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Россия - царь Газового Мира!(ロシアは天然ガスの皇帝)

2007年05月13日 01時07分06秒 | ロシア関連
  この題名は、誇張ではありません。面白いニュースが入ってきました。

ロシアと周辺親米5カ国 資源めぐり対立
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/international/25620.html  

  まず、前半から見てみましょう。

--------以下引用--------

  ロシアのプーチン大統領、カザフスタンのナザルバエフ大統領、トルクメニスタンのベルドイムハメドフ大統領は十二日、カスピ海沿岸のトルクメニスタンのトルクメンバシで初の三カ国首脳会談を行い、トルクメン産天然ガスをカザフ、ロシア経由で欧州に輸出する「沿カスピ海天然ガスパイプライン」を建設することで合意した。

--------引用以上--------

  最近、中央アジアの情勢が活発に動いています。

  今回のニュースの意味は、欧米によって切り崩されかけていた天然ガス権益を、ロシアが死守したということです。
  どうやら、ロシアの狙いは、ロシアと地続き、もしくは政治体制のよく似ている国との連携を強化し、天然ガス市場の価格決定権を握るというもののようです。カザフスタンは独立以来ナザルバエフ政権が続いており、トルクメニスタンも独立から昨年までニヤゾフ大統領の独裁政権でした。

  ロシアが周辺諸国を天然資源によってコントロールするという構図は、日増しに強まっています。今回のカスピ海沿岸のパイプライン建設合意も、その構図の強化に資することは間違いありません。何しろ、ロシアの天然ガス埋蔵量は世界1位なのです。西欧のエネルギー政策は、ロシアの「協力」なくして成り立たないのは事実です。

  しかし、ロシアが天然ガス世界の皇帝として君臨されては面白くない国々もいるわけで、その動きもまた活発になっています。元記事の後半部分を見てみましょう。

--------以下引用--------

  一方、ポーランド、リトアニア、ウクライナ、グルジア、アゼルバイジャンの欧州、旧ソ連圏の親米五カ国首脳は十一日、カザフ産原油をロシア領を経由せずにウクライナ、ポーランドに運ぶ石油輸送ルートの建設促進で一致。ロシアと親米各国の間でカスピ海のエネルギー資源をめぐる対立が先鋭化してきた。

  プーチン大統領は十二日の三カ国首脳会談後、記者団に「(沿カスピ海パイプラインの建設は)二○○八年半ばに始まる」と言明。ロシアのフリステンコ産業エネルギー相は同日、ロシア回避を目的に米国が別に推進しているカスピ海横断・天然ガスパイプライン建設構想についても「政治的な計画だ」と批判し、今回の建設決定が米国や親米国のエネルギー輸送計画に対抗するものであることを示した。

  今回の三カ国首脳会談は、ポーランドのクラコフでの親米五カ国首脳会談(エネルギー・サミット)の日程に合わせ、急きょ行われた。カザフのナザルバエフ大統領は当初、資源供給国として同会談に出席予定だったが、ポーランド訪問は取りやめた。

  ポーランドはロシアへの資源輸入依存から脱却するため、一一年までに国内油送管をウクライナの油送管につなぎ、カザフ産のカスピ海原油をアゼルバイジャン、グルジア経由で輸入する計画。

  ポーランドのカチンスキ首相は「プーチン大統領がカザフスタン大統領のポーランド訪問を阻止したのなら、私たちの計画の重要性は一層明らかだ」と述べ、会談つぶしともとれるロシアの動きに不快感をあらわにした。

--------引用以上--------

>ポーランド、リトアニア、ウクライナ、
>グルジア、アゼルバイジャン


  ロシアがパイプラインで支配する国々のすぐ外側の国々ばかりです。

  特に、ウクライナは、2004年の「オレンジ革命」によって、形の上では自由主義政権になっています。自由主義などといえば聞こえがいいですが、要するに西側(特にアメリカ)の金融資本がその国を支配するということです。
  ついでに述べておくと、このような金融資本が入り込んでくることを許容している国が「シーパワー」なのです。日本がシーパワー化しつつあることは、昨今の外資系企業の進出からも明らかです。今月から始まった三角合併(異常に株価の高いアメリカ企業の株式を対価にして、株価の割安な日本企業を簡単に買収できる方法)により、さらにその傾向は強くなって行くでしょう。
  もちろん、ランドパワーのボスであるロシアも負けてはいません。ウクライナでは、親ロシア派がかなりの巻き返しを見せています。
  
ウクライナ 繰り上げ選実施で合意 大統領と首相 政治危機収拾へ
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2007050602014072.html

--------以下引用--------

  ウクライナのユーシェンコ大統領が、反大統領派が多数を占める最高会議(議会)の解散と繰り上げ選挙実施を命じた問題で、大統領とヤヌコビッチ首相が四日、キエフで会談、繰り上げ選挙の実施で基本合意した。(中略)

 首相から繰り上げ選挙実施の合意をようやく取り付けたユーシェンコ大統領は四日の記者会見で「邪悪に対する善の偉大な勝利だ」と強調。一方、ヤヌコビッチ首相は同日、キエフ中心部での集会で「われわれは選挙で勝利するだろう」と自信を示した。同日発表された最新の世論調査では首相の率いる「ウクライナの地域」の支持率は37%と大統領派の「われらのウクライナ」の9%を大きく上回っている。

--------引用以上--------

  反ユーシェンコ派の首相が繰り上げ選挙に応じた理由は、ひとつしかありません。彼の率いる親ロシア派が議会選で勝利する目処がついたからです。

  タイミング良く、こういう事件が起こります。

ガスパイプライン爆発=ロシア産をEUに供給―ウクライナ
http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_soc&k=20070507012304a  

--------以下引用--------

  ウクライナ非常事態省スポークスマンは7日、キエフ近郊で天然ガスのパイプラインが爆発したことを明らかにした。
 このパイプラインは、ロシアのシベリアからの天然ガスをドイツをはじめとする欧州連合(EU)諸国に送っており、爆発でこのパイプラインを通じた供給は停止した。

 (中略)

 ロシアは世界有数の天然ガス産出国で、EUは同国にとって天然ガスの最大の供給先。この爆発によるEUへの天然ガスの供給への影響は今のところ不明。   

--------引用以上--------

  どこの誰がやったのかは知りませんが、こういう事態が起きたら、困るのは誰か、という無言のアピールには十分です。なにしろ、ウクライナの国家財政は●こちらのPDFにあるように、格安の天然ガスを西欧諸国に転売することで成り立っていると言っても過言ではないからです。
だから、ウクライナが簡単にロシアの支配を脱却することは困難でしょう。もしできるとすれば、上の記事に書かれているグルジア経由で黒海を通るパイプラインしかありません。

  私がプーチン大統領の参謀だとすれば(最近こういう書き方が多くてすみません)、もうポーランドは捨てておきます。ポーランドは、隣接国であるベラルーシをコントロールしておけば十分だからです。
  そうなると、狙うべきは「グルジア」しかありません。ここを制すれば、ロシア包囲網の大前提である「黒海パイプライン」を突き崩すことが出来るからです。
そうはさせじと、シーパワー側も全力でグルジアを支援しています。●以前の記事で書いたとおり、アメリカは特殊部隊の訓練という形でグルジアに援助しています。
  また、我が国も、グルジアへの支援を明言しています。

麻生外務大臣とサーカシヴィリ・グルジア大統領との会談
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/g_aso/georgia_07/gaiyo.html
  
--------以下引用--------

  麻生大臣より、GUAM諸国の一国としてのグルジアの立場及び地政学的意味に注目しており、関係を発展させていきたい旨述べるとともに、ユーラシアを取り囲む国々と日本との関係を強化し、日本の知見・経験を活用してもらうことにより、これらの地域に一層の繁栄をもたらしたいと考え、「自由と繁栄の弧」のスピーチを行った旨述べた。これに対しサーカシヴィリ大統領より、「自由と繁栄の弧」の考え方を全面的に支持する、日本は世界で改革を志向する国々のリーダーであり、グルジアは日本の国連安保理常任理事国入りを一貫して支持している旨述べた。

  サーカシヴィリ大統領より、グルジアの民主化革命はウクライナに波及し、さらにアゼルバイジャンやカザフスタンといった他の旧ソ連地域においても、ロシアから自立した政策がとられるようになっていること、特にロシアを経由せず東西を結ぶパイプラインや交通網が整備されることでこの地域に地政学的な変化が起こっているとの説明があった。

  麻生大臣より、日本のやり方を取り入れてきたアジア諸国が経済的に成功し成長してきたことを紹介し、グルジアとも日本の経験を共有することにより、発展に貢献したい旨述べた。

--------引用以上--------
  
>グルジアの立場及び地政学的意味に注目しており


  さすが麻生外務大臣ですね。この言葉の意味を理解できている政治家は、日本国内にはほとんどいないでしょう。
  返す刀で、

>グルジアは日本の国連安保理常任理事国入りを一貫して支持している

  こうやってシンパの国を増やしていくというわけです。

  シーパワーの特徴は、技術面、経済面で「同盟」を組み、ランドパワーの圧力に対抗することができることです。ランドパワーは基本的に「支配と服従」という関係しか築けないので、この長所を生かすのがシーパワー戦略の基本なのです。
  「自由と繁栄の弧」という麻生氏の構想も、そのへんをきちんと理解した上での発言だと思われます。この政治家の強みは、外国というと中国・アメリカ・朝鮮しか浮かばないという狭量な発想をしていないことでしょう。これからの日本の外交戦略には、この人は外せません。
  
  もっとも、ロシアが反米諸国(たとえばイランやベネズエラ)と組んで、「反米エネルギーカルテル」のようなものを形成するとなると、かなり厄介な事態になってきます。アメリカが困るだけなら別にいいのですが、我が国も天然ガスをほぼ100%輸入しているのです。「ガス日照り」になった産業界が、我が国の利益に反する行動(たとえば高度な技術のロシアへの供与)を取らないとも限りません。
  それをどうやって防ぐかが問題です。

  以前から何度も申し上げているように、基本的にシーパワーは内陸に権益を維持することができません。たとえば、アメリカはアフガニスタン侵攻にかこつけて、ウズベキスタンの空港に空軍を置いていましたが、2005年には撤収しています。もちろん、ロシアの圧力があったからです。日本に至っては、何もできません。
  そこで思い出して頂きたいのは、「シーパワーはランドパワーの協力者がいなければランドパワーに勝てない」というルールです。
  
  勘のいい人は、もう気づいたかもしれませんね。これです。

中国と中央アジアを結ぶ「新シルクロード」建設
http://www.china.org.cn/japanese/244086.htm

--------以下引用--------

現在、中国国内では、連雲港から新疆ウイグル自治区のホルゴスまでの幹線道路がすでに全線開通しており、「新シルクロード」中国区間の整備はすでに完了している。中国とタジキスタンを結ぶ中国―タジキスタン自動車道路も開通しており、中国―キルギスーウズベクスタン自動車道路の建設工事もすでにスタートしており、タジキスタンーキルギス間およびタジキスタンーウズベクスタン自動車道路の建設および改造プロジェクトについても合意に達しており、カザフスタンを東から西へと横断する国際基準レール鉄道、中国―キルギスーウズベクスタン鉄道などのプロジェクトも前後して交渉のテーブルのテーマとなっている。

--------引用以上--------

  この「新シルクロード」の建設を、日本が支援してみるというのはどうでしょうか?

  今回のニュースが出たことで、ロシアはトルクメニスタンに天然ガス権益を保有することが明らかになりました。しかも、その天然ガスは、中国が喉から手が出るほどほしがっている資源です。
  そこで、中国が中央アジアのエネルギー権益に割って入ることになったら・・・中国は、ロシアに中間マージンを払ってガスを買うという地位に甘んじるでしょうか?
  つまり、資源乞食と化した中国を、エネルギー帝国の皇帝ロシアにぶつけることによって、中央アジアで紛争を起こさせるのです。そうすることによって、この地域はピョートル大帝の頃に逆戻りというわけです。
  重要なのは、中国とロシアに手打ちをさせないことです。新シルクロードがウズベキスタンからトルクメニスタンに及べば、きっと中国が図に乗ってトルクメニスタンにあれこれ言い始めるはずです。ロシアも負けてはいないでしょう。
  そして、我が国はそれに高見の見物を決め込み、その一方で燃料電池を核にした新エネルギー開発をどんどん進めるわけです。

  くれぐれも注意しなければいけないのは、石油・天然ガスという化石燃料が文明の中核である限り、ロシアの人民がツァーリ(ロシア皇帝)を崇め奉ったように、天然ガス供給国がツァーリであるロシアの慈悲にすがっていかなければならないということです。
  ということで、近い内に「バイオマス」の記事を書きます。ずいぶん遅れていますが・・・。
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光熱給水自給自足へ (のらくろ)
2007-05-14 00:10:56
>石油・天然ガスという化石燃料が文明の中核である限り、ロシアの人民がツァーリ(ロシア皇帝)を崇め奉ったように、天然ガス供給国がツァーリであるロシアの慈悲にすがっていかなければならないということです。
>ということで、近い内に「バイオマス」の記事を書きます。ずいぶん遅れていますが・・・。

前記事及び前々記事(伊勢神宮記事は除く)のコメントであらかたカキコしたとおりですが、そこで漏れていた「水」問題です。

これも猶予期間を切って、一戸建て所有者には雨水貯留の義務付けをする必要があります。

昨今の都市型水害が大規模になっているのは、地表の吸水性を損なうような、都市部におけるコンクリートとアスファルトの地面への「塗り込め」が要因とされていますが、各家庭が「マイクロダム」として雨水貯留をすれば、相当程度の水害緩和が期待できると思います。24時間以内に「大雨」といった天気予報が出れば、全貯留量の半分~1/3程度まで水の貯留量を下げ(要するに放水し)、「大雨」をカットできれば河川流量を削減できて、しかも自宅用の「雑用水」は確保できます。

ここでやっかいなのは「下水道料金」です。折角貯留した「雨水」の活用で最も有効な「トイレ」ですが、ここで各自治体上下水道局(部)との諍いが生じます。なぜなら今までは水道使用量を下水道使用量と同じとみなして、水道使用量でもって水道料金と下水道料金を課金していたのですが、ここに雨水利用がからむと、水道使用量<下水道使用量となって、自治体が下水道会計で取りはぐれが生ずるために、雨水管をトイレ、風呂などになかなか接続させてくれない、といった障害が出ているらしいです。

あと、下水を使わない「雨水」利用としては、特に大きいと思われるのが夏の打ち水です。どこに? 屋根、壁に、です。この散水の蒸散効果でもって、夏の室内温度上昇を幾分かでも緩和することができるのではないかと期待します。

前々回~このコメントでもって、日本国内の一戸建ての「光熱給水自給率」は大幅に引き上げられるでしょう。これは「天然ガス供給国がツァーリであるロシアの慈悲にすがっていか」なくてもよい状態への第一歩です。
>>のらくろさん (ろろ)
2007-05-14 00:50:02
>都市部におけるコンクリートと
>アスファルトの地面への「塗り込め」

  確かに、これは、人間が暮らす場所としても非常に不健全な状態ですね。

  私は、一定以上の公園の地下に濾過装置付きの貯水槽を作るというのを考えました。しかし、民家なら中継ロスが生じないという良さがありますね。

>散水の蒸散効果でもって、夏の室内温度
>上昇を幾分かでも緩和することができる

  屋上緑化は結局水を使っていますから、この方がコストが安くて済みますね。

>ここで各自治体上下水道局(部)との諍いが生じます。

  電力の問題もそうですが、電力会社や水道局が一括してインフラを管理するという「中央集権制度」を変えていかないと、真の意味での人や自然に優しい社会は成立しないと思いますね。
  そういう意味で、化石燃料文明というのは、「ランドパワー的中央集権システム」なのだなと改めて実感します。

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