NPO法人 専攻科 滋賀の会

盲・聾・養護学校高等部への専攻科設置拡大、そして広く特別な教育的ニーズを有する青年たちの教育機会の保障をめざす滋賀の会

第9回 全国専攻科(特別ニーズ教育)研究集会 in 神戸に参加しました

2012年12月15日 15時41分22秒 | 会員募集のお知らせ

■12月1日から2日間 兵庫県神戸市長田の神戸市立地域人材支援センター(旧二葉小学校)で開催されました。
専攻科滋賀の会からも役員他8名が出席/参加しました。レポート形式でご紹介いたします。

●12月1日(土)大会一日目
実技演習から始まり、全国の専攻科学生の仲間達による発表会が盛大に行われました。夜は宴会もあり全国の関係者間の親睦の輪ができました。

▲午後1時半~ 開会はエコール神戸学生の皆でサッカーの実技演習

▲午後2時半~ サッカー実技を終えて


▲午後3時~ 全国の参加された学生達による発表会

▲@夜の懇親会1 夜はエコールのご父兄によるおもてなしで懇親会も開催

▲@夜の懇親会2 我らが滋賀の会メンバー、真依さんの自己PRです!

▲@夜の懇親会3 エコール関係者によるハンドベルでのおもてなし

●12月2日(日)大会二日目
【挨拶】
株式会社WAPコーポレーション岡本代表取締役の開会のあいさつに続き、兵庫県健康福祉部障害福祉局長からは、「障害青年の教育機会の拡充に向けて私たちの取り組みに期待している」という内容の来賓あいさつがありました。

【基調報告】 
全国専攻科研究会会長である田中良三愛知県立大学教授より「専攻科づくりの運動の持続性と今後の課題」と題しての基調報告がおこなわれました。

1969年に宮城県の「いずみ養護学校」で始まった特別支援学校専攻科の取り組みは、現在全国で9カ所の特別支援学校と3カ所の高等学校や高等専修学校等で設置されており、近年では福祉型専攻科(学びの作業所)が全国的に広がってきています。そのような中で、昨年エコール神戸がスタートしました。この全国研究集会は今年で9年目を迎えましたが、これまでの実践の中で、この取り組みが障害青年の人間的成長と自立のために重要であることが明らかとなってきています。そして、私たちの目指しているものは次の5つです。 
・教育年限の延長
・青年期教育の充実
・社会参加に向けたトラジッション
・生涯の学びに向けた準備教育
・大学教育への展望

【記念講演】
先日神戸マラソンを完走したという、昨年誕生したばかりのエコール神戸の河南学園長から「エコール神戸の活動と専攻科づくりの意義」と題しての記念講演がおこなわれました。

河南氏は1979年阪神養護学校に赴任しましたが、阪神養護学校では「障害児教育に上限はあっても下限はない」というスローガンのもと、すべての障害児への教育権保障をめざしてきましたが、高等部の入学試験で不合格者を出したことを契機に、希望者全入運動を市民運動「ひゅうまんぼいす」として全県的に広げてこられました。河南氏は退職まで一貫して特別支援教育に取り組んでこられ、最後の4年間は特別支援学校で進路指導をしてこられましたが、卒業後に就職できるのは4分の1程度であり、また短期間でリタイヤする卒業生も多いという経験の中で、エコール神戸を立ち上げられました。本来ならば高等部専攻科がもっと必要なのですが、なかなか高等部専攻科が広がらない理由としては、全国の養護学校の希望者が多く、ハードソフト両面で余裕がないことがあり、そのため障害者自立支援法の自律訓練事業による「エコール神戸」を始められました。
エコール神戸はJR新長田の駅前のビルの地下にあり、定員30名で、職員の配置基準は6対1ですがそれよりもはるかに多くの職員を配置しているとのことでした。

療育手帳を持っていることが条件で、Aの手帳所持者は3名で他はBの手帳を所持しています。「エコール神戸」では主体的に学ぶことを重視しており、自主講座で自分の学びたいことを学んでいます。研究ゼミのテーマは(ビートルズ・沖縄・ハリーポッターなど)自由であり、自分でテーマを選ぶため意欲的に取り組むことができます。調理実習では、献立から買い物・調理までを行います。就労選択では、クッキー作り・ハーブ石鹸づくり・パソコン・紙すき・レザークラフトなどに取り組んでいます。豊かな体験(生活体験・社会体験)では、銀行口座を開設し自分で学園費用をATМで振り込んでおり、外食体験では、いろいろなレストランを調査して、みんなで話し合って外食先を決めています。その他、神戸学院大学や神戸大学で講義を受けたり、学生と交流をしたりしています。

オータムキャンプでは、ツリーイングや登山に取り組んだり、吉本新喜劇の放送作家である砂川氏の指導のもと「エコール新喜劇」にも取り組んだりしています。学生自治会では、役員選挙で選挙人名簿を作成するなど、国政選挙並みに厳正に行っています。近くのボーリングやカラオケなどの社会資源も積極的に活用しています。これらの活動を通して青年たちは次のような変化がありました。
・さまざまな活動を通じて生活の幅を広げ、ごく普通の青年の生活を楽しんでいる。

・青年期らしい本物の体験を通して得る達成感と自信
・内面のゆたかな育ち(人格発達の事実)
 相手の気持ちを理解してお互いの個性を認め合う
・集団の中でこそ個々の育ちが実現する
 大きな問題に直面した時、みんなで何度も話し合うことによって、問題をのり越えることができる。

○今後の課題
・進路指導
 あせらず、じっくりと自分で進路を選択する。今年度就職者はないが、就職したいという気持ちは育っている。
・青年が集う居場所(働く場・生活の場・余暇の場)をつくる。
○専攻科づくりの意義と課題
・学びの場の拡大、急速な広がり
 自立訓練事業による事業所の全国的広がりの背景として、青年自身の中の「もっと学びたい」という潜在的ニーズや保護者の意識の変化があります。
・高等部教育と対立するのではなく連携して発展させることが大切です。
・発達の主人公は青年学生自身です。主体的に学ぶこと、自分で考えて決めることを大切にしましょう。 
・長く働き続ける力をつける力をつけることが大切です
 企業が求めるのはハードスキルではなくソフトスキルです
・教育行政の枠の中で学びの場を広げる展望をもちましょう
・大学教育への門戸を広げる実践をすすめましょう

最後に一言「青年も私たちも夢と希望をもってチャレンジを」

【エコール新喜劇】「鉄人ホテルでメリークリスマス」
 「エコール神戸」で授業でも取り組まれている新喜劇が、学生・教職員総出演でおこなわれ、最後に脚本家の砂川氏からの挨拶と解説もありました。

内容はクリスマスを迎えた鉄人ホテルで繰り広げられるホテルスタッフと様々な怪しげな客たちのドタバタ人情喜劇。河南学園長と岡本社長をはじめ教職員たちも特別出演し迷演技を披露し、会場は個性あふれるエコール神戸学生たちのパフォーマンスに笑いの渦に包まれました。



【分科会1―1】「専攻科の教育実践1」
「自分を出し、折り合いをつける力を育む」(和歌山・きのかわ福祉会シャイン)
 シャイン利用者10名支援員2名、部屋は2室
 シャインは、自分に自信を持ち、主体的に社会生活を送るための準備期間
利用者の語るシャインとは
・学校で分からなかった事を教えてくれる
・出身学校や経歴を超えて友達になれる
・自分でいろいろと計画を立てて活動する
・仕事の勉強ができる
・楽しい
・生活に役立つことを教えてくれる
・言いたいことが言える
 利用者が大好きな調理実習は近くの施設を借りて、少人数グループで行い4~5人分を作ります。
 卒業後の進路先は2名が一般就労しました。実習など就労に向けた取り組みは積極的にはしていませんが、同一法人の関連事業所と連携する中で支援をしています。しかし一方では、シャインからすぐに就労するのではなく、就労移行事業を利用した方が良いかどうかという議論もあります。
「カレッジ福岡の教育実践と今後の課題」(カレッジ福岡 長谷川学院長)
 5階建てビルの2階部分150坪
 学生5名のうち1名は専門学校に進学、1名は離島留学。現在3名。来年度5名新入学予定で、新たに「カレッジ長崎」も開校予定です。株式会社パートナー来夢が運営しており、同社が運営するケアホーム等の利用もできます。「カレッジ福岡」では開校前から、職員が手分けして全国の専攻科を視察し研究するなどされており、授業カリキュラムも非常に良くできています。したがって、これから同様の取り組みを始めるところの手本となると思われます。教職員もほとんどが国立大学の教育学部などで特別支援学校の教員免許を取得しており、特別支援教育の延長充実を意識したものとなっています。カレッジ福岡では、学生の興味関心を生かし、日常生活に基づいたさまざまな取り組みを通して、確実に社会人として成長している学生たちの姿が報告されました。最後に、学生一人ひとりがカレッジ福岡での学びを通して、学ぶ喜びを感じ始めているという長谷川氏の発言が印象的でした。
「スポーツにも青年らしさを」(聖母の家学園高等部専攻科)
療育手帳Aの所持者が7割余り
グラウンドも体育館もプールもない環境のため、積極的に社会資源を活用しながら、子どもたちはスポーツの楽しさを実感しています。その他、専攻科学生の個性的な自由研究の紹介がありました。
また、この分科会では、特別報告として藤本滋賀大学名誉教授より、付属養護学校長時代の教え子が49歳になった現在まで、毎日ファックスでのやり取りを通して、彼の成長を支えてこられた取り組みとともに、障害青年教育の今後の展望を語られました。

最後に分科会のまとめとして渡部昭男神戸大学教授より、当面は教育制度の高等部専攻科と福祉制度の福祉事業型専攻科とのハイブリッド方式で、障害青年の二重の移行支援をすすめる必要があること、特に福祉制度の活用としては、現在全国に多数ある生活介護事業所の内容を発展させ、重度障害者の学びの場を拡大するとともに教育権保障を目指した専攻科の取り組みに合流することも重要であることの確認がおこなわれました。この分科会には、私の他今後福祉事業型専攻科を始める予定である滋賀県内の複数の法人職員も参加しており、滋賀県においても急速に私たちの取り組みが広がりつつあることを実感しました。
        (NPO法人「専攻科滋賀の会」副理事長)森本 創



☆☆今年の神戸ルミナリエ☆☆
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