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こんな上司が部下を追いつめる (荒井千暁)

2006-08-31 00:44:59 | 本と雑誌

 ちょっと前の朝日新聞に「心の病、30代社員に急増 企業6割で『最多の世代』」という見出しの記事が出ていました。

(p50より引用) 過労の「労」は、労働の労でなく、疲労の労なのだ。

(p53より引用) 長時間に及ぶ仕事をしていても、自分の意思でコントロールできたり、自分の意のままに仕事を調整できている限り、過労による死は起きにくい。・・・自分の意思ではどうにもコントロールできない状況に置かれている例が圧倒的に多いというのが過労死の共通点である。

 産業医の立場で、最近の企業で増加しつつあるメンタル疾患の現状と対応策を明らかにした著作です。

 私の勤めている会社でも、メンタルヘルスの問題は最重要課題のひとつです。

 この本では、「過労現場」における上司の役割にスポットライトをあてます。
 働く社員にとっての「最大の職場環境=直属上司」ですから当然の視点です。

 著者が指摘する問題上司の特徴を、そのまま以下に紹介します。

(p75より引用) 冷たさ・・・部下を育てる視線を持ち合わせていない上司や、部下に愛を注げない上司

(p77より引用) 目線が落とせない・・・自分の立場でしかモノがみえない。・・・部下の気持ちを想像し、忖度することができない。・・・あ・うんの呼吸が得られていない者同士に以心伝心はない。あるはずだと楽観的に期待してはいけない。

(p78より引用) 窮地に追い込まれている部下をサポートしない・・・上司からの援護射撃がなかった

(p80より引用) 目的や構想を語らない

(p83より引用) 保身的で自己分析ができず他人のせいにする

(p84より引用) 独断的・・・部下の進言に耳を貸さないタイプ、部下の立場に立てない人間ともいえる。

(p85より引用) 叱り方がヘタ・・・人を叱るには叱り方がある。相手の心臓を凍らせるような言動では意図は伝わらない。

(p87より引用) 叱らない・叱れない

(p90より引用) サークルの乗り・・・相手である直属上司は、軽い乗りが消えないままのバブル期入社や、それ以降に入社してきた世代が目立つ。

(p93より引用) 問われても教えない・・・質問をしてきた新入職員に対して、「勉強になるから自分で考えてやってごらん」と差し戻す上司がいる。これは、一見、教育しているように見えるが、時と場合によっては部下を突き放すことになる。・・・このようなかたちで質問を差し戻す上司は、三十代が圧倒的だ。つまり、ここでもバブル期入社組がちらほら顔を出す。

(p95より引用) 一律のノルマを要求する・・・部下の個性に気を配ることなく、誰にでも同等なノルマを課せば、プラスの業績や効果が自動的に出てくると信じて疑わない上司がいる。目標管理制度や成果主義が導入される風潮になってから、このタイプの上司は増えた。

 現実としての不幸をもたらせた元凶が、このような上司の姿勢であり態度であったという事実は、非常に重いものがあります。

 そして、著者の以下の言葉もまた真実です。

(p70より引用) 現代の職場において、部下をつぶしてしまう最大の元凶は上司である一方、逆に部下の健康を守ることができるのは、何をおいても上司なのである。

 「孤立させない」ことが大事です。「見て見ぬふり」は厳禁です。

 本書は精神医学の専門書ではありません。部下との付き合い方を示したビジネス書でもありません。
 どこの企業でも起りうる不幸をひとつでも減らすための、警鐘と真摯な願いのメッセージです。

こんな上司が部下を追いつめる―産業医のファイルから こんな上司が部下を追いつめる―産業医のファイルから
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2006-04

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