Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

■最暗黒の東京■松原岩五郎■ 明治25年頃のB級グルメ?満載の渾身レポ!

松原岩五郎を知っている人はいったいどれだけいるんでしょうか?!
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E5%8E%9F%E5%B2%A9%E4%BA%94%E9%83%8E

明治時代の下層社会の実態を克明に記述した『最暗黒の東京』(1893)を書いた方です。教科書で定番の横山源之助の『日本の下層社会』(1899年)に匹敵するも劣らない渾身の一冊です!!
http://rin-5.net/001-250/065-saiankoku-tokyo.htm

たまたま古本屋さんで見つけた一冊です。古本屋さんの良さって、こういう偶然の出会いにあるんですよね。

パラパラとページをめくったら、明治時代の食文化がいっぱい記載されているんです。僕の関心はただ一つ、明治時代にラーメン(らしきもの)はあったのか、なかったのか。それから、この当時、どんな食べ物を庶民は食べていたのか。それに尽きます。知りたくなりません? 明治時代、今から120年前に、庶民はどんな食べ物を食べていたのか。

それに、この当時の庶民を描いた本としては、かなり古いものだと思います。日本の下層社会よりも古いですからね。書物や文献はいっぱい残っていますが、庶民、いや、そうじゃない、下層社会の人たちがどんな食生活を送っていたのか。そこに、ラーメンらしきものはあるのか、ないのか。屋台では何が食べられていたのか。

この本を読むと、僕らの食生活が全然変わっていないことに驚くと思います。今、僕らが普通に食べているものは、ほぼ全部明治時代にあったんですね。残念ながら、「ラーメン」らしきものについての記述はありませんでした。松原の節に従えば、まだ東京にラーメンはなかった、としか言えないかな、と。1800年代に、それらしき記述を見つけられたら、ラーメン史をくつがえすことができるんですけどね。やはり1911年説は手堅いですね。。。

さて、では、明治時代の下層社会の人たちは何をどこでどう食べていたんでしょう?! しいていえば、明治時代のB級グルメです! こんなマニアックなことをざくっと読めるのは、『Dr.keiの研究室』だけ!!!

この本で紹介されているものをざくっと紹介してみましょう。

角兵衛獅子(芸をする子どもたち?)は、茹蟹(ゆでがに)、もろこしの炙り焼を食べていたそうです(p.19)。
http://www.tisen.jp/tisenwiki/?%B3%D1%CA%BC%B1%D2%BB%E2%BB%D2

焼きとうもろこしを食べていたんですかね?! 今も確固たるB級グルメですよね。どんな味だったんだろう? ちなみに、この獅子たちのことを、松原は「幼稚園的芸人」と呼んでいます。この時代から、幼稚園は幼稚園だったんですね。それにもびっくり。(ちなみに、この本には当時の下層社会の子どもたちが克明に記述されています!)

さらに、町で売られている食べ物がずらりと列挙されます。茄子、胡瓜、馬齢薯(じゃがたらいも=じゃがいも)、芋、蒟蒻、蓮根の屑(?!)が八百屋で売られていたそうです。屑というのがポイントです。(この当時は、まだ貧困層へのまなざしは一切なかったですからね) さらには、塩鮭、干鱈(ひだら)、乾鯣(するめ)、鯖(さば)、鯵(あじ)の干物、串柿(くしがき)も売られていたそうです。ラーメンに使われるダシは、既にこの時代にしっかり使われていたんですね。ダシの旨みは、下層社会の人たちもしっかり知っていたようです。

漬けものもいっぱいあったみたいですね。漬物屋では、ヒネ沢庵(古漬け沢庵)、漬茄子、らっきょう、梅干しの一山百文売りが行われていたみたいです(p.20)。以下のサイトで、松原が参考に挙げられています。
http://dic.search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&p=%E3%81%B2%E3%81%AD%E3%81%9F&fr=dic&stype=prefix

さらに、居酒屋では、焼鳥、焼鯣(するめ)、炙唐もろこしが焼かれていて、いい匂いがしたそうです!(同)。また、魚屋では、鰐(わに=サメのこと)、鮪(まぐろ)、鰤(ぶり)、鰹魚(かつお)をさばいていたそうです。さらに、蟹(かに)、蝦(えび)も小さな子どもが売っていたんだとか。

この本に頻繁に出てくるのが、「破肉(あら)」なんです。石神さんが魚のアラを使ったラーメンに注目していますが、このアラも、明治時代の下層社会で大切にされたものなんですね。破肉っていう言い方もなんともいえないと思いません? 刺身も積極的に食べられていたようですが、下層社会の人は、どちらかというと破肉を使って、料理をしていたんじゃないかな、と思われます。

僕がこの本で、すごい新鮮だったのが、『残飯屋』という職業の存在です。残飯というのは、「大厨房の残飯なるのみ」(p.38)とあって、軍隊の厨房を指しているようです。軍人のために作られた料理やその材料を、下層社会の人たちに売りつけるのが、この残飯屋の仕事だったんだとか。松原にしてみれば、この残飯屋こそ、明治25年頃の最貧民の人たちであり、彼らの極めて貧しい生活ぶりに驚いている。「…この不潔なる廃屋こそ実に予が貧民生活のあらゆる境界を実見して飢寒窟の消息を感得したる無類の(材料収集に都合よき)大博物館なりしならんとは。」

また、調味料もそれぞれ既に揃っていたんですね。かつお節=「松魚節(ほしうお)」、醤油、味噌もしっかりと使われていたようです。ラーメンの素となる調味料や風味って、まさに日本人の心の味と言っていいんでしょうね。「ラーメン」という存在はまだ生まれていませんが、かつお節や醤油や味噌といった「味」は、明治時代の庶民の味そのものと言っていいかもしれません。=つまり、日本人に合うように、作られていった、ということが考えられるんです。

さらに「麺文化」の兆しを示す話も出ています。

夜商人(夜に店を開けて商売する人)は、「スイトン」を煮て食べていたみたいです。稲荷寿司、マカロニー、饂飩なども食べていたようです(彼らが食べていたのか、それを売り物にしていたのか?!)(p.65)。いわゆる「粉モノ」は、もしかしたら夜の屋台の定番だったのかもしれません。ラーメン=夜泣き屋=夜商人と続く文化だとしたら?! これはこれで面白いテーマかもしれません。夜に食べるラーメンがなぜ美味しいのか、そこに歴史的な根拠があったとしたら?!…ドキドキしますね。

この本の後半は圧巻です。立て続けにB級グルメ?の原形?みたいな食べ物が列挙されます。例えば、両国橋の「夷餅」、「剛飯(こわめし)」、浅草橋・馬喰町の「ぶっかけ飯」(?!⇒一体何をぶっかけていたんだ?)、八丁堀の「馬肉飯」、新橋、久保町の「田舎蕎麦」、「深川飯」…(p.143)。すごいでしょ!! 「ぶっかけ飯」って、明治時代から、今から120年前には既にあったんですよ。日本人は、「ぶっかけ」が大好きなんですよ! ラーメンそれ自体がぶっかけみたいなものですからね。…そういうことなんですよ!!

みんな、「煮込」が大好きだったみたいです。煮込は、「労働者の滋養食」だったそうです。煮込文化こそ、ある意味で、ラーメンが文化として根づくための基盤だったのかもしれません。あらゆるものを煮込んで食べる、これこそ、まさにラーメンのスープ作りのバックグラウンドだったのかもしれませんね。(p.145)。

蕎麦についても書かれているんですが、なんかこれがどうもすごい気になるんです。

「丸三蕎麦-これは小麦の二番粉と蕎麦の三番粉を混じて打出したる粗製の蕎麦なり。擂鉢の如き丼に山の如く盛出して、価一銭五厘、尋常の人なれば一瞬にして一ト响下(かたげ)の腹を支ゆるに足るべし」(p.144)

小麦と蕎麦の粉をブレンドして、丼に山のように盛る。普通の人なら一瞬で「一ト响下の腹」を支えることができる…(=超空腹の腹を一瞬で満たすことができるほどに、って意味かな?) …それって、まさに、今でいう爆盛系ラーメンじゃないですか…!!! しかも、小麦粉と蕎麦粉のブレンド麺がラーメン誕生以前からあったなんて… もう、驚きですよ、、、


残念ながら、この本から「ラーメン」に類する言葉は見つかりませんでした。

ですが、この本を読んで分かりました。今のラーメンって、日本人の食文化に深く根を下ろした食べ物だったんだな、と。当たり前のことかもしれませんが、明治時代の下層社会の人たち(=今の庶民に近い存在?)に親しまれたものだったんですね。

ラーメンは、庶民のためのもの。それはいつの時代も変わらないことだと思います。B級グルメの覇者であるラーメンは、これからも僕ら庶民の腹を喜ばせる大切な食べ物であってほしいです。

それから、もう一つ。やはりラーメンは、上の層の人たちが食べない部位を、創意工夫しながら、使い尽くすことが大事なんだな、と。僕は、高級食材を使った高価なラーメンはあまり好きではありません。必要ないと思っています。それは、ラーメン=大衆のものだからです。安けりゃいいってわけじゃないですが、安いに越したことはないし、安くて美味しいのがラーメンだと思っています。たかが一杯、されど一杯、そういうラーメンを追い求め続けたいですね。

平成の松原岩五郎を目ざすべく、これからも書き続けるぞ!!(で、数百年後に本になってたりして~♪)

***

松原岩五郎についてもっと詳しく知りたい人はこちら!
http://www.hananoe.jp/culture/bouken/bouken015.html

ちなみに、岩波文庫の最初には、彼の写真も掲載されています。このブログにコメントをくださる某方に少し似ている気がします、、、(汗) 誰とはいいませんが~♪

コメント一覧

kei
髭MANさん

画像検索するとすぐに見つかりますね(汗)

でも、最初見たとき、ホント髭MANさんが浮かんでしまったんです。。。(汗)

けど、僕的にすごい味のあるお顔の人だなぁと思って、この人に惹かれたんです。
髭MAN
画像検索しましたす(汗
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