ちぎれ雲

熊野取材中民俗写真家/田舎医者 栂嶺レイのフォトエッセイや医療への思いなど

疫病神サマの長い旅

2008-02-12 | 写真
下平のコトの神送り(長野県飯田市)

 昨日まで、南信州の天竜川流域のコトの神送りを取材しに行っていました。よく「それはオオゴトだ!(それは大変だ!)」という時の「コト」です。身体に起こると良くない「コト」とは、疫病とか風邪のことで、それが地域を移動しながら流行していくことを、昔の人は「病気や風邪の神様が村の外から移動して来る」と理解したようです。村に入ってきた疫病神サマをお神輿に乗せて、隣の村に捨ててきてしまいます。
 が、捨てられた隣の村はたまらん!!ということで、新たにその村の災厄(各家庭を祓ったササ竹)も加えて、さらに隣の村に捨てに行く。捨てられたその村もたまらんので、さらにその村の災厄を加えて隣の村へ・・・・ということを、延々つなげていくのです。一軒一軒を祓ったササを次々加えていくので、行事の終わり頃にはすごい数になっています。


芋平の集落で作られた神輿を下から覗くと、男女の藁人形が入っています。これが疫病神の依代になるという所や、この下をくぐるとご利益があるという所など、謂れは集落によってまちまち・・

 コトの神送り(集落によっては、風の神送りと呼ぶ)は2月8日~9日の2日間と聞いていましたが、実際に現地に行ってみると、さらに2月10日までリレーは続いていました。延々3日間、捨てられては次へ行く疫病神サマの旅路に付き合ってきました(笑) 昔は最後の村の境で捨てられて終わりだったそうですが、さらに次の村がたまらんというので、現在は焼いているそうです。藁人形が作られる所から、最後に疫病様が焼かれる所まで見届けて、こちらも何だかスッキリさっぱりして帰ってきました。
 先日の義母のことが常に心の隅にあって今ひとつ力が出ず、実際以上に疲れてしまいましたが、それがなければ楽しく有意義な取材の方ではなかったかと思います。


富田のコトの神送り(長野県喬木村)


 ちょうど、全国的に大荒れ大雪だった時でしたが、写真撮る身には天の助け! 自分は雪まみれのひどい状態でしたが、現在では軽トラックで疫病神を運んでしまう集落(限界集落で子供たちや人の数が足りないのだそうです)でも、雪で車が入れず、雪上をササを抱えて歩くシーンが撮れたのでラッキーでした。
 南信州の人々は、どの集落でも超!がつくほど親切で、地域柄なのかなあと、ちょっと感動しました。

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