パロディ『石泥集』(短歌・エッセイ・対談集)

百人一首や近現代の名歌を本歌どりしながら、パロディ短歌を披露するのが本来のブログ。最近はエッセイと対談が主になっている。

2016年事件簿5 パナマ文書に思う

2016-05-09 15:57:52 | パロディ短歌(2016年)
(図はパナマの国旗) 
                   パナマ文書に思う

 もう一か月以上前のことだが、タックスヘイブン(租税回避地)のパナマから膨大な資料が流出した。「脱税」と決めつけることはできないにせよ、多くの政治家が利用していたと分かり、世界中にショックを与えた。

 世界のリーダーの中には、キャメロン首相(イギリス)、プーチン大統領(ロシア)、習近平国家主席(中国)など(および側近、親族)が名を連ね、アイスランドのグンロイグソン首相は辞任。キャメロンは釈明に追われている。プーチンと習は独裁者らしく、情報を遮断しているが。

 フランスの経済学者、トマ・ピケティが「富の格差は増大しつつある」と証明したばかり。このタイミングでの暴露は、ただでは済みそうにない。暴露したのは、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)という組織である。アメリカの息がかかっているとも言われるが、別によかろう。闇のものが明るみに出るのは、それだけでいいのだ。

仲良く連ねた名前には、いかにも…と頷いてしまう
●リーダーが税金逃げてヘイブンにうっふんうっふん肩を並べる
(本歌 白菜が赤帯しめて店先にうっふんうっふん肩を並べる  俵万智)
(蛇足)やはり出たか…という印象は、プーチンと習近平。ロシア人は知ってても、しょうがないと思っていそうだ。中国では一切の情報がない。それでも1万数千人は、ネットで辿り着いたらしい。「姉婿」で検索したらしい。やるね!

タックスヘイブンは世界に百か所以上あるという
●あかねさす脱税・節税の尊くてタックスヘイブンは生れやまずけり
(本歌 あかねさす昼の光の尊くておたまじゃくしは生れやまずけり  斎藤茂吉)
(蛇足)パナマの一法律事務所のデータが流出しただけで、この騒ぎ。世界では想像を絶する不正が行われているらしい。

要するに金額が多額であれば不正ができる
●調べあさく税もうすらにリーダーの流れてありぬ憂しやパナマは
(本歌 瀬もあさく藍もうすらに多摩川の流れてありぬ憂しや二月は  若山牧水)
(蛇足)「調べ」とあるのは調子ではなく、調査のこと。闇組織のマネーロンダリングにも使われているのが問題。

名前の出た連中は内心気が気でないだろうな
●忍ぶれどパナマに出でにけりヘソクリは どこで抜いたと人の問ふまで
(本歌 忍ぶれど色に出でにけりわが恋は ものや思ふと人の問ふまで  平兼盛)
(蛇足)政治家が儲かる仕事だ、とは噂で聞くが、本当だったんだね。どのようにして金を集め、どのようにして内密にしておけるのか。疑問は尽きない。

今回のジャーナリスト連合はお見事
●国を逃げて税の空音ははかるとも世に報道の関は許さじ
(本歌 夜をこめて鳥の空音ははかるとも世に逢坂の関はゆるさじ  清少納言)
(蛇足)流出したデータ量は2.6テラバイトになる。これは新聞2,600年分に相当するそうだ。(読売新聞より)

税金を集めて使う立場の人が税逃れ
●嵐吹くパナマのタックスヘイブンは偽リーダーの下水なりけり
(本歌 嵐吹く三室の山のもみぢは龍田の川の錦なりけり  能因法師)
(蛇足)汚い金を集めては、せっせとタックスヘイブンに運ぶ。銭の下水道だね。
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2016年事件簿4 トランプはキングになれるか?

2016-05-07 09:19:00 | パロディ短歌(2016年)
トランプはキングになれるか

 5月5日付けの新聞は、ドナルド・トランプが共和党の大統領候補にほぼ決まった、と伝えている。インディアナ州の予備選挙で圧勝し、第2位の候補であったテッド・クルーズが選挙戦から撤退したからだ。6日になると、もう一人の候補者・ケーシックがやはり撤退を表明した。これで共和党はトランプを候補として大統領選挙戦にのぞむことになる。
 これで11月8日に予定されている本選挙は、民主党のヒラリー・クリントンと共和党のトランプの一騎打ちとなる公算が高まった。各種世論調査では、今のところ、ヒラリーの優位が伝えられているが、本選では何が起こるか分からない。ヒラリーを嫌う人も多く、トランプだって勝機はあるだろう。

 もっとも、現在の時点で重要なのは、どちらが勝つかということではない。トランプが大統領になった場合の、シミュレーションをすることである。外務省も始めたそうだが、あの連中は当てにならない。第二次大戦開始の真珠湾攻撃で、パーティー優先のあげく、宣戦布告を二時間後に手交した連中である。国連の常任理事国立候補の失敗や媚中・媚韓外交はよく知られる。お互い親戚の多い、外務省「村」なのだ。

 本題に帰ろう。トランプが再三言ってきたのは、アメリカに「世界の警察官=用心棒」を頼むなら、それなりの上納金をよこせ、という話である。偉大なアメリカを復活させる、と言っているから、「用心棒」はやりたいらしい。しかし、何もかも自分持ちでやるには銭(ぜに)がない、だから子分になりたければ、それ相応の銭を負担せよ、という話である。悪いことではない…と私は思う。上納金を多く納めた子分の発言力は重みをもつし、親分も無視しにくくなる。「親分! ここのところは、総攻撃ですぜ」とか「あっしに免じて、ここはチャカ(ピストル)だけで止めときやしょう」などとアドバイスできるし、「ここは忍(にん)の一字ですぜ」とサヨクお得意の「なんでもかんでも平和主義」を貫くこともできる。

 日本にも同じことは言ってくるだろう。わが国の対応は、目に見えるようだ。大変だ大変だ、というだろう。いつも被害妄想から始まるのが(大多数の)日本人の対策で、それをマスコミが一層煽り立てるという構図になっている。

 課題を解決するのに、被害妄想から始めるのは最悪である。トランプの登場は、物事をゼロベースで考えるいいチャンスなのだ。日米安保条約には、不満を持つ日本人が少なくないらしい。現在の安保条約が気に入らなければ、自衛隊を増強して、アメリカの穴を埋めるという選択肢もとれるし、極端な話だが、アメリカ以外と同盟を組んでもいい。これも極端だが、核武装だってあり得る。(いずれも、私は反対だが…)

 一方、アメリカからみれば、日本と同盟を結ぶ可能性と中共と同盟を結ぶ可能性は、常に平行して存在することを忘れてはいけない。ヒラリーの夫、ビル・クリントンは親中派で、中国系の団体から資金提供を受けていたことは皆が知っている。第二次大戦では、蒋介石の中国はアメリカ・イギリスと同盟を組むことに成功した。これが日本の敗因である。

 問題は現在でも同じ。アメリカと同盟を組んだ国は繁栄するという見方もあるし、親分との付き合いは大変だ、という意見もある。ただ、ここはアメリカと中共が結ぶ…という悪夢を避ける、つまり中国の邪魔をするためだけであっても、アメリカとの同盟は死守しなければならない。いくら金がかかろうが、「核の傘」つきで守ってくれるんだから、安い買い物だと割り切るべきである。

 オバマは「和解の大統領」としての名声を残したいらしい。イランと和解し、半世紀も不仲だったキューバとも国交を回復した。広島にも来るだろう。アメリカの国益は後回しにされた、とアメリカ国民は不満を持っている。それなら、中東も含めた世界を一旦チャラにし、ゼロベースで見直す、というのはトランプの考えていることでもある。トランプ大統領(?)は、おそらく世界中をがたがたさせるに違いない。日本としては、ロシアとの国交回復や北朝鮮との和解など、どさくさ紛れにこそチャンスがある。

あれよあれよと驚く国民
●吹くからに他の候補のしをるれば むべジョーカーをトランプといふらむ
(本歌 吹くからに秋の草木のしをるれば むべ山風を嵐といふらむ  文屋康秀)
●夕焼けてゆく速度にてジョーカーがアメリカのキングに上がりはじめる
(本歌 夕焼けてゆく速度にてコロッケが肉屋の奥で揚がりはじめる  俵万智)
(蛇足)トランプが大統領選挙に出馬したとき、アメリカでは誰もがジョークだと思ったらしい。マスコミや偉いさんは、ね。しかし、そのジョーカーがあれよあれよという間に、キングへ昇り詰めるかも知れない、という情勢になってきた。(この「蛇足」は日本語の上での語呂合わせである。まず、アメリカでは遊び道具のトランプをCARDというし、アメリカの大統領はキングではない。キングやクイーンは歴史と血統を要請されるのだ)

民主党は赤のシンボルマークのヒラリーに
●民主党鳴きつるかたをながむればただヒラリーの赤ぞ残れる
(本歌 ほととぎす鳴きつるかたをながむればただ有明の月ぞ残れる  後徳大寺左大臣)
(蛇足)“社会主義者”バーニー・サンダースも思いのほか善戦したが、選挙資金豊富なヒラリーにはかなわなかった。

サンダースの支持者は一部トランプに重なるというが…
●世の中よ広き格差に想ひ入る民主の党のサンダースなくなる
(本歌 世の中よ道こそなけれ想ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる  皇太后宮太夫俊成)
(蛇足)格差是正を訴えたサンダースには、若者が手弁当で運動に参加した。エスタブリッシュに対する反感が基礎にあるといわれる。

トランプもヒラリーも強気にかけては引けを取らない
●あらざらむこの世のほかの思ひ出に いまひとたびの泥仕合かな
(本歌 あらざらむこの世のほかの思ひ出に いまひとたびの逢ふこともがな  和泉式部)
(蛇足)双方ともかなりキツイネガティブキャンペーンをやるのではないか。泥試合になって、野次馬としては楽しいかも。

ヒラリーが勝てば、初の女性大統領で、初の夫婦大統領になる
●いにしへのビルの都のワシントンけふヒラリーに匂ひぬるかも
(本歌 いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重に匂ひぬるかな  伊勢大輔)
(蛇足)ヒラリーの安定感を買う人は多い。難題に対し、女性ゆえの強硬策が喝采をうけるかもしれない。
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