つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

十二国記FINAL(現時点)

2005-03-17 19:31:39 | ファンタジー(異世界)
さて、長かった企画も今回でおしまいの第107回は、

タイトル:華胥の幽夢 十二国記
著者:小野不由美
出版社:講談社X文庫ホワイトハート

であります。

短編集です。一つずつ感想を述べます。

『冬栄』……時代は『風の海 迷宮の岸』の少し後で、泰麒が南西の極――漣を訪問する外伝。何故彼が送られるか、その理由は『黄昏の岸 暁の天』でちょっとだけ述べられています。本編の泰麒は受難続きですが、こちらの泰麒は割と幸福。相変わらず自分の能力について落ち込むことは多いですが、子供らしく元気いっぱいなところも見せてくれます。ファンは必見。

『乗月』……『風の万里 黎明の空』で登場した祥瓊の母国、芳のその後の話。峯王を討った恵州州候月渓の苦悩を描いた作品で、心理描写が素晴らしいです。ちょっとだけ、陽子、祥瓊、図南の翼の珠晶との絡みもあります。簒奪者となることを拒み、一州侯に戻ろうとする月渓とそれを止めようとする人々の会話は非常に重みがあり、読ませます。お気に入り。

『書簡』……心優しき半獣楽俊と陽子の手紙のやり取り、という一風変わった話。大学に入ったはいいが、半獣としていわれのない差別を受けている楽俊。官吏に邪魔者扱いされ、それでも荒廃した国を立て直さなくてはならない陽子。どちらも気合いだけではどうにもならないことを知っていながら、空元気を見せて背伸びをする二人の姿が清々しい。

『華胥』……才の国で起きた殺人事件を扱ったミステリ。傾きかけた才、それでも自身の道に疑念を抱かぬ生真面目な王。国の行く末を不安視しながらも王の欠点を指摘できない人々。そして、その背後に潜む悪意。様々な人々の想いを描き、政とは何かを問う社会派ミステリー、ですね。非常に上手くまとまっています。

『帰山』……奏国王家の放蕩息子利広が今まさに倒れんとする柳を訪れる話。治世六百年、伝説まで後八十年に迫った奏の内情がちょっと明かされます。詳しくは書きませんが、「こりゃ、当分無敵だわ」ってな状態。しかし、長い治世の国ほどおちゃらけた感じの人々が多いのは、人間捨てて長いからなんでしょうかね?

以上、様々な国を描いている本作。かなり楽しめました。
長編も短編も上手なんて羨ましいなぁ……。

さて、連続十一回でお送りしてきました十二国記書評いかがでしたでしょうか?

拙い文章ですが、少しでも十二国記の世界を感じて頂けたなら望外の喜びです。
無論、この企画で読んでみる気になったというのなら、さらに嬉しい。
その上コメントして頂けるなら……もう感無量です。

今後も新刊が出るたびに紹介してきたいと思っておりますので、お楽しみに。
では、今日のところはこれにて。



――【つれづれナビ!】――
 ◆ 『十二国記』のまとめページへ
 ◇ 『ライトノベル一覧表(その2)』へ
 ◆ 『つれづれ総合案内所』へ