NPO法人 専攻科 滋賀の会

盲・聾・養護学校高等部への専攻科設置拡大、そして広く特別な教育的ニーズを有する青年たちの教育機会の保障をめざす滋賀の会

専攻科ニュース No.35のお知らせ

2023年05月19日 09時03分22秒 | 会員募集のお知らせ

 

 全国専攻科(特別ニーズ教育)研究会 シニア役員小畑耕作(和歌山) 

全国専攻科研究会シニア役員の小畑です。私はこれまで知的障害者の教育年限延長にかかわってきて25年になり、今思うことを「4点」述べさせていただきます。

1つめ:全専研が発足して15年になり、発足当時、きのかわ福祉会「福祉型専攻科シャイン」を開所(2010.4)し、その開所方法や実践を全国に広めてきました。シャインを実際に見学にも来てくれました。教育を進めるには「実践・研究・運動」が重要と言われていますが、福祉は「実践・運動・経営」が求められると言われています。そのことを振り返りますと、頑張って開設し素晴らしい実践されているにもかかわらず、経営が困難(特に利用者が集まらず赤字財政等)になっていることを聞きますと、とても心苦しく責任を感じています。反面、福祉制度をうまく運用して、障害の程度が重い人に自立訓練事業のほかに、生活介護事業や就労移行事業を活用して、福祉型専攻科を4年生に設定するなど、進化発展されていることを聞きますと嬉しく思います。
私は特別支援学校進路指導専任教員として9年間務める中で、私の経験から、全国各県や地域の特別支援学校の進路指導の考え方が生徒の進路先に大きく影響すると思います。保護者の方々は、学校の進路指導は安心で丁寧に対応して頂けるので福祉型専攻科に進んでも二年後の進路指導に不安を抱くのだと思います。寄り道の2年間は無駄だと思われているかもしれません。しかし、私たち全専研の実践から、この2年間が一人ひとりの人生において最も大切な期間だととらえています。これから自分らしく生きていくための基礎ができると考えます。

2つめ:「運動」です。私たちのこの事業は、日本の障害者の教育歴史上なしえなかったことを創り出してきているのです。本人の「もっと学びたい」、「すぐ働くのには自信がない」、「大学に通っている兄のようにもっと遊びたい」などのねがいや「兄弟と同じように大学に行かせたい」という親のねがいを当たり前のこととして伝え、教育行政にはたらきかけを続けることが大切です。25年前に和歌山の4校の養護学校の保護者で「専攻科を設置してほしい」願いのもとに「和歌山専攻科を考える会」を結成し、7年間活動の中で学習会やシンポジウムを企画して、関係者・マスコミ等、100人以上の参加を何度も開催しました。活動として毎月の例会、会報づくり、保護者や教職員に向けての学習会の案内づくり、学校配布の依頼、マスコミ取材依頼してきました。中でも、シンポジウムで専攻科で学ぶ青年の発言に感動し成長する姿に保護者・教職員は「専攻科は絶対必要」の思いになりました。保護者は、3年間、和歌山県民要求集会でこの願いを発言しましたが、和歌山では実現に至りませんでしたが、わが子はやしま学園の専攻科を卒業しました。また、この会は、福祉型専攻科第1号「フォレスクール」設立にも支援してきました。2007年に「和歌山専攻科を考える会」からNPO「豊かな青年期を考える会(なまか)」に変更し、「青年たちの成長を後ろから見守りましょう」を合言葉に現在も活動を続けています。この、保護者と一緒に活動してきた活動から「運動は、なにもしなければ何も生まれない。動くことで有が生まれる」ことを学びました。
フォレスクールは、設立以前に、専攻科の存在を知らすために、養護学校の保護者に専攻科についてのアンケートを取りました。専攻科滋賀の会や三重県の特別支援学校聖母の家学園でもさらに発展したアンケートを実施しました。これらのアンケートから専攻科の存在を教員や保護者が知ることができたと思います。今、小・中学部の保護者に呼びかけて学習会や専攻科で学んだ青年本人の発言を聞く機会を設ける必要を感じています。「わが子もあんな風にいきいきと生きて欲しい」の願いが出るように。


3つめ:実践の中の「青年の姿から学ぶこと」の大切さです。私は、これまで毎年の全障研全国大会や全専研集会は、長年、欠席することなく参加してきました。中でも、分科会に見晴台学園の学生がいくつかの分科会に分かれて参加していました。長時間、難しい報告や討論の中で、机に伏せていた学生は、指名されると的をえた発言してくれました。短い発言でしたが、見晴台学園で青年期教育を受ける主体者の感想は一番の感銘を受けました。また、多くの理解者の中で発言することで青年たちは自信をつけたと思います。なぜ生き生きとしているのか、なぜ自分の思いを語れるのかを探ることの大切さを青年から学ばせてもらい、自分の実践にいかせたいと思いました。


4つめ:専攻科卒業後も青年本人も保護者を「一人ぼっちにさせない」ことです。教育年限延長され豊かな青年期教育が保障されても25歳ぐらいまでです。人生はまだまだ長いのです。暮らしの場は、体を休め栄養を取り生活していく場です。働く場は、緊張しながらも、持てる力を発揮する場です。仲間集団の場は、親にも話せない、職場の人にも話せない、素の自分を出し折り合いをつける場です。そのためには、卒業後も地域の中で仲間と集える場が必要です。家族や仕事場だけでない第3の場です。
疲れた時に、いつでも立ち寄れる場があればいいですね。保護者にも必要です。これからも色々とわが子のことで状況が変わります。一人で悩まず気軽に相談でき一緒に活動できれば良いと思います。和歌山のNPO「豊かな青年期を考える会」の活動はとても参考になります。年2回の親子旅行で青年たちは、自分たちの部屋へ。震災、詐欺、携帯電話について専門家による学習会などと、青年たちの活動(朱印集めの寺院回り旅行、居酒屋、ボーリング、自分たちが作るバイキング料理、食品・ビール工場見学、大相撲観戦、プロ野球観戦ツァーなど)、又、NPO総会では、青年が議長や行事報告や次年度の提案などを担当します。これらを20年以上続けているのです。2017年に文科省に障害者生涯学習支援室が設置され、障害者の学校卒業後に活動している団体をモデル事業として全国に発信し、どの地域にでもできるように各都道府県市町村の社会教育課や生涯学習課などに、障害者の生涯学習の仕組みをつくるための役割をしています。

私は、地域に青年の集う場の必要性を感じています。集う場の手段として「書道」「ボーリング」「写真」「絵画」「陶芸」「ダンス」「調理」など、なんでもよいと思います。青年学級もその一つです。青年は仲間の中で、素の自分を出し、折り合いをつけて自分を発揮していくのです。私が30年余り、月2回活動している青年学級はコロナ禍でなかなか開けていないのがとても残念です。

終わりになりますが、国連障害者の権利条約の第24条(5)に「障害者が差別なしに、かつ、他の者と平等に高等教育(大学の教育)、職業訓練、生涯学習の機会与えられることを確保する」と記されています。私たちは、それ以前から子どもたちのねがいや親のねがいを受けて教育年限延長の運動と実践に取り組んできました。このことは、冒頭にも述べましたが日本の知的障害者教育の歴史上なしえなかったことを創り出してきているのです。前に道はなく困難はありますが、私たちの後ろに道は確実にできているのです。
専攻科での青年期教育の実践を通して、青年期の学生が教育を通して人格発達すること、将来豊かな人生を送るための基礎としての「自分づくり」が大切であることに確信を持ち、知的障害者の教育運動、実践、研究、経営について全専研に集いさらに進めていきましょう。

追伸「和歌山発ひろげてつないでつくりだす」
2008.8 編者峯島厚、小畑耕作、山本耕平(全障研出版)
一冊500円(送料込み) 先着20名に送ります。
連絡先: kobata.2158@gmail.com

 スクールなかま音楽教室担当 西川 正裕 

滋賀県立八幡養護学校に勤務していた1990年代後半、進路指導部の先生から「専攻科が必要なんや」という言葉を初めて聞きました。当時は「在宅にしない進路づくり」というスローガンがあり、私たち教師も作業所作りのイベントに参加したり、協賛金を集めたりしていましたが、養護学校卒業後は作業所に行くことがすべてだと思っていた私には、卒業後も教育権を保障するという視点は、新鮮な驚きでした。その頃、先輩の先生から「教育基本法の第1条(教育の目的)に“教育は人格の完成を目指し・・・”と書いてある。人間として育つための教育は18歳で終わるものではない。」と教えていただき、その言葉が深く心に残っていました。定年退職後の2019年、当時の先輩教員から「近江八幡で専攻科設置に向けての事業が始まるから手伝って!」と声をかけていただき、「サンデーゼミナール」の音楽科を受け持つことになりました。

■歌わなくてもリズムで楽しむことができる!
2020年春はコロナの爆発的な感染で始まり、「マスク着用で大きな発声は禁物」と、歌唱できない厳しい制約の中でのスタートでした。歌わないで何をするの?と考えた末、手拍子、足拍子でリズムを楽しむ→これってドラムの基本や→ほな、ドラムレッスン!という結論に。視覚で理解を助けるパワーポイントも活用しながらなんとかスタート。
すると初回授業に参加したM子さんから「次は本物のドラムセット持って来て!」との訴え。手拍子だけじゃ、もの足りない! 本物志向! 実物を鳴らしたい! これって大事ですよね。本物を見て触って音を出して、五感で体験しながら自分のものにしていく。しばらくは民家の一角でドラムが響く土曜日が続きました。幸いご近所様から騒音の苦情は無かった?ようですが、2021年からはウクレレ教室に。近くのリサイクルショップで格安ウクレレを音楽教材として購入していただき一人一台、これも本物を持ちながら音階や和音を楽しむことができました。

■伝えたいのは「人として育つこと」
音楽の授業をしていますが、「サンデーゼミナール」に参加してくれる若者たちに提示すべきことは、「人としての育ち」に寄与できる授業をすることだと思っています。それはまさに1990年代に先輩教員から教わった教育基本法の理念です。「専攻科」だからこそできる人格教育をしなければ、もったいない! 授業の中に「自分のリズム=自分の価値観」、「うた=訴え=自分の思いを表現する=イヤなことはイヤと言う」など、何かひとつでもみんなの心の中に残るものがあればと、キラリと光る一言を添えて授業を組み立てています。

■必修科目と一般教養も盛り込んで毎回、楽しい授業にすることは基本ですが、楽しいだけでなくほどよい緊張感も持たせたい。そんな思いで2023年からは、これだけは必ず覚えて!という「必修科目」と音楽の教科範囲ではないけれど知ってほしい教養としての「一般教養科目」を用意しました。えーっ!という驚きの声と、より一層真剣に取り組むみんなの姿勢に励まされながら、次は、どんな仕掛けで授業を組み立てようかと、教材準備を楽しんでいます。

 

 賛助会員Tさん(広島県)
いつだったか、障害を持った青年の母親に滋賀の専攻科の取り組みを話したことがある。「この辺でも高校を卒業したら、適性を調べたり職業訓練をしてくれる所があるよ。」と言われ、滋賀の専攻科のとりくみに共感しつつも、自分の言葉で反論出来なかった。
思えば健常と言われる青年たちに開かれた豊かな未来。自分自身を見つめ、自分の将来を思い描く大学という自由な時間。何故障害を持った青年たちにはその道が閉ざされていたのか。ゆっくりと成長していく彼等だからこそ、様々な世界に触れ、自分と向き合う豊かな時間が保障されるべきであるのに。
立岡先生にお会いして早三十年近い。幾多の困難を乗り越え、障害を持つ人々が人間らしく幸せに生きていく為に様々な取り組みをしてこられた。そのまなざしの限りない温かさにいつも教えられてきた。
そして今また滋賀の地より専攻科の法制化に向けて、着実な実践の足跡を残してこられている。障害を持った人々に寄り添った光が大きな渦となり、普く人々の未来を照らすことを心より願っている。

 

  ハチドリの会・会長 東  恵子さん(滋賀県)
専攻科滋賀の会の立岡 晄さんに出会った
のは、今年成人を迎える重い知的障害を伴う自閉症の娘・希望(のぞみ)がまだ、養護学校小学部の頃です。養護学校の大規模化に伴う教室不足や教員不足、バスで片道1時間以上かけて通学する現状などを県の担当者に話す機会でした。

その時私が言ったのは、「安心して親が死ねる社会にして欲しい」。今思えば、エキセントリックで気恥ずかしい言葉ですが、立岡さんに覚えてもらい、その後障害者福祉について、たくさん教えていただきました。

障害児が当り前に通えている養護学校も、親たちの運動により約40年前に義務化されたこと、高等部は更に年月が経ってからできたことを知りました。障害がない(と思われる)人は大学や専門学校で学べるのに、障害があることで学びの機会がなくなるのはいけないと、2019年近江八幡市で「スクールなかま」を立ち上げられました。
一方、娘は生活介護事業所に通所し、タグ切りやアルミ板のシールはがしなどできる作業を支援員さんとしています。信頼できる人を見つけて、過ごす喜びを得た元は、1歳から通った地域の子育てサロン。遠く奈良県から嫁いだ私は、「この子ちょっと違うな」と思ってからも通い、娘は「人が好きな自閉症」になりました。人は、人が作るもの。生まれた時から、全ては繋がっていると思わずにはいられません。

 

 編 集 後 記 

コロナによって生活様式が大きく変化したと感じているのは、私だけでしょうか。
人に出会い、集うことをためらわなければならない日々が続く中で、本当に気が重くなってしまっていました。2023年はそのような状態から抜け出し、人と人が出会い、つながり、集うというあたりまえの日常を取り戻したいと切に願っております。
障害青年サポートセンター近江八幡スクールなかまは、学び、集い、語り合いたいと言う仲間を
中心にして、支援者の輪が日々大きくなって来ていることを実感しています。この輪をさらに大きくして、「教育年限の延長」がみんなの要求になり、全国の仲間と一緒になって、国を動かすことになるように、2023年も一歩一歩前進させていきます。どうぞ、よろしくお願いします。(T)


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