アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

早くも「後退」した初議会答弁、翁長知事は説明責任を

2014年12月20日 | 沖縄と差別

                                       

  沖縄県の翁長雄志知事が、県議会で「所信表明」(12日)を行うとともに、代表質問(16日)と一般質問(17日)で答弁に立ちました。就任後初の県議会で、その発言内容が注目されましたが、辺野古新基地建設などをめぐって、早くも見逃せない発言が相次ぎました。

 辺野古埋め立て「承認撤回」が消えた所信表明

 翁長氏は所信表明で、「3つの施策」を示しましたが、選挙の最大争点だった辺野古問題は3番目の「平和創造プラン」の中でやっと言及。しかもその内容は、「この問題につきましては、埋め立て承認の過程に法律的な瑕疵がないか専門家の意見を踏まえ検証いたします。法的瑕疵があった場合は承認の『取り消し』を検討してまいります」(13日付琉球新報、沖縄タイムス)と、いまだに「検証・検討」の域を出ませんでした。

 そのうえ重大なのは、所信表明で承認の「撤回」にまったく触れなかったことです。
 そのことについて翁長氏は記者団に、「時間の関係上、割愛した」(13日付琉球新報)と述べました。「21世紀ビジョン」の焼き直しは延々と語りながら、最大焦点のこの問題を時間がなくて「割愛した」とは、信じられない言葉です。

 「撤回」でなく「話し合い」で日本政府に期待?

 一般質問への答弁で翁長氏は、承認「撤回」について、「撤回までいかなくても、日本政府との話し合いで、場合によっては(建設を)やめてくれるかもしれない。順序だててやりたい」(18日付沖縄タイムス)との述べ、安倍政権への「期待感を示した」(同)。
 できれば「撤回」したくない、「話し合い」で政府が「やめてくれる」(なんと卑屈な言葉でしょう)のを期待する。それが翁長氏の本音でしょうか。なぜ「取り消しないし撤回でやめさせる」と言えないのでしょうか。

 「県内移設容認」の「確認書」は「何の意味もない」?

 昨年1月の「建白書」作成時に、翁長氏は中山義隆石垣市長と、普天間飛行場の「県内移設」を容認する「確認書」を交わしていました。これについては11月13日付のこのブログでも書きました。
http://blog.goo.ne.jp/satoru-kihara/d/20141113
  翁長氏は代表質問答弁で、「反対する人もいたが、市長会で説得し、全員が了解してサインをした」と「確認書」の存在を公式に認めました。

 沖縄県紙はなぜかこの答弁を重視しませんでしたが、共同通信は同日、「翁長氏は11月の知事選で普天間の県内移設は『絶対に許されない』と繰り返しており、これまでの発言との整合性が問われそうだ」と配信しました。そして翌日の中国新聞は2面で、「翁長氏 県内移設否定せず 昨年1月に確認書」の見出しで大きく報じました。
 共同通信によれば、答弁後翁長氏は記者団に、「(確認書は)水面下の話で、何の意味もない」と語ったといいます。一方、「中山氏は共同通信の取材に『辺野古を含め県内移設を残すべきという趣旨で確認書を取り交わした。意味がないものではない』と反発した」(共同)。
 「何の意味もない」とほうかむりするのではなく、県民にその事実、真意を自ら説明する必要があるのではないでしょうか。

 基地建設阻止は「任期中」は無理?

 翁長氏は一般質問で、「基地建設阻止が実現する時期については『早く実現したいと思うが、必ず(任期の)4年間でそうなるとは言えない。一歩一歩前進させて近づけていくことになる』と述べた」(18日付琉球新報)。
 驚きました。任期中に辺野古の新基地建設は阻止できないかもしれないとは!いったいどういうつもりでしょうか。「基地建設阻止が実現する」とは何を意味しているのか明らかにする必要があります。もちろん承認の「取り消し」や「撤回」をしてもそれですべて解決するわけではありません。政府はおそらく訴訟に持ち込むでしょう。しかし、「取り消し」ないし「撤回」すれば、少なくともその時点で工事は止まります。それが「建設阻止」の始まりであり、そこから建設断念に持ち込むたたかいが続くのです。その「建設阻止」が任期中は無理かもしれないとはどういうことでしょうか。

 「高江ヘリパッド」は「反対」から「検討」へ

 代表質問答弁で翁長氏は、「東村高江の米軍ヘリパッド建設問題については『環境、住居生活への影響をめぐってさまざまな意見がある。地元の意見を聞き、検討したい』と述べた」(17日付琉球新報)。
 しかし翁長氏は知事選では、「オスプレイの専用的なヘリパッドになっている点もあり、『建白書』でオスプレイ配備撤回を求めていく中で、連動して反対することになる」(10月21日の政策発表記者会見。10月22日付しんぶん赤旗)と公約したのです。
 「反対」から「検討」へ。これは明白な後退(変質)ではないのですか。

 以上の検証は、琉球新報や沖縄タイムスなど新聞報道をもとにしたものです。記事では不十分さや不正確さがある可能性も否定できません。
 重要なのは、翁長氏が自ら、これらの「後退姿勢」について、その真意を県民と国民に明確に説明することです。翁長氏にはその説明責任があるのではないでしょうか。

 さらに、辺野古や高江の新基地建設阻止を願って、知事選で翁長氏を支持・応援した人たち・グループは、翁長氏に直接会い、その真意を確かめる必要があるのではないでしょうか。
 そして、翁長氏との意見交換の場(市民懇談会)を定期的に開催し、政策の実行を求める。翁長氏を擁立した人たちにはその権利と責務があるのではないでしょうか
 

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 沖縄選挙区「自民全敗」と「... | トップ | 天皇「81歳誕生日会見」の... »