どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム127 『灼熱の亜米利加芙蓉』

2016-07-02 04:14:47 | ポエム

 

     亜米利加芙蓉

    (城跡ほっつき歩記)より

 

 

マサミはシングルマザー

負傷してイリノイ州に帰ったジョージとは

三年にもわたって音信不通

基地の街でホステスを続けるマサミは

夜遅く託児所からジミーを帰還させる

 

ハーイ ジミー 

How are you?

母親の腕の中で半分眠りかけている子を

息のかかる近さで覗き込む

寂しい思いをさせたけれどもう心配ないわ

 

あなたのパパはとてもいい人なのよ

ヘミングウェイが好きで海に憧れていたのに

配属されたのは沖縄駐留の海兵隊だった

厳しい訓練にも耐えたけれど実際の戦いは別

身体より前に精神が負傷してしまったの

 

世の中は矛盾だらけ

簡潔な言葉にボカシをかけ

見えなくするのが指導者の資質と思っている

世界の平和のために敵を排除する

なぜ人を殺すと言わないのかしら

 

パパは夏の太陽が好きだった

  今は薄暗い精神病棟に収容されている

  好きだった『武器よさらば』とは離れ離れ

いっしょに植えた亜米利加芙蓉とも離れ離れ

それでもジミーとは切っても切れない血の繋がり

 

灼熱の花はハイビスカスに似て艶やか

手入れをしなくても毎年咲く宿根草のたくましさ

6本指の黒猫はフロリダの風となって気配を送る

ジョージ 花の鼻先でエノコログサが揺れているわ

ジミーが時折見せる笑顔のように眩しく感じるの

 

マサミはシングルマザー

心を病んでイリノイ州に戻ったジョージの心の妻

忘れ形見のジミーを沖縄に残したまま

まだ戦地をさまようジョージを待ち続けている

亜米利加芙蓉の花びらのようにシワシワになっても、ね

  

    


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2 コメント

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哀しい艶やかさ (塚越和夫)
2016-07-02 11:04:49
こんにちは。

いつもご利用、ご紹介いただき感謝申し上げます。

この画像は昨年7月末に郡山市富田町堀之内付近で撮影したものです。

地名からもお分かりのように、戦国時代に蘆名氏重臣であった安積伊東氏の流れを汲むとされる富田氏に関わる中世城館跡とも推定されている地域ですが、戦国時代末期の伊達政宗の侵攻により、この富田氏は葦名氏の滅亡により命運を共にしたともいわれております。

「亜米利加芙蓉」の咲く季節は、文字どおりの酷暑の真っ最中です。
陽炎が揺らめくようなギラギラと照りつける日差しのなか、唐突にその艶やかな姿を目にいたしますと、ふとなぜか、この世のものではないような、どこか懐かしいようで、それでいてとても物悲しいを思いにとらわれることがあります。

貴兄のポエムからは、その謎を解く鍵を示唆していただいたような気持ちがいたしました。
ありがとうございました。
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兵どもが夢の跡 (tadaox)
2016-07-02 19:49:38
(塚越和夫)様、今回もまた魅力ある画像を使用させていただき、ありがとうございました。
また、撮影場所の城跡についての解説も、往時を偲ばせる情感に満ち、たいへん感銘を受けました。

若い頃平泉を訪れた際、道すがら眺めた川筋の風景から、松尾芭蕉の名句「夏草や・・・・」を思い浮かべたことを思い出しました。
いずれの城跡・古戦場にも共通の哀切さが漂うものと思われ、時と場所こそ違え亜米利加風露がもたらす物悲しさのご指摘にも共感を覚えました。

蛇足ながら、塚越さんの撮る写真には、今回のエノコログサのように背景の放射する気配のようなものが取り込まれていて、これも城跡探索の賜物かと納得した次第です。
これからも、何かとお世話になります。ありがとうございました。



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