演劇の鑑賞団体に入会して25年。今回の出し物は、こまつ座の『国語元年』、井上ひさしの
作である。昔、川谷拓三の主演でテレビでも放映された。
明治7年(1874)文部官吏(佐藤B作)に、全国の話し言葉を統一し、共通の話し言葉を作りなさいと命が下る。長州出身の彼の家には、鹿児島弁の妻(土井裕子)と義父、東京山の手ことばのお手伝い(剣幸)、名古屋弁の書生、岩手なまりの用人、東京下町言葉の下働きが同居している。そこへ、河内弁の遊女や京都弁の自称公家が転がり込んでくる。なにしろ方言のオンパレードで、鹿児島弁や遠野なまりは全然理解できなかった。
でも、3時間近い芝居なのにまったく飽きさせなかった。芝居はセリフが身上といわれるが、全体の雰囲気でいいたいことが伝わってくるものだ。小学唱歌が出演者によって、随所で効果的にうたわれたのも楽しかった。
方言は、その土地の暮らしの中で長い年月をかけて培われたものだ。それを統一しようなどとはナンセンス。なぜその必要があったか?そのころの歴史を振り返ると、列強の仲間入りをするために国民の意思を統一する、軍隊を強力なものにするために統一ことばが必要だったと理解した。
ことばは人と人とををつなぐもの。ふるさとのなまり、その独自性を大切にしたいと思う。