勝浦式タンタンメンを出すお店の中でも、最もマニアックで、最も不思議なラーメン屋さんが「はらだ」と言えるだろう。とにかく個性的だ。
まず場所が秘境的(汗)。ぴかいちラーメンや松野屋と同様、国道297号を行くのだが、国道沿いにあるわけではない。手がかりは、「国民健康保険 勝浦診療所」だ。ここを目指せばよい。この勝浦診療所のすぐ手前にある。路地裏、秘境、隠れ家、そういう感じの雰囲気が漂う不思議なラーメン屋さん。
青いバラックのような平屋のラーメン屋さんで、雰囲気的にはアリランラーメンにかなり近い。田舎のレトロなラーメン屋さんというべきか。お店の右手は商店になっていて、日常雑貨が売られている。建物の中央が厨房になっていて、左手側と厨房奥にテーブルと食卓がある。アットホームで、いい雰囲気だ。
さらにこのはらだをより魅力的にさせているのが、女性店主の美代子さんだ。名物女将さんって感じかな。来る客一人ひとりに対して気さくに話しかける姿を見ると、失われし昭和の懐深さを感じざるを得ない。こういう温かさを平成は見失ったのかもしれない。親であることや教師であることや保育士であることに不安を感じたり、迷いを感じたときは、是非(ラーメンを食べるだけでなく)こちらで人との愛情あるかかわり方を学んでもらいたい。はっきり言ってすごいです。(こういう母的存在を若者は求めているのかもしれない・・・ すべてを受け入れそうな絶対的なものを感じた!)
こちらでも、もちろんタンタンメンを注文!
ヴィジュアル的には、江さわや松野屋に近い感じだが、あめ色の玉ねぎがスープの表面にのっている、この点が違う。辛さは調節してもらえる。今回はとりあえず「普通」でお願いした。
はらだのタンタンメンの特徴は、やはり玉ねぎにある。玉ねぎの表面をみると、ちょっと茶色く焦げた後がある。みじん切りにした玉ねぎをフライパンで炒めたのだろう。甘みが存分に出ている。その玉ねぎが大量に入っており、真っ赤なスープなのに、とてつもなく甘みが感じられる。もう、タンタンメンという範疇を飛び越えてしまっている、そう感じた。勝浦式タンタンメンというより、美代子さんのタンタンメン、いや美代子さんの麺料理って言うべきか。
甘い玉ねぎと辛いラー油の麺料理。勝浦のソウルフード。そういうタンタンメンだ。他の勝浦式タンタンメンのお店よりもジャンクさがあり、若者たちの心をがつっととらえる逸品だ。今日も、この界隈の某大学生たちがたくさん集まり、楽しそうにみんなここのタンタンメン(ORつけめん)をがっつり食べていた。体育会系の若者には、たまらない味なのだろう。ジャンクさたっぷり、個性たっぷり、そして愛情たっぷり。
タンタンメンそのものとしては、他のタンタンメンよりはややおとなしい感じがする。玉ねぎがかなり多いので、甘みの方が際立つ。けれど、そんな解説はご無用なのだ。ここは、(二郎と同様)はらだのタンタンメンという食べ物なのだ。思考を停止させるだけのパワーとソウルがこのお店には溢れている。
繰り返すが、美代子さんは、われわれが忘れかけた素朴な人間愛をしっかり守っている。これが日本のお母さんなのだ。是非美代子さんと出逢ってほしい!