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無知の知 (ソクラテスの弁明(プラトン))

2006-05-24 00:33:59 | 本と雑誌

Sokrates  哲学に触れたことがない人でも「ソクラテス」という名前はきっと知っているでしょう。

 ソクラテス(Sokrates 前470~前399)は紀元前5世紀のギリシャの哲学者です。
 彼は一冊の書物も残さなかったといいます。彼の思想は、プラトンら彼の弟子の書物(ソクラテスを主人公にした対話編等)を通して伝わっているのです。

 ソクラテスは、人間として「善く生きること」を追求し、「無知の知」を出発点とする問答法による真理探究をおこなったとされています。
 「無知の知」とは「自分が無知であることを自覚していること」で、ソクラテスが受けたデルフォイの神託における「知」とは、この無知の自覚のことです。
 ソクラテスは、この神託を受けた後、この「無知の知」による問答でソフィストたちを論破していきます。

(ソクラテスの弁明:p61より引用) あたかも「人間どもよ、おまえたちのうちで誰でも、たとえばソクラテスのように、自分が知恵にかけては本当のところは取るに足らぬものだということを知った者こそいちばんの知者である」とおっしゃっているかのように。だからそのために私は今でもなお神様の命令により、歩き回って、この国の人々のうちにせよ、他国の人々のうちにせよ、誰か知者だと思う人があれば、その人を捜して調べているのである。そして私にそうでないと思われるときには、神様のお手伝いをしながら、知者ではないということを示してやるのである。

 このようにソクラテスは、自らは無知を告白して相手に質問をあびせ、巧みに議論をリードし、最後には相手の知識があやふやなことを公衆の面前で暴露してしまうのです。このためアテネ市民の人気を集めると同時に、彼に反感を持つ者も現れました。これがソクラテス裁判の遠因のひとつにもなりました。

 「無知の知」の問答は、「敬虔とは」というテーマで「エウチュプロン」で具体的に示されています。そこでのやり取りについては、巻末の解説でも丁寧に説明されています。
 本書は、巻末の解説が充実していますから、私のように哲学の基本知識の乏しい読者は、解説を読んでから本文を読むと理解が進むと思います。

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