パロディ『石泥集』(短歌・エッセイ・対談集)

百人一首や近現代の名歌を本歌どりしながら、パロディ短歌を披露するのが本来のブログ。最近はエッセイと対談が主になっている。

2017年事件簿19 韓国のいう「歴史」とは?

2017-12-30 10:14:28 | パロディ短歌(2017年)
       
(北鮮と核つき統一を願う?文在寅)
 そもそも日本が戦争を起こしたのが悪い?

 韓国の文在寅大統領が慰安婦問題の最終合意を否定した。合意文書を結んでは破棄する…というやり口は「ゴールポストを後で動かす」として国家間の交渉には禁物なのだが、この国はタブー破りを平気でする。しかも妙にしつこい。もう、うんざり…である。しかし、この国の指導者に、品性や知性を求めても無理だろう。とにかく付き合わないのが一番だが、放っておいてもまずい。今日は彼ら朝鮮人が(そして中国人も)何を錯覚しているのかを解き明かそう。

 文在寅をはじめ、中共や韓国の指導者は「歴史」という言葉が大好きだ。この言葉には、独特の意味があることを、日本人は知らなければならない。

 日本で「大東亜戦争」と命名した第2次世界大戦は、勝利者のアメリカによって「太平洋戦争」と呼ぶように強制された。今でもあらゆるマスメディアが従っていることは、皆さんご承知のとおりである。今度の戦争で日本を負かしたのはアメリカなのだよ…というメッセージが「太平洋戦争」という呼び名の中にある。「大東亜戦争」では緒戦にボロボロに負けたイギリスやオランダ、フィリピンから命からがら逃げ出したマッカーサー大将などの記録が含まれてしまうから、その記憶に堪えられないのであろう。

 タイを除いて、他の国はすべてイギリス、フランス、オランダ、アメリカの植民地だった。欧米の植民地経営の過酷さは、経験したものでないとわからない。概して東南アジアの対日感情がいいのは、緒戦の日本軍の強さ、航空戦でも零戦という名機が、欧米の飛行機を次々に撃ち落としたのを目の当たりにしているから。これで植民地から解放されると思った喜びからである。彼らの直感は数年後に実現する。

 白人国家は日本の攻撃に戦慄した。あらゆる力を注いで、日本をつぶしにかかった。原爆投下は明らかに必要がなかったが、あえて落とした。ロシアを参戦させたのは、ルーズベルトとチャーチルである。何故か? スターリンは日露戦争の汚名をそそぐためにも参戦したがった。しかし、それだけではない。

 ナポレオンの時代までは、何でもありだったのに、文明国家を自称する欧米各国は、20世紀に入ってから戦場での略奪や強姦などを禁じた。しかし、彼らが狡猾であることを忘れてはいけない。自ら手を下さないで、暴虐の限りを尽くすのにはどうすればいいか。野蛮国家を味方に引きずり込んで暴れさせるのである。ベルリン陥落がそうだった。連合軍は先に到着したのに、わざと足踏みして、先にソ連軍をベルリンに入らせた。期待(?)にたがわず、ソ連軍は略奪放火、強姦などをやりつくして、ベルリン市民に存分の恐怖を味わわせた。あとで入った連合軍は解放者としての名誉をほしいままにした。

 満州にソ連軍がなだれこんできたのは、ベルリンと同じ目的のためである。しかも、先鋒の軍隊は軍隊ではない。先鋒軍は死ぬ確率が異常に高い。そのため、ソ連にせよ、中共にせよ、先鋒軍は反革命分子と刑務所の犯罪分子に担わせる。代わりに戦場で何をしようがお咎めなしである。名誉ある先鋒軍という概念は、そこにはない。

 話がだいぶ横道にそれている。ドイツが降伏した後、あらゆる国々と戦って日本は敗れた。敗れた日本は戦争犯罪を裁かれる。その場が極東軍事裁判(通称 東京裁判)である。変な裁判であった。ヒトラーの犯罪と合わせるため、日本の軍事指導者は、世界制服のため十数年前から共謀して戦争準備にかかった。これが罪だというのである。つまり、戦争を起こしたことが犯罪である、とされたのだ。

(優れた欧米文明が劣った日本を裁く…として設けられた軍事裁判)
 現在の日本人にも、そう信じている人は多い。とにかく戦争を起こすことは悪い、そう洗脳された日本人は、今でもひょっとしたら過半数を超えるのではないか。無理もない。現在の憲法は第9条の2で、交戦権を認めていないからである。

 しかし、よく考えてほしい。真珠湾攻撃をした1941年当時の国際法では、どの国にも交戦権は認められているのである。東京裁判が怪しげであるというのは、裁判のあった1946年より過去にさかのぼって罪を問うているからである。法律がないのに、裁判で裁くということは不当裁判などという次元ではない。マンガの世界である。

 日本が戦争を起こしたことは別に罪ではない。このことを日本人はよくよく胸に叩き込む必要がある。何故なら、朝鮮人やCHINA人(シナ人と書くと差別だといわれる。本当はそうではないが、欧米語では抗議されないそうだから、わざとこのように書く)は、東京裁判をタテにとって、日本が戦争をおこしたことが、そもそも犯罪であると言い散らしているからだ。

 この原則を認めると、韓国の慰安婦問題も、別の相貌を帯びてくる。朝鮮人の文在寅にしてみたら、そもそも日本が戦争をおこさなかっら、慰安婦の存在そのものがなかったはずなのだから、慰安婦が居るという時点で、日本には責任が生じるのである。

 ちなみに東京裁判には、もちろん韓国は加わっていない。中華民国(蒋介石)は連合国の一員であったが、実際に戦ったとは評価されていない。ましてや、その後1949年に成立した中華人民共和国は、日本と戦ったとは認められていない。簡単に言ってしまえば、あまり関係のない国、ということなのだ。韓国はそもそも日本と戦っていないので、連合国とは全く無縁である。無縁であるから、よけいに絡んでくるのかも知れない。

 わが同胞に改めて言いたい。東京裁判は、敗戦によって生まれた、怪しげなフィクションである。戦争に負けるとは、国際的に軽蔑され、世界観を無理やり押し付けられる出来事なのである。韓国や中共からの言いがかりには、毅然として対応しなければ…といいながら、日本政府は有効な手立てを見出せない。

 何故、東京裁判は無効だと主張できないのだろうか? 信じがたいことに、日本が独立したサンフランシスコ平和条約で、政府は東京裁判を受諾して認めてしまっているのだ。わが同胞(外務省)の阿呆さ加減には、あいた口がふさがらない。戦争に勝ったアメリカが、日本を意のごとく動かしたいのは当たり前である。日本が戦争に勝った場合を考えてみたらよい。うまうまと、アメリカの手に乗ったのが、戦後思想にかぶれた阿呆官僚であった。吉田茂は日本の戦後をリードした最高の政治家…みたいな扱い外が多い。でも、日本を売り渡した政治家であるという解釈も成り立ちそうである。誰かが吉田茂論を試みてくれることを望む。

 日本人を骨抜きにした元凶はいろいろあるが、まずは憲法であろう。われわれの手で改めることができる、という意味でも憲法である。やはり第9条の改正で、交戦権を回復することが一番であろう。自衛隊に国を守れ…といっても、現実には片手片足を縛られながらの戦闘になる。拉致被害者を取り戻すこともできず、北朝鮮からここまで侮られて何もできない。これが敗戦国家の厳しい現実である。まずはこの屈辱を認めることからすべては始まる。

 せめて、人間としての誇りを取り戻し、同胞のためには、自らの命を懸けて戦う意志を示してはどうか。普通の憲法をもつ、普通の国になって、国力にふさわしい軍備を備え、侮辱は許さないという固い意志をもてば、韓国やCHINAの嫌がらせは自然になくなっていくだろう。逆にいえば、現状のままなら、嫌がらせは続くということである。国の形は残っても、危険に出会ったら、われ勝ちに逃げ出すような国民が大多数のオメデタ国家になって、何が嬉しいのか、それが私にはわからない。

 終わりに。北朝鮮が核を保持したままの南北統一を、韓国の文在寅が狙っているのは大いにあり得る。北鮮にむかって、口では非難してみせても、それはアメリカに服従せざるを得ないからで、アメリカの圧力が弱まれば、たちどころに北鮮との融和を図るだろう。核を持っている以上、北鮮が主導権を握るが、文は金正恩のナンバー2になっても構わない、と思っているだろう。日本や中国を思う存分懲らしめることができる。文の動機なんてこんなところである。ただし、万が一にも、この事態が発生したら、わが国は生きていけない。朝鮮統一は徹底的に邪魔をするのが、アメリカ、中国、ロシア、日本の国益にかなっている。お人よしの日本人も、このくらいは分かる知性を持ってほしい。国際関係とは腹黒さの勝負である。

 ちょうど1年1か月前に、朴槿恵の失脚に合わせて書いた「韓国の混乱」の中で、次のような一文を添えている。読んでもらいたいので、もう一度。
 作家の百田尚樹氏は『大方言』(新潮社、2015年)のなかで「日本は韓国に謝罪せよ」と説いている。もちろん反語であり皮肉である。少し抜粋すると…
「まず、日本は厖大な税金を投入し、朝鮮に5,200をこえる小学校を作り、文盲率90%以上だった民衆の向上を図った。師範学校を36も作り、京城帝国大学まで作って朝鮮民族の教育向上を図った。何の相談もなく進めたことを謝罪しなければならない。
「朝鮮では王族・貴族(両班)・庶民・賎民・奴隷という強固な身分制度があった。日本はこれをこわした。これも相談なく進めたもので、暴挙といわれても仕方がない。
「朝鮮はほとんどが禿げ山であった。日本は6億本の木を植えて勝手に緑化した。灌漑用ため池も勝手に作った。道路や河川も改修した。工場を作り、病院を作り、下水道まで整備した。朝鮮にあった自然を破壊したのは、明らかに日本である。
「荒れ地を開墾して農耕面積を2倍にしたため、朝鮮の人口は2.5倍に増えてしまった。人口問題まで引き起こしてしまったのだ。朝鮮人が怒るのも無理はない」

 欧米のあこぎな植民地主義とは全く違うのである。

朝鮮併合は最大の失敗
●たはむれに韓を背負ひてそのあまりエグきに泣きて三歩あゆまず
(本歌 たはむれに母を背負ひてそのあまり軽きに泣きて三歩あゆまず  石川啄木)
(蛇足)日本が朝鮮を併合しようとしたとき、どの国も反対しなかった。欧米各国は人心の悪さを計算に入れていたと、うがった見方もあることを伝えておこう。確かに、日韓両国は三歩どころか、一歩を歩むのにも苦労している。もう、お荷物は降ろしたいのが日本の本音ではないか。南北統一をさせないために付き合うと考えれば、まだしも我慢できるがね。

なにしろ日本は断罪された記録がある
●あかねさす「歴史」の光の尊くて反日嫌日は生れやまずけり
(本歌 あかねさす昼の光の尊くておたまじゃくしは生れやまずけり  斉藤茂吉)
(蛇足)自ら戦ったわけでもないのに、東京裁判というイカサマ裁判を未だに振りかざす。そんなことができるのは、連合軍のお墨付きだから。これに異議申し立てをしようとするなら、アメリカと対峙し、その隙に米中が組んでしまうという悪夢を乗り越えなければならない。第2次大戦の敗因は、蒋介石との情報戦に敗れ、米中同盟を許したことにある。その轍を踏まずに、アメリカにモノ申す事が出来るか?

トランプ大統領の祝宴に慰安婦を呼び
●慰安婦に文のかけたるしがらみは流れもあへぬ祝宴なりけり
(本歌 山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり  坂上是則)
(蛇足)アメリカに告げ口をする外交は朴槿恵もやった。品性卑しいふるまいである。

意識は華夷秩序(文大統領)
●わすらるる身をば思はず誓ひてし韓国援助の惜しくもあるかな
(本歌 わすらるる身をば思はず誓ひてし人のいのちの惜しくもあるかな  右近)
(蛇足)華夷秩序とは中華(つまりCHINA)が一番偉くて、朝鮮が弟分、それ以外は夷(すなわち野蛮人)という秩序のこと。文にしてみると、CHINA以外にアメリカも親分として仕えなければならず、あれこれ疲れ果て、日本に八つ当たり…というところが真実だろう。日本こそいい迷惑である。どんなに困っても、もう援助はしてやらない、と言ってやれば?

歴代の大統領は後任者によって罪に問われる
●めぐりあひて見しやそれとも分かぬまに雲がくれにし前の大統領
(本歌 めぐりあひて見しやそれとも分かぬまに雲がくれにし夜半の月影  紫式部)
(蛇足)韓国の国民は不安にならないのだろうか。4年ごとに繰り返される粛清劇をどう見ているのか? やはり国民性もよく分からない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2017 対談・岡目八目3 小池百合子の誤算

2017-12-26 12:03:41 | 対談
(画像は Amazonから)

           保守二大政党は幻に?

(冬)2017年を総括すると、世界ではトランプ大統領が圧倒的な存在感をもっているのは衆目の一致するところでしょう。日本に限ると、どうなります?
(八)存在感を消してしまった(笑)ナンバーワンは小池都知事でしょうね。
(冬)例の「排除します」という発言ですな(笑)。
(八)排除が無条件に悪いわけではない。日米安保を廃棄せよ、自衛隊は解散せよ、などという政策を排除することは、なんら差し支えないでしょう?
(冬)排除の対象が問題というわけだな。
(八)あまりにも広すぎた。たとえば、野田佳彦という人なんかは、バリバリの保守派じゃないですか。この人まで、排除の対象にしてしまったのは解せない。
(冬)良くも悪くも、小池百合子という人物は、自分がお山の大将でないと気が済まないんです(笑)。それで、自分に対抗しそうなネームバリューのある人は、最初から入れない(笑)。
(八)前原誠司は数のうちに入らない(笑)、ということか。
(冬)独裁的、という面があらわに出ましたね。「都民ファーストの会」は親衛隊なみの極秘集団にかわり、小池都知事誕生の功労者である音喜多駿都議らが抜けて、内実が公にされてしまった。

(得意満面だったころ)
(八)有本香という評論家が痛烈に批判しています。安全の確保されていた豊洲市場を空き家にして風評をばらまき、過去の知事や政治家たちを犯罪者扱いにして、世間の目をごまかし、公金垂れ流し状態にした、と散々です(笑)。
(冬)移転延期による損害は巨額だとも言っていますね。豊洲の維持費、業者への補償金だけでも600億円、1日に換算して毎日6500万円がドブに捨てられている。『「小池劇場」が日本を滅ぼす』(2017、幻冬舎)にくわしい。
(八)小池は代表を退いたが、希望の党の前途も多難ですな。
(冬)そこで、野田たちを排除したのがひびいてくる。野田は党首になれる男ですよ。
(八)極右と極左を排除する宣言を出せば、違ってくると思う。そして、当初は改憲や集団的自衛権を承認して党を立ち上げたのだから、党の中でいまさら護憲を唱えている連中は切るべきです。
(冬)いったんは小さくなっていい、ということですね。思想統一をはかってこそ、次に期待が持てるというものです。
(八)経済音痴も直してもらいたい。国家予算を家計に喩える愚かさ!ね。
(冬)国の予算には家計の生活費の大半を占める食費がない。インフラ整備なんかは、将来への投資ですよ。家計にはないでしょう? 株式会社の予算の方がよっぽど似ている。
(八)金の配分ばかりに気を取られる、労組的発想も卒業してもらわなくてはね。
(冬)そうそう。家計でも、まず収入を図るのが先だ。税収をいかにふやすか。ということは、いかに経済を発展させるかにかかっている。
(八)安倍首相と並んで唯一の勝ち組となった立憲民主党はどうです?
(冬)護憲を言っている限り、旧社会党と同じ運命でしょう。先細りは避けられないね。目先はいいでしょうが。
(八)党首の枝野幸男はバリバリの第9条改憲派だったのですよ。ご存知でしたか。
(冬)文芸春秋になんか書いたようだね。いつ頃の話ですか?
(八)これは東京新聞論説委員の長谷川幸洋氏の受け売りですが、2013年10月号に載っているそうです。9条の2で個別的自衛権を承認し、9条の3で限定つきながら集団的自衛権も認める内容です。「月刊Hanada」に「枝野幸男と立憲民主党の豹変」と題した論文が載っています。

(政局を読むことには長けているようだが、信条は?)
(冬)枝野代表は持論を変えた、ということですね。立憲民主党は、相次いでセクハラ議員を出したことでも有名になっちゃった(笑)。弁護士が権力をかさにきた、いかにも進歩的オヤジ風のセクハラ(笑)でしたね。私は「猥褻(わいせつ)民主党」と名前を変えるように進言したい(笑)。
(八)ホテルで弁護士と憲法の勉強をしていた山尾志桜里も立憲民主党入りらしいから、文字通りオールスターキャストになりますね(笑)。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2017年事件簿18 トランプが賭けに出た

2017-12-24 14:54:19 | パロディ短歌(2017年)
(写真は、トランプが賭けに出たエルサレム)

          反グローバリズムとは何か?

 2017(平成29)年を総括すると、主役は何といっても、トランプ大統領。既存のマスメディアからは、敵役として嘲笑の中で登場したが、最近の活躍を見ていると、なかなかどうして歴代の大統領以上の実行力を示している。
 一つはアメリカ国内の法人税大幅減税。もちもと35%だったものを21%にまで下げるというのだから、アメリカ経済が活況を呈するのは明らかだ。二つ目はイスラエルの首都をエルサレムと決めたこと。アラブ諸国を始め、大半の国々から国連で“NO”を突きつけられたが、パレスティナでの反対運動は盛り上がっていない(24日付読売新聞)。
 トランプは頻繁にツウィートすることで有名だが、個人的な感想を振りまくことで煙幕をはり、虚をついて重大な政策変更をする。これが彼のスタイルだと思っていいだろう。

 「アメリカファースト」と叫んできたトランプは、ずっと反グローバリズムだと言われてきた。グローバリズムに反対するとはどういうことか。われわれは、グローバリズムがいかにして生まれたかを思い起こす必要があろう。
 1945年から1989年まで、20世紀後半は二つの陣営が覇権を争って対立してきた。ソビエト連邦や中華人民共和国を中心とした社会主義・共産主義の国々と、アメリカ合衆国に代表される自由主義・資本主義の国々である。1989年にソ連が崩壊し、中共が実質的に資本主義を取り入れ、覇権争いは決着がついた。アメリカを盟主とする陣営の勝利である。ただし、ヨーロッパとアジアでは影響が異なっている。

 ヨーロッパでは、ソ連の崩壊により東ヨーロッパ諸国大きな経済的空白が生まれた。彼らはソ連から遺棄され、何の産業もなく労働者は飢えたまま放り出された。西ヨーロッパ諸国の企業は安い労働力を求めて、東ヨーロッパに進出し、東の労働者も仕事を求めて西ヨーロッパへ移動した。EU(ヨーロッパ共同体)の仕組みが都合よく、資本や労働力の移動を促進したのである。
 ある時期までは西・東ヨーロッパ双方にとって、互いに都合の良い関係であった。労働賃金が下がったので、企業は安い賃金で商品を生産し、市場に提供できたし、先進地域では3K(汚い・きつい・危険)の仕事に、安い労働力が殺到して生活を安定させてくれた。要するに、ウィンウィンの関係だったのである。グローバリズムとは、資本も労働も自由に移動させよう…というシステムである。
 このシステムが、西欧と東欧間で働いていた間はまだしも幸せだったのである。もちろん、東欧からの労働者への偏見もあった。入国してしばらく経てば、同等の医療保険や生活保護が受けられる。その原資は誰が払ったのか…という疑問も生まれた。とはいえ、同じキリスト教徒の間の話である。その軋轢が表面化することはなかった。

 局面が変わってきたのは、中東の難民がヨーロッパに逃れてきてからである。「イスラム国」やシリアからの難民は、政治的難民である。彼らの人権を保障しなければならない。…こうしてドイツをはじめ、ヨーロッパ各国にイスラム難民が大量に流れ込んだ。
 最大の問題は、雇用が頭打ちになったことである。資本主義は打ち出の小槌ではない。いくら労働力が安くなるからといって、無限の雇用を生み出せるわけではない。働ける人数に限界が出てくれば、給料は安いほうに流れる。西欧では、現地の労働者がクビを切られて、東欧やイスラムの労働者にとってかわられた。

 話が違うのではないかと抗議したのが、EUからの離脱を決めたイギリスの国民、ドイツやオーストリア、フランス、イタリアなどで力をつけた民族主義の極右勢力。
 グローバリズムは、皆に平等に恩恵をもたらす…と聞いていたのに、低賃金で儲けた企業がある一方で、元から働いていた労働者は賃金の低下にあえぎ、あるいはクビを切られてきたのではないか。政治はこれを是正するどころか、EUのようにグローバリズムの掛け声にのって、役人などが甘い汁を吸ってきたのではないか。高給取りのマスメディアも、一方的な宣伝に加担したのではないか。どれもこれも、労働力の需要が頭打ちになったせいで明らかになった矛盾なのである。ヨーロッパに限らず、アジアでもアメリカでも、途上国の賃金は次第に上がったが、先進国の賃金は抑えられ、あるいは低下した。アベノミクスが定着するまで、日本の労働者も横ばいの賃金に対し、同じ不満を抱いてきたのである。

 トランプのいう「アメリカファースト」は、別の言い方をすれば、「アジアはアジアで」「イスラムはイスラムで」解決してくれという要請なのである。もちろん、「アメリカにとって害のない」アジアやイスラムである必要があり、「害をなくすための介入」はさせてもらうよ、と言っている。だから、北朝鮮の核開発とICBMはつぶす、イスラエルの首都移転に文句は言わせない、というスタンスになる。
 トランプ大統領は生まれるべくして生まれたのである。反グローバリズムを指して、国家主義や民族主義の側面を指し、ナチズムを懸念するような声があるのは事実である。しかし、欧米的なグローバリズムのほかに、別のグローバリズムを目指す勢力がある。中国人民共和国という帝国主義的経済大国ロシアという政治的大国である。

 ヨーロッパと違い、アジアは別の道を進んだ。中共やベトナムなどが共産党の支配のもとで亜種資本主義の道を歩んだからである。東欧のような空白は生じなかった。北朝鮮だけがミサイルをぶっ放し、核実験を続けている。ただし、本当に怖いのは北朝鮮ではなく、中国共産党の膨張主義だ。
 アジアが中共の蹂躙に屈服するなら、トランプは中共が盟主になるアジアを認めてしまうだろう。彼にとって政治的な正しさなどは問題ではない。すべてはDEAL(取引)の範疇で取り扱われる。唐突なようだが、このような情勢は、ナポレオン没落後のヴェルサイユ会議を思い起こさせる。ワーテルローの戦いでナポレオンが敗れた後のヨーロッパをどうするか。戦勝国のイギリス、ロシア、オーストリア、敗戦国のフランスが国家の利益をめぐって、丁々発止の外交を繰り広げた、あの会議である。

 21世紀のいまは、その舞台が世界に広がっている、と考えればいい。何が正しいかではなく、何が取引材料になるか、である。日本の選択肢は、取引材料をたくさん持つことである。自らの手を縛る戦後憲法なんぞ、百害あって一利もないことを思い知るべきだ。そもそも憲法改正論議を封じ込め、核の持込や核武装の論議も封じ込める風土が私にはわからない。論議をするということは、採用することではない。論議をすること事態が、他国への牽制になるのだ。

 以上、反グローバリズムの起源や内容について記してきた。ただ、日本にとって、グローバリズムの旗は依然有効である。有効であるどころか、旗印を下げるべきではない。理由は明らかであろう。中共が推し進める、別のグローバリズムへの異議申し立てを継続しなければならないからである。TPPをアメリカ抜きで締結するのも正しい。しかし、グローバリズム一本やりで乗り切れるような世界ではない。他の国々と対抗するためには、ごく普通の国家意識も必要になるだろう。日本に欠けているのは、この意識である。当たり前の、普通の国になるために。


法人税率の減税幅はすごいと自賛して(トランプ)
●減税は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞えけれ
(本歌 滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞えけれ  大納言公任)
(蛇足)レーガン大統領以来の大減税だと、トランプは自画自賛していたが、その気持ちは分かる。なにしろ35%から21%へ14%も下げるわけだから。

同じ趣旨で
●減税と鳴きつる方をながむればただレーガンの名前ぞ残れる
(本歌 ほととぎす鳴きつる方をながむればただ有明の月ぞ残れる  後徳大寺左大臣)
(蛇足)オバマ時代から好景気は続いていたので、ほかの大統領なら減税に踏み切ったかは疑問。これからは景気の過熱に注意するのだろう。

イスラエルの首都にエルサレムを指名して
●エルサレム逆白波のたつまでにふぶくゆふべとなりにけるかも
(本歌 最上川逆白波のたつまでにふぶくゆふべとなりにけるかも  斎藤茂吉)
(蛇足)誰もが予想しなかったタイミングでの決断。反発も予想以上で、デモも多発した。イギリスをはじめ、ヨーロッパ各国が反対に回ったのにもびっくり。安全保障理事会では、アメリカは拒否権を発動した。

国連決議は撤回要求が多数
●エルサレムにうち出でてみれば国連の拒否演説に票は降りつつ
(本歌 田子の浦にうち出でてみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ  山部赤人)
(蛇足)国連総会の決議では、エルサレム首都を撤回に賛成が128票、反対が9票、棄権が35票だった。賛成の国への援助を再考する…との牽制が効いて、棄権票が増えたといわれる。トランプ我が道を行く、で支持者は満足しているらしい。報道によれば、反対のデモは低調だという。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2017 エッセイ・雲2 自己分析

2017-12-20 11:29:55 | 雲エッセイ
           自分はどこまで信用できるか?
 
 4年前に発売されて、いまでも売れ続けているベストセラーに『単純な脳、複雑な「私」』(池谷裕二、講談社)がある。最新の脳科学について、面白い報告が山のようにある。
 例えば、われわれが手を動かすとき、認知のレベルでは「動かそう」という意思、「動いた」という認識があり、脳のレベルでは「準備」をする、「指令」を出すという活動がある。実際に手を動かしたとき、普通なら「動かそう」という意思があって、脳が「準備」し「指令」を出して手を動かせ、「動いた」と認識する…こう考えるのが普通ではないだろうか。しかし、実際は脳の「準備」があってから「動かそう」という意思が生まれ、(この後も信じがたいが)「動いた」と思ってから「指令」が発せられる。
 私は40歳代から難聴でずっと補聴器のお世話になってきた。それでも聴き取りに難渋することがある。一般の人は ①相手の言葉を聴く ②内容を理解する ③自分の返事を考える ④返事を発する…というような順番を考えるのではないだろうか。しかし、相手の言葉が50%程度しか聴き取れなくて、内容を理解するのに少し手間取ると、会話は全く成立しない。間が抜けてしまうのである。それじゃ、少し時間を空けてもらえれば会話が成り立つかというと、返事自体ができなくなってしまう。俗に言うマヌケ面になってしまうのだ。
 私の体験から言っても、脳は相手の話を聞きながら、返事を考えて用意している。相手の話が途切れたら、即座に返事ができるのは、聞く・話すという双方向の活動を脳がしていることに他ならない。細かいところは脳科学がすでに明かしているに違いないが、私が実際にアドバイスできるのは、100%会話を拾える補聴器でなければ役に立たない、ということである。

 前置きが長くなった。池谷先生の本の中に、次のような絵が載っている。(見にくければクリックして拡大して下さい。下の図も同じ)

 これは、脳で脳を考えるとどうなるか、を絵にしたもので、リカージョンという題がついている。日本語なら「再帰」というところだ。「無限」でもある。絵を良く見ると、合わせ鏡の形をしていて「無限」に像が伸びている。この絵を見て、私は23~24歳の頃を思い出した。よく似た画像を思い浮かべたことがある。それば自分について考えていたときのことだった。

 日本人は「建前」と「本音」を使い分けるといわれる。「建前」はいわば他人に合わせた仮の意見で、「本音」自分の本来の姿である…みたいに思っている人も多いだろう。しかし、その「本音」を支えているのは何かと省みれば、意外にも「利益」が優先したりしている。それじゃあ、何故「利益」なのかと問えば、近所や親戚への「虚栄」が動機だったりする。「虚栄」は「競争心」の賜物であったり、その「競争心」は「嫉妬」の産物だったり、「嫉妬」は「自尊心」が異様に高いせいだったり、その「自尊心」は「自己正当化」の欲求にまみれていたりする。いったい何が本当なのだ? 若かった私は「これこそ本心」と思われる「心」が一筋縄ではいかないことにうろたえていた。行きつく先は得体の知れない、不気味なもので、もう「心」とは呼べないものかもしれない。
 そのとき、私が思い浮かべたのが、前の像に似ていたわけである。ただ、私の想像した無限の像は、井戸のように下に向かっていた。像はずっと下へ降りていて、暗闇に消えていて、絵を倒してみると、少しはその感じが出てくる。井戸の底には無意識がある。

 そして私は直感した。自分を100%信じるということは間違いだ、と。もう今から60年も前の話になるが、大学生の私はフロイトの本を読んでいて「人間の意識は氷山の一角で、大部分は無意識の領域」だと理解していたから、これは当然の結論のように思えた。ヒトの脳には、古い発生のものもあって、ワニの脳と同じ部分もある。無意識には何があっても不思議ではないからである。その証拠に、世の中には、不自由と不平等が遍在し、価値は常に混沌としていて、信じられない犯罪が生まれる。

 表題の答えは、こうである。私はいつでも、どこでも間違いを起こしうる存在だ。無条件に信用するわけには行かない。ここからある種の人間観が生まれてくる。無条件に自己主張する人間は偽者であるという感覚で、私が貴乃花親方を評価しないのも、彼が100%の自己正当化を図っているように見えるからである。サヨク嫌いも復古右翼を許したくないのも、動機は同じ。要するに、ノー天気に自分自身を主張するから信用できないのである。自らを少しは恥じている感覚があるかどうか、が分かれ目になる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2017年事件簿17 大相撲の危機(続編)

2017-12-04 14:44:24 | パロディ短歌(2017年)
            何故、貴乃花親方を「忖度」する?

 前回、理事としての貴乃花親方の振舞いはおかしい、と書いた。あいかわらず、貴乃花親方は口を閉ざしたままである。すると、テレビやスポーツ新聞の一部が、貴乃花親方を擁護し始めた。親方は何も喋っていないので、マスコミが勝手に「忖度」して書いたり喋ったりしている。
 国会の場では安倍首相への「忖度」をあれだけ非難したマスコミが、手の平を返したように自ら「忖度」する。要するにダブルスタンダードである。旧来の日本語にはもっといい言葉がある。二股膏薬…どちらにでもくっつく、定見のない人間の行為を指す。マスコミとは二股膏薬である。マッチで火をつけておいて、今度は消しにかかる。これをマッチポンプという。マッチポンプはマスコミの常套手段である。みんな、気をつけてね。
 最近の論調は、「いかに貴乃花が素晴らしい横綱であったか。それにひきかえ、白鳳の相撲は横綱の品格に悖るのではないか」として、明らかに貴乃花親方の擁護を図っている。
 私の意見は変わらない。なるほど、貴乃花は横綱としては立派であった。親方としても、弟子を可愛がる点においては合格だろう。ただ、相撲協会の経営に当たる理事としては落第点である。彼の行為は、協会をつぶしかねない。
 野球でもよく言うではないか。名選手必ずしも名監督ならず。名横綱必ずしも名理事ならず。貴乃花親方が本当に反省すれば道は開ける。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする