シャクトリムシ
（昆虫図鑑）より
シャクトリムシは夢を見た
陽気がいい日に葉っぱの家を出て
広い世界をのんびり歩いてみたい
シャクトリムシは夢心地のまま
葉っぱの縁からポトンと地面に落ちた
ひゃーなんだなんだ土の匂いがする
おまけに危険な蟻がウロウロしてる
大急ぎで逃げ出さなくっちゃ
さすがに寝ぼけ気分も吹っ飛びそう
おやおや僕にはこんな能力があったのか
１メートル９・８秒の猛ダッシュ
まなじり決して蟻んこどもを振り切ったが・・・・
こんなことなら本屋の昆虫図鑑を抜け出して
『地球の歩き方』を読んでおけばよかった
おっと僕はまだ夢の中にいるらしい
「立ち往生の尺取虫さん」と誰かの声がする
暇ならうちの空き地を測量してくれないか
小さな天文台を造るのがぼくの夢なんだ・・・・
避暑地の別荘にやってきた青年が
麦わら帽子のひさしに手をかけて
星空への夢をとうとうと語りだした
僕にとって空は異次元の恐怖・・・・
急降下してくる黒い翼と影の記憶に
キャシャな身体がヒクヒクと痙攣する
面白がって通せんぼする青年に
もちろん悪気はないのだが
僕の表情は緊張のあまり強ばったまま
測量の結果あなたの敷地は３坪ほど
天文台を造って夜空を観測してください
そのころ僕は葉っぱを丸めたハンモックの中
「わかっているよ」世界は危険だらけだと
だけど冒険しなけりゃ世界は広がらない
今夜はひとつ星空とやらを眺めてみようか
教えてもらったミルキーウェイを眺めながら
シャクガの幼虫は今宵も夢を見る
未知の世界を頭に浮かべソロリソロリと夢を見る
アクセス
トータル
ランキング
