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プレゼンテーションとしての「君主論」

2005-09-24 01:18:51 | 本と雑誌

 「君主論」は、1515もしくは1516年、マキアヴェリが政治生活への復職の期待をこめて、フィレンツェの最高指揮官職に昇ったロレンツォ・デ・メディチに献呈したものと言われています。

 いわば、彼自身の売込み企画のプレゼンテーションツールでもあったわけです。

 そういう観点からこの「君主論」を見てみると、プレゼンテーションとして非常によくできた分かりやすい構成になっていることに気づきます。

 まずは、章ごとにテーマを分けて興味を引く簡潔な見出しをつけています。また、それぞれの章のボリュームは、読みやすいコンパクトなサイズにまとめられています。

 記述の構成は、全体構成も各章内の構成も同じく、非常に単純明快なロジカルなつくりです。

 まずは、第1章で「支配権の種類とその獲得方法」としてMECEを意識した「場合分け」がなされています。この基本的な場合分けが全編を通して貫かれています。
 そして、それに続く各章は、それぞれの場合分けのケースごとに丁寧に各論を重ねています。
 章の中の構成は、基本的には、

  • さらに細分された場合分け
  • 各場合ごとの論旨
  • 複数の具体的根拠
  • 想定される反問とその回答
  • まとめ・結論

となっています。

 具体的根拠は、現代および過去の実際の支配者たちの実証された事実をもとに示されているので、(読み手である支配者層の立場からみると)極めて納得性が得やすいものが選択されています。
 また、その列挙にあたっては、「第一に・・・」「第二に・・・」というように体系的に順序だてて整理された形で記されています。

 特に、「想定される反問とその回答」の部分は、マキアヴェリの検討があらゆる側面からなされていることの証となり、彼の主張の説得力を増すことに大きく貢献しています。

 そして、最後の章(第26章「イタリアを蛮族から解放すべし」)は、それまでの章の冷徹な分析的・論理的な書きぶりとはうって変わって、極めて扇動的・情熱的な筆致になっています。そのメリハリの利いたコントラストは非常に効果的です。献呈したロレンツォ・デ・メディチに対して熱く訴えかけ、プレゼンテーションを劇的に締めくくっています。

 「君主論」は、プレゼンテーションという視点でみても極めて面白い優れたパフォーマンスだと思います。

コメント (2)
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