9月28日(金曜) 講師:エンツォ先生(トスカーナ県シエナ)
下記の食材やソースを見て「この人はトスカーナに最近移住したボローニャ人ではないか」と思ってはいけません。先生は正真正銘のシエナっ子、その証拠に文中の「カ」行の音が脱落して「ハ」行の間の抜けたみたいな発音になる。育ったのはキャンティの田舎で、当時の農家は家畜家禽を飼って腸詰め製品やリコッタ(先生が発音すると「リホッタ」)、ペコリーノチーズ(同じく「ペホリーノ」)、を造り、野菜果物を育てあるいは摘み、オリーブオイル、ワインを造り、ほとんど自給自足で生活していたから、今日の料理も豪華かつ高価に変身させてはあるが(昨日と今日の材料費は高かっただろうな~)、ルーツはあくまで素朴な田舎料理なのだという。しかしやはりキャンティは腐ってもタイ、どう転んでもリッチなのであって、たとえば今をときめく高級豚「チンタ・セネーゼ」。この豚は囲いを嫌うため森の中などで放し飼いし、ドングリなどを食べさせて飼育するのだが、先生の出身地周辺の森は黒トリュフが豊富で、1960年代は誰も黒トリュフが高級食材だなどとは思っておらず、豚が食べるに任せてあったそうだ。豚のほうも舌が肥えていて食べごろのものしか口にしないので、豚が掘り出したものの食べ残した黒トリュフが転がっており、大きいものは1個400~500gクラスだったそうだ。「ゼイタクな!」と殴って根性を叩き直したい豚どもであるが、もともと脂身がたっぷり乗った濃い持ち味の上、ドングリと黒トリュフを食べて育っていたのなら、さぞおいしかっただろうなァ。
さて国際化の波はやはり容赦なく押し寄せ、まず先生が最近ジャンルーカに頼まれて引き受けたアメリカの研修生リード君(アメリカ・ヴァージニア州出身)、そのガールフレンドとおぼしきアメリカ人女性、一昨日からエストニア人、ルッカのイタリア人、そして私たち日本人と、毎日日替わりで外国人と料理を作っているアンディとティッシュのアメリカ人夫妻(フロリダ州在住)。アメリカ人ばかりじゃないか、と思うでしょ?ところが実はアンディはアッシリア出身(!)で、生まれた時の家庭の日常語はアッシリア語とヘブライ語。子供に聞かれては困る話はトルコ語で行われ、英語はアメリカに移住してから覚えたのだそうだ。いや~面白い。私もそんな家庭環境に生まれてみたかったぜ。「ハローは何て言うんですか?」と発音してもらったのを真似て、生まれて初めてアッシリア語の文章を発音してみたが、ヘブライ語の挨拶である「サラーム(平和)」にやっぱり似てた。
28日目の昼食:
Gnocchi di zucca gialla e ricotta con pecorino, burro e salvia かぼちゃとリコッタをベースにしたニョッキ。小麦粉はあまり入れないのでふわふわで扱いにくいが、その分味は上品でまろやか。バター・セージソースで。
Agnello alla Enzo 先生がアイスランドにイタリア料理のプロモーションのために招かれた時に、「一番豊富に手に入る質のよい食材」である子羊を使おうと決めてできた料理だそうである。あんなに寒そうな国で羊が豊富?と不思議だったが、最近読んだ本によるとアイスランドには人間の4倍の数の羊がいるそうで、サイズもでかいらしい。フィレと外フィレにチーズや生ハム、トリュフバターを組み合わせた豪華版。ちなみに生ハムは去年の生徒さんがここの実習で作った自家製。
Funghi porcini trifolati 夜に登場するパスタ料理に使ったポルチーニの残り。オリーブオイル・にんにく・ネピテッラと炒めるおなじみの調理法だが、肉を焼くときのように最初は強火で茸の表面にさっと皮膜を作り、うまみが逃げないようにしてからじっくり炒めて柔らかくするのが先生のこだわりらしい。
Insalata verde グリーンサラダ
Budino di farro スペルト小麦のプディング
Caffè エスプレッソコーヒー
28日目の夕食:
Terrina di ricotta e caprino リコッタとカプリーノのテリーヌ
Caprese カプレーゼ
Lumaconi farciti e gratinati con crema(写真)貝の形をした大型パスタにベシャメルベースの具を詰め、ラザニアのように上からもベシャメルソース・ラグーソース・パルメザンチーズをかけてオーブンでグラタン状に。しかしここまでクリーム系とチーズ系の味つけが続くととてもトスカーナ料理とは思えませんな。日々健康な食欲を発揮している男子生徒の中にも「こういうの大好き」という人と「クリーム系ちょっと苦手」という人がいて、今回前者がエミリア=ロマーニャ州、後者がトスカーナの田舎町で研修予定なので内心ホッとしております。
Osso buco di manzo stracotto al mosto di vino 牛すね肉をブドウの果汁でコトコト煮込んだ、ジャンルーカの新作料理。これは昨日から始まったルッカ人対象調理講習の作品。ミラノ名物のオッソブーコは子牛で作るが、こちらは成牛なのではるかにじっくり煮込む。実は私もまだレシピをじっくり読んでいない。「翻訳はゆっくりすればいいから」とジャンルーカは言っているが、ブドウが出回っているうちに絶対登場させるつもりに決まっているのでこの週末の宿題です。
Semifreddo al caffè コーヒーのセミフレッド 同じく、昨日のドルチェの残り。
Caffè エスプレッソコーヒー
しかしこの1週間も高カロリーの食事が続いたことである(ブラのチーズ祭りという特別付録もあったことだし)。生徒さんも「絶対日本にいた時より太ってる」「ここらへんがやばい」と言い合っているが、やせるための努力を何一つ払っていないのだから理の当然か。ちなみに明日の土曜日は、生徒さんはパルマでパルメザンチーズと生ハムの工場を訪問見学(むろん試食つき)したあとミシュランの星つきレストランで食事をし、6人をのぞく全員はその後各自の研修先予定地のレストランで夕食をとります。日曜日に小休止をしたのち月曜日は肉屋さんに来てもらって、皆で豚の解体とサラミ・生ハム・腸詰製品・パンチェッタ等を作ります。先週ブラでもらったアスティ・スプマンテも開けなきゃいけないし、胃袋の休まる暇がない毎日も早くも折り返し点。
ところで関東地方にお住まいの某プロッフ様、「最近音沙汰がない」とエンツォ先生がいささかご不興であります。絵葉書の一枚でよいのでぜひご連絡を。
下記の食材やソースを見て「この人はトスカーナに最近移住したボローニャ人ではないか」と思ってはいけません。先生は正真正銘のシエナっ子、その証拠に文中の「カ」行の音が脱落して「ハ」行の間の抜けたみたいな発音になる。育ったのはキャンティの田舎で、当時の農家は家畜家禽を飼って腸詰め製品やリコッタ(先生が発音すると「リホッタ」)、ペコリーノチーズ(同じく「ペホリーノ」)、を造り、野菜果物を育てあるいは摘み、オリーブオイル、ワインを造り、ほとんど自給自足で生活していたから、今日の料理も豪華かつ高価に変身させてはあるが(昨日と今日の材料費は高かっただろうな~)、ルーツはあくまで素朴な田舎料理なのだという。しかしやはりキャンティは腐ってもタイ、どう転んでもリッチなのであって、たとえば今をときめく高級豚「チンタ・セネーゼ」。この豚は囲いを嫌うため森の中などで放し飼いし、ドングリなどを食べさせて飼育するのだが、先生の出身地周辺の森は黒トリュフが豊富で、1960年代は誰も黒トリュフが高級食材だなどとは思っておらず、豚が食べるに任せてあったそうだ。豚のほうも舌が肥えていて食べごろのものしか口にしないので、豚が掘り出したものの食べ残した黒トリュフが転がっており、大きいものは1個400~500gクラスだったそうだ。「ゼイタクな!」と殴って根性を叩き直したい豚どもであるが、もともと脂身がたっぷり乗った濃い持ち味の上、ドングリと黒トリュフを食べて育っていたのなら、さぞおいしかっただろうなァ。
さて国際化の波はやはり容赦なく押し寄せ、まず先生が最近ジャンルーカに頼まれて引き受けたアメリカの研修生リード君(アメリカ・ヴァージニア州出身)、そのガールフレンドとおぼしきアメリカ人女性、一昨日からエストニア人、ルッカのイタリア人、そして私たち日本人と、毎日日替わりで外国人と料理を作っているアンディとティッシュのアメリカ人夫妻(フロリダ州在住)。アメリカ人ばかりじゃないか、と思うでしょ?ところが実はアンディはアッシリア出身(!)で、生まれた時の家庭の日常語はアッシリア語とヘブライ語。子供に聞かれては困る話はトルコ語で行われ、英語はアメリカに移住してから覚えたのだそうだ。いや~面白い。私もそんな家庭環境に生まれてみたかったぜ。「ハローは何て言うんですか?」と発音してもらったのを真似て、生まれて初めてアッシリア語の文章を発音してみたが、ヘブライ語の挨拶である「サラーム(平和)」にやっぱり似てた。
28日目の昼食:
Gnocchi di zucca gialla e ricotta con pecorino, burro e salvia かぼちゃとリコッタをベースにしたニョッキ。小麦粉はあまり入れないのでふわふわで扱いにくいが、その分味は上品でまろやか。バター・セージソースで。
Agnello alla Enzo 先生がアイスランドにイタリア料理のプロモーションのために招かれた時に、「一番豊富に手に入る質のよい食材」である子羊を使おうと決めてできた料理だそうである。あんなに寒そうな国で羊が豊富?と不思議だったが、最近読んだ本によるとアイスランドには人間の4倍の数の羊がいるそうで、サイズもでかいらしい。フィレと外フィレにチーズや生ハム、トリュフバターを組み合わせた豪華版。ちなみに生ハムは去年の生徒さんがここの実習で作った自家製。
Funghi porcini trifolati 夜に登場するパスタ料理に使ったポルチーニの残り。オリーブオイル・にんにく・ネピテッラと炒めるおなじみの調理法だが、肉を焼くときのように最初は強火で茸の表面にさっと皮膜を作り、うまみが逃げないようにしてからじっくり炒めて柔らかくするのが先生のこだわりらしい。
Insalata verde グリーンサラダ
Budino di farro スペルト小麦のプディング
Caffè エスプレッソコーヒー
28日目の夕食:
Terrina di ricotta e caprino リコッタとカプリーノのテリーヌ
Caprese カプレーゼ
Lumaconi farciti e gratinati con crema(写真)貝の形をした大型パスタにベシャメルベースの具を詰め、ラザニアのように上からもベシャメルソース・ラグーソース・パルメザンチーズをかけてオーブンでグラタン状に。しかしここまでクリーム系とチーズ系の味つけが続くととてもトスカーナ料理とは思えませんな。日々健康な食欲を発揮している男子生徒の中にも「こういうの大好き」という人と「クリーム系ちょっと苦手」という人がいて、今回前者がエミリア=ロマーニャ州、後者がトスカーナの田舎町で研修予定なので内心ホッとしております。
Osso buco di manzo stracotto al mosto di vino 牛すね肉をブドウの果汁でコトコト煮込んだ、ジャンルーカの新作料理。これは昨日から始まったルッカ人対象調理講習の作品。ミラノ名物のオッソブーコは子牛で作るが、こちらは成牛なのではるかにじっくり煮込む。実は私もまだレシピをじっくり読んでいない。「翻訳はゆっくりすればいいから」とジャンルーカは言っているが、ブドウが出回っているうちに絶対登場させるつもりに決まっているのでこの週末の宿題です。
Semifreddo al caffè コーヒーのセミフレッド 同じく、昨日のドルチェの残り。
Caffè エスプレッソコーヒー
しかしこの1週間も高カロリーの食事が続いたことである(ブラのチーズ祭りという特別付録もあったことだし)。生徒さんも「絶対日本にいた時より太ってる」「ここらへんがやばい」と言い合っているが、やせるための努力を何一つ払っていないのだから理の当然か。ちなみに明日の土曜日は、生徒さんはパルマでパルメザンチーズと生ハムの工場を訪問見学(むろん試食つき)したあとミシュランの星つきレストランで食事をし、6人をのぞく全員はその後各自の研修先予定地のレストランで夕食をとります。日曜日に小休止をしたのち月曜日は肉屋さんに来てもらって、皆で豚の解体とサラミ・生ハム・腸詰製品・パンチェッタ等を作ります。先週ブラでもらったアスティ・スプマンテも開けなきゃいけないし、胃袋の休まる暇がない毎日も早くも折り返し点。
ところで関東地方にお住まいの某プロッフ様、「最近音沙汰がない」とエンツォ先生がいささかご不興であります。絵葉書の一枚でよいのでぜひご連絡を。