イタリアンでも食べルッカ

おいしい物と個性豊かな料理人達に囲まれた料理学校での日常記

9月28日・キャンティ料理は果たして素朴か?

2007-09-29 06:06:24 | 料理学院
9月28日(金曜) 講師:エンツォ先生(トスカーナ県シエナ)

下記の食材やソースを見て「この人はトスカーナに最近移住したボローニャ人ではないか」と思ってはいけません。先生は正真正銘のシエナっ子、その証拠に文中の「カ」行の音が脱落して「ハ」行の間の抜けたみたいな発音になる。育ったのはキャンティの田舎で、当時の農家は家畜家禽を飼って腸詰め製品やリコッタ(先生が発音すると「リホッタ」)、ペコリーノチーズ(同じく「ペホリーノ」)、を造り、野菜果物を育てあるいは摘み、オリーブオイル、ワインを造り、ほとんど自給自足で生活していたから、今日の料理も豪華かつ高価に変身させてはあるが(昨日と今日の材料費は高かっただろうな~)、ルーツはあくまで素朴な田舎料理なのだという。しかしやはりキャンティは腐ってもタイ、どう転んでもリッチなのであって、たとえば今をときめく高級豚「チンタ・セネーゼ」。この豚は囲いを嫌うため森の中などで放し飼いし、ドングリなどを食べさせて飼育するのだが、先生の出身地周辺の森は黒トリュフが豊富で、1960年代は誰も黒トリュフが高級食材だなどとは思っておらず、豚が食べるに任せてあったそうだ。豚のほうも舌が肥えていて食べごろのものしか口にしないので、豚が掘り出したものの食べ残した黒トリュフが転がっており、大きいものは1個400~500gクラスだったそうだ。「ゼイタクな!」と殴って根性を叩き直したい豚どもであるが、もともと脂身がたっぷり乗った濃い持ち味の上、ドングリと黒トリュフを食べて育っていたのなら、さぞおいしかっただろうなァ。

さて国際化の波はやはり容赦なく押し寄せ、まず先生が最近ジャンルーカに頼まれて引き受けたアメリカの研修生リード君(アメリカ・ヴァージニア州出身)、そのガールフレンドとおぼしきアメリカ人女性、一昨日からエストニア人、ルッカのイタリア人、そして私たち日本人と、毎日日替わりで外国人と料理を作っているアンディとティッシュのアメリカ人夫妻(フロリダ州在住)。アメリカ人ばかりじゃないか、と思うでしょ?ところが実はアンディはアッシリア出身(!)で、生まれた時の家庭の日常語はアッシリア語とヘブライ語。子供に聞かれては困る話はトルコ語で行われ、英語はアメリカに移住してから覚えたのだそうだ。いや~面白い。私もそんな家庭環境に生まれてみたかったぜ。「ハローは何て言うんですか?」と発音してもらったのを真似て、生まれて初めてアッシリア語の文章を発音してみたが、ヘブライ語の挨拶である「サラーム(平和)」にやっぱり似てた。

28日目の昼食:
Gnocchi di zucca gialla e ricotta con pecorino, burro e salvia かぼちゃとリコッタをベースにしたニョッキ。小麦粉はあまり入れないのでふわふわで扱いにくいが、その分味は上品でまろやか。バター・セージソースで。
Agnello alla Enzo 先生がアイスランドにイタリア料理のプロモーションのために招かれた時に、「一番豊富に手に入る質のよい食材」である子羊を使おうと決めてできた料理だそうである。あんなに寒そうな国で羊が豊富?と不思議だったが、最近読んだ本によるとアイスランドには人間の4倍の数の羊がいるそうで、サイズもでかいらしい。フィレと外フィレにチーズや生ハム、トリュフバターを組み合わせた豪華版。ちなみに生ハムは去年の生徒さんがここの実習で作った自家製。
Funghi porcini trifolati 夜に登場するパスタ料理に使ったポルチーニの残り。オリーブオイル・にんにく・ネピテッラと炒めるおなじみの調理法だが、肉を焼くときのように最初は強火で茸の表面にさっと皮膜を作り、うまみが逃げないようにしてからじっくり炒めて柔らかくするのが先生のこだわりらしい。
Insalata verde グリーンサラダ
Budino di farro スペルト小麦のプディング
Caffè エスプレッソコーヒー

28日目の夕食:
Terrina di ricotta e caprino リコッタとカプリーノのテリーヌ
Caprese カプレーゼ
Lumaconi farciti e gratinati con crema(写真)貝の形をした大型パスタにベシャメルベースの具を詰め、ラザニアのように上からもベシャメルソース・ラグーソース・パルメザンチーズをかけてオーブンでグラタン状に。しかしここまでクリーム系とチーズ系の味つけが続くととてもトスカーナ料理とは思えませんな。日々健康な食欲を発揮している男子生徒の中にも「こういうの大好き」という人と「クリーム系ちょっと苦手」という人がいて、今回前者がエミリア=ロマーニャ州、後者がトスカーナの田舎町で研修予定なので内心ホッとしております。
Osso buco di manzo stracotto al mosto di vino 牛すね肉をブドウの果汁でコトコト煮込んだ、ジャンルーカの新作料理。これは昨日から始まったルッカ人対象調理講習の作品。ミラノ名物のオッソブーコは子牛で作るが、こちらは成牛なのではるかにじっくり煮込む。実は私もまだレシピをじっくり読んでいない。「翻訳はゆっくりすればいいから」とジャンルーカは言っているが、ブドウが出回っているうちに絶対登場させるつもりに決まっているのでこの週末の宿題です。
Semifreddo al caffè コーヒーのセミフレッド 同じく、昨日のドルチェの残り。
Caffè エスプレッソコーヒー

しかしこの1週間も高カロリーの食事が続いたことである(ブラのチーズ祭りという特別付録もあったことだし)。生徒さんも「絶対日本にいた時より太ってる」「ここらへんがやばい」と言い合っているが、やせるための努力を何一つ払っていないのだから理の当然か。ちなみに明日の土曜日は、生徒さんはパルマでパルメザンチーズと生ハムの工場を訪問見学(むろん試食つき)したあとミシュランの星つきレストランで食事をし、6人をのぞく全員はその後各自の研修先予定地のレストランで夕食をとります。日曜日に小休止をしたのち月曜日は肉屋さんに来てもらって、皆で豚の解体とサラミ・生ハム・腸詰製品・パンチェッタ等を作ります。先週ブラでもらったアスティ・スプマンテも開けなきゃいけないし、胃袋の休まる暇がない毎日も早くも折り返し点。

ところで関東地方にお住まいの某プロッフ様、「最近音沙汰がない」とエンツォ先生がいささかご不興であります。絵葉書の一枚でよいのでぜひご連絡を。

9月27日・5つ星ホテルシェフのエンゲル係数上昇料理

2007-09-28 06:07:27 | 料理学院
9月27日(木曜) 講師:アルヴァーロ先生(トスカーナ州モンテカティーニ・テルメ)

マリエッラと私が(有益で建設的な講習を実現するために)戦わなくてはならない先生は何人かいるが、説明は最小限にとどめ何でも自分でどんどんやり、当校の用具ややり方(ビニール袋の口のしめ方に至るまで)にケチをつける……ことも往々にしてあるこの先生は横綱級の1人である。しかし今日は先生がモーニングコーヒーを飲んでいる間に「油断していると先生が全部やってしまうから、“自分がやっていいですか”とどんどんやるように」とけしかけておいたためか、ホテルがいま休業中で先生のマッハのスピードに歯止めがかかったせいか、かなりの部分を生徒さんが担当させてもらえてスムーズに進んだ。もっともさすがはエリザベス英女王に始まり、チャップリン、マリリン・モンローなども滞在した5つ星デラックス級ホテルのエグゼクティブ・シェフというか、使う食材が水牛のモッツァレッラ、牛フィレ、山ほどのポルチーニ茸、同じくパルメザンチーズ、バターとあっては、「何て金のかかる講師かしら!あんたはジャンルーカの財布をカラッポにしに来たの?」とマリエッラがからかうのも当然だ。「今はポルチーニの旬だからタダ同然だ(non costa niente)!」いくらイタリアだってそれは無理です。モッツァレッラだって1キロで17ユーロ以上はするという(確かにおいしそうだったが)。ちなみに先日ブラへの小旅行で乗り合わせたナポリ出身の獣医さんに「ナポリ人でチーズに興味があるということは、水牛のモッツァレッラはやっぱり好物ですか?」と聞いたところ「モッツァレッラにはニセモノが多いんだ。普通の牛乳で造ったものならまだしも、脱脂粉乳で造ったものすらあるから、知っている業者のものしか買わない」とのことだった。偽装が横行するのは日本だけではない。

そろそろ生徒さんの研修先を確定して、下見に行ったり食事に行ってシェフと話してもらわなければならない。駅で降りればすぐ目と鼻の先の人もいるし、何度も列車を乗り換えた上にタクシーを拾わなければいけない人、迎えに来てもらわなければいけない人もいる。しかし今はインターネットで先方の周辺地図や、歩いていく場合の最短ルートなども表示できるので、イレーネは情報収集にいそしんでいる。「ああ、このレストランだと、中央駅で降りるより1つ手前で降りたほうが近いわ。徒歩だと3.8キロ……車だと……」。かねがねここのホテルに来るには、2つあるルートのどちらが短距離なのか気になっていたので「試しに表示してよ」と入力してもらうと……どういうわけか住所も電話番号もファックス番号も正しく表示され、同じ名前のホテルは他にはないのに、「周辺地図」にはルッカの中心部が表示されるではないか。しかも大聖堂のすぐ近く!これは大変だとさっそくホテルの支配人にご注進すると「いいではないか!ネットでホテル検索した人は、中心街にあって便利だからとドンドン予約してくれるかもしれない」と平気の平左。予約はしてくれるかもしれないが、行き着けなくて誰も来てくれないかもよ。

26日目の昼食:
Nudi di ricotta e bietole con salvia croccante 普通はラビオリに詰める具にするリコッタとふだん草、これをパスタ生地(外衣)なしで卵や小麦粉でまとめてニョッキにするので、ヌーディ(=ヌード)またはニューディ、マルファッティなどと呼ばれるプリモ。バターで一緒にカリッと(croccante)炒めたセージのソースで。
Filetto di manzo farcito ai funghi porcini su trito di pepe grosso con spuma di patate allo zenzero ソテーしたポルチーニを牛フィレに詰め、粒こしょうをまぶしてレアに焼き上げる。付け合せはショウガ風味のじゃがいものピューレ。昨日も食べたけど、ショウガ風味もなかなかいける。
Caffè エスプレッソコーヒー

お昼のゲストは前期の生徒さん1名と、彼が今研修しているお店のシェフ。海辺にある季節営業の店なので、今月いっぱいで休みに入り3月までは開かない。その間別の店に行くか、はたまたシェフが時々受けるケータリングの仕事を手伝うか、進路相談に来たらしい。それはいいが、前回もシェフの授業でアシスタントに来た日本人男性がなぜ用もないのに(しかも予告もなく)同席し、昼食だけは一人前に食べていくのかさっぱりわからん。反対に昼食が終わるころを見計らって「昨日で研修が終わり、来週日本に帰ります」と挨拶に来た生徒さんはまだ19歳なのに、礼節をわきまえ謙虚で折り目正しかった。節操のない人ってのは好きになれません。
海辺のレストランはここに限らずそろそろ休暇に入るところが多いので、その前に研修先を見に行かなくてはいけない生徒さんはあわただしい。明日もフランス国境に近い町まで片道7時間かけて一人で下見・あいさつに行く生徒さんがいて、夕食の席でも時間を惜しんでイタリア語での会話のおけいこ。事故とストライキに会わないことだけを祈ります。

26日目の夕食:
Insalata di porcini con croccante di sedano e fiocchi di grana ポルチーニを生のままスライスし、千切りにしたセロリと薄く削ったパルメザンチーズと和えてサラダに。野菜の千切りなら生徒さんも先生に負けないくらいの腕前だが、トスカーナ州で4人しかいない「料理の名匠」である先生の前で緊張したのか、「全部じゃ多いからこっちはいらない」「そしてこれは飾りの分」と先生がわざわざ3つに分けたセロリを全部千切りにしてしまった。最初に先生の指示を聞いていた人が途中で別の作業にかかってしまい、何人かリレー式に引き継いだせいもあるかもしれないが、なんか今期の人に限らず、調理の腕とは関係なく「ほうれんそう」(報告・連絡・相談)つまりコミュニケーションが取れてない人が最近多い気がするんだなあ。
Panzerotti gratinati alla mozzarella di bufala ホワイトルウ・ボンレスハム・エメンタールを混ぜて具をつくり、クレープ生地で巻いて耐熱皿に並べ、トマトソースと水牛のモッツァレッラチーズを乗せてグラタン焼きに。フィレンツェ料理の名人・故ピエロ先生の得意料理でもあった懐かしいレパートリー。しかしカロリーはこの一皿で一食分くらいは優にある。先生のホテルがある町は鉱泉が出るので有名で、内臓疾患のある人が湯治で長期滞在するためやたら劇場やカフェや社交場が多いのだが、こんなに大量にバターやチーズを使う料理を出してはたして治るんでしょうか。「肺だけが悪いやせこけた人が食べるんならいいと思う」と管理栄養士のミホちゃんは言っていますが、そんな人は当校にはさかさにふってもいないし。
Tartelletta di ricotta con uvetta passa e cannella リコッタとレーズンとシナモンを使ったタルトレット。しかしレシピを目を皿のようにして読んでもタルト生地の作り方が書かれていない。誤植かと思ったがそうではなく、プディングのようにタルトレット型に流してそのまま焼く。だったらなんでプリン型のようなもっと抜きやすい型を使わないのか私には理解できません。
Caffè エスプレッソコーヒー

9月26日・多国籍化の波押し寄せる?

2007-09-28 06:03:07 | 料理学院
9月26日(水曜) 講師:ジュゼッペ・G先生(その2)

約3週間ぶりに再び登場のジュゼッペ先生。今先生のお店でプリモを担当中のイレーネのいとこ、アンドレイーナも一緒にやってくる。といっても講習メニューは4点だけだし、ややこしい作業や手の込んだ料理はないし、アシスタントというよりは一緒に勉強している感じ。アルゼンチン出身だがイタリアとの二重国籍で、こっちに来てまだ2年そこそこだが、先日は念願の車の免許を取ったそうだし、イタリア語もシエナ外国人大学が実施している「外国人のための、第二言語としてのイタリア語能力検定試験」CILSの第3レベルを取得し、12月には最高レベルの第4に挑戦するのだとはりきっている。頑張れアンドレイーナ。

26日目の昼食:
Polenta grigliata con lardo di Colonnata 昨日のポレンタが余っていたので、クロスティーニの大きさに四角く切って、コロンナータのラルドを乗せてオーブンで軽く焼いた前菜。
Farro della Garfagnana con gallina e zafferano スペルト小麦を玉ねぎのソフリットで炒め、めんどりでとったブロードを加えながら煮込む。スペルト小麦のリゾットといった感じ。ダシをとったあとの鶏肉は細かく切ってこの鍋に加える。鶏肉ってふつうプリモには入れないので、これは実に珍しい。
Tartara di manzo con radicchio tardivo di Treviso, sedano di Verona e cetriolo この前は魚介だったが今回はより伝統的な牛肉のタルタル。ただし従来のタルタルソースよりはあっさりめの味つけ。今日も昼食後お腹の調子がおかしい人があらわれ、またまた生肉のせいか?と気色ばむが、先日ピサに行ってからおかしくなった人たち同様、どうも原因はカゼらしい。中国の方々は無実であったことが判明したがステーキがまずかった事実に変わりはないようだ。
Caffè エスプレッソコーヒー

今週もジャンルーカは忙しい。午後はきょうから3日連続アメリカ人のカップルが講習に来るそうな。今日はさらに4人のエストニア人女性も加わる(?こっちの方が人数が多いぞ)ので、生徒さんにもヘルプに入ってもらう。この初春にプロモーションに出かけたせいか、これからも定期的にエストニアとベラルーシからは講習申し込みがあるらしい。今回のコースは珍しく日本人だけだわいと(アメリカ人と結婚している人はいるが)思っていたが、次第に多国籍化が進行しているな。
実は私にも留学時代に仲良くなったエストニア人の友人がいて、卒業して帰国した直後には「仕事は見つかった?何ならエストニアに来れば、大学の日本語学科の教授に頼んで仕事を探してあげるわよ」と言われたことがあるので、なぜか我が家にはエストニア語の入門書がある(笑)。フィンランド語やトルコ語と同じく、日本語と遠い親戚関係にあるため語順がまったく同じというすばらしい言語なのだが、果たして勉強する時間はそのうち見つかるもんだろうか。アンドレイーナと話していると、スペイン語もまた再開したくなっちゃうし……。

26日目の夕食:
Lepre alla cacciatora con purea di patate ノウサギの「狩人」風、じゃがいものピューレ添え(写真) 1週目からやたら?登場しているカイウサギと違って、本邦初登場のノウサギちゃん。ジビエなので硬い上に味があまりないので、ゆっくり時間をかけて風味をつけてやらなくてはいけない肉なのだそうだ。食べる前からちょっと腰が引けている生徒さんもいるが、お肉好きの私としては何の抵抗もなくまず一口……あれ、思ったより筋っぽい上、確かに風味が薄く少々臭い。あれだけワインや水を補いながら長時間さんざん煮込んだので、さぞや貫禄のある味と思ったのに。そういえば前日の夜、キッチンの片づけを終えて帰ろうとしたら、レストランのコックのシモネッタが「(おけで水にさらしたままの)ウサギは冷蔵庫に入れなくていいの?」とわざわざ聞いてくれたなあ。どうも一晩流水に漬けるか、冷蔵庫に入れたほうがよかったようだ。生徒さんも大半の人は残していたが、「オレ、嫌いなものないですから」と平気で平らげた人もいた。聞くと猛烈な臭さではクサヤに迫るものをもつ、かの滋賀県の「鮒ずし」すら食べられる猛者であった。なおタイトルの「狩人風」とは要するにトマト煮込み(in umido)と同じだが、ジビエなのでこちらの別名の方がムードが出ていいらしい。先生によると、ノウサギのカッチャトーラの作り方は2つある。1つは今日やったやり方(トマト煮込み)、もう1つはノウサギを鍋に入れ、銃で撃つことだそうである……?
Tagliolini alle verdure 手打ちのタリオリーニ、野菜のソース
Crostata di farina di castagne con pere e cioccolato 栗の粉を混ぜて作ったタルト生地に、チョコレートと洋梨のフィリングを入れて。
Caffè エスプレッソコーヒー

9月25日 イタリアの宍戸錠ロランド先生

2007-09-28 05:58:24 | 料理学院
9月25日(火曜) 講師:ロランド先生(トスカーナ州フォルテ・ディ・マルミ)

卒業生が元気な姿を見せてくれるのは嬉しいのだが、時々事前に予告もせずにいきなりやってきて当然のように食事だけしていく人だの、何か(情報や資料など)をもらいにくるだけの人がいて困る。この前日も生徒さんから「この前来た○○さんが明日来るみたいです」と言われのだが、全然聞いてなかったので「誰から聞きました?」と問い返すと、メールのやりとりをしていて本人から直接聞いたのだという。ジャンルーカに確認しても何も聞いていないというし、第一来てもらわなくてはならないような相談事や書類手続きは何もないのだ。仲良くなった生徒さんに会いたいのなら学校の外でやってくれればいいし、なぜ学校が(当の生徒さんの払った講習費用をさいて)食事を出さなくてはいけないのかさっぱり分からない。

25日目の昼食:
Testaroli al pesto 先生の出身地「ルニジャーナ地方」の郷土料理。ジェノヴァのあるリグーリア州との州境にあるのでジェノヴェーゼペーストも使われる。底(sottano)も蓋(soprano)も直火にかけられる鉄製の大きい鍋を熱々に熱し、小麦粉生地を流して丸く焼き上げ、ひし形にカットして熱湯でふやかして食べる、モチモチした食感の「パスタ」(と一口に言ってもいろんな作り方があるもんだ!)料理で私はけっこう好きです。日本で作る場合、ダッチオーブンでできるかどうか議論白熱。
Bianco di branzino alla livornese appassita con polenta acciughe e pinoli 先日のウンベルト先生の出身地でもあるリヴォルノはイタリアで初めてトマトが伝わった場所なので、リヴォルノ風ソースといえばやっぱりトマトベース。といってもこちらは生トマトをオーブンで焼いて水気を飛ばし、刻んでからボウルで調味する。日本のトマトは見た目ばかりがキレイで全然おいしくないと思う私だけれど、それより数段風味豊かなこちらのトマトのうま味が凝縮した濃厚なソース。それを白焼きにしたスズキに合わせ、付け合せはアンチョビとにんにくのソースをかけたポレンタ。
Soufflè di ricotta affogata al caffè コーヒーに「溺れた」リコッタのスフレ。先生がコンサルタントを務める海辺の5つ星デラックス・ホテルに一度昼食でお邪魔したときに出たのはいまだによく覚えている。ガラスコップに入って出てくるふわふわのリコッタのスフレをスプーンで崩すと、下の方から熱々のエスプレッソコーヒーが顔をのぞかす仕掛け。
本当ならこの後にエスプレッソコーヒーが来るのだが、デザートにコーヒーが使われているのでもういいでしょ!とのマリエッラの鶴の一声でとりやめ。たとえ懐石料理を食べようがおにぎりを食べようがコーヒーがないと食事をした気にならない私には辛い……。

25日目の夕食:
Mille foglie di pane toscano con pesce marinato e verdure 薄く薄くパリッと焼いたトスカーナパン、スライスしてマリネした夏野菜、軽く火を通して、あるいは生でマリネした魚介をミルフィーユのように重ねた前菜(写真)。
Spiedino di gamberoni al rosmarino sulla cipolla rossa e arance クルマエビをローズマリーの枝に刺した串焼きと、オレンジの果汁や果皮を入れて甘酢風味に仕上げたレッドオニオンの前菜。
Ricotta fritta リコッタのフライ
Fiore di zucca fritto ズッキーニの花のフライ
Frittata di zucchini ズッキーニのオムレツ
Caffè エスプレッソコーヒー



9月24日・講習は甘い……が自転車を甘く見るな

2007-09-27 05:22:43 | 料理学院
9月24日(月曜) 講師:ステファノ先生(トスカーナ州ピサ県)

毎回1度はパンか製菓の特別授業を行っているが、今回は製菓、特にチョコレートの講習。だいたいこの先生のくれるレシピは短く、パンの時はいちおう分量が指定されているが、製菓の時はタイトルだけで何もない。ま、講習メニューが 1)シュー生地、2)カスタードクリーム、3)折りパイ生地、4)スポンジ生地(ジェノワーズ)、5)プロフィットロール、6)プチフール、7)プラリネチョコ、というラインナップなので材料も作り方も大体見当がつくものばかりだという事情もある。なのに先生は20分も早くやってきて、「早めに出勤してPCが空いているうちにメールチェックをしよう」という私の計画をぶち壊し、インターネットからダウンロードしたらしい「チョコレートのテンパリングの手法」を7ページも取り出して「生徒に配るのは後にして、君とマリエッラの分だけでも早くコピーしなさい」と強要するのであった。配るには訳さなくてはならないのだから、こんなのは当日の朝ではなくて事前にください。
さらにガナッシュチョコレートの分量表もあるので、人数分コピーをしながら先生の世間話に耳を傾けるが、いつも8時30分には来ているマリエッラがいつになく遅い。案の定ジャンルーカがもたらした情報によると「息子さんが交通事故にあい、病院につきそっているので来られない」とのこと。20歳を超えたばかりのこの息子、以前から運転が乱暴なのか下手なのかはたまた運が悪いのか、我々がルッカに移ってから(=3年半)の間に車を廃車にすること1回、大規模修理に持ち込むこと1回、車にキズをつけること数回。その割に自分は怪我をしない悪運の強い子だと思っていたが、ついに悪運に見放されたか。しかしマリエッラは11時前には顔を見せたので詳しい事情を聞くと、夜中まで友達とさんざん飲んで騒いで、未明に友達と帰路につき「自転車で2人乗りをしていて単独事故を起こした(つまり転んだ)」ことが判明。ただし顔からマトモに落ちたので鼻の骨を骨折しており、元通りにするには手術を受けないといけないという。皆さん、自転車の2人乗りはくれぐれも慎みましょう。

24日目の昼食:
Spaghetti al pomodoro トマトソースのスパゲッティ 今回はちゃんとバリラの製品を利用。マリエッラに言わせると「私もスパゲッティはバリラの方が好き。味のレベルがどうこうというんじゃなくて、1分くらいゆですぎたって、バリラなら歯ごたえが残るから」。ところがジャンルーカは歯ごたえがちゃんと残るのは「デ・チェッコ」の方だと言っていたらしい。こりゃ一度ゆで比べるしかないぞ。
Rostinciana all’agrodolce 豚スペアリブの甘酢風味
Fagiolini all’aglio さやいんげんのソテー、ニンニク風味
Profiteroles プロフィットロール
Torta di recupero 余り物再利用のケーキ(写真) スポンジ生地を高さ半分に切り、切り口にリキュールを含ませ、あまったクリームをサンドし、側面には生クリームを絞り出し、表面にはクリームをナッペし、練習のためいっぱい作ったチョコレートの飾りとあるだけのイチゴとミックスベリーを飾ったのでものすごく豪華。名前をつけたいくらい。誰か命名してください。
Caffè エスプレッソコーヒー

24日目の夕食:
Insalata di Carnevale 「カーニバル」サラダ 先週のカレーライス用のお米、野菜いろいろ、チーズなどを混ぜ、マヨネーズソースで和えた冷蔵庫在庫一層サラダ。こちらも再現は不可能と思われます。
Roast beef ローストビーフ
Patate fritte alla salvia セージ風味のフライドポテト
Bignè シュークリーム(アイシング)
Torta di recupero 余り物再利用のケーキ
Diplomatico ディプロマティコ(スポンジ生地・カスタードクリーム・折りパイ生地などを使用した)
Caffè エスプレッソコーヒー

土曜日にブラでもらったアスティ・スプマンテは早速冷蔵庫にしまったが、いつ飲みましょうとお伺いを立てると「相性のよいお菓子を食べるとき」とのことだった。上記のほかにタルトレット、折りパイ生地を利用したミニパイ、プラリネチョコもあるのに、飲まなかったところをみるとどれも相性がよくないらしい。残念。

9月23日・フリーの日曜日

2007-09-26 04:30:21 | 料理学院
前日が遠足だったので本日は振り替え休日。ここを通るバスは日祭日は休みなのでルッカまでの足が大変だが、研修先を他の県まで観にいく人、お隣のピサに観光に行った人、ルッカのスーパー(フランス資本の『カルフール』だが、なぜか誰にもちゃんと名前を覚えてもらえない可哀相な店)まで行った人、といろいろ。ピサ組はお決まりの斜塔を見た後レストラン選択を誤り、調理人もサービス担当も全員中国人という珍しいイタリア料理店に入り、「フィレンツェ風Tボーンステーキ」を注文したところ、肉がレアどころか生だったため、体調を崩す人が続出。どうせ中国人が作るものを食べるなら中華にしたほうがいいと思うけど……?

23日目の夕食:
Risotto con la zucca かぼちゃのリゾット
Insalata di finocchio フェンネルのサラダ
Cotoletta di maiale alla milanese ミラノ風トンカツ(豚ヒレ肉を使用し、小羊のカツレツと同手法で作りました)
Zuppa di gelato ジェラートのズッパ 金曜日の残りのジェラートに、いろんな残りのソースを入れてできた摩訶不思議なデザート。レシピ説明および再現は不可能と思われる。
Limoncello fatto a casa 自家製リモンチェッロ 私が5月に愛媛産レモンをアルコールに漬け込み、8月末にこちらに持参し、講習中にジャンルーカがシロップでのばして完成した、二国を股にかけたリモンチェッロ。ちなみにブラのチーズ祭でバスに乗り合わせたナポリ出身・ピサ在住の獣医さんに聞いたところ、アルコール・水・砂糖の割合はほぼ私のと同じだったが、ジャンルーカの配合では砂糖が150%増しである。香りはいいし生徒さんはおいしいと言ってくれたが、私の配合でも甘いとこぼすマリエッラに飲ませたらどう言うだろう……
Caffè エスプレッソコーヒー

お客様:東京にあるイタリア語学校「リンガビーバ」の校長先生と、そこの生徒さんで現在フィレンツェに留学中の女性、もと生徒でシエナ近郊のレストランで料理修業中の男性。久しぶりに語学や文学の話が思い切りできる相手に会えて嬉しかった~。

9月22日・スローフードの本場でチーズ食べまくるの巻

2007-09-24 05:05:14 | 料理学院
9月22日(土曜)

今週と来週は都合により、土曜日が遠足となり翌日日曜日が自由行動。まず今回は日本でも有名な「スローフード」運動の発祥の地、ブラ(ピエモンテ州)で行われるチーズの見本市にルッカ在住の会員がバスを仕立てて出かけるというので、われわれも便乗して見に行こうではないかという話になったのである。チーズには大いに興味があるので、朝6時半の出発は辛いが今回参加させてもらうことにした。
イタリアはまだ夏時間なので6時半なんて真っ暗。ホテルの玄関も閉まっているので横の非常口から、ほとんど夜逃げのようにしてバスに乗り込む。ところが高速に入って30分も走らないうちにバスが異常にノッキングをはじめ、点検のため朝食とトイレ休憩をかねてサービスエリアに避難。この頃は一行も「さすがスローフードの大会だよな、徒歩で行けってわけだ」「フードに関してはどうか知らんが、スローにかけては折り紙つきだぞ」と軽口をたたく余裕があったが、再び走り出して30分かそこらでまたまた同じ症状が出るに至ってはイタリア人の表情も曇りだした。あなた食べ歩きツアー専門の運転手ですか?と聞きたくなるような体型の運転手が、ミゴトなお腹を突き出して「フィルターを掃除したからもう95%は大丈夫です」と言っても「この先はトンネルが多いんだ。その中で立ち往生したらどうする?私一人ならまだしも、会員の手前私には責任がある」と頑張るルッカ支部長さん。この頃にはリグーリア州に入っていたが、ではなるべく近くの支社から代替のバスを送ってもらいましょう、ということになり、最初のノッキングからつごう2時間のロスをへて1時前にブラ到着。案内所で地図をもらい、無料で試食しほうだいのエリア、チケットを買わないと試食したり入場したりできないエリアを確認し、あとは夕方の集合まで自由行動。会場内は歩行者天国でとても歩きやすいし、広すぎず狭すぎず、地図もよくできていてわかりやすい。さすが主催者側は慣れているなと思った。

2006年に新版が出たスローフード協会刊「イタリアのチーズ(Formaggi d’Italia)」には300種類近くのチーズが紹介されているが、収録されていないものも多いのでイタリア全体ではおよそ500種類のチーズが造られているらしい。今回の催し物にそのうちいくつが展示されているのかは知らないが、仮に時間通りに着いたとしても絶対味見しきれないほどのブースの数・数・数。加えて今回はポーランド・ボスニア=ヘルゼゴヴィナ・ルーマニア・ブルガリア・レバノン・チベットなどからもチーズが出展されていたので、この際おいしいかおいしくないかは別として、この先お目にかかれるかどうかわからないレア物を重点的に攻めることにする。レア中のレアといえば内部にわざとハエの卵を仕込み、チーズばかりを食べて育ったウジ虫ごと食べるという例のサルデーニャ島のシロモノだと思うが、聞くと市販は許されておらず、自家用として食べるために造られているだけなのだそうで諦めた。
それでも「牛や羊やヤギのミルクを搾って温め、小羊や子牛の胃からとったレンネットを加えて凝固させ、保存のために加塩して加工した乳製品」(ちなみにリコッタはレンネット、つまり酵素の働きによってではなく加熱によってたんぱく質を固めて造るので、イタリアの法律では「チーズ」には分類されないが、そんなことを言っているとリコッタを展示する場がなくなってしまうからなのか、何種類も展示・試食・販売に供されていた)という私のチーズに対する基本認識をくつがえすには十分であった)。何しろスローフードの保護品目にも指定されているKechek el fouqaraというレバノンの「貧乏人のチーズ」は、ミルクおよびその加工物はいっさい使わず、発酵させた穀物(小麦)と水と海塩で造る(味噌の遠い親戚か?)というし、トレンティーノ・アルト=アディジェ州のGrankäse della Valle Aurinaはレンネットを使わず、乳清を放置することで酸度を高め、酸の力で固めるらしい。固めるといっても、切るとカラスミを柔らかくしたみたいにすぐにバラバラほぐれてしまう(ライ麦パンにバターを塗り、その上に乗せるか、玉ねぎやオリーブオイルやワインビネガーで和えて食べるのが一般的だそうだが、熱々のパスタにかけてソースにもするというので、ためしに買って帰ってオリーブオイルと一緒にスパゲッティに和えたらおいしかった)。レンネットの代わりに野生のアーティチョークの花でミルクを凝固させて造るチーズというのも、ウワサには聞いていたが実物(写真)には初めてお目にかかった。その名もCaciofiore(チーズの花)di comunella della campagna romana(ローマ県)。Lodi Panneroneという、ロンバルディア州ローディ産のチーズはいっさい加塩しないというし、地面に穴を掘ってその中でチーズを熟成させるもの、同じく干し草に包むもの、クルミの殻をまぶすもの、オリーブオイルの澱と灰を塗りつけるもの、こしょう入りのもの、サフラン入りのもの(非売品)、

その他に試食したチーズ:
Saras del Fen(ピエモンテ州産。干し草に包んで熟成させるリコッタ)
Montóbore
Macagn
Bitto “Valli del Bitto”(ロンバルディア州)
Vacca grigio alpina(8か月熟成させたものと1年熟成させたものの2種類)
Pecorino della montagna pistoiese(トスカーナ州)
Marzolina(フリウリ県ウーディネ)
Pecorino di farindola(アブルッツォ&モリーゼ州)
Formaggio di Capra garganica(プーリア州)
Provolone del Monaco
Pecorino bagnolese(カンパーニア州)
Caciocavallo padolico della Basilicata(バジリカータ州)
Pecorino di Osilo
Zincalìn della Val di Muggio(スイスのイタリア語圏)
Oscypek(ポーランドの燻製チーズ)
Brânză de Bunduf(ルーマニア)
Formaggio di yak dell’altopiano tibetano(ヤクのミルクで造るチベット高原のチーズ)
Pecorino siciliano(シチリア州)
Piacentino(同)
Vastedda della Valle del Belice(同)
Fatulì della Val Saviore(ロンバルディア州)
Provola della Madonie 以上、主にスローフードのプレシディオ(保護品目)コーナーに出品されていたものと、シチリア州のブースのもの。

その他、地元の酪農家がしぼりたての生乳をすぐ横で瓶詰めしながら宣伝販売しており(コップ1杯10セント)、甘くておいしかったので1リットル購入(1ユーロ)、チーズ風味のジェラートがあり、アスコリ=ピチェーノ産のオリーブを詰めたポルペッタがあり、地元の赤ワインがグラス1杯1.5ユーロ、チーズ3種類の試食つきなら3.5ユーロ……まるで高校の学園祭か縁日を冷やかしている雰囲気である。なぜか中華料理店の前では日本酒やラーメンが売られているし(中国人は逞しいのだ!)もちろんテーブルに座ってパスタ料理を食べられるブースもあるし、果物やハチミツの展示販売、ラヴァッツァのコーヒーや地元のミネラルウォーターが飲めるブースもある。ちゃんとフル・コースの食事がとれる順番に並んでいるのが面白いが、なにしろチーズを1切れずつとはいえ30種類近くも食べたのでいまさら席について食事する気になれないのである。しかしどうせなら地元の特産品をもうひとつ、可能ならば同じ発酵食品でもアルコール発酵とマロラクティック発酵した食品がほしい。早い話がワインである。ピエモンテ州展示エリアに足を踏み入れると原料の牛や羊やヤギがおり、バローロやバルバレスコの館、巨大なワイン&チーズ展示場(これまでのブースに「パルメザンチーズ」や「グラーナ・パダーノ」、「モッツァレッラ」「アジアーゴ」などの有名どころ、横綱大関クラスが見当たらなかったのはこのためだったのだ!)ブルーチーズの館などが林立している。ビールのブースも充実しているので「もっと早くここに来ればよかったね」などと話し合いながら歩いていると「アスティ・スプマンテ」のブースを発見。あまり人もいないので有料なのかと思えばタダだという。応対してくれたお兄さんはとてもいい人で、「5人いるので3種類くらいグラスでもらえませんか」と言うとテーブルに案内してくれ、5人にグラス3つでいいのに全員に4種類味見させてくれ、「今ルッカでイタリア料理を勉強中なんです」というと「ブラには何日か滞在するの?なんなら業者にアポをとってワイナリーめぐりを企画してあげるよ」と信じられないくらい親切。業者なのかと思ったらアスティ・スプマンテ(DOCG)の生産者組合の人で、資料は山のようにくれるわ、生産組合のロゴ入り徽章はくれるわ、「どのワインが一番気に入った?」と聞いて2本目だと言ったら、ボトル1本くれた上持ちにくいでしょうと布バッグに入れてくれる。いかにもソムリエでございますといった風の人間ばかりがいるバローロ・バルバレスコの館より、ここに来たのは正解だった!

帰路はバスの故障もなく順調に4時間かかってルッカに到着。夕食は本日4か所目の訪問地となるドライブインにて。フォカッチャ1枚と水だけで十分でした。いささか疲れたし、山のようにたまった資料をどう整理するかで頭が痛いが、また来年以降も同様の催しがあれば是非行きたいと思った。もちろん試食販売だけでなく、セミナーやレクチャーもいろいろと開かれるらしいので、本当は泊りがけで3日間とも参加できれば最高だ。その節にはぜひアスティ・スプマンテのワイナリー巡りもおりこんで……。

9月21日・金曜日

2007-09-24 05:00:44 | 料理学院
9月21日(金曜)講師:ジャンルーカ先生(その4)

21日目の昼食:
Tartara di salmone con formaggio caprino ed erba cipollina サーモンをきれいに掃除した後、包丁で細かくタルタルステーキの要領で刻み、チャイブを混ぜたカプリーノチーズを上から絞り出す。ヤギのチーズと魚の組み合わせだが、チーズの酸味が脂っこさをカバーするので食べやすい。
Crostini di pesci misti 今日使った魚(サーモン、クロダイ、あんこう)の切り落としで作ったクロスティーニ。残り物利用の一品。
Involtini di rana pescatrice e salmone in crema di avogado あんこうとサーモンのロール巻、アボガドのソース 冬なら蒸し焼きにして、夏なら生のまま冷凍してスライスし、カルパッチョのように。今日は両方のやり方で少しずつ味見した。
Spaghetti con le acciughe イワシと生トマトと葉玉ねぎのスパゲッティ(写真)。青魚を使うので生臭くならないように仕上げるのがポイント。オリーブオイル、玉ねぎ、イワシ、トマト……食材がフライパンに加わるたびに「おいしそう!」「これ絶対うまい!」の大合唱。今回勤め先から派遣されて「パスタ料理をいっぱい学んで来い」と言われてきた生徒さんのために特に取上げた一品だが、「DE CECCOのおいしいスパゲッティを買ってきましたからね!」「……あのぅ……うちはBARILLAを使ってるんですが……」で一同爆笑。
Caffè エスプレッソコーヒー
前菜3点とスパゲッティとコーヒー。まるで日本のイタリアンのランチメニュー?

昼前に顔を出したセミロングヘアーのキュートな美人あり。誰かしらんと思っていたら、ちょっと低音のハスキーな声に聞き覚えがある。2年半前の期に参加したキアーラだった。ここを卒業してから1、2軒店をかわったが、今はルッカとピサの間にあるホテルのレストランを任されているらしい。本科を卒業したイタリア人生徒は数人いるが、たぶん一番本格的なキャリアを積んでいる人である。相変わらずカッコいい。

21日目の夕食:
Zuppa di farro con code di gamberi e basilico スペルト小麦のスープ、クルマエビとバジリコ入り
Filetto di orate con patate, melanzane e pomodorini ciliegia クロダイを三枚におろし、半分に切ったチェリートマト、なす、じゃがいもとオーブンで重ね焼き。
Gelato alla vaniglia バニラのジェラート 生クリームや松の実がたっぷり入ったリッチなバージョン。20人分で卵黄が16個、グラニュー糖が600g、粉砂糖、生クリーム、牛乳……今回の生徒さんの中には管理栄養士の仕事をしていた人がいるのだが、カロリーを途中まで計算したところで絶句した。おいしいんだけど。
Caffè エスプレッソコーヒー

9月20日(木曜日)

2007-09-24 04:58:34 | 料理学院
9月20日(木曜)講師:マリエッラ先生(その3)

前日まで午前中は教室のアシスタント、午後は午後でアメリカ人対象講習会のアシスタントと大活躍だったマリエッラ、今日は「シェフ」として3度目の登場。まことにご苦労様だがま、アメリカ人のコースは昨日で終わったから……と思いきや、3月に仮予約が入ったまま音信不通だったツアーオペレーターから、いきなり朝に「いよいよ今日ですね、何時にお伺いすれば……」と寝耳に水の連絡!マリエッラも急に言われて都合がつかないので、「いつも男性社会の中で頑張ってくれている」女性軍一同に急きょヘルプをお願いすることに。かと思えば別の団体を乗せてルッカまでバスでやってきたジャンカルロが「暇だから」と顔を出し、ついでに昼食を食べて行くという。確かに当校は無料の上、ルッカでも一番おいしい昼食を出していると思う(だって料理は全部作りたてだもん)。1年前の卒業生「ヒロシ」さんも帰国前に寄ってくれたので、先輩としていろいろ体験談を話してもらう。

20日目の昼食:
Gnocchi alla crema di pepperoni パプリカのクリームソースであえた、じゃがいものニョッキ。じゃがいもをゆでる時間がやや短すぎ、固かったのでまとめるのに苦労する。魚や肉はそうでもないが、こと野菜に関しては、同じ野菜でもイタリアと日本でゆで方の感覚が全然違うので注意が必要。品種の違いだけでなく土壌と水の違いも大きいから。
Schiacciata di scarola con insalatina しんなりと炒めたエスカロールと玉ねぎを薄い生地ではさんで焼いたぺちゃんこの(スキアッチャータ)タルト。付け合せのグリーンサラダの方はぺちゃんこにせずこんもりと盛らないと、「ドレッシングのかけすぎか、火を通した(温野菜)か、トラクターにひかれたみたいに見えちゃう」のでご注意を。
Mousse di lamponi con cialda croccanti 本来イチゴで作るムースを、本日はラズベリーで。パピロールみたいに細長く成形して添えるチャルダ作りに一同てこずる。
Caffè エスプレッソコーヒー

例のエノテカ・イタリアーナのワイン解説書だが、当然のことながら毎回ページ数と重さは増す一方で、18版を数える今回は1冊550gもする。計算してみたらいったん日本の我が家にまとめて小包で送り、あらためて郵送するよりも、3部以上の「大口注文者」にはイタリアから直接送った方が安いことがわかり、少しずつ発送を始める。マリエッラの車で郵便局まで送ってもらうが、途中お兄さんの家に寄って甥のフィリッポと80歳近いお母さんを「慰問」。おりしも小学校の「英語」の宿題と悪戦苦闘しているフィリッポ君、宿題のプリントの方は全然やる気がないが、終わったとたんに近所の親友と段ボール箱いっぱいのカードでなにやら遊んでいる。何かと見ればイタリア語・英語・日本語(うちの卒業生のプレゼントかと思いきや、クラスの子と交換したらしい)とりまぜたポケモン・カード。ことポケモンに関しては語学の壁などまったく存在していないらしく、時々「ここ何て書いてあるの?」と確認に来るほかは平然として遊んでいる。学校はポケモンをうまく利用したほうがもっと子供の学習能力を伸ばせるんじゃないか?

20日目の夕食:
Focaccia di rosmarino e pancetta ローズマリーとパンチェッタのフォカッチャ
Involtini di peperoni con crema di formaggio ed erbette チャイブを細かく刻んでクリームチーズに混ぜ、皮を焼いてきれいにはがしたパプリカでロール巻きに。
Pasta fresca ai fiori di zucca 手打ち生パスタ、ズッキーニの花のソース 以上2点はアメリカ人の講習メニューなので、作り方の詳細は不明。
Crema di piselli グリーンピースのクリームスープ(写真) 乾燥グリーンピースを香味野菜といっしょに炒め、ブロードを加えて煮込んで裏ごし。ブロードは野菜だけより肉も入れてとったほうがコクが出る。
Faraona autunnale all’uva bianca 秋のほろほろ鳥・白ブドウのソース 秋といえば収穫の秋。ワインの原料になるブドウをふんだんに使ったオーブン焼き。お腹だけきれいに出して、中にブドウを詰めて丸焼きにするやり方もあるが、今日はさばいてから焼く。考えてみればほろほろ鳥ってスーパーの肉売り場か、フィレンツェの博物館で剥製しか見たことがなく「生前のお姿」って一度も見た覚えがないが、生徒さんは先週出かけたルッカの市場で見かけたらしい。見たかったなあ。
Sformatino di patate じゃがいもの小型スフォルマート ほろほろ鳥にタイムを使ったので、こちらもタイム風味で。単にピューレにしても相性がいいらしい。
Caffè エスプレッソコーヒー

9月19日・口数多くしてカチュッコ煮つまらず

2007-09-21 05:03:33 | 料理学院
9月19日(水曜) 講師:ウンベルト先生(トスカーナ州カスタニェート・カルドゥッチ)

長年奉職した海辺の町チェチナの店から、うってかわって山の中の店に移転した先生。しかし毎回遅刻することに変わりはなく、今回も20分程度遅れてやってきた。本人に言わせると「9時1分前には近くまで来ていた。道を間違えてルッカの中心街の方に行ってしまっただけなのだ!」。当校に来るのは7回目なのに、これで来年校舎が移転したらどうなるんだろう。
さてメニューの目玉は「お約束」のカチュッコ。地中海の魚介スープコンテストで優勝したこともある腕前なのに、今の店で仕入れられる魚はよくないので店では一度も作っていないそうだ。もったいない話である。先生のもとで研修中である前期日本人生徒の紅一点・アキさんも、当然「作り方を一度も見たことがないので」今日はいっしょに参加。この料理の欠点は、いや正確にはこの人に作らせた場合のこの料理の問題点は、講習時間めいっぱいの3時間をすべて費やしても煮込み時間が足りるかどうか怪しい、非常に手の込んだスープなのに、作り手が遅刻の常習犯の上のべつ幕なしにマレンマ地方・リヴォルノ県・イタリア料理一般について熱くうんちくと料理哲学を語り続けるということである。当然手のほうはお留守になりがちだし、生徒さんの集中力だって持続しにくい。おまけに本来の説明をし終わる前にうんちく話に流れ、肝心の説明がしばしば尻切れトンボに終わるおかげで「バーミックスで粉砕したらシノワでこし、そのスープをすぐに火にかけて煮つめる」工程が、粉砕だけで止まっていたので煮つめ時間が少なくなり、次善の策として「シノワに残ったガラにスープの一部をもう一度注ぎ、木べらを力いっぱい押しつけて押しつけて、できるだけとろみを出して、そのスープだけを使う」やり方に変えたところ、せっかくいい感じになってきたのに、その後どうするかの指示を与えられていなかった生徒さんが元の鍋に全部戻してしまったので何もならなかった。この人は教えるのが好きだと自分でも言っているし、現に先生の許で修業した生徒さんの中には、いまや「故英国ダイアナ妃やホワイトハウスの料理長も勤めたことのある」イタリア人シェフの店で働いている女性もいるくらいだ。ただそれは本人にもともと素質があり、適度に仕事を進めながら話を聞いた(聞き流した?)からで、ただ今回のように1回限りの、しかも多数の人間相手の講習にしてはいかんせん喋りすぎなのである。おせっかいとは思ったが一応その旨をご進言する(もちろん納得させるまでにテキは私の十倍くらい喋った!)。

19日目の昼食:
Gamberoni in guazzetto クルマエビの「グァゼット」 ソースのようなスープのような、汁気の多いゆるめの仕上げにしたのが「グァゼット」だそうだ。イカやムール貝も加えた熱いダシにパンを浸すとおいしいので、「パンのおとも(con-panatico)」料理、つまり主となる食材がつましくてもパンを多めに食べてお腹をふくらませる、エンゲル係数の低い庶民の生活の知恵が発揮された料理である。
Insalata verde グリーンサラダ
Sarde ripiene(写真) パン粉・イタリアンパセリ・粉チーズ・卵などで作った詰め物を、手開きにしたイワシのお腹に詰め、表面にも卵やパン粉をつけて油で揚げる。人種と食文化のるつぼと言えるリヴォルノだが、これはシチリア料理の影響を受けた一品とか。「ベッカフーミ(ニワムシクイ)風」のことかしら。グリーンサラダと共に。
Campigliese マレンマ地方の「カンピーリア」という地名から名のついた、ラードをたっぷり使った香ばしい焼き菓子。松の実やクルミといったドライフルーツ、ラードが使われるのは中世にルーツを持つ古いお菓子(塩味の料理も)の特徴だそう。
Caffè エスプレッソコーヒー

19日目の夕食:
Cacciucco alla livorese リヴォルノ名物料理カチュッコ
Risotto allo zafferano con i funghi サフランとポルチーニ茸のリゾット
Faraona al vino rosso ほろほろ鳥の赤ワイン煮(以上2点はアメリカ人講習会のメニューのお流れ)
Campigliese カンピリエーゼ
Caffè エスプレッソコーヒー