羚英的随想日記

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■柿内沢鹿踊 其の四 挨拶演舞■

2016-05-12 21:48:00 | 風の吹くまま
 


5月4日(水)お昼前、式年祭の御巡幸の前に、お宿(柿内沢鹿踊の休憩所)の前の道路でお宿への挨拶演舞が行われました。

まずは柿内沢鹿踊について、簡単ではありますがご紹介致します。





行山流山口派柿内沢鹿踊
(ぎょうざんりゅう やまぐちは かきないざわししおどり)
 

岩手県気仙郡住田町世田米・柿内沢地区に伝承される行山流山口派の踊り組。
寛政初年(1789年)、世田米村の肝入(村長)の登戸(のぼと)屋敷弥市の子孫・加蔵の代に矢作村馬越(現・陸前高田市矢作町馬越)より伝授され、地区に帰り人々に伝い習わせたのが始まりと云われている。
『加蔵は若くして妻を失い、愛児一人と馬一匹が残され途方に暮れていたが、馬を売って矢作村に行き、鹿踊りを習い、皆伝を受けて帰宅し、妻の霊前で踊ったとされている。』

一方では口伝によると、天明期(1781~1789年)の頃に大原山口(一関市大原大東町山口)から相伝されたとも、文政期(1818~1830年)に大原山口の喜左衛門から伝授されたとも云われる。

詳しい資料や古文書(伝書)が残されておらず、分かっている範囲内では現在の中立は第12代目となる。
消長を繰り返し、記憶にあるところで第二次世界大戦時に一時中断・昭和30年代後半~40年代前半頃に休止を余儀なくされたが、昭和59年に再開し現在に続く、およそ230年の歴史を刻む踊り組である。




踊りの構成

柿内沢鹿踊にはいわゆる“演目”という概念はなく、踊りの各場面(パート)の複合構成により一つの踊りを成立させている。一回の踊りを一庭(ひとにわ)と言い表す。
基本の一庭は各場面から一つずつ、任意で狂いの場面を略したり鹿の子を複数含めて構成することも。
狂いの無い場合は“鹿の子踊り”と呼び、狂いが入ったときはその狂いの名で演目名に代えて呼ぶ。
案山子踊りは狂いの部類に分けられ、案山子の場面が入った場合は狂いは踊らない。
竿鹿の子という場面が、今回の式年祭で十数年ぶり(二十年ぶり?)に踊られた。


■ 踊りの場面とその数・構成は次の通り

1.渡り拍子(わたりびょうし)・・・・・1
2.遠入羽(とおいれは)・・・・・1
3.入羽(いれは)・・・・・4
4.庭廻り(にわまわり)(+唄切り)・・・・・3
5.長唄(ながうた)・・・・・6(何十年も省略していたが、今回中立が長唄のひとつを踊り手に伝えた)
6.狂い(くるい)・・・・・3 (内訳;唐金狂い(三人狂い)+追い狂い(読み;ぼいぐるい)、松島狂い(三人狂い)+追い狂い、絡み狂い(二人狂い))
7.鹿の子(かのこ)・・・・・13 
8.寄せ(よせ)・・・・・2
9.引羽(ひきは)・・・・・5 (内訳;踊りも唄も異なるもの/3、踊りが同じで唄が異なるもの/2)

また、場面と場面の間には、抜きばち・打っ切り(ぶっきり)と呼ばれる“繋ぎの太鼓”のパートが入る箇所がいくつもある。
場面場面でたびたび唄が挿入され、踊りは緩急に富み、同じ気仙地方でも他に類似する踊り組がほとんど見当たらない、珍しい踊りだといえる。





さて今回、この記事内の画像はすべて動画からのスクリーンショットを使用します。
初めて使うコンデジでの撮影で、画素数が高いのにiPhoneのスクショよりも画像が荒いのが納得行かないところでして。。。
画質の悪さに関するお目汚しは、どうぞご勘弁下さい 


演舞が始まります。
柿内沢鹿踊の演舞の内容は未だによく分からず説明するのが難しいので、だいぶ割愛しております。
大目に、また気楽に見て頂けたら幸いです。





まずは渡り拍子から。タンタン タグヂグ タンタンコ…






シッという中立の合図(警蹕/けいひつ)で打っ切りの太鼓を叩いたあと、唄が入ります。
『一礼申して 通れ吾が連れ 通れ吾が連れ』
最後の『吾が連れ』のときに中立の太鼓がもたついた感じに聞こえるところがありますが、これは「ころばし」という技法で洋音楽で言うビブラートのような三連符のような、リズムに抑揚をつける打ち方です。

実際歌われる歌は、歌詞の合間につなぎの言葉が入ったりするものもあります。
原文を載せていますのでご了承下さい。






合図と打っ切りのあと、遠入羽の場面に入ります。
これは隊列のまま前に飛び出すように踊り出る勢いのある場面です。














合図と打っ切りのあと、唄が入ります。
『心静かに 遊べ吾が連れ 遊べ吾が連れ』
 





合図と打っ切りのあと、入羽の場面に入ります。ザンザンザンザン ザゴイゴザン…












そのまま庭廻りの場面に入ります。ザッツァゴ ザゴザゴ ザッツァゴイゴ ザゴザゴ…






2本のササラがねじれるように回すのが本来のやり方だそうです。






腰を下ろして頭で見得を切るような所作を。






唄切りが入ります。
『京で九貫の唐絵の屏風 一重に…』でササラ(ヤナギ)を地に叩きつけて
『…さらり 廻り合わせろ 廻り合わせろ』
 







そのまま鹿の子の場面に入ります。中立が庭を廻り…






ダイナミックに左に右に半回転します。中立の踊りが際立つ場面のひとつです。
側鹿はリズムの緩急に臨機応変に対応します。

1回目の鹿の子は 『此の庭/此の庭は 広く平になるならば 小花を散らし 遊べ我が連れ 遊べ我が連れ』






この場面ののち、鹿の子の最後のあたりでは鹿たちが一斉に腰を下ろす所作があり、続いて次の鹿の子が始まりました。
ショットを取ろうと思いましたが、タイミングよく(?)目の前に通行人たちが通り過ぎてしまったので取り出せず…、のちほどで。






2回目の鹿の子の場面。
この鹿の子は 『海の波中(どなか)/海の波中のはまつどうは 波にゆられ づんと立ちそろう づんと立ちそろう』






鹿たちが一斉に片足ケンケンで左に右に廻ります。
鹿頭が小さく、太鼓が大きく位置が高いため立ち姿のバランスがよく、すらっと端正な柿内沢の鹿の美しさが際立つ 『海の波中』 も私の好きな鹿の子のひとつです。






ここが鹿の子の中にある一斉に腰を下ろす場面。ひとつの鹿の子の場面の終わり直前の所作です。






寄せの場面。タゴンゴタン タゴンゴタン…






引羽の場面です。『かしわの番場/かしわの番場に群々雀が 羽先を揃え 池の恋しさ 池の恋しさ』






威勢のいい掛け声が掛かり、クライマックスの場面。






次期中立の若鹿の左口輪の踊り手さん(この画像では中立の右隣)、ところどころが師匠譲りの踊りになったような。
このあとも、威勢のいい掛け声が。






他流派のような頭を勢いよく振ってザイを振り流す場面(所作)のない柿内沢鹿踊の中での、振り乱しの場面。






『太鼓の胴(どう)をきりりとしめて ささらを揃え…』
“調べ”ではなく“胴”なのですよ。






『…これで納めろ これで納めろ』






挨拶演舞が終了です。






間を置かず、シッの合図で打っ切りを叩いたあと、息も絶え絶え(!)花受けの唄。
唄がすぐに始まります。






中立がお花(ご祝儀)を受け取ります。






ひとりひとりの前に行き、頂いたお花を間に互いにお辞儀を。






右口輪の踊り手さんともいいタイミング。






唄は『旦那様は我等に下さる 御酒代を故郷(くに)の土産に 持てや我が連れ 持てや我が連れ』






花受けの唄が終了、一礼を。






最後に渡り拍子を叩いて一連の演舞が終了しました。






お宿に向けて、踊り手さんたちが一礼。




この日最初の演舞は無事終了しました。
今回の演舞は…
①渡り拍子→遠入羽→入羽→庭廻り(+唄切り/京で九貫の)→鹿の子2(此の庭・海の波中)→寄せ→引羽(かしわの番場)の鹿の子踊りを一庭と、②花受けの唄→渡り拍子、でした。

雨も小雨になりもう少しで止みそうな中での演舞でした。
本番用ではなく練習用の太鼓にビニールを張って臨んだ踊りだったので、太鼓の鳴りが良くなかったと仰ってました。



取り急ぎYouTubeのアカウントを開設し、この挨拶演舞をアップロードしています。
画像と稚拙な文章では上手く踊りを説明できませんので、画像は鮮明ではありませんが、是非ご覧になってみて下さい。
(※演舞の動画はコンパクトデジタルカメラで撮影、使用している画像はその動画からスクリーンショットで取り出したものです。)




2016 式年祭 柿内沢鹿踊1

(2016年05月08日アップロードの動画を、解析度の高いものと差し替えました。)

 

 
 

 (※間違いがありましたら、ご指摘のほど宜しくお願い致します)

■柿内沢鹿踊 其の伍 御巡幸■ へ続く

#鹿踊り #ししおどり
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2 コメント

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羚英様 (角鹿)
2016-05-13 21:07:56
いやぁ~、恥ずかしながら感心している次第です。素晴らしい説明紹介を有り難うございます。本にして一冊欲しいところです、後の教本に。オドゲデネャグ(気仙弁で冗談とかお世辞ではなくの意)、其の1から大変なご苦労だったと思われます、今まで無名状態でしたからここまでアップされるとコッパズカシイです。これからも楽しみにしてます、お疲れしませぬように。
手探り状態です (羚英)
2016-05-14 17:53:10
角鹿様

こんにちは(^^)

今、動画編集に時間をとられ記事が進んでいませんが、もうしばらくお付き合い下さいネ。
動画の数だけ記事は続く予定です(^^)v
いろいろ詳しくご教授頂いても柿内沢さんの踊り構成は難しく、説明に苦労します(笑)
そこのところはどうか大目にみてやって欲しいところですが、間違いが多々あると思いますので遠慮なくご指摘下さいますようにお願いします!

コメントをありがとうございます

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