沖縄県知事選はいよいよ最終盤になりました。
今回の選挙で重要なキーワードになっているのが、「建白書」(2013・1・28、写真左)です。沖縄の41市町村長と議長が共同で、安倍首相に対し「オスプレイの配備撤回」などを求めた文書です。
これを「沖縄の総意」(「オール沖縄」)としその実現を最大の「公約」に掲げている翁長雄志氏に、基地撤去・平和を願う人々から大きな支持が寄せられています。
ところがここにきて、「翁長氏と建白書」をめぐる、重大な問題が2つ浮上してきました。それは決して無視して通り過ぎることはできないものです。
1つは、「建白書」発表の3日前、1月25日に翁長氏と中山義隆石垣市長の間で交わされた「確認書」(写真右)です。
私はその存在を今月12日付の沖縄タイムス(写真中央)で知りました。同紙「知事選候補者4氏紙上クロス討論」で、仲井真弘多候補から翁長候補に対し、次の質問がされたのです。
「『建白書』作成時、中山石垣市長と普天間飛行場の県内移設を否定しないという確認書にあなたは署名、押印した。辺野古反対と県内移設容認の矛盾について説明をしてほしい」
これに対する翁長候補の「回答」はこうです。
「確認書は、中山氏の立場を理解し、中山氏にも署名、押印をしていただいたもの。そのことによって、翁長雄志本人の考え方や建白書の県内移設断念の考え方が、変わるものではない」
中山氏との「確認書」の存在を認めた上で、その性格について釈明したものです。
そこで「確認書」を探し、原文を確かめてみました。「確認書」は、翁長氏を「立会人」とし、中山氏と「オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会実行委員会」代表の玉城義和氏の間で交わされたもので、3氏の署名・押印があります。全部で3項目の「確認」です。
第2項で「中山義隆は・・・県内移設の選択肢を否定するものではない」とし、第3項で「上記のことを確認した上で」、中山氏は「『建白書』へ署名・捺印する」としています。
これを見る限り、翁長氏自身が「県内移設を容認」したというのは、無理があります。翁長氏が自身の考えは変わらないと「回答」したのもうなずけます。「建白書」の要求は「県内移設断念」であることも揺らがないでしょう。
しかし、これによって「建白書」の性格に大きな疑念が生じることも否定できません。
なぜなら、「建白書」の「県内移設断念」要求は、「県内移設の選択肢を否定するものではない」という見解・立場を「容認」したうえでものだということになるからです。
翁長氏が立会人になった中山氏との「確認書」でもう1つ、「建白書」についての疑念が浮上してきます。それは第1項で、こう「確認」していることです。
「今後、同実行委員会より発出される要望書等について、市町村長の同意、署名等を求める場合は事前に文言等の調整を十分に行うこと」
つまり、この「建白書」は、署名した市町村長の間で、「事前に文言等の調整を十分に」行っていなかった、いわば見切り発車であったということです。これも「建白書」の性格にかかわる重大な問題ではないでしょうか。
翁長氏と「建白書」をめぐるもう1つの重大な問題は、1日付沖縄タイムス「政策比較①普天間」に掲載された翁長氏の「政策」です。
「国外か県外で解決」の見出しの下、翁長氏はこう述べています。
「沖縄の基地問題の解決は、県内移設ではなく国外・県外移設により解決が図られるべきである。・・・県外・国外移設、県内移設反対の『建白書』の精神で取り組んでいく」
「建白書」はいつから「県外・国外移設」になったのですか?
「建白書」は「県内移設を断念すること」を主張し求めているのです。「県内移設断念」と「県外・国外移設」との間には大きな違いがあります。
本土の人には分かりにくいかもしれませんが、沖縄の人には明白のはずです。
どこが違うのか。「県内移設断念」には、「県外・国外移設」とともに普天間基地の「無条件閉鎖・撤去」が含まれるのです。
「県内移設断念」=「県外・国外移設」とすることは、「無条件閉鎖・撤去」の主張・要求を切り捨てることにほかなりません。
例えば4日付の琉球新報・沖縄テレビ合同世論調査によれば、「国外移設」28・7%、「沖縄以外の国内(県外)移設」22・8%に対し、「無条件閉鎖・撤去」も22・3%にのぼっています。日本共産党をはじめ、この「無条件閉鎖・撤去」に賛成する人々は決して少なくないのです。切り捨ては許されません。
「建白書の精神」は「県外・国外移設」だとするのは、明らかに翁長氏による「建白書」の恣意的解釈、あるいは歪曲ではないでしょうか。
以上の「2つの問題」について、翁長氏と、翁長氏を支持する陣営の見解が明らかにされることを望みます。