入が起こる決定因とその拡散に課せられた制約を明らかにすることは、文化進化を理解するうえでとくに興味のもたれることである。
キーワード:行動の異型(Behavioral variant)・制約(Constraint)・導入(Innovation)・伝統(Tradition)・道具使用(Tool-use)


人気ブログランキングへ

著者は、ジャン=バティスト・レカ(Jean-Batiste Leca)(京都大学)、ノエル・ガンスト(Noëlle Gunst)(ジョージア大学 University of Georgia)、マイケル・アラン・ハフマン(Michael Alan Huffman)(京都大学)。

今回の記事は、前回の記事の続きで書いている。前回触れたとおり、カニクイザルは、ヒト(観光客)の髪の毛をデンタルフロス(歯に挟まったものをとる細い糸)として使用することが報告されている [Watanabe et al 2007]。

これと同じ行動がニホンザルにもみられた。場所は京都嵐山モンキーパークいわたやま。こちらは毛づくろいで得たものであり、しかもおこなっているのが1個体のみであるので、観光客は心配しなくてよい。その個体は嵐山E群のメスで、こちらに写真の載っているチョンペ-69-85-94。

渡邊邦夫らのカニクイザルの研究では群れのなかにこの行動が広がっているのにたいし、このニホンザルの研究では1個体しかこの行動を用いていないという点がおもしろい。論文でも広がらない要因について考察している。

興味のある人は嵐山に行ってみてはどうでしょうか。

人気ブログランキングへ
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

野生カニクイザルの2種類の石器使用

2009-07-27 00:54:03 | 思考・問題解決
A49 Gumert, M. D., Kluck, M., & Malaivijitnond, S. (2009).
The physical characteristics and usage patterns of stone axe and pounding hammers used by long-tailed macaques in the Andaman Sea region of Thailand.
American Journal of Primatology, 71, 594-608. (DOI:10.1002/ajp.20694)

タイのアンダマン海地域のカニクイザルの使用している掻きとりハンマーと叩き割りハンマーの物理的特徴と使用様式
自然条件で石ハンマーを使用することは、チンパンジー(chimpanzees)〔Pan troglodytes〕やクロスジオマキザル(bearded capuchins)〔Cebus libidinosus〕で広く調べられている。対照的に、野生旧世界ザルの石器使用についての知識は、逸話的報告に限られている。ただ、120年以上前から知られているように、Macaca fascicularis aurea〔ビルマカニクイザル、Burmese long-tailed macaque〕は、アンダマン海の島々で石器を使用し、潮間帯にある殻に覆われた食物を得ようとそれを処理している。われわれの報告は、これらのマカクが石器を使用するところを見た最初の科学的調査である。われわれは、道具使用に熟練していて、毎日石器を使用するのを観察した。食物項目によって質の異なる道具を選択しており、少なくとも2つの型の石器を使用していると考えられた。叩き割りハンマーは、甲殻類とナッツを台石の上で押しつぶすために用いられ、掻きとりハンマーは、巨岩や樹木に密着しているカキをほじりとったり削りとったりするために用いられた。これらの2つの道具のあいだには、物理的な有意差があった。カキ床のところにあった道具のほうが小さく、それについた傷の様式も点に集中していることが多かった。一方、台石のところにあった道具のほうが大きく、それについた傷も表面に広がっているものが多かった。われわれはまた、2つの道具の型のあいだで握り方にちがいがあるのを観察した。最後に、マカクは、掻きとりハンマーを使って目標を叩くときのほうが、叩き割りハンマーを使うときに比べ、速くて動きが大きかった。われわれの行動的データと石のデータが支持しているのは、掻きとりハンマーを使うには、叩き割りハンマーを使う場合に比べて、より優れた制御と正確さが必要だろうということである。手の大きさの掻きとりハンマーは、密着したカキを割ろうと、よく制御したほじりとりのために使用された。また、それより大きな叩き割りハンマーは、ナッツや遊離した甲殻類を台石の上で押しつぶすために使用された。石に加えて、手の大きさのキリガイダマシ(auger shells, Turritella attenuata)をほじりとる道具として用い、密着したカキを掻きとった。叩き割りハンマー使用は、チンパンジーやオマキザルの使用する石器に類似したものであると考えられるが、掻きとりハンマー使用は、自然条件のもとではほかのヒト以外の霊長類ではいまだ記録されていないものである。
キーワード:カニクイザル(long-tailed macaque);石器使用(stone tool use);石ハンマー(stone hammer);タイ(Thailand);アンダマン海(Andaman Sea)


人気ブログランキングへ

この記事の続報。

著者は、マイケル・デイヴィド・ガマート(Michael David Gumert)(南洋理工大学 Nanyang Technological University、シンガポール)、マリウス・クルック(Marius Kluck)(チュラーロンコーン大学 Chulalongkorn University、タイ)、スチンダ・マライヴィイトノン(Suchinda Malaivijitnond)(チュラーロンコーン大学)。

継続的な道具使用は、ヒトをふくむ類人猿を除けば、オマキザルだけかと思えば、カニクイザルもそうだったという研究。道具使用のうち石器使用については、チンパンジーやオマキザルではおもに実などを叩き割る行動にかぎられているのにたいし、注目すべきことに、カニクイザルでは岩などに密着したカキを掻きとる行動にも適用されている。この論文でも引用されているが、フサオマキザル(Cebus apella apella)でも類似の行動はみられるものの、逸話的な事例報告である [Fernandes 1991]。

また、カニクイザルは、ヒトの髪の毛をデンタルフロス(歯に挟まったものをとる細い糸)として使用することが報告されている [Watanabe et al 2007]。観光客の頭に乗って毛をむしるというとんでもないサルたちである。

マカク属(ニホンザルの仲間)のなかで、カニクイザルだけが野生で道具使用をおこなっているというのは、マカク属のサルがたがいに非常に近縁であることを考えると、じつに不思議である。とくに、掻きとりハンマーの日常的な使用は、上で述べたとおり、道具使用者として有名なチンパンジーにもオマキザルにもみられないという点で驚きである。これは、カニクイザルに特有の能力があるからなのか、掻きとりを可能にした生態学的要因があるからなのか、特定されていくことだろう。

……なんてことをブログに書こうと思いながらこの論文を読んでいたのですが……→こちら

人気ブログランキングへ
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

情報秘匿を3種のサルで比較する

2009-07-26 21:03:09 | 社会的知性
A48 Amici, F., Call, J., & Aureli, F. (2009).
Variation in withholding of information in three monkey species.
Proceedings of the Royal Society of London, Series B: Biological Sciences. (DOI:10.1098/rspb.2009.0759)

サル3種における情報秘匿の変異
これまでの戦術的欺きに関する研究により、情報をもった劣位個体がそれを知らない優位個体から情報を秘匿することは報告されてきたものの、直接に種どうしで遂行を比較するものはなかった。ここでわれわれが比較するのは、2つの情報秘匿課題において示されたサル3種の遂行である。その3種のサルは、どれほど優劣順位制が厳しいのか、また離合集散ダイナミクスがどの程度なのかで異なっている。その3種とは、クモザル、オマキザル、カニクイザルである。食物を、〔劣位個体は見えるが〕優位個体の見えないところで、不透明な箱もしくは透明な箱に隠した。透明な箱は、やり方を知っている劣位個体だけが開けられた。どの種も情報を秘匿でき、被験者は優位個体のいるときには箱と作用しあうことをしなかった。クモザルは、優位個体が箱から離れているときに時宜を得ることで、もっとも能率的に食物を回収した。オマキザルも、箱のところにひとりでいる〔優位個体が箱から離れている〕ときには、じつに能率よくおこなったが、優位個体が近くにいるときにも箱を操作してしまって食物の多くを失った。その結果はわれわれの予測を支持していた。その予測は、優劣順位制の厳しさや離合集散ダイナミクスの程度が種間でどれほど異なっているのかにもとづいている。被験者が箱に近づいていく傾向は、前者〔優劣順位制の厳しさの差異〕があるために、〔種間で〕対照的なものになっているのだろう。被験者が食物を回収するのにふさわしい状況を待つ傾向は、後者〔離合集散ダイナミクスの差異〕から影響を受けているのだろう。
キーワード:戦術的欺き(tactical deception);比較認知(comparative cognition);抑制(inhibition);クモザル(spider monkeys);オマキザル(capuchin monkeys);カニクイザル(long-tailed macaques)


人気ブログランキングへ

著者は、フェデリカ・アミーチ(Federica Amici)(リヴァプール・ジョン・ムーアズ大学 Liverpool John Moores University、マックス=プランク進化人類学研究所 Max-Planck-Institut für Evolutionäre Anthropologie、イタリア国立学術会議認知科学技術研究所 Istituto di Scienze e Tecnologie della Cognizione, Consiglio Nazionale delle Ricerche、ユートレヘト大学 Universiteit Utrecht)、ジョゼップ・コール(Josep Call)(マックス=プランク進化人類学研究所)、フィリッポ・アウレーリ(Filippo Aureli)(リヴァプール・ジョン・ムーアズ大学)。

情報秘匿(withholding of information)の研究。自分だけが情報を得ていて、それを優位個体から秘匿した状態で目的を達成できるかどうかというものである。霊長類における情報秘匿の研究は、京都大学でもおこなわれている(この論文でも引用されている)。チンパンジーについては、平田聡と松沢哲郎 [Hirata & Matsuzawa 2001]、フサオマキザルについては、藤田和生と黒島妃香、増田露香 [Fujita, Kuroshima, & Masuda 2002]。

被験者は、9個体のジョフロワクモザル(アカクモザル、チュウベイクモザル、Ateles geoffroyi)、7個体のフサオマキザルCebus apella)、10個体のカニクイザルMacaca fascicularis)。

課題や条件は、上の要旨のとおり。

情報秘匿の実験は、これまでにもおこなわれてきたが、直接的な種比較は初めて。社会の寛容さや群れの仕くみに応じて仮説をたて、そのとおりに結果が得られているのがおもしろい。

人気ブログランキングへ
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

ワタボウシタマリンが示す文法の前駆

2009-07-12 00:46:29 | 言語・コミュニケーション
A47 Endress, A. D., Cahill, D., Block, S., Watumull, J., & Hauser, M. D. (2009).
Evidence of an evolutionary precursor to human language affixation in a non-human primate.
Biology Letters, online, DOI:10.1098/rsbl.2009.0445

ヒト以外の霊長類にヒトの言語の接辞化の進化的前駆があるという証拠
ヒトの言語、とくに文法能力は、まるごとほかの動物にはみられない一式の計算操作に依存している。そのような独自性があっても、われわれ〔ヒト〕の言語能力の構成要素が、非言語的な機能のために進化していて、ほかの動物と共有されているという可能性は残っている。ここでわれわれは比較論的な観点からこの問題を探索し、ワタボウシタマリン(Saguinus oedipus)が自発的に接辞化規則(affixation rule)を獲得できるのかを問うた。ここで用いた接辞化規則は、われわれ〔ヒト〕の屈折形態論(inflectional morphology)(例。過去時制をつくるとき、walkwalkedに変形するように、-edを付加するという規則)と重要な特性を共有している。録音再生実験を用いてわれわれが示しているのは、タマリンが、特定の「接頭辞(prefix)」音節ではじまる2音節の項目と、それと同じ音節を「接尾辞(suffix)」にして終わっている2音節の項目を弁別しているということである。これらの結果から示唆されるように、さまざまな言語のなかで接辞化に役だっている計算メカニズムのいくつかは、ほかの動物と共有されていて、非言語的な機能のために進化した基本的な原始的知覚ないし記憶に依存しているのだろう。〔太字、斜体は原文の斜体〕
キーワード:動物認知(Animal cognition);言語の進化(evolution of language);形態論(morphology);言語獲得(language acquisition)


人気ブログランキングへ

数日前にニュースになっていた論文(Discovery News, New Scientist, National Geographic News, ナショナルジオグラフィックニュース)。著者は、ハーヴァード大学心理学部門(Department of Psychology, Harvard University)のアンスガル・D・エンドレス(Ansgar D. Endress)、ドナル・ケイヒル(Donal Cahill)、ステファニー・ブロック(Stefanie Block)、ジェフリー・ワトゥマル(Jeffrey Watumull)、マーク・D・ハウザー(Marc D. Hauser)。所属は心理学部門であるが、National Geographic Newsにはエンドレスが言語学者であると書いてあった。アンスガルは北ゲルマン系の男性名だが、エンドレスのウェブサイトにあるCVをみると、ドイツ出身のようだ。論文にドイツ語の過去分詞のつくり方が引きあいに出されていたのは、エンドレスの母語がドイツ語だからだったようだ。大学院時代の指導教員がジャック・メレール(Jacques Mehler)なので、経歴的には心理言語学者といえるだろう。以前から、言語獲得における知覚や記憶の制約がテーマだったとのこと。

実験参加者はワタボウシタマリン(Saguinus oedipus)14個体。2個体を除き、2条件ともテストされている。

手続きは、次のとおり、まず2条件に分かれる。
1) 接頭辞化条件。shoy-bi, shoy-ka, shoy-na, ... に熟知化させる。
2) 接尾辞化条件。bi-shoy, ka-shoy, na-shoy, ... に熟知化させる。
およそ30分間。テストはこの熟知化の翌日である。

テストでは、どちらの条件についても、shoy-brain, shoy-wasp, brain-shoy, wasp-shoy, ... を聞かせる。すると、次の結果が得られた。指標は、刺激(音声)の聞こえてきた方向を向くという行動である。
1) 接頭辞化条件。規則どおりのshoy-brain, ... よりも、規則に違反しているbrain-shoy, .... のときに、よく刺激のほうを向いた。
2) 接尾辞化条件。規則どおりのbrain-shoy, ... よりも、規則に違反しているshoy-brain, ... のときに、よく刺激のほうを向いた。
ただし、項目型(規則どおりか規則に違反しているか)と条件(接頭辞化か接尾辞化か)についての被験者内要因の分散分析により、項目型の主効果は統計的に有意だったが、条件の主効果と交互作用は統計的に有意でなかったため、項目型間の統計的な差異をみるときに、両条件をまとめたうえで検定をおこなっている。

ヒトの言語の形態論の基礎となる構成要素として、音声から接辞化規則を引きだすことは、屈折(語形変化)にとって重要である。この実験からいえるのは、この接辞化規則の計算が、ヒト以外の霊長類にも共有されている可能性があるということである。

人工的な言語を使ってヒト以外の霊長類でテストをおこなうことに、どういう意味があるのか疑問に思う人がいるかもしれない。実際の言語がもっている屈折は、かなり複雑である。実際のヒトの言語については、詳しく構成素を分析することで形態素が得られるが、今回は乱暴に人工的な「形態素」をもちこんでいる。一方で、タマリンはただ今まで聞いたのと異なるパタンに反応しただけであるのに、それにどういう意味があるのかと思う人もいるかもしれない。

比較となるのは、成人の言語使用というよりは、子どもの言語獲得である。たとえば、過去形をつくる屈折形態素-edを獲得するには、聞いた音声から-edを抽出しなければならない。このように、特定の音声からではなく、任意の音声からのパタン抽出が、言語を使うヒトにおいてその言語に特有なのか(領域固有的)、それともほかの動物にもひろくみられる知覚能力にもとづいているのか(領域一般的)、実際にヒト以外の動物を調べるまではわからない。それで、実際にタマリンを調べてみて、肯定的な結果を得たというわけである。

領域固有性や領域一般性といったことは、ハウザーが以前より取り組んできたことである。

調べていたら、このような本が出版されると知った。著者アンドリュー・カーステアズ=マカーシー(Andrew Carstairs-McCarthy)は言語学者で、言語進化に興味をもつ屈折形態論の専門家であるようだ。
Carstairs-McCarthy, A. (2010). The Evolution of Morphology. Oxford, England: Oxford University Press.
ISBN0199299781 [paperback]

人気ブログランキングへ


2009-07-15追記。
下コメント欄の蒼龍さんの助言で訂正。ありがとうございました。
コメント (2)
この記事をはてなブックマークに追加