パロディ『石泥集』(短歌・エッセイ・対談集)

百人一首や近現代の名歌を本歌どりしながら、パロディ短歌を披露するのが本来のブログ。最近はエッセイと対談が主になっている。

2018年事件簿8 スポーツ団体の劣化

2018-08-03 15:36:40 | パロディ短歌(2018事件簿)
(写真は、知り合いだった田中理事長と山根会長)
           日本ボクシング連盟の告発に思う

 昨年の暮れから①日本相撲協会所属力士の暴行事件、②レスリング協会のパワハラ事件、③日大アメリカンフットボール部の悪質タックル事件、そして今度は④日本ボクシング連盟の山根明会長の公私混同ぶりが酷いと告発状が出された。出された先はオリンピック委員会、文部科学省など。補助金の不正分配、審判への介入、グローブの一手販売など内容が盛りだくさんで、下部にある47都道府県支部のうち33の支部が告発に同意し、333人もの会員が名を連ねているという。

 相撲協会の事件では、マスメディアが変に貴乃花親方を持ち上げて、間違った報道をしていると思ったから、このブログでは複数回とりあげ、貴乃花親方の一人芝居であることを最初から指摘してきた。また、女子レスリング界のドン・栄和人の伊調馨選手へのパワハラについては、そもそも「選手に惚れ込む」という方針が、愛憎ない交ぜになった時点でアウトと判断し、その旨をブログにあげた。

 しかし、日大の悪質タックル問題は、はっきりいって刑事事件(傷害罪)であり、内田正人前監督、井上奨前コーチの指示が明らかで、マスメディアの追及している方向も間違っていなかったので、あえて取り上げず、日大の対応についても第三者委員会が事実を次々の暴露してくれていることを考慮し、成り行きに任せることとした。問題としては、非常に単純(すべて日大が悪い)なので、どこまで日大の田中理事長が事態を無視するか…という段階に入ったように思う。彼はまだタカをくくっているようだ。多分、自分で自分の首を絞めることになるだろう。

 日本ボクシング連盟のケースは、露骨に利権が絡んでいそうだ。見逃せないのは、山根会長がまだ副会長に就任した2010年に、それまで全く交流のなかったプロとアマの相互交流が始まったこと。アマからプロへの道が開けたわけである。プロに属する以上はどこかのジムに所属する。優秀な選手なら獲得のために金が動く。プロ野球だって、選手が動けば関係者には謝礼が配られる。そのシステムがボクシングにも入った。その立役者が山根会長、というわけである。公式試合に、たった一つのメーカー品しか使わせないという内部規定も、よく洗ってごらん。きっと中抜きのマージンが入っている。定価より2,3割高いらしいから。利権は彼とともに生まれたのではないか? 三万円の出張費を支給しながら、二万円を返させるというやり口を見ても、金に細かく口うるさいことが分かる。

 彼が終身会長に推されたのは、他にも理由がある。ボクシング連盟は、2002年に女子ボクシングを認定し、2012年には小中学生を対象とした大会を日野市で開いた。特筆すべきは、2013年の国民体育大会で、今上陛下と皇后陛下が少年ボクシングの試合をご覧になったことである。説明役として山根会長が同席したことはいうまでもない。彼の背後には皇室までを動かす、特別のつながりがあると推測される。こうした事情があいまって、彼の終身会長への推薦がなされたのは間違いのないところであろう。

 日大の田中理事長にしてもそうだが、理事会や評議員会を思うままに動かすのはさして難しいことではない。カギを握るのは事務局である。事務局は本来、どの役員に対しても中立的に動くことを要請されるが、これを逆用するのである。事務局を味方につけておけば、さまざまな議題で理事長の意向を通すことが可能になる。人事に関しては、何ヶ月も前から議題に上るわけではなく、ほとんどの役員は当日になって知る。事務局(実は理事長)で用意された人物に対し、出席した役員は推薦する人物が急に思い浮かぶわけでもなく、また退任する役員についても反対する理由なんぞ思いつかない。原案通り人事は可決される。かくして理事長の意向に沿った人事は100%保障され、イエスマンばかりの理事会や評議員会が出来上がるわけである。もっとも、思慮深い理事長なら、反対派を1~3名くらいは残しておく。名目上は民主的な議論がなされたというアリバイが成立するからである。日大の田中理事長もボクシング連盟の山根会長も、この方法を駆使しているに違いない。

 ということは、他のスポーツ団体でも同じ事が起きている可能性があって、それぞれの小さな独裁者は震えているのではなかろうか? もっとも、けち臭い独裁者に事態を打開する力があろうとは思われない。力がないからこそ、パワハラを駆使して自らを守ってきたのだから。あと、いくつ告発が出てくるか、野次馬としては大変楽しみである。

 …と、書いていたら、山根会長が入院したとの報道があった。レスリングの栄氏、アメフトの内田氏と同じである。三人には共通した性格がある。小心者というところ。普段は対話を拒否して、恫喝するところなども似ている。山根氏が白のスーツに白のマフラーをし、青の靴下を履き、茶革のスリッパの先をカメラの前に突き出して、ふんぞりかえっている写真を見たが、「ヤクザまがい」という言葉以外には思いつかない。いま、私は「ヤクザまがい」と書いた。「まがい」というのは偽者という意味である。ヤクザの偽者…およそこの世で考えられる最低の評価である。彼がこんな写真を撮らせ、しかも発表しているのは、「ヤクザまがい」が世の中で一番カッコいいと思っているからであろう。

 入院の報から2日後、これまでの独裁者と違って、マスコミに反論を仕掛け、補助金の違法分配を部分的に認めた以外はすべて否定してみせた。しかし、反論には突っ込みどころ満載である。会見では脅迫的な言辞や、見え透いた屁理屈も垣間見えて、なかなかの見ものであった。レスリングの栄氏を無理やり弁護した、谷岡学長(至学館大学)の記者会見と並んで記憶されるだろう。あの程度のリクツが通用して、終身会長になれるものなら、やっぱりスポーツ団体はちょろいものなのである。その上、会長に就任した際の変ないきさつも明らかになった。当時、絶大な支持を得ていた対立候補が投票直前になって立候補を辞退し、山根会長は無投票で当選したというのだ。スポーツ関係者は、その際に何が起きたかを知っているようである。それは暴力とか柔らかな脅迫を暗示しているらしい。世論はそんなに甘くはないということを、今回は思い知らせてやらないと、(多分)他にもいるに違いない、スポーツ界の小独裁者がますますはびこることになりかねない、と思うよ。

入院して何を思うか(ボクシング連盟会長)
● かにかくにボクシング連盟は恋しかり おもひでの利権おもひでのジャッジ
(本歌 かにかくに渋谷村は恋しかり おもひでの山おもひでの川  石川啄木)
(蛇足)まだ会長職にあるが、そのうちに辞めざるを得ないだろう。今は必死に地位を保つ手段を考えている最中で、この歌のように懐かしくなるのは、会長を追われ心労のあげく病気になったときであろう。

明らかに選手の言い分に真実味があった(日大アメフト事件)
● あかあかとウソの道をとほりたり 解雇される我が命なりけり
(本歌 あかあかと一本の道とほりたり たまきはる我が命なりけり  齋藤茂吉)
(蛇足)第三者委員会の最終報告をきいて、日大もアメフト部前監督、前コーチの懲戒解雇に踏み切らざるを得なくなった。刑事事件になるかどうかのところで、田中理事長は人脈を使い、警視庁や検察庁に必死の工作をしているのではないか。

「アメフトのことは知らない」と顔も出さない(田中理事長)
● 日大のしのぶタックルたれ故に乱れそめにしわれなら知らん
(本歌 みちのくのしのぶもみずりたれ故に乱れそめにしわれならなくに  河原左大臣)
(蛇足)日大は大きいのだよ。アメフトなんて、盲腸みたいなもんだ。がたがた、言うんじゃねえ!! 無言の内に伝わってくるような…。スポーツ界は怖いなあ、と言われないよう、会見をお願い申す。

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